ドラクエ的な人生

モーパッサン『脂肪のかたまり』のあらすじ・書評・魅力・解説・考察

Tan Pra Maha Kajjana

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脂肪が厚すぎて北斗神拳が通用しないハート様みたいな人の話しかと思った。

ここではモーパッサン『脂肪のかたまり』の書評をしています。

北斗の拳に出てくるハート様(脂肪が厚すぎて北斗神拳が通用しない)みたいな人の話しかと思ったのですがぜんぜん違いました。

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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。

「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」

「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」

※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。

アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

Bitly

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あらすじ(ネタばれあり)

普仏戦争においてプロシア兵から馬車に乗って逃避行する人々。その中に太った売春婦がいました。彼女が通称「脂肪のかたまり」さんです。おデブちゃんなんですね。

逃避する人々が空腹の時、自分の食料をわけあたえるようなやさしい心をもった女性でした。そしてフランスの愛国者でもありました。

しかしプロシア司令官に「自分と商売(売春)しないと先に行かせない」と逃避行グループは足止めされてしまいます。

フランス愛国者の「脂肪のかたまり」さんはプロシア人に抱かれるのは嫌だったので断ります。すると周囲の人たちは自分が先に行きたいものだから彼女に強烈なプレッシャーをかけてきます。

「どうせ今まで相手かまわず客をとっていたんだから売春してたんだから誰に抱かれようと今さらじゃないか」

「あの女に客をえり好みできる権利はない。今になって妙に気取るな」

「プロシアの上官は支配者で誰でも力づくでものにできるのに、人妻には手を出さず売春婦ですますのはむしろ立派だ」

など。

自分からそうする気にさせたほうがいい、と狡猾な手を考える人もいます。ユーディットなどの故事をひいて、諭そうとします。

とうとう「脂肪のかたまり」さんは同胞たちのためにプロシア司令官に抱かれました。

彼女のおかげで逃避行一行は先へと進むことができました。しかし人々はプロシア人に抱かれた「脂肪のかたまり」さんに対して、恩義を感じるどころか、冷たく接し、軽蔑さえするのでした。

勝手な人間を描いた短編として評価の高い作品です。

物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

物語のあらすじを紹介することについて
あらすじを読んで面白そうと思ったら、実際に照会している作品を手に取って読んでみてください。ガイドブックを読むだけでなく、実際の、本当の旅をしてください。そのためのイントロダクション・ガイダンスが、私の書評にできたらいいな、と思っています。

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。

人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

偉そうに? どうして無名の一般市民が世界史に残る文豪・偉人を上から目線で批評・批判できるのか?
認識とか、発想とかで、人生はそう変わりません。だから相手が世界的文豪でも、しょせんは年下の小僧の書いた認識に対して、おまえはわかってないなあ、と言えてしまうのです。それが年上だということです。涅槃(死。悟りの境地)に近いということなのです。
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感想。「いいひと」と「人間のクズ」。戦時下で評価が逆転する

一般的に堕落と見られている売春婦が「いいひと」で、一般的に高潔と見られている逃避行グループの貴族たちが「人間のクズ」だったという作品です。

追い詰められた戦時下では人間の本性が剥き出しになります。

庶民が兵隊に対して文句を言います。

「あわれな国民の税金で養われているくせに、なんだって世の中の害になるために骨をおらなきゃいけないんだろう。せめて畑でも耕すか、道路工事でもすればいいのに。兵隊なんて誰のためにもならない。いちばん余計に殺したものが勲章なんかをもらってね」

ストーリー以内にも、ひとつひとつ小さなセリフに味があります。

短編で、簡単に読めます。ご一読ください。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

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