山梨県北杜市、移住体験記録
移住先として人気の山梨県北杜市で移住体験をしてきました。北杜市は八ヶ岳の裾野の街です。八ヶ岳はもちろん、壁のように巨大な南アルプスが目の前に聳え立つ山岳リゾート地帯です。だから基本的には避暑地、高原リゾートとして人には認識されています。本当に北杜市の良さを知るには夏が最適かなと思い、真夏に移住体験をしてきました。
市町村合併により、甲斐岳からの南アルプスの天然水で有名な白州、避暑地として昔は栄えていた清里、日照時間日本一の明野なども今では北杜市の一部です。
もちろん北杜市が移住先として人気なのは、夏に涼しく、水と自然が豊かだからですね。
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本書の内容
・「ユーミン主義(遊民主義)」→ 限りある時間の人生を、遊びながら生きていく方法。
・「プアイズム(ビンボー主義)」→ お金を使わないからこそ、人生はより楽しくなる。
・「新狩猟採集民としての新しい生き方」→ モノを買うという行為で、どこででも生きていける。
・「お客さまという権力」→ 成功者にも有名にもならなくていい。ただお客様になればいい。
・「スマホが変えた海外放浪」→ なくてよし、あればまたよし、スマートフォン。
・「強くてニューゲーム」 → 人生ゲームをもう一度はじめからプレイする方法。
・「インバウンド規制緩和」→ 外国人の感受性が、日本を自由に開放してくれるのだ。
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夏は家ごもり。夏はエアコンのある部屋で過ごすのが最善手
その結果ですが……暑い。しょせんは暑い。
北杜市役所の標高ですが、623mだそうです。気温は100mごとに0.6度下がると言われているので、私の住む千葉県に対して摂氏4度弱しか下がりません。関東地方が40度の時は36度あるということです。千葉が36度のときには32度。たしょう涼しくなっていますが、しょせんは暑いのです。涼しくてまるで別天地だというわけにはいきませんでした。
真夏を本当に涼しくてエアコンいらずで過ごすためには標高1000メートル以上が必要でしょう。そのぐらい高い場所ならば、北杜市でも涼しさを感じられました。たとえば清里駅の標高は1274メートルです。
今回、もっともお気に入りの場所となった「山梨県立まきば公園」の標高は1400メートルだそうです。さすがに涼しかったですよ。
市街地の北杜市役所あたりだと千葉県にくらべたら多少は涼しいのですが、肌を焼く太陽の凶暴さに変わりはありません。日焼けを嫌ううちの妻は、夏の外出に体力を奪われてバテてしまいました。そもそもそこが高原だろうと海辺だろうと夏にアウトドアアクティビティーを楽しもうという発想そのものに無理があるようです。
夏はエアコンのある部屋にこもる。これが日本の夏の正解の過ごし方かもしれません。
アラスカの人たちは、厳しすぎる冬は家ごもりするそうです。それと正反対ですね。日本人は、厳しすぎる夏は家ごもりするのが最善手なのでしょう。これが私の北杜市で夏を過ごした結論です。
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避暑地というのはエアコン以前の概念である
そもそも避暑地というのはエアコン以前の古い時代の概念であるという気がします。
たしかにエアコン以前だったら、暑くて湿気が高くて汗だくで何もする気にならない場所でうだうだしているよりは、思い切って避暑地に移動してしまえばそれなりに仕事も読書もできてクオリティーオブライフを高めることができたでしょう。
下界の40度近くある日本の夏の最中に、知的作業をするのはほとんど無理です。それは風呂場で本を読むようなものです。無理! 無理!
