ドラクエ的な人生

『バトル・ロワイアル』クラスメイトの殺し合いは何かの比喩。人生の縮図

ずっと読もうと思っていた高見広春バトル・ロワイアル』を読了しました。読み始めたらあっという間でした。ものすごく面白かったです。世の中に人を殺すシーンがある小説はありふれています。だからそこに興奮したわけではありません。それなのにどうしてこんなにわたしは『バトル・ロワイアル』に興奮したのでしょうか。

「走るぞ! せいいぱいでいいから走れ!」

殺人フィールドに放り出される時、中川典子に、秋也がかけた最初の言葉です。

そして物語の最後にもこの言葉が繰り返されます。

「走るぞ! せいいぱいでいいから走れ!」

最初っから最後まで主人公・七原秋也は走り続けていたのでした。

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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。

「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状を打破し、自己ベスト更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」って何?
●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム?
●ピッチ走法よりもストライド走法! ハサミは両方に開かれる走法。
●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
※カルペ・ディエム。この本は「ハウツーランニング」の体裁をした市民ランナーという生き方に関する本です。あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。

Bitly

星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。

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深作欣二監督・藤原竜也主演の映画『バトル・ロワイアル』

多くの人がそうだと思いますが、わたしも深作欣二監督・藤原竜也主演の映画『バトル・ロワイアル』を先に観ており、およその内容は知っていました。

ここで書いているのは、その原作のことです。映画版になると脚本家がいらぬ個性を発揮して、小説とは違った作品になってしまうことが時々ありますが、深作版はほとんど高見版原作と内容が変わっていません。

それだけ高見版原作の完成度が高いということです。深作監督が天才だったから映画が面白かったというわけでもないということが原作を読んではっきりしました。もともと原作の出来がよかったのです。

インターネットをまだインタネットと表記している時代の作品です。1997年3月には脱稿していたそうです。英語をカタカナに直す時には表記が難しいのですが、今どきの書き手でインタネットと書く人はまずいないと思います。現代の書き手なら100%インターネットと書きますよね。そんな時代に、マッキントッシュのパワーブック150を駆使して政府のコンピューターをハッキングする中学生たちが喫煙しながら殺し合いをするという内容です(笑)。やるね!!

原作小説は「問題作すぎる」として受賞を拒否され、深作映画はR-15指定になりました。みんな映画をリアルに考えすぎなんですよ。フィクションなんだから。何かの比喩かもしれないと思って楽しめばいいのに。

鬼滅の刃』だって人(鬼)を殺しまくっているじゃないの。他の作品はいいのに、どうして同級生の殺し合いだとまずいのでしょう?

鬼というのはだいたい何かの比喩です。かなわない相手とか、圧倒的な権力とか、不条理とかの比喩としての鬼が存在しています。それと同様、同級生が殺し合うというのも、たとえば受験戦争の比喩だと思えばいいじゃないの。フィクションなんだから。

創作、フィクションというものを、ノンフィクションとかルポルタージュとして読んでしまうから、青筋を立ててしまうんだと思います。「フィクション」というのは表現を物語に構成して昇華したものなんですよ。

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人を信じられなくする、団結できなくする……それがゲームの目的

「今日は、みなさんにちょっと、殺し合いをしてもらいまーす」

独裁者がおさめる全体主義国家ではバトルロワイヤルというクラスメイトによる殺し合いゲームがおこなわれていました。生き残るのはひとりだけという殺戮ショーを開催するのは何か意図があるはずです。

結局、本作の最大の問題点は、中学生の殺し合いというのがセンセーショナルだったからでも、子どもたちが「真似」することを恐れていたからでもないのではないか、という気がわたしはします。

受験戦争の比喩ぐらいで解釈できれば、クラスメイトの殺し合いも、さほど問題にならなかったはずです。アニメ『暗殺教室』でも勉強を暗殺(武力行使)にたとえる比喩的表現が使われています。

どうして同級生同士の殺戮ショーが毎年行われるのでしょうか?

