海外旅行の持ち物。いいもの派? 使い捨て派?
長期海外旅行に持参できる持ち物は限られています。
持ち物に対する考え方は二つあります。ひとつは「いいものを持ち歩く」こと。もうひとつは「使い捨てのものを持ち歩く」ことです。
私は今は「いいものを持ち歩く」派ですが、「使い捨てのものを持ち歩く」派の気持ちもよくわかります。
「使い捨てのものを持ち歩く」派の場合、盗難にあっても慌てません。どうせ捨ててもいいものだし、なんなら本当に捨てて代わりのものを外国で買い替えれば、それがそのまま自分へのお土産にもなります。
ロードバイク通勤時代。いい雨具を着るか、使い捨て雨具を着るか
私がロードバイク通勤をしていた時には、雨が降ったら困ったものでした。自転車の雨対策は、雨具を着るしかありません。この雨具に対する考え方も同じで「いい雨具を着る」か「使い捨ての雨具を着る」か、どちらかしかありません。
私はロードバイク通勤の時は「使い捨ての雨具を着る」派でした。どうせ内側から汗でびしょびしょだし、高級なのは自転車本体だけでじゅうぶんだと思っていました。
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ロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードを競うようになるところまでを描いたエッセイ集です。
※本書の内容
●通勤バイク四重苦とは?
●ママチャリ・ダンシング最強伝説
●スピードこそロードバイクのレーゾンデートル。通勤レースのすすめ
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
●アマチュアのロードバイク乗りの最高速度ってどれくらい?
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●アパートでローラー台トレーニングすることは可能か?
●ロードバイククラブの入り方。嫌われない新入部員の作法
●サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?
●スピードスケートの選手がロードバイクをトレーニングに取り入れる理由
●デブでうんち(運動音痴)だからロードバイク乗りなのか?
●インポテンツになるという噂と対策
●スティーブ・ジョブズ「知の自転車」。論文の嘘を暴け
●旅サイクリングのやりかた
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バリ島・ウブドのモンキーフォレストで猿と対決

それがどうして今、海外旅行では「いいものを持ち歩く」派になったのかというと、バリ島で猿と対決したときのことが、きっかけになっています。
バリ島のウブドにはモンキーフォレストというところがあって、そこには猿がいます。ニホンザルよりもちょっと大型の猿がたくさん生息していました。そこのサルは観光客のカバンの中に入っている食べ物を狙おうと、えらく攻撃的なのです。とくに大型のオスのアタックには、女性観光客が悲鳴を上げるほどでした。

くおら。人間様をなめんじゃねえよ
私はあるオスザルとにらみ合いになりました。ガイドブックを読むと「サルの目を見るな」「サルと目を合わせるな」と書いてあったのですが、私はヤンキースピリッツをもったインテリなので猿をガン睨みしてやりました。
ところがこのオスザルは気の強い野郎で、こちらをにらみ返してきました。毛を逆立て睨みつけてきます。私も目をそらしませんでした。
はっきりいって一触即発です。
オスザルといっても、やつの体重は三十キロもないでしょう。私の体重は倍以上もあります。体格では勝負になりません。おなじ爪と牙があれば負けるわけがない相手です。
しかし敏捷性は野性のサルがはるかに勝るでしょう。あっというまに木の上まで駆け登ってしまうような敏捷なやつですから、飛び掛かられて噛みつかれたら厄介なことになります。
未来を蹴る! サブスリーキック不発!
当時、私はサブスリーランナー(マラソンを走ったら2時間台)だったので、自分のキックには絶大の自信がありました。しかし問題がひとつあって、そのときはサンダル履きだったのです。テバやキーンのようなちゃんとしたサンダルではなく、バリ島で買ったビーチサンダルでした。このサンダルでちゃんとしたキックができるでしょうか? アキレス腱が固定されていないビーサンで、ちゃんとサルにキックが当てられるか? いまいち自信がもてませんでした。猿が飛び掛かってくる方が速いのではないでしょうか?
