ベッドの上での「伸び」はなぜできる? 筋肉はみずから「伸びる」ことができるのか?
こんにちは。『市民ランナーという走り方(サブスリー・グランドスラム養成講座)』の著者・アリクラハルトです。こちらの本では、フルマラソンを2時間台で走るためのノウハウを提供しています。
他の人間には書けない内容になっていると自負しています。ぜひお読みいただきたいと思っていますが、ここで書きたいのは本の広告ではありません。人間はどうして「伸び」ができるのか? という記事の導入に利用しようと思っているだけです。
本書『市民ランナーという走り方』の章のひとつに「脱力も技術のうち。リラックスして走ろう」という章があります。その中で「走る」ということを骨と筋肉のレベルで解説しています。
筋肉というのは主動筋と対抗筋の二対の筋肉から構成されていて、主動筋が縮むときに対抗筋は伸びて、対になっている筋肉が骨格を動かすことで「人間は動く」のです。
ハムストリング(太腿の後ろの筋肉)が縮むとき、同時に大腿四頭筋(太腿の後ろの筋肉)が縮むから、大腿骨を後ろに蹴りだすことができるのです。大腿四頭筋がガチガチに固まっていたら大腿骨を後ろに引けません。
このように筋肉は対になっています。対になっていないと役に立ちません。関節は曲がりっぱなしになってしまいます。
対抗筋がガチガチに硬くなっていると、筋肉はパワーを発揮できないから速く走れませんよ、という内容の記事でした。
リラックスランニング。脱力とピーキングが謎のベストタイムの理由
私は専門的な教育を受けた医者や整体師ではありませんが、市民ランナーのグランドスラムの達成者として、人間の筋肉や骨格についてはド素人ではないつもりです。
そんな私ですが、ベッドの上で「うーん」と伸びをしているときに、頭の中を電撃のようにある疑問がよぎりました。あれ? 人間は、どうして「伸び」ができるんだ?
※※※YouTube動画はじめました※※※
書籍『市民ランナーという走り方(マラソンサブスリー・グランドスラム養成講座)』の内容をYouTubeにて公開しています。言葉のイメージ喚起力でランニングフォームを最適化して、同じ練習量でも速く走れるようになるランニング新メソッドについて解説しています。気に入っていただけましたら、チャンネル登録をお願いします。
「縮む」と「戻る」では説明できない「伸び」の謎
上で説明したように、筋肉は骨という固いものに付着して縮むという仕事をします。複雑な動きをするように見えても実際には「縮む」か「戻る」かだけです。腕を回すような回転運動でも、筋肉の縮む割合を部分部分で変化させることで実現させているのです。
でもベッドの上での「伸び」はどうでしょう。「縮む」と「戻る」では説明できません。
両手を上にあげてベッドの上で大きく「伸び」をするとき、私たちは全身が上下に伸びて、身長が高くなったように感じます。このとき、どの筋肉が体を伸ばしているのでしょうか。どの筋肉が主動筋で、どの筋肉が対抗筋でしょうか。
筋肉は対になっていて、常に「縮む」「元に戻る」と反対の動きをしているはずですが、「伸び」の場合、身体の前面も背面もどちらも伸びています。左側も右側もどちらも伸びています。
あれ? 筋肉って伸びることができるのかな?
「伸ばす」と「伸びる」は違う。筋肉はみずからの意志で伸びることができる?
「伸ばす」は聞いたことがありますが、「伸びる」は聞いたことがありません。柔軟性のある組織ですから筋肉を外圧で「伸ばす」ことはできます。しかし自らの意思で「伸びる」ことができるのか? 知りたいのはそこです。
筋肉が伸びることができるなら、関節さえ外せれば、ルフィーや怪物くんやダルシム(ストリートファイター)みたいに腕を伸ばすことだって可能じゃないでしょうか。
筋肉が縮む理屈は割と簡単です。収縮すればいいのですから。元に戻る理屈も簡単です。収縮をやめればいいのですから。しかし伸びるというのはどういう理屈だろうか?
伸びをすると、筋肉が伸びたように感じますが、筋肉はみずから伸びることができるのでしょうか?
筋肉がみずから伸びる能力があるのだとすれば、あんがい骨は邪魔な組織かもしれません。私たちがゴムゴムのピストル(ルフィーのパンチ)ができないのは伸びない骨があるせいだ、ということになってしまいます。
骨と骨が離れるから筋肉が伸びる? じゃあ骨を動かしているのは誰だ?
骨に付着して収縮するのが筋肉だとすれば、いったい何が骨と骨を離しているのでしょう。
筋肉はみずからの力で「縮む」「元に戻る」の他に「伸びる」ことが可能なのでしょうか?
