旅先の「帰りたくない」「ずっとここにいたい」と思った場所
わたしにとってイタリアのカプリ島はそういう場所でした。
島のあまりの素晴らしさに、
「ああ。神様。どうにかしてここ(カプリ島)から離れずにすむ方法はないでしょうか。一生この島で暮らす方法はないでしょうか」
思わず神に祈ったことをおぼえています。
その後、わたしは島で転倒し、第三腰椎を骨折します。歩くたびに激痛が走るありさまで、あやうく島から出られなくなるところでした。
いや、神さま。確かにさっき一生この島で暮らす方法はないかとお祈りしましたけど、骨折して動けなくなって島から出られないから満願成就ってことじゃないんだよ。手に触れるものを黄金にしてくれと頼んだミノス王エピソードみたいなオチをつけなくてもいいじゃんか!
神にツッコみ、さっきのお祈りをあわてて取り消させてもらったことをおぼえています。
どうにかして暮らす方法はないものだろうか。
パリを去る時、去りがたく、泣きそうになりました。
なまじアパルトマンで部屋で自炊のようなことをしたものだから、去りがたくて去りがたくてたまらなかったです。
ああ。帰るのか。どうにかしてこの街(パリ)で暮らしていく方法はないものだろうか……。
と、またしても神に祈りそうになりましたが、カプリ島事件のことがあったので、祈るのだけはやめておきました。何が起こるかわかりませんからね。棺の中で永遠にパリにとどまったりして(笑)。
ローマ・パリ・ロンドンと三都周遊したときもそうでした。ロンドンでわたしはパリに戻りたくてしょうがありませんでした。ロンドン、まじでどうでもよかったです。それほどパリが好きなんでしょうね。
あれからパリには一度も行っていません。もしかしてあれがわたしのラスト・パリだったのでしょうか。そう思うと泣けてきます。
観光旅行がしたいんじゃない。そこで暮らしたいんだ。