「知の自転車」ジョブズ論文の嘘を暴け

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私が書いた文章を、ブログでこのように「知らない誰か」に読んでもらうことができるのは、PCとインターネットがあるからです。アップルの創設者スティーブ・ジョブズのお陰だと言っても過言ではありません。

こんにちは、ハルト@sasurainorunnerです。

ここではパーソナルコンピューターの生みの親の一人、スティーブジョブズがパソコンを称して知的自転車と譬えたことについて思うところを述べています。

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ジョブズはパソコンを知的自転車と譬えて表現した

ジョブズはアメリカ人ですので、そのせいでコンピューターの世界では英語が溢れかえっています。たとえばイノベーションとは「技術革新」と訳されますが、それだけでは何のことだかいまいちピンときません。しかしイノベーションとは「インターネット」や「スマートフォン」のことだと言われれば、なるほどそれは革命的な技術だなあのことか、とすぐに腑に落ちます。

スマートフォンがあればもう固定電話はいりませんし、デジカメさえもいりません。カーナビもいりません。パソコンさえいらないという人さえいます。スマホはこれまでの産業を駆逐してしまいました。まさに技術革新です。

そのスマートフォンをつくって世に広めたジョブズは、パーソナルコンピューターのことを「知の自転車」だとたとえています。これはどういう意味なのでしょうか。

自転車系サイトの当サイトとしては、非常に気になるところです。

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「コンピューターは知の自転車だ」

「コンピューターは知の自転車だ」これはアップルの創設者スティーブ・ジョブズの言葉です。Macのプロジェクト暗号名は『Bicycle』だったとか。ジョブズはよほど自転車好きだったのでしょうか?

どうもそうではないようです。自転車が好きということではなく「コンピューターという道具を使うことで、人間が本来もっている能力をもっと効率的に発揮して、すぐれた性能を発揮することができる」ということを、自転車に乗った人間の運動効率にたとえて表現したもののようでした。いわば「たとえ話」ですね。

画家が「あなたにとって絵とは何か?」と聞かれるように、スティーブジョブズは「あなたにとってパソコンとは何か?」と聞かれ続けました。いわばお決まりの質問です。

ジョブズ「それについては、自転車とコンドルとのアナロジーで答えたい。数年前に、僕は「サイエンティフィック・アメリカン」という雑誌だったと思いますが、人間も含めた地上のさまざまな動物の種の、運動の効率に関する研究を読みました。

その研究はA地点からB地点へ最小限のエネルギーを用いて移動する時に、どの種が一番効率が良いか、結論を出したのです。結果はコンドルが最高だった。

人間は、下から数えて3分の1のところにいて、あまり印象に残っていません。しかし、人間が自転車を利用した場合を、ある人が考察しました。その結果、人間はコンドルの倍の効率を見せました。

つまり、自転車を発明した時、人は本来持っている歩くという肉体的な機能を拡大する道具を作り出したといえるのです。それゆえ、僕はパーソナルコンピュータと自転車とを比較したいのです。なぜなら、それは、人が生れながら持つ精神的なもの、つまり知性の一部を拡大する道具(ツール)だからです。個人のレベルでの生産性を高めるための特別な関係が、人間とコンピュータの関わりの中で生まれるのです」

おおっ。パチパチパチパチ(拍手!)。これが有名な「知的自転車」発言ですね。

「人間の知的能力がコンピューターという道具を使用することで拡張される」と抽象的に表現するのではなく「自転車」「コンドル」という「動きで譬えた」ことで、名言としての箔がつきました。

私も自分のサブスリー走法を「アトムのジェット走法」「ヤジロベエ走法」などと命名していますが、命名することは重要です。キャッチコピーが重要なのです。

Think different.

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一番移動効率がいいのはコンドルだって本当か?

しかし、この話し、本当か?

にわかには信じられない。っていうか直感的に「違うだろ!」と思う。

ジョブズの発言ではない。発言の元ネタとなった「サイエンティフィック・アメリカン」に載っていたという動物の移動効率の話しである。

「移動効率が一番いい動物はコンドルだ」というのは、どう考えても間違っているのではないだろうか。おれには違和感しかないのだが。

コンドルというのは、南米に生息する最大の猛禽類だ。ダチョウなどの飛べない鳥を除けば、飛べる鳥の中で最大級の大きさを誇っている。翼開長3m体重は15kgほど。

死肉を食らうスカベンジャーであり、空中戦をするファイターではない。

獲物に追いつくスピードも、獲物を捕らえる旋回能力も必要ない。屍肉食性なため獲物を狩るための高度な飛翔能力をもたないと一般的に言われているのがコンドルなのだ。

またコンドルは体が重いために、飛行能力は低いと一般的にいわれている。体重の重いランナーが軽々と走れないのと同じ理屈である。

そのコンドルが移動効率が一番いいって、いったいどういう計算しているんだろうか?

