詐欺か? 騙されているかと疑ったら、自分の中のコモンセンス(常識感覚)を使え
世の中には愛されキャラの人っていますよね。うらやましいです。
しかしわたしはどっちかというと嫌われキャラです。自覚しています。
しかし……嫌われ者にも言い分ってものがあります。
ここではなぜ私が嫌われるのか。どうしてこんな人間になってしまったのか。それを分析してみましょう。

嫌われ者の言い分を聞いてくだされ
サジー・ジュースには、200種類のビタミン、ミネラルが含まれているって本当ですか?
デパ地下を歩いていたら、試飲がありました。濃いオレンジ色の液体です。これはサジー・ジュース。
売り子さんが「サジーは酸っぱいけれど栄養満点です。、ビタミン、ミネラル合計200種類が含まれています」と言いました。

へええ~。すごいね~。そんなに栄養あるんだ~
こういうむじゃきな妻はみんなから愛されています。いいねえ!
ところが私は気になってしまうんですな。その言葉の間違いが。

えっ? なんかおかしくない? そもそもビタミン、ミネラルすべてを合計しても200種類もないのでは?
私の中のコモンセンス(常識感覚)がビンビンに反応します。
この感覚は名探偵が、犯人の嘘を見抜いたときの感触に近いかもしれません。

あんた、間違ってるよ!?
だって、よく考えてみてください。ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC……とたくさんあるように思いますが、アルファベットは合計26文字しかありません。ぜんぶ使ったって26個しかないのです。でもビタミンYとかビタミンZなんて聞いたことがありません。そんなのはないんでしょう。ビタミンB2とかっていうのは聞いたことがありますが、ビタミン200というのは聞いたことがありません。そんなのはないんでしょう。
ミネラルも同様です。ミネラルというのは微量元素のことでしょう。カルシウムとかナトリウムとか鉄とかそういった類のやつです。でも中学生の時にならった元素周期表ってあるじゃないですか。スイヘーリーベーってやつ。元素は合計118個しかないんですよ。ウランとかプルトニウムとかヤベエやつを含めて118個です。

サジーにプルトニウムが含まれているわけないでしょう? もし含まれていたらイランが大量生産して濃縮してるわ!
ざっと頭の中で計算しても、最大144種類以内に収まっていなければ、おかしいのです。ここまで読んできたみなさんは、たかがサジージュースの売り子さんの売り文句に何を小賢しいことを言っているんだと思うかもしれません。そういう人はきっと私のことが嫌いでしょうね。
でもね。気になるんですよ。名探偵としては。コモンセンスをきちんと働かせていたら、「ビタミンミネラルあわせて200種類」というのは、すぐにおかしいってピンとこなきゃ。
納豆をかき混ぜると栄養が増すって本当ですか?
こういうコモンセンス系のエピソードは他にもあります。
たとえば世の中には「納豆をかき回すと、栄養が増える」という人がいます。YouTubeとか、ブログとか、そういう主張をしている人がたくさんいます。
たしかに納豆をかき回すと、ねちょねちょと糸を引いて、粘り気が増して、いかにも栄養が増したように見えます。しかし、ちょっと待ってください。

かきまわしたぐらいで、新しい栄養素が誕生するなんて、物理学的に言っておかしくない?
はい。こういうことを言うから私は嫌われるんですね。
物理学では、無から有は生まれないということになっています。物質不変の原則です。

箸で100回ぐらい攪拌したところで、新世界(新栄養素)が誕生するわけがないじゃないですか。新しい物質が外から入ってくるわけじゃないし、箸に触媒作用なんてないでしょうし。
あはははは。また、嫌われたよ。でもね。正しいのは私のほうなんだよ。
正論を言っているのに、間違っている人たちが「なんかナマイキ!」みたいな感じで無視してきたりするんですよ。世の中って。
嫌うのは相手の勝手だけれど、このような明白な誤謬に対して何の責任もとらないんですかねえ。間違いは指摘するなっていうんでしょうか?

いったいどっちが間違っているんでしょうか?
騙そうとしてくる奴らを見抜けるのは、自分のアンテナだけ

なんで私はこのように、コモンセンスを働かせて人に嫌われるようなやっかいな人間になってしまったのでしょうか?
私は長くバックパッカーとして旅を続けてきました。バックパッカーの長年の習性で、こうなったのかもしれないな、というのが一つの仮説です。
世の中には詐欺師が多いんですよ。旅行者を騙して金をむしり取ろうというやつらが世界にはたくさんいます。でもね。現地の物価も、常識もわからないと、相手の言葉が正しいかどうか判断がつきません。
騙そうとしてくる奴らを見わけられるのは、自分のアンテナだけです。それに自信がなかったら、何を指針に行動すればいいのでしょうか。行動の指針は、自分の中のコモンセンス(常識感覚)です。それしかありません。なんかおかしいな、というコモンセンスのアンテナを働かせないと、詐欺師の詐術にぜんぶ引っかかってしまうでしょう。
このアンテナがビンビンに反応しすぎるせいで、私は嫌われキャラなのでしょう。何かがおかしいってことを言わずにいられないのです。わかっていながらも騙されれば人に愛されるとしても、それをする気にはとうていなれません。

なんかおかしくない? っていうことが、世の中には多すぎるんだ
もっと鷹揚に、すべてを受け流すような、そんな人間になれればいいのですが。

聡明なネズミも、愚鈍なクジラにロマンで負けるっていう境地ね

それはおれの書いた小説の一節だろ!?

👆 「聡明なネズミも、愚鈍なクジラにロマンで負ける」は、本書の台詞です。

こういう本をおれが書けるのも、自分のアンテナを持っているからなんだろうけどね。
