どうもハルトです。みなさん今日も楽しい旅を続けていますか?
ロンダニーニのピエタと呼ばれる作品をご存知でしょうか。
あのサンピエトロ寺院の「この世のものとは思えないピエタ」を彫ったミケランジェロの最後の彫刻作品といわれるものです。
サモトラケのニケとならぶ世界双璧の彫刻ではないかと思います。
ピエタというのは、十字架から降ろされたキリストの亡骸を抱く聖母マリアの像のことを意味しています。
つまり個別作品名ではなく、他にもピエタと呼ばれる作品はたくさんあります。「十字架のキリスト」みたいなタイトルだと思っていいでしょう。
多くの人がガッカリして、見なかったことにして、足早に通り過ぎていくその彫刻の前で、私はしばし佇んでいました。私が感じていたのは、言葉にすれば次のようなことです。
「天才も老い、すべては未完成に終わるのだなあ」
腰が曲がって、鑿を振るう力もなく、視力を失いながら、病に倒れる前日まで彫り続けたと言われるミケランジェロの遺作ですが、、、悲しいほどに不出来です。そして悲しいほどに未完成です。
並みの彫刻家ならばここまで悲しくなることもありません。
あのミケランジェロだから、悲しいのです。若き日に「神がかった作品」をつくった人間が、人生の最後に、こんなものしか作れなかったのか。
そんなことを思いながら彫刻と向き合っていました。
時間が足りない。それが人生。未完成でもそれが人生。
ゴッホのように無名のまま死んだ芸術家とは違って、ミケランジェロは生前からすでに芸術家としての富と名声を手にしていました。何も無理してこの作品をつくらなくてもよかったのです。それでもミケランジェロが死の前日まで鑿をふるっていたということが、後世の私たちに何かを伝えてきます。
命を賭けるということ。それが生き方。魂を込めるということ。それが作品。老いても。かつてできたことが、できなくなっても。成功とか不成功とかではなく、情熱が赤く燃えるから、つくることをやめられなかった。出来とか不出来とかではなく、衝動が抑えきれないから、力を振いつづけた。鳥が空を舞うように、思いは果てしなくさすらう。命ある限り。天に召される日まで。力尽きるまで。
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