みんなジョブズの言葉に感動して、そこを突っ込んでいる人を見たことがない。ジョブズの言葉に聞き入るのはコンピューター関係者で、鳥類学者や自転車関係者ではないことが原因だろう。

ジョブズの発言のネタとなった「生物の移動効率論」をネットで検索しても出てこない。「コンドル」「移動効率」で検索しても、出てくるのはジョブズの発言ばかりだ。

元ネタとなった「生物の移動効率論」というのは、どうやらこういうことのようだ。

1km進むための空、海、大地の生き物の移動効率を(消費カロリー/体重)で割り返して、体重当たりの消費カロリーが小さい順に並べたもの。

なるほど、体重で割り返しているのか。だとすれば猛禽類最大の体重で割り返せば、消費熱量は小さくなるかもしれない。もしも1km飛行にかかるエネルギーが同じだとすれば、だ。

しかし最大で15キロにもなる体重を宙に持ち上げるだけでものすごいパワーが必要になるはずだ。約3メートルの巨大な翼をバッサバッサと羽ばたく必要があるだろう。ペリカンだってあの巨体で飛ぶのにバッサバッサと必死だった。運動効率どころの話ではない。効率よく飛ぶ鳥はスイーッと音もなく飛ぶ。

トンビは翼開長はコンドルの半分ほどであるが、体重は1kgほどしかない。体重は15分の1しかない。だからあれほど優雅に宙を舞うことができるのだ。鳥類というのは飛ぶために骨をスカスカ中空にしてまで体重を軽くしている。文字通り身を削って体重を軽くする進化をしてきた生き物なのだ。

翼開長2倍、体重15倍のコンドルの移動効率が一番だと言われても、私にはまったく信じられない。

太ったランナーの足が遅いのは宙に浮くことが困難だからである。体重は浮遊に決定的な影響を及ぼす。あまりに重ければ飛べない。

ダチョウを見るがいい。ダチョウの羽根のカタチ云々言うよりも先にまずダチョウは重たい。太っちょランナーの運動効率は悪いに決まっている。

コンドルは腐肉を食べ過ぎて、まれに体重が重くなりすぎて飛び立てなくなる事もあるのだそうだ。

翼は大きいが、その翼を動かすのに十分な胸筋がないともいう。そのため、ほぼ羽ばたくことはせずに滑空飛行を行うのだそうだ。生息地が南米の山岳地帯なのは、滑空するために風の助けが必要だかららしい。上昇気流に乗って滑空できるだけの谷(と餌の死体)がある地域にしか生息できない生き物のようである。

なるほど上昇気流に乗って滑空しているのか……。

えっ? 滑空? 風の力を利用してもいいの? これってそういう勝負なのか?

普通は「自分の筋肉を使って」自力勝負の比較だと思う。なんかおかしいよなあ。この論文。

風を利用するのが「あり」なら、田んぼの害虫ウンカなんて中国から風に運ばれて飛んでくるんだぞ。ものすごい運動効率じゃないか。

やはり一般的な意味で「移動効率が最もいいのはコンドル」だというのは確実に間違いだと言えるだろう。

仮に「風はアリ」だとしよう。コンドルは風の助けを受けて滑空している時の運動効率を計測しているから最高の評価を得ているんだな。

しかしそういう鳥はコンドル以外にいくらでもいる。コンドルだけが追い風OKで、ほかの鳥はダメというんじゃあ、そもそも「バカ論文」である。なんのための比較なんだかわかりはしない。

鳥類の中には風の力を借りて海や山脈を越えるものさえいるのだ。

キョクアジサシの年間移動距離は80,000kmだ。アネハヅルのようにヒマラヤ山脈を越えてしまうような鳥だっている。彼らだって上昇気流を翼にはらんで滑空している時の運動効率でコンドルと比較しなければ公平な競争とは言えないだろう。

私にはコンドルがヒマラヤ山脈を越えられるとは思えないのだ。

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そもそもスピードを無視した運動効率なんてありえない

さて「自転車」である。元ネタの論文では自転車を使うと、移動効率最高のコンドル(笑)の2倍も効率がいいということになっている。つまり「ありとあらゆる生物の運動効率の中でも、自転車に乗った人間が圧勝で運動効率がいい」ということだ。

他の生物を全く寄せ付けない大差で、自転車が効率がいいだって???

この学者は自転車に乗ったことが一度でもあるのだろうか。

どうですか? このブログを読んでくださっているロードバイク乗りの皆さん。実感としてそう思いますか?

私には到底そうは思えない。

ランニングに比べてロードバイクの効率がいいことは確かです。こんな私がウサイン・ボルトよりも速く走れるのだから。

しかし鳥類にくらべて二倍の運動効率で、地球上の生物の中で最高の効率で前に進んでいるとはとても思えない。

運動効率がもの凄くいいってことは、全然疲れないってことでしょう?

