ドラクエ的な人生

ラスベガスで用心棒と対決

どうもハルトです。みなさん今日も楽しい旅を続けていますか?

ラスベガスのリオ・オールスイートホテル&カジノでのことです。

世界一のラスベガスの夜景を、イロハが屋上テラスで風に吹かれて眺めていました。

ホテル・ルクソールからはサーチライトが星空を照らし、エッフェル塔や凱旋門は金色に輝いています。緑色のMGMも、リアルト橋も、すべてが美しい。

夢中になってイロハが外の景色を眺めていると、他にいた白人客たちはなぜか全員カジノルームに戻ってきました。

なんとイロハだけが鍵を閉められて外に締め出されてしまったのです。

ハルトはビックリ仰天。

なんで彼女だけが、たったひとりで屋上に閉じ込められなければならないのか理解できず、彼女を助けようと、扉を開けようとするが、開きません。

どういうつもりだ。ふざけんな! この鍵を開けろ!

怒り、日本語で叫んで、ガラス窓を叩き、鍵を蹴りあげて、彼女を中に入れないと黙ってはいないと闘争していると、騒ぎを聞きつけてなんとカジノホテルの黒人用心棒がやってきました。

身長は190cmぐらい。体重は150キロぐらいはあるだろう。黒いスーツを着たでかい黒人でした。

「このチビのイエローモンキーがベガスのカジノで騒ぐんじゃねえ。おれが許さねえぜ」

そういう目をしてハルトを睨み付け、突き出た腹で押してきます。さすがにいきなり手は出してきませんでしたが、客を客とも思わないプレッシャーをかけてきます。

私は用心棒の目を睨み返しました。なぜ白人客は中に入れて彼女だけが屋外に締め出されたのだ。これは人種差別だ。なめやがって。

こっちはサブスリーランナーだ。この太っちょ黒人の向う脛か金的に一撃をくれて走って逃げれば絶対に追いつかれない。勝てないまでも、負けることはない。絶対に、逃げ切れる。

パールハーバーを奇襲する日本軍のような気持ちで、いつでも一撃くれてやろうと私は構えていました。不思議と怖くありませんでした。

用心棒の目をぎろりと睨み返します。用心棒はこっちの本気のヤル気を知って少したじろいだようでした。

イロハ「ちょっと待って。一撃くれて逃げるって、わたしはどうなるのよ?」

ハルト「あ。ごめん。忘れてた。こっちは人種差別と闘う闘士になってたから(笑)」

イロハ「(笑)じゃないわ! ちっとも誰かのために勇気をもらって戦ってないじゃん」

そうしているうちにカジノ側の白人従業員が間に入って「Upstairs うんちゃらこうちゃら……」と英語で一生懸命おれに説明しだした。私は頭に血が上っていたのでよくわからなかったが、どうやら上の階のテラスから階段を降りれば彼女のところに行けると言っているようだった。

イロハ「頭に血が上っているからじゃなくて、英語がわからないからでしょ?」

ハルト「うるさい。君を助けるために必死だったんだよ」

用心棒を蹴り上げずにおれは上のフロアへと走り、屋上テラスの外階段から下に降りるとイロハが夜景を見ていた。

イロハ「ハルト~。遅かったじゃない。見て、このきれいな夜景」

ハルト「ズルーッ!」

あまりの緊張感の落差に腰が砕けてしまった。こっちは決死の覚悟でカジノホテルの用心棒と睨み合ってまで、屋外テラスに締め出された彼女を救おうと必死なのに、彼女は自分ひとりぼっちでいることも知らずに、ただ夜景を楽しみ、ハルトが来るのを待っていただけでした。

イロハ「ね、一緒に写真を撮ろうよ」

たしかにリオ・オールスイートからの夜景はすばらしかったです。ストリップストリートはまぶしく輝き、ルクソールからは天を照らすサーチライトが上がり、パリスのエッフェル塔やストラトスフィアタワーが輝いていた。おれが世界で一番好きな街ラスベガス。函館の夜景も、神戸の夜景も、これにはかなわない。

しかし、写真のハルトがムスッとした顔をしていたことは言うまでのありません。

誰かのために、勇気をもらって戦うこと。私にもそれができました。

きっとあなたにも、それができますよ。

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