にらみ合いつつ、不安がよぎります。
私は自分のキックよりも、猿が飛びかかる方がはるかに速いと冷静に判断しました。そしてサル本体を蹴ろうとしても間に合わないから、自分と猿のあいだにある仮想空白に狙いを定めました。猿が動きを見せたら、あっという間に私との間を詰めてくるはずです。その詰めてくるであろう未来の猿の位置を蹴るのです。それならはこちらの反応が遅れてもサル本体を蹴り飛ばすことができるはず。
オスザルはやる気満々です。ものすごい顔で牙を剝いています。いまにも飛び掛かってきそうでした。私は体を斜めにして、未来の猿がいるであろう空間を蹴り飛ばそうと構えました。
瞬間、猿がバッと飛び掛かるような動きを見せた時、私は思いきって、何もない空間に蹴りをかましました。やつがどれほど敏捷でも、こちらは未来を蹴るのだから当たるはずです。
ところが猿は私に飛び掛かってきたのではなく、後ろに飛びのいて逃げ去っていたのです。
私のサブスリーキックは激しく空を切りました。しかし渾身の力を込めたキックだったので、安物のビーサンの鼻緒がはじけ飛んで切れてしまったのです。
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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。
(本文より)
【入力ワード】写真からランニングフォームを学ぼうとする人が多いので注意喚起したいと思います。写真からフォームを学ぶのはお勧めできません。写真というのは瞬間を切り取ったものなので、間違った解釈をする可能性があるからです。「振り上げた脚」(往路)なのか「戻ってきた脚」(復路)なのか、写真ではわかりません。大地を蹴ったように見えている脚が本当に大地を蹴っているのか、大地を蹴ったように見えているだけなのか、写真からはよくわからないからです。写真で振り上げた膝の高さを見て「ふむふむ、膝はここまで上げるのか」と思い込んでマネするのもよくありません。慣性の法則で結果として脚がそこまで上がっているだけで、実際のランナーの意識としてはそこまで上げようとしていないかもしれません。「結果としてのフォーム」と「ランナー本人の走るときのフォーム意識(入力ワード)」は、必ずしも同じではないのです。
【腹圧をかける走法】そもそも息をするのは、酸素を吸うためです。吐くことよりも、吸うことに意識をおくほうが自然な発想です。肺の中に残っている空気(残気量)は、どうせゼロにはできないのです。吐き切るという努力は、動かない壁を押すような無駄な努力です。そこに力を割くべきではありません。持ち上がらないバーベルを無理やり持ち上げようと喘ぐと、余計に息が苦しくなってしまいます。楽に息するのとは真逆のことです。それよりも思いっきり吸うことです。そのための走法が腹圧をかける走法です。肺を絞って痩せた人のように走るのではなく、腹はたるんたるんと力を抜いてだらしなく腹が太った人のように走ります。そもそも重力は下向きなのだから、横隔膜を下げることは理にかなったことです。それに対して、吐き切ることを意識すると、重力に逆らって横隔膜を持ち上げながら肺を絞らなければなりません。どちらが楽にできると思いますか?
【ストライド走法】ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
【踵落としを効果的に決める走法】私はカラテ素人ですが、サブスリーランナーとして、すくなくとも「踵落とし」を無力化する方法をすぐに思いつくことができます。答えはカンタン。攻撃側が踵を振り上げて止まったポイント(これを上死点といいます)に、自ら打撃ポイント(脳天など)を近づけていくことです。上死点では運動エネルギーがゼロになっているために、破壊力もゼロです。上死点から距離をとらないことで「踵落とし」というキックを無力化できます。
ストライドを稼ぎたいあまりに、未熟ランナーほど振り出した前足が最も伸びきったところで着地してしまうのです。つまり「膝が伸びきったまま」「踵から着地」してしまうのです。これは「踵落とし」の運動エネルギーがゼロになっている上死点で着地してしまっているのと同じことです。これでは速く走ることはできません。
言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論の書。言葉による走法革命。とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。本書はあなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法」「腹圧をかける走法」
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
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旅のあいだはずっとつきあうものだから、いいものを持っていこう
これがTevaやKEENなどのちゃんとしたサンダルだったら、キックの反動ではじけ飛ぶなんてことはなかったでしょう。安物のサンダルだったから、逃げていくチキンなモンキー野郎を追いかけることもできませんでした。もっとも追いかけたところで、マラソンならともかく、あっという間に木に登られて追いつくはずもなかったですが。
その後、次のサンダルを買うまで、私のバリ島旅行は徒歩移動に問題をかかえるものになってしまいました。
このことがあってから、私は海外旅行には「捨ててもいいもの」ではなく「いいもの」を持っていこうという派に転向したのでした。
いざというときに、サルと戦えないようでは困りますからね。
今では、旅のあいだはずっとつきあうものだから、旅の持ち物はいいものを持っていこうと思っています。