それは「まるで太平洋戦争に勝ってしまった大日本帝国」みたいな国が、この殺戮ショーを、独裁国家を維持するために利用していたというところが、支配層のオトナの無意識を刺激したのではないかと思います。まるでローマの独裁者がコロシアムで殺戮ショーを見せて市民の留飲を下げて支持を得ていたように。

クラスメートが殺し合う映像を見れば人々は、

「最後は誰も信じられない、みんなそう思っただろ? そしたら、力をあわせてクーデターを起こそうなんて誰も考えなくなるだろ、ん——?」

人を信じられなくする、団結できなくする……そうすることで政府に反抗する人たちの意志をへし折ることが、このゲームの真の目的でした。

深作映画では、北野先生の「子供が大人をバカにするな」という寂しさが描かれていましたが……高見原作ではあくまでも全体主義国家が組織の存続のために、個人の自由を圧迫してきます。

この構図は現代でもいたるところで目にすることができます。『バトル・ロワイアル』はそういうものの比喩だと思えばいいんですよ。

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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。

「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」

「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」

※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。

アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

Bitly

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受験戦争のたとえ・比喩と見ることもできる

今はあまり聞きませんが、わたしの学生時代には「受験戦争」という言葉がありました。

奨学金を得るためにはクラスでトップの成績をとらなければなりません。そこにはたたかいがあります。トップというのは相対的なものであって、相手次第だからです。

受験に合格するためには全国の同級生にテストの点数で勝たなければ望んでいる場所(大学)へ行くことができませんでした。そこにはたたかいがある、ということが前提でした。だから「戦争」なんですね。

武器をとって戦うシーンは、問題集とペンをとって戦う受験シーンの比喩だと考えることもできます。

「ひどいルールだと思うかもしれませーん。しかし思いもかけないことが起きるのが人生でーす」

担任の坂持金発は言います。実際に武田鉄矢さんに出演依頼に行く話しもあったそうです(武田鉄矢さんは依頼を断ったと思いたいですね~。アウトレイジな北野武でよかった~~。この役を武田さんがやっていたら金八先生のイメージが一発で変わっちゃうからね)。

殺し合いに支給される武器はそれぞれが違っていました。最強武器はマシンガン、手りゅう弾。ひどいのになるとブーメランなんていう武器までありました。

不平をいう生徒たちに坂持先生はいいます。「不公平なのは最初からでーす」

わたしもそう思います。人生ゲームだって同じ。最初から不公平です。

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国際情勢の比喩だと読むこともできる

「目の前にいるこいつはもうやる気になっているのではないか」

突然、目の前で二人のクラスメイトを殺されて、このゲームが「マジ」だと思い知らされた同級生たちは、恐怖に震えながら、互いに疑心暗鬼になります。

「昨日までみんな友だちだったのに、……殺し合うのね」

人を傷つけたりしない、といくら自分が決意していても、相手が襲い掛かってきたら応戦しないと殺されてしまいます。バトルロワイアルとはそういうゲームでした。

どうでしょう。あるいは『バトル・ロワイアル』は国際情勢の比喩だともいえそうです。自衛隊なんかいらないという人もいますが、中国や韓国が一方的に攻撃してきたら応戦しなければ殺されてしまいます。

「みんなのこと何も知らないわ。ほんとはどんな人なのか」

わたしたちは隣国の中国や韓国のことを、ほとんど何も知りません。どんな行動原理で政治がおこなわれているのか? それは現代日本の行動倫理とはすくなくとも違うようですが。

「わかる必要なんてないんだ。とにかく相手が自分に武器を向けたら容赦するな」

日本という国は「言霊」(ことだま)の国なので、口に出すと実現すると信じられています。だから「大災害が起こったら」とか「東京オリンピックが中止になったら」とか「中国が領土をかすめ取りに来たら」とか、緊急事態のことを口に出して議論できないところがあるのです。「縁起でもないこと言うんじゃない」とたしなめられます。

この国の危機管理が甘いのは「言霊信仰」のせいです。「縁起でもないこと言うんじゃない」と言われたら相手は宗教的な迷信によって思考停止させようとしているのだと自覚して、ただしく危機管理すべきでしょう。

『バトル・ロワイアル』は問題作ですが、問題作であればあるほど「何かの比喩」としておおいに学べるテキストに化けるのです。

こういう作品を「問題作」といって圧殺すべきではありませんでした。

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バトルロワイアルは人生の縮図。疑心暗鬼になる殺し合う生徒たち

