世界初。単独。ヨットで太平洋横断
世界初の単独でヨットで太平洋横断したという堀江謙一さんの著書です。
1962年5月12日に西宮を出発し、8月12日にサンフランシスコに到着する3カ月のボート大平洋漂流記でした。
かつてわたしは友人にウインドサーフィンに誘われたことがあります。そのとき、道具一式を購入する前に、書物を購入して、ほんとうに自分にウインドサーフィンができるか、よーく調べました。しかし……結局、ウインドサーフィンはやめました。こりゃ下手すると死ぬな、と思ったからです。ウインドサーフィンはひとつの小さな帆船であり、自分が操舵手であり船長です。的確な判断ができないと二度と岸に戻ってくることができません。
その程度の知識しかないので、本書のセイリングに関するところは、気分だけあじわって読みとばしました。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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世界初、単独、帆船で太平洋を横断したのはスプレー号のスローカムではないのか?
ひとつ謎なのは堀江さんが参考書として読み込んだという『セーリング・アローン・ザ・ワールド(世界一周ひとりぼっち)』を書いたスローカム船長です。
この人のこの本をまだ私は読んでいません。読んでいないおかげでこの記事がおもしろくなっていますのでご了承ください。スローカム氏は、スプレー号という帆船で1898年に史上初の世界単独周航を達成した人だそうです。
ん? なんかおかしくないですか!?
スプレー号で世界一周をしたということは、当然、太平洋を横断したはずです。縦に世界一周するはずがありません。南極大陸があります。
そのスローカムの書いた本『世界一周ひとりぼっち』が『太平洋ひとりぼっち』の中に登場してくるのです。わたしは混乱してしまいました。
これではまるで日本一大きいプロジェクターと世界一大きいプロジェクターが同居していた「つくば科学万博」ではありませんか。
あるいは珊瑚海から南極海(大平洋とはいえない南の方)を通って地球一周したというのでしょうか。まさかそんな難易度の高いことをするはずがありません。
かつて南極点に到達したタレントのイモトアヤコさんが、南極点を中心に一周まわって「地球一周!」というギャクを飛ばしていましたが、あのパターンでしょうか。地球一周というのは「ものはいいよう」であって赤道に近づくほど距離は長くなり、極点に近づくほど距離は短くなります。南極点付近で地球一周するのは超簡単です。ポールの周りをぐるっとするだけです。
帆船とヨットの違い
おそらくスローカム船長と堀江さんの違いは、帆船とヨットなのでしょう。単独なのは単独だけど、スローカムは帆船、堀江さんはヨットだから、ヨットの世界初は堀江謙一だという定義に違いありません。
そこで帆船とヨットの違いを調査したのですが……これがクジラとイルカぐらいの違いしかありません。大型なのが帆船(クジラ)小型なのがヨット(イルカ)という程度の違いしかないのです。
堀江さんのマーメイド号は全長6mぐらい。スローカムのスプレー号は11mぐらいでした。
どうなんでしょうか。全長11mにくらべると、全長6mは格段に難易度が上がるのでしょうか? わたしにはわかりません。ちなみにクジラとイルカに厳密な違いはなく、大きさ5mぐらいを境に、小型のものをイルカ、大型のものをクジラと呼んでいます。
帆船とヨットの区別もたとえば10m未満をヨットと呼ぶというようなひとつの基準があればわかりやすいのですが、そういうものはないようです。
島国根性の鎖国の扉を開いた「密航」という大冒険
わたしとしては堀江さんの偉業にケチをつけるつもりはないのですが……範囲を細かく限定すればトップに立つのは簡単です。
イルカ最強! とかに意味ありますか? もっと強いクジラ(シャチ)がいるのに。
海洋動物最強ホホジロザメ対シャチ。どっちが強いか少年にもわかるように解説してみた
どうも堀江謙一さんの偉業を強調したいあまりに周囲が「世界初」にこだわり過ぎではないかと思います。おそらく名もないモンゴロイドか、ミクロネシア人が堀江さんよりはるか昔に太平洋横断しているはずです。今のネイティブアメリカンの先祖です。
帆船とヨットを区切ってむりやり「世界初」としていますが、帆船とヨットの差はほとんどないのですから。
むしろ堀江さんの業績は、吉田松陰が英国密出国を企てて打ち首になった幕末の島国根性が、堀江さんの快挙によって扉が開かれたことにあるようです。
堀江さんの冒険は「密航」でした。パスポートがもえらなかったからです。当時、小型帆船で渡航するといっても旅券がもらえませんでした。出国手続きができなかったのです。いくら説明しても窓口公務員が安全を証明しろの一点張りでした。堀江さんは旅行代理店にバイトしてまで旅券業務に精通しますが、すべて見込みなく「とてもつき合いきれない」と判断し、密出国して太平洋横断を開始したのです。
しかしアメリカ、日本でマスコミが堀江を英雄扱いされ有名になるにしたがって、小型ヨットでの渡航を窓口で申請しても「安全を証明しろ」といわれることもなく旅券が出てくるようになったそうです。堀江謙一は島国根性の扉を密航によって開いたのでした。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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