私が生きている短い時間にも日本語がすこし変化しているのを感じる
先日、現代中国の漢字の発音が、同じ漢字の日本の音読みとぜんぜん違っているのはなぜだ?、という記事を書きました。調べたところ、漢字が古代中国から伝わり、中国的発音を音読み、日本語的発音を訓読みとしたというのは、学校で習ったとおりで間違っていませんでした。
しかしその古代中国から伝わった漢字の読みというのは、実際には中国のいち地方方言に過ぎず、現代北京語とは違う発音であることから、同じ漢字でも音読みは現代中国語と発音が違ってしまっているのだということがわかりました。
また両国における海を隔てて経過した長い年月も、両国の同じ漢字に対する発音の違いを生み出している要因のひとつになっているそうです。言葉は変化していくものですからね。私が生きている短い時間にも日本語がすこし変化しているのを感じますもの。
言葉は生き物なのです。
漢字も和服も同じ。時代によって変化するし、そもそも統一中国規格なんてない。
ところで、今回、書こうとしているのは着物のことです。実は北京に旅行する直前に、京都を旅していました。京都にはたくさんの着物を着ている人がいたのですが、彼女たちが喋っている言葉によると、ほとんどは中国人でした。
そうです。私がエジプトでガラベイヤを着て、モロッコでベルベルストールを着用していたのと同じように、訪日観光客が日本の着物をレンタルして気分をだして歩いていたというわけなのでした。
そこで私は疑問に思いました。
中国に日本の着物のようなものはないのだろうか? だって本格的な着物を売っているお店のことを呉服屋っていうじゃない? あれって三国志の魏呉蜀の呉のことでしょ?
そう思って調べたところ、漢字のケースとまったく同じような理由で、現代日本の着物のような服は中国にはないのだそうです。
そりゃあないわな。あったら観光地でわざわざレンタルしてまで着ないもの。
中国の呉地方の服が日本に伝来し、日本人がそれを取り入れたところまでは思った通りでした。しかしその後日本では十二単など身分や風土にあわせて独自のアレンジが加わったのだとか。中国の呉服は「漢服」と呼ばれるものに進化しているそうです。アニメ「薬屋のひとりごと」の登場人物たちが来ているアレが漢服ですね。着物に似ていると言えば似ています。たしかにルーツは同じかもという気がします。ヒョウとジャガーぐらいの違いでしょうかね。
おそらく中国人も漢服そのものを着る機会がほとんどないのでしょう。だから着物を着てウキウキしちゃうんだろうな。だってふだんから漢服を着ているならば着物を着てそれほどよろこばないと思うもの。
もしもジャガーがヒョウ柄になっても、そんなに大喜びするはずはありません。だってたいした違いはないのだから。
なんでこんなふうに思うのかというと、私も和服なんてまともに着たことがないからです。まずわざわざ買い求めるようなものではありません。寒そうだし、動きにくそうだし、お高い買い物だし、あえて着る意味がわかりません。
和服なんて着ていたら「何かあった? 今日ってお祭りだっけ?」と聞かれるに決まっています。き、着づらい……。
豆腐は中国由来のものですが、ごま豆腐は日本のものです。まあそれぐらい漢服と着物は違うということです。