心の病は伝染病のように周囲に感染するのではないか、という仮説をたてた
知り合いの職場で「心の病」で1か月ほど仕事を休むという人が出たそうだ。
今は法律がしっかりしているし、職場の体制も福利厚生がしっかりしている。その人が心の病で休む一カ月は「病欠」扱いで、「有給休暇」のように給料も100%満額でるそうだ。
その話を聞いた時に、私はこう思った。
「いいなあ。おれも心の病でやすみたいよ」
いや、あなただって、そう思うでしょ?
そして思った。この心の病は伝染病のように周囲に伝播してひろがっていくのではないか?
心の病は病気扱い。医師の診断書が必要
「心の病」で仕事を休む場合、医師の診断書を提出するそうだ。医者が病気だという診断書を書くことで「たしかに病気である」ことがおおやけに証明されて、病欠扱いになる。だって病気なんだから休んだってしょうがないでしょ、という近代的で公明正大な理由がいちおうつけられている。
しかし休んだ人の業務を周囲が分担しなければならないので、心の病人が出ると周囲の負担が増えて職場の環境は悪くなる。
仮病? 盗塁成功、おめでとう!
その人物が「心の病」で長期欠場するまではこんな経過だったらしい。
「ああ、もう嫌だ。これ以上は無理」と職場では言い続けていたらしい。そしてある日、診断書を提出して戦線離脱したそうだ。たしかに突然休んだわけではない。「ああ、もう嫌だ。これ以上は無理」と職場で言い続けていたことでエビデンスもある。
しかしどうかなあ、と私は思う。
医師の診断書があるのに仮病というのは失礼かもしれないが、仮病で悪ければなんだか「盗塁」みたいなんだよな。リーリーリー! GO! みたいな感じがする。
やりました! 見事に盗塁成功! おめでとう! という感じがしてしまうのだ。
アニマルセラピー(ドッグセラピー)はどうか?
心の病なんて家にひとりぼっちでいても好転するわけがない。どこか自然の中で癒されて過ごすなどスペシャルな対処が必要なはずである。
病欠期間をどのように過ごしたらいいのだろうか?
飼い犬がセラピーになることもあるだろう。アニマルセラピーというやつだ。
しかし心が疲れているときにペットショップに行って数十万円する犬を新たに買うのは敷居が高いかもしれない。すでにペットを飼っている人ならいいが、新規に進めるのは難しいだろうな。
犬は十年以上生きるので、心の病がなおってからもなお飼い続ける覚悟がないとドッグセラピーは難しい。
「体をつかうこと」で「心の病」を撃退する対処方法
私だったら「体をつかうこと」で「心の病」を撃退するだろうと思う。
スポーツに熱中する時、脳ミソは運動機能の発揮に集中するから、後悔とか悔恨とか屈辱とかの仕事にまつわる感情から熱中すればするほど離れることができるからだ。
しかし「心の病」の人が近所の公園をランニングしている姿を職場の人が見たらどう思うだろうか?
「ランニングするほど元気があるなら、職場に出て来いよ」と言われそうである。「あいつは仮病だ」と間違いなく言われるだろう。
療養休暇中のパチンコはダメ。温泉は微妙なライン
心の病の人を抱えているのは職場としても大損害なはずだが、労働者の権利なのでいちおう有給での戦線離脱が認められている。いいよね、うらやましい。
しかし気晴らしにパチンコに行くのはアウトらしい。心の病の人にとってむしろ気晴らしこそ必要なはずだが、娯楽はダメなんですね。周囲の人に仕事をおっつけて、給料満額もらって休んでいるわけだから、倫理上認められないってことなんでしょう。
私だったら一カ月お休みがもらえたら、どこか自炊部のある温泉に行って泊まり込みで療養したい。心の病を癒すのに温泉ほど適当な場所が他にあるだろうか?
倫理上それは可能なのかと知人に聞いたら「温泉は微妙なところだ」という返事だった。温泉は療養といえば療養だけれど、娯楽といえば娯楽だから。
周囲がうらやむ系のことはダメなんだろう。心の病もたいへんだな。気晴らしこそ必要なのに、その気晴らしが認められないなんて。
結局、本当に心の病の人はただひたすら家で寝ているのかもしれない。
病根である現場から離れる、忘れるということが事態を好転させてくれるのだろう。
心の病の大半は「病は気から」の伝染病
ところで後日談。
この知人とまた話したところ、心の病の人は時間に治癒してもらい、職場に復帰したらしい。おめでとうよかったね。
ところが今度は別の人がまた「心の病」で療養休暇に入ってしまったのだそうだ。ほらね。だから言ったじゃん。心の病は伝染病で周囲の人にうつるって。
詳しく話しを聞いたらこういうことだった。
あたらしく新規に療養休暇に入った人は、仕事でミスをしてしまい、そのことでハードに苦情を言われたそうだ。そのことをきっかけに、それから来なくなってしまったということだった。
ほらね。だからさ、それは「盗塁成功」なんだってば。仮病といって悪ければ「病は気から」というやつですよ。一カ月後にはケロッと職場復帰するに違いない。
だいたい周囲で有給で一カ月も休んでいる人が「かわいそうに。病気だもんね」といたわられているのを見たら「私も休んでいいんだ」と思うに決まっている。「私も休みたい」と理由を探しているところに、向こうから小さなきっかけがやってくるんだから、もっけの幸いと職場を離脱するに決まっているじゃない?
だから心の病は伝染病だというのだ。あまりにも好待遇なのでむしろ「私も病みたい」とさえ思っているのだから。
知人の職場は、今後おそらく第三、第四の心の病の人が現れるに違いない。そして忘れた頃に最初の人がまた心の病になるに違いない。
だって心の病は伝染病だから。