この疑問を大発見のように妻に話したら、鼻で笑われてしまいました。
「うん。訴えたい趣旨はわかる」と。「骨と骨が離れるから、筋肉が伸びるんじゃない? 私はそう思うけど」
妻はいいます。筋肉目線じゃなくて、骨目線で考えろというのです。
いやいやいやいやいや……。じゃあ誰がその骨を動かしているのかって話ですよ。
「神経の命令で骨が動くんじゃない?」
いや、あなた。骨が自力で動いたとでも? 骨は自力で動けないはずでしょう? 骨がそれ単体で動けるなら死神が成立します。ありえないから死神なのです。
骨はみずから動けないというのが原則のはずです。骨がみずから動けるなら筋肉なんていりません。やっぱり骨を離しているのは筋肉のはずです。
いったいどうして伸びができるんだろうか? こういう疑問を持つ人ってあんまりいないのかな。ネット検索してもドンピシャの回答が出てきません。
ネコ、ヨガ、ストレッチの伸びは「伸ばす」伸び。謎はない
「猫の伸び」を見たことがあるでしょうか? あれはわかりやすい伸びです。両手を突き出して脊椎をそらすことでネコは伸びをします。ついでにあくびもしますね。
ネコの伸びは骨を動かして付着する筋肉を伸ばすという伸びです。ヨガやストレッチの伸びと同じです。ヨガ、ストレッチでは強制的に骨を動かすことで、骨に付着した筋肉を伸ばしています。
「外からの力で強制的に筋肉を伸ばす伸び」です。ここに謎はありません。
謎なのは「ベッドの伸び」です。人間がベッドで伸びをするとき、主動筋と対抗筋がありません。どちらも伸びています。外からの力で強制的に筋肉を伸ばす伸びではありません。猫の伸びとは違う伸びです。ヨガ、ストレッチとも違います。手や地面からの力で強制的に骨を動かして筋肉を伸ばしていません。
なんで人間はベッドの上で伸びができるんだろう? つくづく謎の袋小路にはまってしまいました。
インターネットで調べてみましたが、明確な回答を得られませんでした。だから自分で「走りながら考えた仮説」をここに書いておこうと思います。
仮説1 ドミノ倒し的な収縮と弛緩の連鎖で伸びている。
たとえば肩が伸びるのは、肩まわりの筋肉が収縮して、肩が上腕を手前にひっぱるのではなく、上腕が肩を外側に引っ張っているから関節が引っ張られる、と考えることもできます。肩の関節が外側に伸びると、結果として連鎖的に上腕という骨の棒が遠方に伸びるという理論です。順繰りに収縮することで伸びることができるのではないか?
脊椎が伸びるのはA椎→収縮←B椎←弛緩→C椎→収縮←D椎
ABとCD間が収縮してもBC間は弛緩になるだろうという理論です。ムカデが歩くようにこの収縮と弛緩を繰り返せば、理論上は「伸び」が可能なのではないでしょうか。
ドミノ倒し的な収縮と弛緩の連鎖で「伸び」が可能になっているのかもしれません。
仮説2 筋膜をしぼると、筋肉は伸びることができる
ビニールで包んだスライムは、ギュッとしぼると左右からにゅるっとスライムがあふれ出します。
筋肉が同じようなものだとすれば、筋膜をしぼると、その分、容積が左右にひろがってあふれ出します。すなわち伸びるということです。
つまり筋肉はみずから伸びることができるのだ、という理論です。筋肉組織が膨張するように伸びるのではなく、筋膜が収縮して密度が高まることであふれ出るようにして伸びるのではないか、という仮説です。
雑巾を絞ると雑巾の水があふれ出すように、筋膜をしぼると筋肉は左右に押し出されて、結果として、みずから伸びる性質をもつのではないか。という仮説です。
筋肉にとって「縮むこと」は「伸びること」なのだ、という理論です。これはとても面白い理論だと思います。
証明できないことには仮説を立てるしかない
インターネットで調べても解決されていない問題だったので、同じ疑問をもった人のために、私なりの仮説を書き残しました。
天地創造とか、生命の誕生とかだったら仮説を立てるしかありませんが、たかが筋肉のことですから実際にはもう答えがあるのではないでしょうか?
しかし解答がネット上で見つからなかったので、私の仮説をここに書き残しましょう。私は医学生ではないので証明することはできません。仮説を立てるのみです。どこかの医学博士がこの記事を参考に記事を書いてくださればさいわいです。
筋肉はみずから伸びるのか? Yes かNoか。
たったそれだけのことが、どこにも書いてありません。
ランニング中、何を考えているの? とよく聞かれますが、サブスリーランナーはこんなことを考えながら日々走っています。だてに関節や筋肉に詳しいわけじゃありません。
この世紀の仮説をウチの妻に一生懸命に説明したところ、
「あ“あ“。いつ終わるんだろうなこの説明。チョーどうでもいいわ」
と退屈して、大きく「伸び」をしたのでした。
ちゃんちゃん。