「誰も信じられなくなったら、あたしたち、負けるんだわ。」

そんな風に感じる子もいます

「ろくでもない。こんな状況で誰かと一緒にいるなんて、そんなやばいことはない。」

「誰が敵かわからないんだ。ヘタに誰でも仲間に引き入れたら痛い目に合うじゃ済まないぞ。」

クラスメイトを信じたいけれど、自分の命がかかっているから、そう簡単には信じられない。

「怖いから相手が自分を殺そうとしていると思い込んじゃうから、戦おうとするんじゃないかと思うんだ」

「恐かったから、すごく怖かったから、襲い掛かってきたんじゃないかな。」

「人を信じたいわ。そうしなければ、きっと何もかもダメになる。きちんと話しかけたら、みんな戦うのをやめてくれるはずよ。」

「みんなーっ。聞いてーっ。お願いーっ。ここまで来てーっあたしたち二人でいるのーっ。戦う気なんかないわーっ」

そう人を信じて、クラスメイトに呼びかけて、居場所がばれて殺されてしまった子もいました。

「誰かを愛するっていうのは、別の誰かを愛さないっていうことだ」

中学生にしてはシュールすぎる意見をいう子もいます。

恋人を裏切ってでも生きのびようとする子もいました。

「あなた、殺されかけてたのよ。助けてあげたんじゃないの。」

恋人に殺されるなら仕方がないと思った子もいました。わたしは、心中する。

「じゃあ——すれば?」誰かが言った。やさしい言葉は騙すためのウソでした。

殺し合いを避けて、自ら不条理なゲームを退場しようとする人もいました。自殺するってことです。多くのクラスメイト同士の殺し合いを見た後では、この生き方が見事だったとすら思えるのです。

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国外脱出の夢

「何かがおかしいと感じても何も言い出せないはずだ。おまえたちだって自分の生活の方が大切だろ?」

国家への反抗的な態度には、銃弾の回答が返ってきます。

「こんな国は捨ててどこか別のところへ行ってしまうことだ。」

ここではないどこかへの脱出がひとつの希望として提示されます。でもとりあえずこの殺戮ゲームの開催地の島から脱出しなければなりません。

この国でほんとうに美しくあろうと思ったら、生きていられないよ。

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栗山千明が演じた千草貴子は原作キャラのまま

深作映画『バトルロワイアル』には印象的なキャラクターが何人も登場します。そのうちのひとりが栗山千明さんが演じた千草貴子です。クラス一の美少女にして陸上部のスプリンター。彼女は映画オリジナルの登場人物ではありません。原作そのままのキャラクターでした。

「試合だと思うことにしたんだ、おれは、これを。」

クラスメイトが自分に襲い掛かってくる。死ぬのか? あたしは、死ぬのか?

「あたしはあんたを信用できない。あたしはあんたと一緒にいたくない。でないとあたしは、あんたを、あたしを殺したがっているものとみなす。」

「相手になってあげる。あたしの全存在をかけて、あんたを否定してあげる。」

栗山さんの鬼気迫る演技でした。映画では、レイプしようとした同級生の陰部をナイフで刺します。

原作小説ではペニスを刺すのではなく、眼球を割ります。男としてどっちが嫌かなあ。どっちも嫌すぎて結論だせません。眼球? ペニス? 腕一本の方がまだマシだな。

しかしここは映画版の脚色に「勝ち」をあげたいところです。栗山さんの演技はとても印象的で、後にタランティーノ監督の映画でオマージュ再現されました。

しかし繰り返しますがそれほど千草貴子は原作キャラと離れていません。ほぼ原作と映画は同じキャラクターでした。

「ちょっとだけ抱きしめてて。すぐ……終わるから」

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柴咲コウが演じる相馬光子も原作キャラ

深作映画『バトルロワイアル』に登場した印象的なキャラクター。そのうちのひとりが柴咲コウさんが演じた相馬光子です。中学生なのに売春などしていて、色気を武器に男子を篭絡する不良少女。彼女も映画オリジナルの登場人物ではありません。原作そのままのキャラクターでした。

あたしは奪われるよりは奪う側に回ろうと思っているだけよ。

光子は人生に空虚なものを感じているキャラクターでした。このゲームでも大人しく殺されるよりは、積極的にゲームに参加しようとした「ゲームに乗ったクラスメイト」のうちの一人でした。

虚無の人生観から次々とクラスメイトを殺していくさまも衝撃的でしたが、最後のゾンビシーンも衝撃的でした。このゾンビシーンも映画オリジナルではなく、原作の再現でした。死んだと思われても、なお最後に再び立ち上がって光子は戦います。

どうでもよかった。あたしは、正しい。絶対、負けない。光子の腕に力がこもり、銃が持ち上がった。

それでも、光子は、にやりと笑ったのだった。

強烈な印象を残した光子も原作キャラでした。

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いいキャラにいい役者。塚本高史。高岡蒼佑。安藤政信。

塚本高史が演じる三村信史も原作キャラ

マッキントッシュ・パワーブック150という16MHzのCPU(今から見るとかわいそうなほど低スペック!)でハッキングして、政府に立ち向かう。「第三の男」三村信史も強い印象を残したクラスメイトでした。三村を演じたのは塚本高史。

