学研の「ひみつシリーズ」で育んだ世界に対する憧れ
わたしが幼いころ、親が学研の「ひみつシリーズ」というマンガを買い与えてくれました。
これは「××のひみつ」という半分勉強みたいなマンガでした。
この本でわたしはいろいろなことを勉強しました。
そして世界に対するあこがれのようなものを涵養したのです。
たとえば世界の頂上エベレストを見てみたい、とか。
たとえばグランドキャニオンを見てみたい、とか。
たとえばリニアモーターカーに乗ってみたい、とか。
たとえばピラミッドを見てみたい、とか。
学研「ひみつシリーズ」で育んだいろいろな夢をたくさんかなえてきました。
そんなわたしが幼いころに「見てみたいなあ」と憧れていたもののひとつに世界最大の花、ラフレシアがあります。
ラフレシアを見てみたいなあ、はるか昔にわたしはそう思ったのでした。
世界最大の花=ラフレシアだけは見られない。
ラフレシア、世界最大の花。みなさんも知っていますよね。東南アジアやインドネシアあたりに咲くという赤い花です。
わたしは何度もこの地域に通っていますが……一度もラフレシアを見たことはありません。常に意識しているのですが、とうとう今までラフレシアを見る機会はありませんでした。
ラフレシアは植物園などで咲いている花ではありません。森の奥に自生している花で、人工的な繁殖にはまだ成功していないようです。
咲くまでに二年、咲いたら枯れるまで三日だそうです。たった三日で黒く腐ったようになってしまうのです。
腐ったといえば、ラフレシアは虫媒花でハエをおびき寄せるために腐ったような悪臭を放つそうです。その臭いを嗅ぐことも含めてラフレシアに出会いたい……。東南アジアに行くたびにわたしはいつもラフレシアを意識していました。
しかしボーッと歩いていて出会えるような花ではないのです。ラフレシアを見るためにはわざわざジャングルの奥地に出向かなければなりません。
※ちなみにラフレシアの語源は、シンガポールスリングで有名なラッフルズ・ホテルのラッフルズから来ているそうです。
このネット時代にラフレシア開花情報ないとは! アプリつくれよ。
わたしが本気でラフレシアを狙っていったのはコタキナバルでのことです。
悪夢を見て、自殺を考えた夜(ダイヤモンドヘッド232mに登れなかった女のキナバル山4095m登山挑戦記)
キナバル山に登るために、コタキナバルからかなり山奥のジャングルまで行きました。そこはラフレシアの生育地でした。今こそチャンスです。
しかし、現地の人にラフレシアについて尋ねると、ラフレシアの開花情報は「ラフレシア・ハンター」みたいな現地の人だけが知っていて、見る場合にはその人と連絡を取る必要があるということでした。
そしてその人にラフレシアの場所を案内してもらい、世界最大の花を観賞したあとに、手数料を払う必要があるそうです。
古色蒼然としたビジネスだと思いませんか?
もちろんラフレシアの生息地はジャングルの奥地ですが、そこに住む人々はもはやみんなスマホを持っています。昨今、シリア難民ですらわたしよりもいいスマホを持っています。
そういう意味で世界に目立った貧富の差はなくなりました。均一化すると、つまらなくなりますよね。みんながスマホを見て、アメリカンポップスなんかを聞いています。
でも「ラフレシア・ビジネス」だけは、今でも昔ながらの電話でディーラーに問い合わせるシステムで動いているようでした。
このネット時代にラフレシア開花情報ないとは! アプリつくれよ!
いくらなんでも行ってみなければラフレシアを見られるかどうかわからない、では不確実すぎます。その不確実さに欠けて旅程の短い旅人はわざわざジャングルの奥地まで行かないと思います。
それもこれも情報量がすくないせいです。個人が開花情報を抱え込んでしまっているからです。
もっとオープンな情報にして、たくさんの開花情報がネット上に上がれば、たくさん咲いているうちのどれかひとつは見られるだろうと、ラフレシア鑑賞旅行にチャレンジする旅人があらわれるはずです。
ところが今のところラフレシア・ビジネスはラフレシアの開花情報もディーラーの独占ならば、そのディーラーの連絡先もネット上にはありません。観光業に勤めているようなそれなりの人に聞かないとディーラーに連絡さえできないのです。
ラフレシアは麻薬か? まるで違法ドラッグを扱っているかのように情報が秘匿されているのです。
これではほとんど見ることができなくて当然ではないでしょうか。
せっかく三日しか咲かない世界最大の花の開花情報を個人で秘匿したりしないで、オープンに公開すれば、多くの人がジャングルのトレイルに足を運んで、結果として今のシステムよりも儲けることができるのではないかと思います。
それが時代の趨勢ってものですぜ。ラフレシア・ビジネスマンのみなさん。