地図を見ないと見るべき名所を素通りして見落としてしまう
私はスマホの普及以前から世界放浪をしているので、ガイドブック片手に旅をするのが常でした。
いつか行きたいとずっと思っていた靖国神社を日本武道館を何度も往復していたのにずっと素通りしていた体験から、地図を見ないと見るべき名所を見落としてしまうことを私は知っています。ローマの「真実の口」なんてぜったいに素通りしますよ。私はわざわざ行ったのにエンパイアステートビルを素通りしたことがあります。さすがに沢木耕太郎のように世界地図で旅するのは無理なので、ガイドブックを見ながら旅をしていました。
海外ガイドブックの編集方針。『ロンリープラネット』『地球の歩き方』『女性向き』
はじめてのeSIM。はじめてのGoogleマップ旅行
人間、若い頃からの習慣からは、なかなか抜けられないものです。若者たちが旅にスマホを使いはじめたのは知っていましたが、あいかわらず私はガイドブック派でした。
バックパッカーの敗北。ホテル予約サイトの驚異的な実力のこと。安さを選ぶか、自由を選ぶか。決断を迫られる時代
しかし友人たちと旅行をして、その中の一人がスマホでgoogle mapを駆使して旅をしていたのを見て、私もやってみようと思いました。そこで今回はじめてのeSIMとグーグルマップを利用した旅をしてきたのです。
海外旅行にモバイルWiFi、トラベラーSIM、eSIMは必要か
ガイドブックをあてにした旅行の場合、電車は乗りこなせても、バスは難しい
その友人は韓国ソウルでバスを乗りこなして旅をしたのです。利用したアプリはグーグルマップ。とくに役に立つのは、google mapのバスの案内です。
深夜特急ごっこ。リアルドラゴンクエストごっこ。路線バスのみで国内を移動する
「地球の歩き方」などガイドブックをあてにして旅をする場合、電車は乗りこなせますが、正直言ってバスは難しいところがあります。
マニラにはジープを改造したジプニーというバスがあります。ぜひ乗ってみたかったのですが、とうとう乗れませんでした。だって乗ったら最後、どこに行くかわかんないんだもの。
電車なら決まった場所(駅)で降ろしてくれますが、バスは望む場所に行ってくれるかどうかわかりません。いちおう「地球の歩き方」などガイドブックにも「×号バスに乗れ」と書いてありますが、降車場所が駅とか大聖堂とか目立つところならいいですけど、食堂など目立たない場所だった場合、降りるべき場所で降りられるかどうか自信がありません。
バスは上級者向けの乗り物です。×号バスに乗っても、上りと下りがあります。「ハウステンボス号がハウステンボスに行くとは限らない」のです。
他人には通じない個人的プライベートな「ことわざ」「故事成語」
外国にいるのに、まるで日本にいるが如し
しかし実際にeSIMを使ってネットに接続し、グーグルマップを利用すると、世界が変わりました。「外国にいるのに、まるで日本にいるが如し」です。
グーグルマップを使えば、自分の現在地がわかります。バス停の位置もナビしてくれます。そこで何号バスに乗るべきかもナビしてくれるのです。非常に便利です。
実際に私はソウル駅でバスの上り下りを間違えて逆方向に乗ってしまったのですが、現在地がわかっているので、すぐにバスを間違えたことがわかりました。バスプールでUターンすると思っていたバスがUターンしなかったので上り下りを間違えてしまったのです。
スマホがあれば、もうガイドブックはいらない
このようにgoogle mapを使えば、あれほど難易度が高かったバスが超簡単に利用できます。さらに行きたい場所をあらかじめ地図上にポイント設定しておけば、もうガイドブックはいらないと感じました。
レストランなどに行く場合、そのレストランの位置を地図にポイントしておけば、自分の現在地と照らし合わせて、近づいているのか、遠ざかっているのかわかります。バスの進行予定ルートも表示してくれます。いっさい不安はありませんでした。
グーグルマップのナビはまだ不完全。半分信じて、半分疑え
しかしグーグルマップのナビはまだ完璧ではありません。正確にナビしてくれないこともありました。
私にeSIMの利用を決意させた友人は南山ソウルタワーに行こうとしましたが、グーグルマップのヘンテコなナビのせいで行けませんでした。「南山タワーに行けない人がいるのか」とガイドブック派だった私は驚いたのですが、自分でやってみたらその理由がよくわかりました。グーグルマップのミスリードのせいです。今回、私の韓国・慶州旅でも待っているバスが指定されたバス停に来ないということがありました。
ソウルでの帰国日のことです。始発のエアポートトレインに乗らなければ飛行機に間に合わないというギリギリだということはあらかじめわかっていたのですが、念のためにグーグルマップでナビったら、始発の電車を検索ヒットしないのです。代わりに路線バスを乗り継いで仁川空港まで行けとナビゲート。おいおい、マジかよ。焦りました。ダメもとで駅のホームに行ってみたらちゃんと始発電車があるじゃありませんか。グーグルマップのナビを信じていたら無事に帰国できなかったかもしれません。
また、帰国後に他の人のYouTube動画で知ったのですが、泊まったホテルの前からエアポートバスが出ていたらしい(苦笑)。だったらそれをナビれよ、google map! このポンコツめ!