その程度の友人としてつき合うことを決めた。

「だめだ。早く消えてくれ」

信じている相手に信じてもらえなかった。

もう、俺はバスケットはできないな——足先を銃で吹っ飛ばされて

高岡蒼佑が演じる杉村弘樹も原作キャラ

ドラゴンレーダーみたいな位置特定装置で好きな人を探し続けた杉村弘樹も印象的なキャラクターでした。

杉村を演じたのは高岡蒼佑。

「おまえを助けてくれる。わかったか?」

「俺はおまえが好きなんだ。」

「それは本当なの? だとしたら——あたしは一体、何をしたの?」

安藤政信が演じた桐山和雄も原作キャラ

クラスの中でもっともスペックが高い不良。主人公の最大の敵。ゲームに乗って、最強の殺し屋になってしまった桐山和雄も印象的でした。相馬光子をはじめ、クラスメイトをいちばん殺したのは桐山でした。

桐山を演じたのは安藤政信。

映画『バトル・ロワイアル』で忘れられない主要キャラクターを演じた役者たちは「(中学時代を演じた子役の)これ一作」で消えずに、その後も俳優として目覚ましい活躍をしています。

深作映画のもつパワーはこういうところにも現れています。

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山本太郎が演じた川田省吾も原作キャラ

そして副主人公ともいうべき印象的なキャラクターが、山本太郎さんが演じた川田省吾です。川田は人づきあいが悪そうだったのに、なぜか秋也たちと一緒に生きのびるために一緒に行動をしてくれます。そして最後には一緒に島を脱出してくれます。秋也たちが生き残れたのは、川田のおかげでした。

「なあ、川田さ。いつか、三人でこうやってお茶飲もうぜ。」

「どうしようもないことを気にするな。できることをやるんだ。」

「おれはじゃあ殺されることにします——とは思えなかった。やるべきことがあった。そのために、死ねなかった」

「このゲームには異議がある。」

「何かやるんなら、手伝わせてくれ。」

「すてきな女の子を見つけたら、その子を口説いて、その子と愛を交わして。」

俺たち、せっかく友だちになったじゃないか。おまえがいないと、寂しいよ。

川田は、随分長いこと黙っていた。

「さささよならならだ」

「いい友達ができてよかった」

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「最後まできみと一緒にいる」モテすぎ七原秋也

そして主人公。藤原竜也が演じた七原秋也です。まあとにかくクラスメイトにモテすぎなのが秋也です。

クラスメイトの女子21人のうち七原秋也を好きな子が6人。好きまでいかなくても好意をよせる子はもっといました。こんなモテモテで、しかも男たちからも信頼があついなんて……チートか!?

「俺は、あんたは敵じゃないと思う。」

「少しでも疑うようなことを言って済まなかったよ。握手だ。最後まで一緒だぜ」

自分は人を殺したのだ。それも昨日まで仲間だったクラスメイトを。

“妬いてたかもしれないよ”。典子はまたきっと”うそ”と笑うだろう、たぶん。

典子は頷いた。はっきり頷いた。

自分たちのために死んだのだ、あの先生は。

——この意味、わかる? ねえ、この意味わかる?

誰かを信じるっていうのは——難しいな。

言葉というのは、音楽と並ぶ偉大な神の力だ。

「いい友達ができてよかった」

秋也はさっと前に顔を向け——頷いた。ただ、頷いた。

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自分が誰に投影しますか?

わたしははじめて映画でバトルロワイアルを観ただときには、当然主人公の七原秋也に自分を投影していたと思います。まだ社会に出たばかりでしたからね。まあたいてい物語というものは主人公に感情移入するものと相場は決まっています。

親に愛されて育った子どもは「自分が主役」という人生観を育むものです。「かわいい子ども」を中心に親が動いてくれたから、子どもは自分が主人公の世界観をつくりあげます。誰も決して幼いころから脇役ではありませんでした。

※相馬光子は幼いころからの虐待が原因で「奪われる人生観」を形成してしまったのでした。そこから逃れて「奪う側」に回ろうとクラスメイトに鎌を振り回したのです。

しかし社会人生活も長くなって、夢に挑戦したり、社会に向けて発言したりしていくうちに、いろいろな挫折を経験します。かならずしも自分が主役ではない場面を数えきれないほど経験します。そして子供のころの人生観を修正していくのです。わたしもそうでした。最初に映画を見た時には七原に自分を投影していましたが、今の私の人生観では自分を投影する相手は七原秋也ではありません。ギターがひけて女の子にモテモテ、殺し合いの中でもクラスメイトを信じて新しく親友をつくって、そして最終的に生き残るクラスのスター。それはわたしではなく他の誰かでしょう。そう思います。

原作小説を読んだから、より強くそう感じたのかもしれません。ゲームの途中で殺された他のクラスメイトの方が七原秋也よりもわたし自身に近い存在だと感じました。

あなたなら誰に自分を投影しますか?

