マラソンかよ! ロードレースに独走って……
東京オリンピック女子ロードレースの結果には驚きました。
途中、単独で独走したオーストリアの女子選手がそのままゴールまで走り切ってしまいました。
通常、自転車ロードレースでは独走は独りで風の抵抗をうけつづけなければならないため、いずれは集団に吸収されるとされています。
作戦上、独走はよくない作戦とされているのです。そこがマラソンと違うところです。マラソンでは中盤からの独走はよくあります。
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このブログの作者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』のご紹介
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードを競うようになるところまでを描いたエッセイ集です。
その過程で、ママチャリのすばらしさを再認識したり、どうすれば速く効率的に走れるようになるのかに知恵をしぼったり、ロードレースは団体競技だと思い知ったり、自転車の歴史と出会ったりしました。
●自転車通勤における四重苦について。
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。
集団内でスピードを緩めて牽制し合いながらスプリントするのは常套手段
ところが東京オリンピック女子ロードレースでは、風よけもなしに独走した選手がそのままゴールしてしまいました。
驚いたことに、二位の選手は「自分が優勝した」と勘違いしていました。
これはつまり集団・プロトンが先行車があることを知らなかったということでしょう。
集団の前に出ないレース戦略『マラソン・プロトン戦法』について
実際にプロトン内でけん制し合いながら(つまりスピードを緩めて)、ラストスパートで勝利を決めるべく、よくあるトップ争いの風景が展開されていました。銀メダル争いなのに……
マラソンの場合は世界新記録とか、大会記録とか、外国人記録とか、初マラソン記録とか、同じコースでもいろいろ記録があるので、優勝するために「わざとスピードをゆるめて牽制しあう」ということはまずありません。
しかしロードレースでは、牽制し合いながらスピードを緩めることはよくあります。単独走が風の抵抗によってバテる宿命なのでプロトンは集団で風の抵抗をわけあいながら追撃し、ゴール直前で単騎を撃墜するのがセオリーです。
ところが東京オリンピック女子ロードレースが異常だったのは、それが銀メダル争いであるにもかかわらず、あたかも金メダル争いであるかのようなレース展開になったことです。
マジに自分たちでトップ争いをしていると信じ込んでいたんでしょう。
これはおかしなことです。
白人社会では金メダル以外は敗者という価値観
わたしが撮影した動画を見てもらえばわかるとおり(男子オリンピックですが、女子でも状況は同じです)、たくさんのサポートカーが走っています。そこから自分たちの順位などの情報が入るハズなのですが、おかしなことでした。
しかし現実は現実です。
金メダルの選手は隠密行動が効いて、追走集団が追いかけてきませんでした。プロトンは牽制し合いながらスピードを緩めて金メダルを追走しませんでした。
本気で金メダルを追いかけようと思えば、集団は追いついたのだと思います。でもそのまま逃してしまいました。
日本ではそれほどでもありませんが、白人社会では金メダル以外は敗者という価値観です。銅メダルを讃えるなんていうのは日本独特の文化だといえます。
だから彼女たちがそのまま金メダルを逃したのは、本当に自分たちが金メダル争いをしていると思っていたのでしょう。
ほんとうにびっくりしました。
集団のほうが強いからといって、あまりにも単騎をのがし過ぎてはダメということですね。