ドラクエ的な人生

韓国は寒い国(スウェットよりもパーカー)

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外国のことは暮らしてみなければわからない

1年前、2月のソウルを旅したら、おそろしく寒かった。韓国に関してはド素人ではない。暮らしていたことがある。しかも人格が形成される人間にとって最も大事な時期を僕はソウルで過ごしているのだ。比喩表現でもなんでもなく、正真正銘の第二の故郷なのである。

1週間ぐらい旅行したぐらいで、その国のことが全部わかったみたいな旅行記を書いてしまう人がいるが、うかつなことだと僕は思っている。帰国子女である体験からも、その国のことは「暮らしてみなければわからない」と心底思うのだ。

世界中を放浪してきたが、韓国だけが特別なのは僕が「暮らしたから」に他ならない。他の国はちょっと通過しただけだ。書くことができるのは個人的な体験だけである。

昔、僕がソウルで暮らしていた頃は、川や池沼でアイススケートをした。個人的にやったのではなくて、ちゃんとしたスケートリンクが冬の間だけ設営されたのである。整氷されており、管理者もいて、もちろん有料だった。

夏の間は川や池沼である。まさに大自然のスケートリンクだった。ときどき氷に大きなヒビが入っていたり、氷がミシッと音をたてたりした。その時のことは今も忘れられない。

映画『銀河鉄道999』で謎の女メーテルが冥王星の氷の下に生身の肉体を冷凍保存しているというシーンがある。氷の世界の下を覗き込んでメーテルは涙を流すのだが、あのシーンでいつも僕は韓国の天然スケートリンクを思いだしてしまうのだ。

キム・ヨナがスケートリンクを縦横無尽に滑り回るのを見ても「この子も子供の頃は池沼のリンクで滑っていたのかな」と思った。

第二の故郷というのはこういうことなのである。自分の個人的な過去の記憶が、その土地の人々の過去の共通体験と結びついているのだ。

もっとも今では世界的に危機管理という意識が高まっているから、もう今では韓国でも大自然のスケートリンクなんてなくなっているかもしれない。

何か事故があったら政府に損害賠償を請求して金をせしめてやろうというアメリカ的訴訟意識が世界を覆っている。熱々コーヒーをこぼして火傷の損害賠償3億円もらえるんだったら、誰だって訴訟に踏み切るに決まっている(実際は数千万円で和解したらしいが、それでもセルフぶっかけするよね?)。

あの時、ミシッとヒビが入った氷が割れていたら、大惨事になっていたかもしれない。それほどワイルドなスケート場だった。忘れようたって、忘れられない。

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韓国は寒い国(フードは最強の防寒アイテム)

確かにソウルの冬は寒かった。ソウル日本人学校へはスクールバスで通っていた。冬にバスを待っている時、あまりの寒さに耳タブがちぎれそうに痛かったことを今でも覚えている。凍傷寸前だったのではないだろうか。大人になってから、あれほど耳たぶがヒリヒリ痛いほど寒い思いをしたことは一度もない。

日本に帰国したからである。

2月のソウルを旅するにあたって、ソウルの寒さを僕は忘れてはいなかった。あの時の耳たぶの痛みを思いだした。

もちろん2月は日本でも寒いが、ソウルの寒さはイメージ以上だった。マイナス10度を超えていた。眼球の表面の涙が凍ってしまいそうだ。あまりの寒さに頭が痛くなる。

日本では経験しないような寒さである。たまらず僕は東大門市場で厚手のパーカー付きジャケットを購入した。これで何とか旅をしのいだ。このジャケットは日本では売っていないような変わったデザインの厚手のものであり、たいへん気に入っている。

冬のソウル旅をしのぐことができたのはこのパーカータイプのジャケットのおかげだ。ソウルでは頭痛がするほど頭が寒かった。耳たぶが冷たくなった。首をすくめるほど寒かった。不快な寒さからパーカーが旅人を守ってくれたのである。

この体験から最強の防寒アイテムはパーカーではないかと僕は思っている。

首の後ろに延髄といわれる脳幹の一部がある。自律機能を直接制御している部位であり、血管を収縮や拡張させる血管運動の中枢を担っているとされている。

市民ランナーのトップクラスで競技をしていた頃、意識が朦朧としてくると延髄に水をぶっかけた。すると意識がシャキッとしてゴールへの意志が戻ってくる。延髄をすこし濡らすのは仕事中眠くなった時にも効果がある。暑い時、延髄を冷やすだけで涼しくなったと人間は錯覚してすこし楽になるのだ。そういうアイテムが今は売っている。

逆に寒い時は延髄を暖めただけで暖かくなったと錯覚して楽になるのだ。首にマフラーを巻くのはその効果を利用しているためである。上着を一枚切るよりもマフラーを首に巻いた方が暖かく感じるのはそのためである。

マフラーは頭頂部が剥き出しなのが欠点といえば欠点だ。耳たぶも寒い。巻き方次第でカバーできるが。

逆に防寒ニット帽は耳たぶと頭を寒さからガードしてくれるが、いちばん肝心な延髄が剥き出しである。

この点、フードは最強だ。延髄から耳たぶ、頭頂部まですべてカバーしてくれる。とくにパーカータイプは旅先ではありがたい。マフラーもニット帽も着脱して持ち運ばなければならない。

ただでさえ旅先ではパスポートなど余計な荷物を持ち歩いている。韓国ソウルの冬の旅など寒い室外、暖かい室内の延々繰り返しである。そのたびに着脱するのは面倒この上ない。パーカーだったら後ろに外すだけである。手を塞いだり落としたり失くしてしまうこともない。

野球帽ほどではないが、日焼け防止にもなる。砂漠のジュラバみたいなのは日よけの帽子なのだ。延髄が日焼けするとバテることはアスリートなら知っておいて損はない。

 ジュラバというのはスターウォーズのジェダイの騎士が被っているフード付きの外套だ。モロッコ人がよく着ている。口の悪い日本人はモロッコには「ねずみ男」がたくさんいると言って喜んだりするのである。

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スウェットを持っていくならばパーカー。それがバックパッカー流だが。。。

昨年2月のソウルの旅はあまりにも寒かった。その時、パーカーに助けられたことから「フードこそ最強の防寒アイテム」だと認識した。それ以来、旅先にスウェットをもっていくぐらいだったらパーカーを持っていくというのが旅人としての基本スタンスとなった。

フードがあればちょっとした雨の不快さもしのげる。ニット帽では髪型が潰れてしまうがフードならばそれほどペチャっと崩れたりしない。

パーカー最強である。

そのような認識で今回のソウル旅行にのぞんだため、着るもの着るもの全てにフードが付いていた。

今年のソウルも雪が降るほど寒かったため、たくさん重ね着をしたのだが、着るもの着るもの全てにフードがついていて、結果、フードが3重4重にもなってしまった。

頭に被っているときはまだいい。暖房の効いたショップの中でフードを脱ぐと首の後ろに3重4重のフードが重くのしかかってくる。

く、首が重い…。

まるでジャミラか、ノートルダムのせむし男のようだ。そのためにすれ違った韓国美人にクスっと笑われてしまった。

しょうがねえだろ。これしか着るもの持ってないんだから。地元じゃないのよ。昔、住んでたけど。今は旅人なの!

パーカーを愛する旅人スタンスを貫こうとするあまりに、持参した服がみんなフード付きになってしまった。いかにパーカーを重宝しているとはいえ、やはり服装はコーディネートがたいせつらしい(笑)。

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旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。

【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●韓国帰りの帰国子女の人生論「トウガラシ実存主義」人間の歌を歌え

韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。

「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。

帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。

Bitly

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