たくさんのクラスメイトの中に、きっと自分を投影する人物がいるはずです。

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あのころのあいつは、いったいどこで何をしているのだろう

さて、ひるがえって我々のリアルな同級生ですが、みなさんの同級生にも、秋也から見た三村や杉村のように“こいつはただものじゃない。こいつにだけはかなわない。きっとこいつは将来すごいやつになる。”そう思った同級生はいませんでしたか?

わたしにもそういう同級生が何人かいました。でも実際、今となっては名前も聞きません。

あのころのあいつらは、いったいどこで何をしているのでしょうか。

そういう子らがバトルロワイヤルにはたくさん登場します。そして期待をかなえることなく死んでいきます。

わたしのそういう中学生の同期をざっとネット検索したところ「東京大学の先生になっていた人」「社長になっていた人」がいました。それぐらいかなあ。他は影も形も見当たりません。

在学中から元々有名人なやつ「荻原健司」(オリンピック金メダリスト。国会議員)が早稲田大学の同期ですが……。

それ以外、わたしの学生時代の同級生でwikipediaで名前検索できるレベルのやつは一人もいません。

みなさんのクラスメイトにも、そういう子はいますか? そして「あなた自身」はどうでしょうか? クラスメイトたちに気づいてもらえるような自分でしょうか?

槇原敬之遠く遠く』に「遠く遠く離れていても僕のことがわかるように……」という歌詞があります。「あなた自身」は、遠くからクラスメイトがわかるような、輝くような生き方をしていますか?

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高見元春さんは何をしているのか? 続編、新作問題

ところで肝心の作者の高見元春さんはどこで何をしているのでしょうか。この作者の他の作品が読みたいと思って検索しても、新作が見つかりません。それどころか文筆活動をしているのかどうかもわかりませんでした。

これほどの作品を書き上げた作者の力量からして、この作品で終わりのわけがないのですが、その後、新作を出した形跡はありません。

書くのが嫌いってことはないはずですし、書けないってこともこの才能から考えにくいのですが、どうしたのでしょうか。

まるで自分が認めたクラスメイトが「今どうしているのかわからない」ように、高見さんも何をしているのかわからない状態になっています。

高見さん。人生は短いよ。新作出すなら今だよ今。『バトルロワイアル』のようなあっと驚く作品じゃなくても読むからさ。続きを読ませてよ。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

Bitly

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最大の見せ場。衝撃的な灯台のシーンも原作に健在。

映画『バトル・ロワイアル』でもっとも印象に残ったシーンはどこでしたか?

わたしは灯台のシーンです。傷ついた秋也をかくまってくれた女子だけしかいない灯台で、秋也の毒殺をきっかけに女子たちが殺し合いをはじめて全滅してしまうという超衝撃的なシーンでした。

「だめ。だめ。あたしのせいでみんな死んでしまった。」

あのシーンも原作にありました。どれほど原作のレベルが高いかわかるでしょう。

こう考えると、千草貴子が男の局部にナイフを突き立てるシーン以外は、名シーンはほぼ原作通りという気がします。それほど原作の出来がいいのです。

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クラスメイトの殺し合いの大団円(エンディング)

「おまえたちの、負けだ」

わかったろ。俺を信じた時点でおまえたちの負けだったんだ。

最後は誰も信じられない、みんあそう思っただろ? そしたら、力をあわせてクーデターを起こそうなんて誰も考えなくなるだろ、ん——?

システムなんて言うのは便宜でしかないはずだ。俺たちはシステムのために生きてるわけじゃない。

考えてたんだ、そのことを。しかし——もう返事をする必要がないようだ

さささよならならだ……

「いい友達ができてよかった」

走るぞ。せいいっぱいでいいから走れ!

——オーケイ、今度は乗ってやるぜ。

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物語のあらすじを述べることについて

物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

物語のあらすじを紹介することについて
あらすじを読んで面白そうと思ったら、実際に照会している作品を手に取って読んでみてください。ガイドブックを読むだけでなく、実際の、本当の旅をしてください。そのためのイントロダクション・ガイダンスが、私の書評にできたらいいな、と思っています。

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。

人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

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