しかし今はエアコンがあります。エアコンほど簡易で効果のあるものはありません。エアコンさえあれば、そこで知的作業が可能です。避暑地よりも涼しく、効率的に。
家具備え付けマンスリーマンションに住むよりは、引っ越したほうがマシ
本当は夏だけ家具一式が揃っているマンスリーマンションに移り住むのがベストかと思っていたのですが、そのような賃貸の家賃は今住んでいるアパートの三倍ぐらいします。家具つきアパートは高いのです。
そんなに家賃を払うのならば、そのぶんを引っ越し業者に払って、いっそ完全に引っ越してしまった方がいいと考えていました。二拠点だと二重に家賃を払わなければなりませんが、完全に引っ越してしまえば一か所の家賃で済みます。
しかし完全に引っ越してしまった場合、夏のメリットと引き換えに冬のデメリットも引き受けなければなりません。
避暑地は夏が涼しい反面、冬は千葉よりもはるかに厳しくなります。千葉県で零度以下になることはめったにありませんが、北杜市の冬はマイナス10度ぐらいまで下がるそうです。豪雪地帯ではありませんが、それなりに雪も降ります。
どうでしょうか。北杜市に移り住むより、ぶっちゃけ千葉県でエアコンを使った方がいいのでは?
どんな避暑地もエアコンにはかなわない
どんな避暑地もエアコンにはかなわないとわかっていたことですが、あらためて自説の正しさを実感しました。
夏だけ避暑地に移住しようなんて考えは捨てて、今いる場所でエアコンを使った方がいい。それが結論です。
うちの嫁は魚が大好きなので、海なし県の山梨よりは、千葉県のほうが食材の面でいいそうです。魚の新鮮さでは山梨県は千葉県にはかないません。魚好きはやっぱり海近に住んだ方がいいですね。
食材といえば、北杜市には雨の日に中を散歩できるような超大型スーパーはありません。つまり雨の日には行く場所がないということです。
行く場所がないといえば、北杜市の夜は真っ暗です。もっともこれは北杜市だけでなく、日本の都市の特徴でもあります。日本の夜が早いのはなぜなんでしょう。政策なんでしょうか? それとも国民性ですかね?
日本にはサマータイムもありませんが、夏場なんかは夜に活動するようにすれば、多少涼しくて遊べるんですけどね。台湾のような暑い地域では昼よりも夜のほうが人手が多くて活気があります。
思ったよりも夏に涼しくなかったことから、期待外れだったのですが、それでもちょうどアパートの契約更新となる2年ぐらいなら、北杜市に住めるかなと感じました。
終の棲家とするのでなければ、人間どんな場所でも住めるものです。たとえば会社の転勤命令なんかで、そこに住まざるを得ないことだって世の中にはあります。そういう意味で私はぜんぜん北杜市に住めると感じました。
住む場所は靴のようなもの。いろんな靴を履いたほうが、気分も変わるし楽しめる
移住先を探すとき、究極の場所(終の棲家)を探す人が多いのですが、私はつくづくそんな場所はないのだと感じています。どんな場所でもしょせんは慣れます。そして飽きます。
終の棲家となるような究極のいい場所なんてものは、心の中にあるだけで、実際には存在しないのではないでしょうか。
私のようにヤドカリ賃貸族は、いっそのことアパートの契約更新期間の2年ごとに、これまでと全然違う場所に思い切って引っ越したほうが、思い詰めて一か所を探すよりもいいような気がします。どんな場所にもいい点と悪い点があり、2年間ならそれに我慢できますし、不足を楽しむことだってできます。
住む場所は、靴のようなものだと思うのです。究極の一足を選んでその靴をずっと履き続けるよりも、数年ごとにいろんな靴を履いたほうが、気分も変わるし楽しめるのではないでしょうか。ときにはサンダルで、ときには山靴で歩いてみたい。それが靴というものでしょう。それと同様に、ときには海辺で、ときには高原で過ごしてみたい。探しながら移動し続けることそのものが、楽しい棲家なのではないかと思うのです。
地球こそ我が家。そう言えるのは定住しないからです。北海道だとか北杜市の高原だとか、京都だとか九州だとか、究極の場所なんて幻想なのですから、探すだけ無駄です。終の棲家なんて探せないのですから、とりあえず気に入った場所にいつか去る人間として住むのが正解でしょう。
夏だけ移住とか、下手にじたばたしないで、諦めることが大事。日差しは日差し、日焼けは日焼けです。夏の暑さは避けられません。避暑地に移動するよりも、エアコンで家ごもりというのが正解だと感じました。

