ナイキの厚底ランニング・シューズ『ズーム ヴェイパーフライ 4%』

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厚さは速さだ。ナイキの厚底ランニング・シューズについて

役所広司主演ドラマ『陸王』の核のひとつは、薄い靴底でミッドフット着地するのが人間本来の走り方であって、厚底シューズで踵着地する走法はやめたほうがいい、という理屈であった。その理屈をベースに、架空のシルクレイという新素材で薄くて丈夫なソールをつくり、足袋屋の製造技術でアッパーを縫い付けて新発想のランニングシューズをつくる。そして中小企業が生き残りを賭けて大手ランニングシューズメーカーと企業戦争をするという物語であった。

厚いソールでヒールストライクする走法は故障を誘発しやすい、というのは名著『BORN TO RUN 走るために生まれた』から世界中に広まった走法革命の理論である。

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その 世界的ベストセラー『BORN TO RUN』で主役をつとめたのはララムリ族。薄っぺらな裸足感覚のサンダルで走る「走る民族」であったが、実は作中で悪役だったのはナイキ(NIKE)である。

NIKEは勝利の女神ニケから命名

ランナーを人間本来の走り方から遠ざけて、脚の故障を誘発する厚底シューズを量産する営利優先の悪役企業として作中にナイキが登場している。ララムリと死闘を繰り広げるアン・トレイソンも実はナイキの刺客である。

ランナーのバイブルの中で、完全に悪役にされてしまったナイキであるが、そのまま黙ってはいなかった。『BORN TO RUN』や『陸王』のような本が売れてみんなが裸足感覚の薄いソールを真似するようになると、その反動からか、逆のものがでてくる。 最近では「厚底のシューズの方がマラソンを速く走れる」と言われるようになってきた。仕掛けたのはまたしてもナイキだ。

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記録を塗り替える魔法のシューズ 『ズーム ヴェイパーフライ 4%』

世界ではキプチョゲが、日本では大迫傑が厚底のナイキのランニング・シューズ『ズーム ヴェイパーフライ 4%』で記録を更新した。ナイキのキャッチコピーは 『厚さは、速さだ』

これは「誰か(何か)」を意識したキャッチコピーである。世界中が裸足感覚の薄いソールに注目する中で、厚底こそ速く走れると真っ向から勝負を挑んできたのだ。ナイキの逆襲だ。『厚さは、速さだ』 が 誰に向けて発したメッセージか、もう明らかだろう。『BORN TO RUN』であそこまで悪役にされなかったら、 こんなコピーは生まれなかったに違いない。 それどころか『ズーム ヴェイパーフライ 4%』という厚底にこだわったランニング・シューズそのものが誕生していないかもしれない。私はここにナイキの意地を感じる。

4%なんて変な名前は、すべてのランナーの走行効率を平均4%向上させる、という意味から命名したらしい。「統計なんだよ。信じなさい」というナイキの意地を感じる。

「記録を塗り替える魔法のシューズ」ズーム ヴェイパーフライ4% は別名ドーピング・シューズとも言われている。すべてのランナーのランニング効率を平均4%も向上させる秘密は、靴底に仕込まれたカーボンファイバー製のプレートにある。靴底に仕込まれているカーボンプレートの反発力を宙に浮くためのバネに利用しているためである。素材が元に戻ろうとする力=すなわちバネ、それを推進力に利用できれば、速く走ることができる理屈である。それゆえ一部ではドーピングシューズとさえ言われているのだ。自分の力以外のものを走るために利用しているからだ。

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ナイキの逆襲。悪役にされた意地が完成させたランニング・シューズ

「そんなシューズを利用してもいいのか?」ですって? もちろんいいのだ。

そもそもランニングシューズの靴底にプレートが入っているのは普通のことである。ナイキはその素材を変えただけなのだ。ちなみに靴底のプレートのしなりを推進力に変えるという発想も昔からある。ナイキは素材を工夫しただけなのだ。

プレートのしなり(反発力)を走行効率に変えるためには、斜め前方にブーストできるように装着する必要がある。高さ、斜度が必要なのだ。つまり靴底の厚みが必要になってくるわけだ。だから 『厚さは、速さだ』となるのである。「見たか、クリストファー・マクドゥーガル!」。ナイキ技術陣は叫んだであろう。ナイキの意地を感じる。ナイキの意地なしにこの魔法のシューズは完成しなかったに違いない。

ところで、 ズーム ヴェイパーフライ4% がエリートランナーの記録を次々と更新する大成功をおさめたために、ときどき「薄底よりも厚底シューズの方がいいだ」と勘違いする人がいるが、そうではないことをはっきりと書いておきたい。

