和平案というよりも、降伏勧告
超大国アメリカの王様トランプが、ウクライナに最終和平案をつきつけているらしい。
その内容であるが、
①クリミア半島はロシア領と認める
②ロシアの占領地を認める
③NATO加盟は諦める
の三本柱らしい。これを和平の仲介案だというのだから、おそれいった。
アメリカは、和平案というよりも、ほぼ降伏勧告のようなものを、つきつけている。
国際社会はこんなことでいいのだろうか。そこに正義はあるのかよ?
ウクライナとロシアは、のび太とジャイアンのようなものだ。
ウクライナとロシアは、のび太とジャイアンのようなものだ。ジャイアンから見れば、のび太の態度が生意気に見えたかもしれないが、殴りかかってきたのはまぎれもなくジャイアンのほうである。
こういうとき藤子不二雄先生のアニメなら、ドラえもんがすばらしい道具でのび太を助けてくれた。ジャイアンをこらしめてくれた。
しかし、現実の世界にドラえもんはいない。かつてのアメリカはいない。
この和平案は、
「おまえのものはおれのもの。おれのものもおれのもの」と、ジャイアンがのび太のものを奪い取ったら、みんながそれをジャイアンのものだと認めてしまうようなものだ。
そこに正義はあるのかよ?
学校生活だったら、こんなことは許されない。同じジャイアン被害者のスネ夫が手を組んでくれるかも。しずかちゃんや出木杉くんが学級会議にかけて助けてくれるかも。先生がジャイアンを止めてくれるかも。
もしかしたらパパとママがPTAにかけあってくれるかもしれない。おおごとになればなるほど、ジャイアンの悪が明らかになり、悪の立場は悪くなるはずだ。
あるいはのび太がもっと大人ならば、剛田ジャイアンの家は雑貨屋みたいだから、商店会などから雑貨屋にプレッシャーをかけて、母ゴリラからジャイアンを制裁してもらうという手も考えられる。
っていうか、そもそもドラえもんがなんとかしてくれるはずだ。そういう物語なんだから。ドラえもんが絶対的な力を持った正義の味方なのだ。のび太の要求が理不尽なときは、ドラえもんはそれを拒否していたはずである。のび太は弱いから泣いたのではなく理不尽だから泣いたのである。
マンガに出てくる「ドラゴンの騎士」や「巨神兵オーマ」みたいな、圧倒的な力を持った仲裁者、を神が準備したというのは、どうやら正しい設定だったみたいだ。
圧倒的な力がなければ、正義はまもれない。
理念ではなく現状追認。それが歴史の教えてくれること
しかし、ウクライナはどうすればいいんだ?
圧倒的な力を持った裁くものというのは、アメリカ以外に考えられない。
そのアメリカがインベーダーの取り分を認めるような仲裁案を持ち出してきている。
こんなことがまかり通ったら、たとえば中国が台湾や、ついでに沖縄の島を占領してきたら、日本はどうすればいいのだ?
アメリカは仲裁してくれるかもしれないが、その仲裁案は、現状追認なんだろう?
正直にいうと、トランプの言うことも、理解できないわけじゃない。「これが現実、リアルな判断だ」というんだろうな。実際、人間の歴史は、理念ではなく現状追認でやってきた。勝てば官軍というのがリアルである。それをまたやろうというトランプのほうが、歴史の流れの上に立っているのかもしれない。
「再び世界大戦が起こるよりはウクライナに泣いてもらうほうがマシ」その理屈はわからないわけじゃない。「ロシアは核をつかえるのだから、屈服させられないのだから、もうここらで手を打とう」その理屈はわからないわけじゃない。っていうか、わかる。
でも、それでも、正義はどうなる? どこにある?
グリーンランドじゃなくて、ウクライナの東部四州をアメリカが買ってやればいいじゃないか
そんなにレアアースがほしいんだったら、グリーンランドじゃなくて、ウクライナの東部四州をアメリカが買ってやればいいじゃないか。ウクライナもアメリカになら、買戻し特約をつけて、安価で売ってくれるんじゃないの?
ロシアの将軍の暗殺など、小さな反撃はやっているようだが、もっともロシアが嫌がるのは、民衆の革命であり、民族の独立運動であるはずだ。
ウクライナはそういう謀略的なことはやっていないようだ。北方領土を日本のものだと承認してくれたが、ロシア連邦の各地の独立も承認して支援してやればいいのに。
ロシア連邦には独立したがっている共和国がいくつもある。本当は独立運動のための組織づくりや、おカネや武器の支援をしてやるのがいちばんいいのだが、それができなくても、たとえば国連でそれらの共和国の独立を認める提議をするだけでも、たいぶ違うと思うんだけどな。
独立運動が盛り上がれば、もしも民衆が立つならば、ジャイアンは戦争どころじゃなくなるはずだ。
正しく正義がなされますように
私はこのロシア・ウクライナ戦争のウォッチャーで、ずっと推移を見てきました。
わたしたちは、小さい頃から、ウルトラマンとか、仮面ライダーとか、その手の正義が勝つヒーローストーリーにあまりにも慣れ親しみすぎているのかもしれない。
それらナラティブの影響で、正義をなさねば、という精神が骨の髄までしみついているようだ。
そのせいか、アメリカの和平案が、あまりにも正義を無視しているように見えてならない。ウクライナがかわいそうだ。
トランプの言うように、もっと人は死ぬけど、こんな屈辱的な和平をするぐらいなら、もうすこし戦ったほうがいいのではないか? 雪崩をうって戦線が崩壊しているわけじゃないのだし、せめてロシアが「もうこりごりだ。マイッタ」というぐらいまで頑張ったほうが後世のしめしになるのではないだろうか? のび太もジャイアン相手にそうしたことがあったはずである。
こいつは、ウクライナはなんのために戦ったのか、という根幹を揺るがすような和平案だと思う。せめて中国が台湾を侵攻するのはやめておこう、と思うような戦争の結果であってくれなければならない。後の世に示しがつかない。
アメリカがやらないならば、国際世論しかない。それをつくるのはひとりひとりの声だ。ひとりひとりが声を上げ、国際世論をもりあげることが、正義のためになりますように。
この意見がその一助になりますように。ただしく正義がなされますように。