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ランニングシューズ解体新書(ターサージャパン)。反発プレートの正体

サブスリーランナーのランニングシューズの靴底。ソールの大公開

書籍『ホビーレーサーという走り方(マラソン・サブスリー。グランドスラム養成講座)』の著者、アリクラハルトと申します。

つい先日、ひさしぶりにランニングシューズの買い替えをしました。そこで古いランニングシューズを捨てる前に、これまで気になっていたランニングシューズの中身を知ろうと解体してみることにしました。『ランニングシューズ解体新書』です。その内容を公開します。

サブスリーランナーはフォアフット着地をしている

まずはサブスリーランナーのランニングソールから。前足部の前側が見事になくなっています。自分の著作の中で「かかと着地とかフォアフット着地とか、世間はかまびすしいが、そんなものはどっちでもいい。着地スタイルは結果であって、そこからランニングフォームを計算すると、とんでもない間違いを犯す。意識すべきは腰や膝であって足裏ではない」と私は述べています。

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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論。言葉による走法革命のやり方は、とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。あなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法
腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」の本当の意味は?
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
(本文より)
マラソンクイズ「二本の脚は円を描くコンパスのようなものです。腰を落とした方が歩幅はひろがります。腰の位置を高く保つと、必然的に歩幅は狭まります。しかし従来のマラソン本では腰高のランニングフォームをすすめています。どうして陸上コーチたちは歩幅が広くなる腰低フォームではなく、歩幅が狭くなる腰高フォームを推奨するのでしょうか?」このクイズに即答できないなら、あなたのランニングフォームには大きく改善する余地があります。
ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
・鳥が大空を舞うように、クジラが大海を泳ぐように、神からさずかった肉体でこの世界を駆けめぐることが生きがいです。神は、犬や猫にもこの世界を楽しむすべをあたえてくださいました。人間だって同じです。
・あなたはもっとも自分がインスピレーションを感じた「イメージを伝える言葉」を自分の胸に抱いて練習すればいいのです。最高の表現は「あなた」自身が見つけることです。あなたの経験に裏打ちされた、あなたの表現ほど、あなたにとってふさわしい言葉は他にありません。

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しかし実際には、結果としてフォアフット着地しているということが写真からわかります。見事に小指の付け根のほうから母指球に体重が抜けるように着地していますね。

スピードランナーの靴底はだいたいこのように減るのではないでしょうか。箱根駅伝の出場経験のある私の後輩のシューズもやはりソールの前足部だけがボロボロにはがれていました。

腰で走る走法。腰椎で着地衝撃を吸収し、腰椎のバネをつかって走る

かかと部分については、フォアフット着地だからといって一切着地しないわけではなく、前足部がタッチしたのちに、上から踏むようにして踵も接地します。

ターサージャパン。名前の由来はタイガーレーサーから。ゲル素材のアシックス

踵部分が着地するのでなければ、踵に装備されたゲル素材の意味がありません。アキレス腱を弾くようにして踵を踏み込むからこそ、このようなゲル材が装備されているのです。

ヘルメスの靴。足についた宙に浮くためのバネ(足底アーチとアキレス腱)

私のシューズは踵の外側も大きく削れています。それはこのシューズがレース本番のスピードプレイだけでなく、ゆっくりジョギングのときにも履いていたからという理由が大きいと思っています。

ナイキの厚底シューズはドーピングではない。中足部のシャンク。

ランニングシューズ業界では厚底シューズがブームになっています。「ナイキの厚底シューズ」「ヴァイパーシリーズ」がブームをけん引しました。中足部にNASA由来の反発プレートが装着されていて、履くと記録が伸びることから「ドーピングシューズ」と呼ばれることもあります。

このことについて、靴の中にプレートを入れて反発力を得るという発想は昔からあったとして、私は著作『市民ランナーという走り方』の中で、ドーピングではなく、企業努力の範囲内だと説明しました。

厚さは速さだ。厚底ランニング・シューズ「ヴェイパーフライ」のメリット・デメリット

実際に私のアシックスのシューズ、ターサージャパンの中足部にもプレート状のものがありました。こういうものが他社にはまったくないのにナイキにだけあるのだとすれば「ずるい」ということになるかもしれませんが、ミズノだろうと、ニューバランスだろうと、たいていのランニングシューズにはシャンク部に反発材が搭載されています。だからナイキのヴァイパーだけ戦犯扱いするのはおかしいのです。あれはあくまでもドーピングではなく企業努力の範疇だと思います。

しかしナイキのヴァイパーはともかく(解体したことありません)、こんな小さなシャンク部分のプレートが、こんなかぼそい反発力が、記録向上になんの役にも立つわけがありません。同様にこんな小さくて薄いゲルが、それほど魔術的な衝撃吸収を担ってくれるとはとうてい思えません。

ランニングのアッパー部分は、基本的にはアミアミの足袋のようなものです。着地衝撃の吸収を担っているのはソール部分のビニール素材であり、けっきょくは自分の脚がそれを担っているのです。

かつてマラソン足袋という名称でランニングシューズが売られていたことがあります。たしかにこうして解体してみるとタビにそっくりだなあ、と思いました。

ゲル素材や、反発プレートなどを装着しないと、誰もわざわざ買ってくれないから、メーカーはそういうものをわざわざ取り付けて「ランニングシューズ」という製品を完成させているのではないか、という気がします。

だってゲル素材も反発プレートもミズノウェーブも何もなかったら「地下足袋で走ればいいんじゃね?」ということになりかねないですからね。

「いや。運動靴じゃ駄目なんですよ。ランニングシューズを買ってください」とメーカーの営業が声を大にして言うためには、やはりソールの部分に何か科学っぽい新素材(NASA由来とか)が必要なのでしょう。

長年お世話になってきたランニングシューズとお別れするにあたり、まるで自らの遺体を献体する人のように、解体することで、私のランニング知見のアップに貢献してもらいました。

なるほどこうなっていたのか!

みなさん、あまり高いシューズを買わないように。たぶんそれはボッタくりです。ブランド価格にすぎません。

じっさいに解体してみれば、それほど高いものであるはずがないことがわかるでしょう。ズック(上履き)とたいして変わるものではありません。

ランニングシューズは本番レース前に試運転することが需要

新しいシューズはまたターサージャパンを購入しました。解体破棄されたシューズと同じです。同じシューズなので、同じ感覚で走り出したところ、ヒールカウンター部分が固くてそこから出血してしまいました。

これまでのランニングシューズは使いこなれてペラペラだったので当たっても大丈夫だったのですが、新品だと固くて皮膚が破れてしまったのでした。これはたとえて言えば、熟女ばかり抱いていた男が急に処女を抱いたら固くて痛いというようなもの……下ネタはやめましょうね(笑)。

このように出血しないように、新しいランニングシューズはいきなりレースに使うのではなく、試し履きして柔らかく慣らしてから本番レースで使うようにしましょう。

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