そんなことはありません。ロードバイクだって疲れます。「ツール・ド・フランス」の選手たちは苦しさのあまり涎をたらして走っているではありませんか。

この自転車効率最高理論は、どういう学者が、どういう実験で言っているのだろうか。

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限定し、条件を絞れば、トップに立つのは簡単

専門家が本当のことを言っているとは限らない。

御用学者という言葉がある。自分にお金をくれる人や団体に都合のいいようにデータをつくってスポンサーが喜ぶような結果をつくりだす学者のことだ。

学者バカという言葉もある。詳細のデータに夢中で全体が見えていないため、詳細から見れば正しいが、全体から見るとどんでもないバカな結論を導き出してしまう学者のことである。

たとえばコンドル保存協会から仕事を依頼された学者は、コンドルのすばらしさを知らしめたいために、コンドル有利にねつ造したデータを作るでしょう。これはそういう論文だったのかもしれない。

それと同じように、自転車協会に仕事を依頼された学者は、自転車に都合のいいデータをつくったり、結論を導いたりすることがありえる。

たとえば競争する相手を限定するとか。自転車に都合の悪い条件は無視するとか。

条件を絞れば、トップに立つのは簡単だろう。

やり方はいくらでもある。たとえばスピードは考慮しない、という限定方法である。

おそらく自転車で最高に運動効率を発揮するためには「惰性で進む」ことだろう。ペダルをひと漕ぎしたら惰性で進み、スピードが落ちてきたらペダルが重くなる前に、さらにひと漕ぎする。

陸上動物は動きを止めたら止まってしまうため、自転車の惰性で進む力は、運動効率の意味ではかなりの有利さを発揮するかもしれない。

水の抵抗は大きいから、イルカやマグロなど海中の動物も、やはり動き続けないと、すぐに止まってしまうだろう。

やはりライバルは「鳥」だ。空中は空気抵抗が少ないから、スイーッと進むことができる。

コンドルが一番運動効率が高いとしたように滑空を条件に入れていいわけだから、やはり軽い鳥がグライダーのように風に運ばれることほど運動効率のいいものはないはずだ。

でも、そうしたらやはり風に飛ばされるウンカが最高ってことになるはずだ。体重なんてないに等しい。終始、風が運んでくれるのだ。

でもウンカの飛翔力なんて「ない」に等しい。やっぱりこの論文はどこかおかしいのだ。

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運動というものはスピードを出すために膨大なエネルギーを惜しげもなく使うものだ

「風は無視」「自力勝負」という条件ならば、自転車もいい線までいけるかもしれない。

コンドルの優勝は完全になくなるけれど。

しかし、そもそもスピードを全く無視した運動効率なんてありえないと思う。

自転車ロードレースでは速く走るために膨大なエネルギーをつかって空気抵抗という壁と戦い、空気抵抗を押しのけて速く目的地に到達するのだ。

スピードを上げるためにエネルギーを使うのは当然のことだ。レーシングカーとセダン車の運動効率はもちろんレーシングカーの方がいいに決まっているが、ガソリンをまき散らして走っているのはレーシングカーの方だ。

速く走っているからである。運動というものはスピードを出すために莫大なエネルギーを使うものなのだ。ジェット飛行機だって、レーシングカーだって同じである。

ツールドフランスという自転車競技がある。人類最高のアスリートたちがフランス一周したぐらいで疲労困憊してしまう。そのあたりが自転車の限界と言っていいだろう。

海を越える渡り鳥よりも運動効率がいいわけがない。

自転車が2位のコンドルに2倍の大差で圧勝というのは、どう考えてもおかしいのだ。

自転車が生物史上最高に運動効率がいいだなんて、絶対に間違っている。それがロードバイク乗りとしての私の実感である。

常識で考えれば、誰でもわかることだ。

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言葉というのは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が重要

スティーブ・ジョブズの「知の自転車」発言にケチをつけるつもりは全くない。ジョブズが言いたかったことは「道具で、人間の能力を拡張できる」ということなのだから。

ただ発言の元ネタ「コンドルが運動効率が1位」というのが、あまりにも違和感があることから、このようなことを書いただけである。他に誰も元ネタへの違和感を表明した人がいなかったので。

本気でロードバイクに乗った経験があるからこそ、気づけたことなのかもしれない。

ノーベル賞を受賞した本庶佑さんは「(科学誌の)ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割」だと言っている。

コンドルが動物界の運動効率第一位というのは、確実に嘘の9割に入るトンデモ記事のたぐいだろう。

スティーブ・ジョブズの歴史的な名言は、このようなバカ論文を元ネタに発言されている

しかし10年後には残らなかったはずのトンデモ記事でも、スティーブ・ジョブズが引用したことで命を吹き込まれた。10年経っても残る1割の方に入ることになってしまった。このトンデモ論文は、ジョブズの言葉とともにずっと語り継がれていくことだろう。

歴史に残るとは、こういうことなのかもしれない。

言葉というのは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が重要なのである。

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プロフィール


温人ハルト。雑誌『ランナーズ』等に執筆歴のある物書き。サブスリーランナー。グランドスラム達成者(100kmサブテン。富士登山競争登頂)。スイス・ブライトホルン。台湾・玉山。南アルプス全山縦走など登山歴も豊富。キャンプ・車中泊マニア。西天取経の旅人

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はたして放浪のバックパッカーは社会復帰できるのか!? 自由と社会との折り合いを模索するブログです。

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