ドラクエ的な人生

【実話】山の怪談。五竜岳の幽霊

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後立山連峰全山縦走の思い出

かつてわたしが後立山連峰全山縦走に挑んでいたときのことです。

全山といっても主語は日本百名山です。栂池高原、白馬岳から鑓ケ岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ケ岳から扇沢に降りたという山行日程でした。

日本百名山、全山登頂の難易度(百名山ハンターになる難しさ)

鑓ケ岳から唐松岳のあいだには不帰のキレットという難所があります。登山初心者向けのコースとはいえない難ルートではあります。なかなか厳しいルートだったと記憶しています。

その途中、五竜岳のあたりで、わたしはマボロシを見ました。もしかしたら幽霊だったのかもしれません。これは実話です。

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ひとりぼっちの登山道。孤独と不安。一緒に歩いてくれる同伴者がほしい。

土日で終わる旅程ではないので、平日、仕事を休んで山に行きました。平日のせいか、周囲に人は誰もいません。白馬岳唐松岳にはそれなりに人がいたのですが、五竜岳あたりまで歩いた頃には、周囲に誰もいなくなっていました。

わたしは予定よりひとつ先の山小屋にたどり着こうと無理をしていました。そして水の計算を間違えて喉が渇いていました。

そして孤独。はじめてのルートで、周囲に誰もおらず、霧のたつ高所にひとりで、とても不安を感じていたのです。

五竜岳の山頂を過ぎて、鹿島槍ヶ岳に向かうあたりでのことです。崖の上に座ってたたずむ登山ファッションの中年の男性の姿をわたしは見かけました。

ひとりぼっちで不安だったわたしは登山者を見てうれしくなりました。できればこの男性に追いついて、会話をしながらご一緒させていただきたいと思いました。

男性が座ってたたずんでいた崖とわたしが歩いていた場所とは結構な高度差がありました。かなり登らないと男性のいる場所には行けないのですが、なんとか歩くスピードをあげて追いつこうと思いました。もしも一緒に歩いてもらえないとしても、目のはじに人間の姿があるだけで、山での不安はぜんぜん軽減されます。つかず離れず歩けばいいのです。

ハアハア息を荒くして、わたしは男性のいるところまで必死で崖を登りました。崖を登っていく途中で男性の姿を見失いますが、鹿島槍ヶ岳への登山ルートは一本です。急げば必ず追いつくはずです。わたしは急ぎました。

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一本道の登山道なのに、男性の姿は消えていた。

ところが、わたしが崖の上に到達したときには、先ほどの中年男性はいなくなっていました。ルートを先を進んだのでしょう。五竜岳に向かうのならば途中ですれ違うはずです。あの人はわたしと同じ鹿島槍ヶ岳へと向かうルートに違いありません。わたしも急ぎました。とにかく不安で一緒に歩いてくれる同伴者がほしかったのです。

ところがかなりのスピードで歩いているにもかかわらず、どれだけ行っても男性の姿はありません。

ルートは霧に包まれていて見通しが悪かったのは確かです。それにしても道は一本ですから、こっちが必死に歩けばどこかで追いつくはずなのです。おかしいな、と思いながらも、わたしは必死に先の登山者を追いかけました。

わたしはトレイルランニングもやるサブスリーランナーだったので、先の中年登山者に絶対に追いつける自信がありました。その人の方が速くていつまでも追いつけないということがありえたでしょうか?

×   ×   ×   ×   ×   × 

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Bitly

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ところが案に相違してぜんぜん追いつきません。行けども行けども誰もいないのです。先ほど崖の上に座って空を眺めていたあの中年男性はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?

風が視界を塞いでいた雲を吹きはらい、雲が切れたとき、登山道が先々まで見通せました。そしてわたしは愕然とします。そこには誰もいなかったからです。

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あの中年登山者は幽霊だったのか? わたしが幻を見たのでしょうか?

鹿島槍ヶ岳までは一本道です。途中でいなくなるわけがありません。いつまでもわたしが追いつけないという可能性もあったのですが、ずっと先の登山道まで誰もいないとなると、あの中年登山者はいったいどこへ行ってしまったのでしょうか?

こつぜんと、消えてしまったのです。

わたしがマボロシでも見たのでしょうか? たしかに厳しい登山で追いつめられていて、低血糖状態だったと思います。よくトレイルランニングで極限状態になるとマボロシを見るといいますが、それだったのでしょうか?

それともあれは幽霊だったのでしょうか? あの場所で足をすべらせて滑落死した男性の。

幽霊が人の気配を察して消えてしまったのでしょうか。

今日にいたるまで謎のままです。わたしは無事に扇沢までたどり着き、公共交通機関で家に帰りました。

たしかにわたしは、雲の中、崖に座って空を眺めている登山ファッションの中年男性を見ました。しかし彼の顔は思い出すことができないのです。

これが五竜岳の幽霊のお話しです。すべて実話です。いっさいの創作はありません。

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