ドラクエ的な人生

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』ラストシーンの笑顔の謎を解説

うちの近くの映画館で『往年の映画を大スクリーンで見せます』というのをやっているので、そちらの上映スケジュールを眺めてみると、たくさんの往年の名作映画がラインナップされていました。

上映スケジュールの中でわたしが一番見たいと思ったのはイージーライダー』でした。もちろんすでに見たことのある映画ですが、公開当時と同じようにスクリーンの大画面で見てみたいと思う作品のひとつです。わたしにはピッピー文化に対するあこがれがあります。

そして次に「上映スケジュールにない映画で、映画館で見てみたい作品は何か?」ということを考えました。

まっさきにわたしの頭の中に思い浮かんだ映画は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年公開)です。

こちらの映画は「謎の笑顔」のラストシーンがあまりにも印象的で「どうして笑ったのか」考えさせる作品でした。

人は「笑うべきでない場面」で笑っている人を見ると、心に焼き付くほどの印象を受けてしまうのでしょう。
わたしは、ヌードルス(デ・ニーロ)の最後の笑顔の正体は、少年時代の思い出は誰にも変えられないし、奪えないからだと思います。だからいつでもその場所に戻ることができるのです。

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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。

「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」

「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」

※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。

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主人公ヌードルスはラストシーンでどうして笑ったのか?

謎に満ちた主人公ヌードルスロバート・デ・ニーロ)の笑みですが、「笑顔の背景」はこんな感じです。

ニューヨーク、ブロンクスのユダヤ人街で育った五人組は悪ガキからユダヤ・ギャングとして社会でのし上がっていきます。なかでもマックスとヌードルスは生死をともにした仕事の相棒で、子供のころからの親友でした。

禁酒法がおわり、酒でぼろ儲けできなくなったマックスは「銀行強盗」をしようとたくらみます。ヌードルスはマックスの計画は失敗し、死んでしまうと思いました。マックスの命を救うために、彼を別件で逮捕・収監という状態に置けば、銀行強盗もできないし、銀行強盗なんてバカな考えもおさまるだろうと考えたのです。そして彼は警察に通報します。

マックスたちは警察に取り囲まれると自分から発砲して殺されてしまいます。ヌードルスだけが生き残りました。かれはアヘン窟でアヘンを吸ってベッドに寝転がります。そしてなぜか微笑むのでした……。

普通に考えると、幼いころからの友達がひとりもいなくなってしまいました。自分の通報によって皆殺しにされてしまったからです。笑うべきでない場面で笑っているので物議を醸しているというわけです。この笑顔は何なんだ? と。

ヌードルス(デ・ニーロ)はどうして笑ったのか? ネット上ではたくさんの人が「自分の解釈」を披露しています。

中には「みんなで貯めた貯金を独り占めできることになったからニンマリした」なんていう馬鹿げた解釈もありました。

「すべてはアヘンが見せた幻想」なんていう夢オチだと思った人もいたようです。

以下は私の解釈です。

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終わってしまった過去は変えられない、誰にも奪えない

ヌードルス(デ・ニーロ)はどうして笑ったのか?

わたしは少年時代を思い出して笑ったのだと思います。楽しかったこと、幸せだったこと、そんな少年時代のことを。

その人たちは今は自分の裏切り(本当は助けようとした)が裏目に出て死んでしまいましたが、過去と今とは別だ、とヌードルスはわけて考えることができたのでしょう。

わたしの祖父は死んでしまいましたが、祖父がわたしを可愛がってくれた思い出は、今死んでしまったからといってすこしも色褪せません。

わたしは終わってしまった過去は変えられない、誰にも奪えないと思っています。

だから「生きている英雄」なんていないと思っています。

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生きている英雄なんていない。これから負けるかもしれないから。

英雄と呼ばれる人はたくさんいますが、わたしは「死んだ人」でないと評価する気になれません。「不敗の将軍」とか、生きている間にいくら言われても信用しません。だって「これから負ける」かもしれないじゃないですか。

「英雄」なんて、生きている人に言う言葉じゃありません。だってこれからクソ野郎になるかもしれないじゃないですか。晩節を汚す人はたくさんいます。

わたしは、死んだ人でないと、業績を褒め称える気になりません。なぜなら未来には何が起こるかわからないけれど、「終わってしまった過去は変えられない、誰にも奪えない」と思っているからです。

ヌードルスもまた過去と今とを分けて考えられる人だったのだと思います。だから微笑んだ。アヘンで少年時代の楽しかったことを思い出して。それは誰にも変えられないし、奪うことのできないものです。

実際の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』では、この先、さらに複雑化して、死んだと思っていたマックスが実は生きていた……裏切ったのはヌードルスではなくてマックスだったということになるのですが、それでもやっぱりヌードルスは変わりませんでした。

「殺してくれ」というマックスの依頼を出会った頃の少年時代の過去を思い出して断るのです。ヌードルスの過去の思い出はシンプルなものでした。「助けたかった人が不運にも死んでしまった」それだけです。「裏切られていて、金も女も身分も人生そのものを奪われた」というような大人の物語ではありませんでした。

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「謎の笑顔」のラストシーン

どうして最後に笑ったのか? 「謎の笑顔」のラストシーンですが「あの頃の思い出は誰にも奪えない。誰にも変えられない」それを思い出したから、というのがわたしの解釈です。

その後たとえ、その友達に人生を奪われようとも、愛した女を奪われようとも、財産を奪われようとも、成功を奪われようとも、何を奪われようとも、それは少年時代の瞬間の輝きとは別のモノです。

過去には何の影響も及ぼしません。なぜなら過去は誰にも一切変えることができないからです。

だからはヌードルス(デ・ニーロ)笑ったのだろうとわたしは思います。たとえ友人たちが今死んでいるとしても、それは悲しいけれど、少年時代の思い出が黒く塗り替えられるわけじゃありません。だからいつでも少年時代の思い出を思い出して幸せに笑うことができるのです。

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ユダヤ人ギャングの『スタンド・バイ・ミー』

そう考えるとユダヤ人ギャングの『スタンド・バイ・ミー』だという気がします。

映画『スタンド・バイ・ミー』(1986年公開)でも、少年時代の親友だった友だちとは、もう10年以上も会っていませんでしたが、死にいたった友だちの行動を「あいつらしい」と理解していました。そして「少年時代のような友だちは二度とできない」と呟きます。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』でも、少年時代を助け合って過ごした親友とは35年も会っていませんでしたが、再開すればいかにも「あいつらしい」と感じました。そしてすべてが無にならないようにと親友の成功を祈って去るのです。ここで復讐しようが何をしようが過ぎ去った過去は消すことも書き換えることもできないからです。

どちらの少年時代の思い出は奪えない、消えない、書き変わらない、という作品です。

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ラストシーンの笑顔といえば『戦場のメリークリスマス』

そしてもうひとつ。ラストシーンの笑顔といえば『戦場のメリークリスマス』(1983年)を忘れることができません。ラストシーンは、明日死刑になるという旧日本軍の軍人(ビートたけし)の笑顔で終わります。

笑顔のラストショットでいえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』よりも『戦メリ』の方が先輩です。

ただ北野武の笑顔はデ・ニーロのにくらべると非常にわかりやすいものでした。

それでも印象に残っています。

人は「笑うべきでない場面」で笑っている人を見ると、心に焼き付くほどの印象を受けてしまうのでしょう。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

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