実際、厚底シューズというのは昔から存在しているのだ。スポーツショップのランニングコーナーに行ってみればわかる。初心者用のランニングシューズはたいてい厚底だ。だから『厚さは、速さだ』というキャッチコピーは厳密には間違っている。どの厚底シューズでもいいというわけではないのだから。

ズーム ヴェイパーフライ4%でなければだめなのである。

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靴底にバネがついていても、それだけでは速く走れない

ドクター中松のジャンピングシューズ『ピョンピョン』みたいに靴底にばねがついていても、それだけでは速くは走れない。ピョンピョンが早く走れないのは、タイミングがあわないと踏み込むときの力をバネが吸収してしまうからである。ジャンプする瞬間にバネが効いてくれればいいが、踏み込む瞬間にバネが効くと逆にクッションになってしまい、まるっきり地面からの反力を得られない、ということになるのだ。

走るリズム(ピッチ)がカーボンの反発タイミングにあっていればいいのだが、そうでなけば邪魔になるだけだ。

ズーム ヴェイパーフライ4% を履きこなすには、プレートの反発力タイミングと走者のピッチがあっていることが必要なのだ。プレートの反発リズムにあった一定のピッチでゴールまで走りとおすだけの走力が必要になる。エリートランナーは一定のピッチで走り続けるだけの力があるし、練習を重ねて、靴のリズムと自分のピッチをシンクロさせることにも成功している。自分のオリジナルシューズを作ってもらえるレベルのエリートランナーならば、靴のほうがランナーのピッチに歩み寄ってくれる可能性もある。

しかし市民ランナーの場合、プレートの反発リズムに、人間が合わせなければならない。『ズーム ヴェイパーフライ 4%』で記録を更新するためには、走法の改造の必要があるのである。ピッチをカーボンの反発タイミングに合わせなければならない。靴が人間にあわせるのではなく、人間が靴のリズムにあわせなければならないのだ。

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靴が人間にあわせるのではなく、人間が靴のリズムにあわせなければならない 時代が来た

マラソンのピッチは1秒間に3歩、180BPMが理想とされている。だから『ズーム ヴェイパーフライ 4%』の反発リズムもそのあたりを狙っているだろうと思う。最大多数の最大幸福理論から言えば、この反発タイミングを採用するしかないはずだ。

ところがアスリート系ランナーならばスタートからゴールまで一定のピッチを刻むことができるが、レベルの低い市民ランナーはそうはいかない。ストライドを狭めてもプレートの反発リズムにあわせたピッチを刻まなければならないが、それが吉とでるか、凶と出るか?

スピードというものは、滞空時間で稼ぐものなのである。ピッチよりもストライドの方が重要なのだ。

『厚さは、速さだ』 というのは、踵着地(ヒールストライク)を推奨しているわけではない。厚底なのはカーボンプレートの反り返り(バネ)を発生させて斜め前方へのジャンプを助けるためである。 『踵落としを効果的に決める・走法』で説明したように、厚底でもなおフォアフット~ミッドフット着地できる走法が必要なのである。エリートランナーはそのようにして走っている。

『BORN TO RUN』や『陸王』 で描かれたミッドフット着地というランニング技術は間違っていないのだ。ただ軽くて丈夫な繭素材シルクレイのような新技術がランニングシューズ界に導入されたというだけのことである。逆にソールの反発力を利用しようとランナーが意識すればするほど、結果としてミッドフット走法になっていることだろう。ソールのプレートは走法改善のきっかけにすぎなかったかもしれないのだ。プラシーボ効果のように。

ナイキのカーボンプレートは宇宙開発由来の素材だという。いかにもアメリカらしい。ナイキの意地に拍手を送りたい。

それにしてもナイキはソニーと似ているなあと思う。私はナイキのソーラーソフトサンダルの大ファンである。似たようなサンダルは他にない。唯一無二の製品を出してくるため、他社を選べないのだ。まるで「こはぜ屋」の陸王のように。

NIKE ズーム ヴェイパーフライ4% 。この靴を現役時代に履きたかった。時代は変わるものである。

https://www.nike.com/jp/t/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%AD-%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4-4%EF%BC%85-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88-%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BA-2wPMj9

 

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プロフィール


温人ハルト。雑誌『ランナーズ』等に執筆歴のある物書き。サブスリーランナー。グランドスラム達成者(100kmサブテン。富士登山競争登頂)。スイス・ブライトホルン。台湾・玉山。南アルプス全山縦走など登山歴も豊富。キャンプ・車中泊マニア。西天取経の旅人

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はたして放浪のバックパッカーは社会復帰できるのか!? 自由と社会との折り合いを模索するブログです。

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