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コーチ理論と引退哲学。よい指導者になるための条件

ほとんどのアスリートは引退したら二度と試合会場に戻ってきません。その理由が、あなたにわかるでしょうか?

ここではその理由について解説しています。

いくらやっても勝てないマインドになる前に、勝ったマインドのままに去った方がいいと考える。これがアスリートが引退して、二度と試合会場に戻ってこない最大の理由です。

アスリートが引退して二度と試合会場に戻ってこない理由

わたしは市民ランナーの三冠王です。ランニングの世界でそこそこの実績を残してきました。市民マラソン大会で入賞したこともあります。

ランニング雑誌のライターをやっていたこともあります。ランニング・マラソンに関しては「こうすれば勝てる」というハウツーを持っていると自負しています。そのハウツーをまとめたマラソンの本も出版しています。

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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論。言葉による走法革命のやり方は、とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。あなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法
腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」の本当の意味は?
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
(本文より)
マラソンクイズ「二本の脚は円を描くコンパスのようなものです。腰を落とした方が歩幅はひろがります。腰の位置を高く保つと、必然的に歩幅は狭まります。しかし従来のマラソン本では腰高のランニングフォームをすすめています。どうして陸上コーチたちは歩幅が広くなる腰低フォームではなく、歩幅が狭くなる腰高フォームを推奨するのでしょうか?」このクイズに即答できないなら、あなたのランニングフォームには大きく改善する余地があります。
ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
・鳥が大空を舞うように、クジラが大海を泳ぐように、神からさずかった肉体でこの世界を駆けめぐることが生きがいです。神は、犬や猫にもこの世界を楽しむすべをあたえてくださいました。人間だって同じです。
・あなたはもっとも自分がインスピレーションを感じた「イメージを伝える言葉」を自分の胸に抱いて練習すればいいのです。最高の表現は「あなた」自身が見つけることです。あなたの経験に裏打ちされた、あなたの表現ほど、あなたにとってふさわしい言葉は他にありません。

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誰かに乞われたら「こうすれば速く走れるようになるよ」と教えてあげられるマインドを持っています。それは実績を残してきた感触がこの身に残っているからなんですね。

市民ランナーには引退がないって本当か?

かつてわたしは「市民ランナーには引退がないって本当か?」というブログで、練習を嫌というほどやりつくしたアスリートにはその反動が来て引退がある、という内容を書きました。

市民ランナーに引退はないって本当か?

そこに書いたことは「もう去年と同じ練習量は二度とできない」ほど練習をやりつくした人は、その反動から練習から逃げたくなる。うんざりするほど練習した人は、その反動から、練習がいやになる。そういう人には引退がある、ということを説きました。

しかしここで説こうとしているのはランナーに限らず、あらゆるアスリートが引退した後に試合場に戻ってこない理由についてです。

「もう二度と去年と同じ練習はできない」という理由とは別の、もう一つの理由についてです。

去年の練習量を今年も維持することはもう無理だと感じるところからアスリートの引退は始まる

失敗体験。敗北の体験を積み重ねると負のマインドセットになってしまう。

勝ってきたからアスリートと呼ばれるわけです。アスリートと呼ばれるような人は、みんな成功体験をもっています。

だからその体験を人に教えることができるのです。指導者として第二の人生を送ることができるのです。それは実績を残してきた成功の感触が身の内に残っているからなんですね。

ところが全盛期を過ぎた後も、試合に出続けて負け続けたらどうでしょうか。自分の持っているノウハウをいくら駆使しても、勝てないというマインドになってしまいます。

肉体の衰えによって勝てなくなっているだけなのに、負ける体験を積み重ねると自分のハウツーに自信がなくなってしまいます。

そうはいっても肉体がすべて

これまでは自分のノウハウを駆使すれば勝てるというマインドだったものが、敗北の体験を積み重ねると、ノウハウを駆使しても勝てないじゃないかというマインドになってしまうのです。

負のマインドセット。そうわたしは呼んでいます。

どんなに優れた選手も最後は負けて引退するが……ズルズルと負け続けるのはよくない。

自分のこれまでのノウハウを駆使しても勝てなかったという直近の記憶が鮮明だと、そのノウハウに自信がなくなってしまいます。

そうするとコーチになったり、人に教えたりすることができなくなります。自分のノウハウを疑いながら人に教えることはできません。

もちろん誰でも最後に一回は負けるわけですが。

ボクシングの世界チャンピオンはたいてい最後に負けて引退します。どんなに優れたアスリートでも永遠に勝ち続けることはできません。

まれに故障などでチャンピオンのまま引退する選手もいますが、そういう人は自分に負けているのです。リングに上がれなかったマインドというのは、自分に負けたマインドと同じ感触を残します。

最後に一回や二回、負けるのはしょうがありません。また負けを知らないのは本当の強さではないといいます。

でも引退の時期を伸ばしてダラダラと負け続けるのはよくありません。その後の人生に響くからです。

いくらやっても勝てないマインドになる前に、勝ったマインドのままに去った方がいいと考える。これがアスリートが引退して、二度と試合会場に戻ってこない最大の理由です。

〈コーチ論〉勝って実績を残してきた感触がこの身に残っているから人に教えることができる。

将来、コーチや監督など、その業界の指導者としてやっていこうと考えているアスリートは、「勝てる」マインドを損なわないためにも、二度とガチンコの試合には戻ってこないのです。

そういう意味では指導者になる気なんてさらさらないアスリートは負け続けても現役を続けることがあります。何人かそういう人の顔が浮かびます。みなさんにも浮かぶんじゃないでしょうか。とことん現役選手であることにこだわる人もいます。きっと指導者になる気はさらさらない選手たちだと思います。

市民ランナーの場合、もともと指導者になる可能性がなかったりしますので、自己ベストが更新できなくなっても、現役を続けることが多いようです。だから市民ランナーに引退はないと言われるんですね。

しかしわたしの場合、マラソンの書籍を出版してやろうという野心をずっと持っていました。

書物を出版するということは、一種の指導者のようなものです。ある程度、上から目線でなければハウツー本なんて書けません。

だから「自分のノウハウが通用しない」という負のマインドセットはしたくありませんでした。

だから今も走り続けていますが、ガチのレースには出ていません。何よりも最盛期の練習量をもはや維持できないというのがレースに出ない最大の理由ですが。

死ぬ気で走ったレースに、ぶざまな練習量でのぞんで、ぶざまな結果を残したくないのです。

おかげさまで出版したマラソン本は思い出したようにときどき売れています。お金を払ってでもわたしのノウハウを買ってくれる人がいるということです。こういう喜びを味わえる市民ランナーも少ないのではないでしょうか?

もちろん本には自分としては自信をもってオススメすることができる内容が書いてあります。

なぜなら「こうすれば勝てる」というハウツーを持っていると自負しているからです。「こうすれば速く走れるようになるよ」と教えてあげられるマインドを持っているからです。

それは勝って実績を残してきた感触がこの身に残っているからなんですね。そのハウツーで、そのマインドで勝ってきた成功体験が、感触がまだ残っているからです。

引退して、負のマインドセットの洗礼を受けていないからです。

これがアスリートが引退して二度と試合会場に戻ってこない理由なのです。

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