グーグルマップナビの不正確な世界
また「このバス停で三桁ナンバーのバスに乗れる」というグーグルマップナビだったので待っていたのですが、そのバスはエアポートバスで降車専門で乗車することはできませんでした。せっかく待っていたのに!
デメリット1。海外放浪がオリエンテーリングみたいになってしまった
このように正確にナビしてくれないこともあるのですが、グーグルマップ、恐ろしく便利です。とくに地元民しか乗らないバスに乗れるようになるのは海外貧乏旅行にとってひじょうに大きなメリットです。しかしくれぐれも全面的に信頼するのは危険です。まだ不正確なところがあります。時間に余裕があるときにはいいですが、ギリギリのタイムスケジュールのときには、参考程度に考えて、現場の掲示を見るとか人に聞くとかいった古めかしい手と併用したほうがいいでしょう。
もうひとつ、私が感じたデメリットですが、スマホの登場によって海外放浪が、オリエンテーリングのようになってしまった。そうです。あの地図を見て、チェックポイントを回ってくるというあのゲームです。不安が旅のだいご味なんですが、スマホによってその不安がなくなってしまいました。
デメリット2。地元の人との会話がなくなる
今までは行きたい場所への行き先とか方法がわからなければ、現地の人に尋ねて、なんとかたどり着くというやり方をしていました。それが地元民との会話、コミュニケーションになっていました。ところがeSIMがあれば検索できてしまうし、グーグルマップに聞けば道に迷ってもなんとかなってしまうので、地元民とのコミュニケーションがなくなってしまいました。実際、私も今回はじめてのeSIMの旅で、韓国人と一言も会話しなかったです。誰にも話しかけませんでした。
まあ今回は私にとってはeSIMやgoogle mapが「初体験」なので、そちらの体験を重視したこともありますが、地元の人と一言もコミュニケートしないというのは、明らかに旅へのデメリットだと思います。
不自由さを楽しむのが海外旅行だったりします。地元の人と話もしない海外旅行では甲斐がないという考え方が私にはあります。そういうときは敢えて今日はeSIM(グーグルマップ)をつかわないという選択肢もあり、だと思います。つかいこなせるけど、つかわない、というのはアリだと思うのです。とくに(私にとって)韓国のようなホームタウンでは使わないのもありだと思います。アフリカのような難易度の高いところでは使って。
海外個人旅行に最も必要なのはネットリテラシー
地元の人と会話しなくなるというデメリットがあるものの、難易度の高いバスを乗りこなせるようになったのは、今回の旅の大きな収穫でした。私の旅のスキルもまた一段レベルアップすることができたようです。
かつて個人旅行者に必要なのは、勇気でした。見知らぬ土地に行って当夜の宿を確保し明日の旅の手配ができるかには、やってみないとわからないという不安要素があったのです。勇気あるものだけが、異国に飛び出せたのです。
しかし今必要なのは勇気よりもネットリテラシーですね。スマホがあってネットにつながってアプリを使いこなせれば勇気なんかなくなっても国内を旅するように安心して旅をすることができます。すべての予定をスマホで予約済みであれば、どうして不安に感じることがあるでしょうか。
不安と恐怖がない分だけ、旅はつまらなくなったかもしれません。それが最大のデメリットかもしれません。