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汚職の現場。ワイロを求められた事件

出入国カード。入国カードと出国カードがミシン目でつながっている

ベトナムでのことです。今はどうかわかりませんが、当時は出入国カードというものがありました。一枚のカードにミシン目が入っていて、その両方に自分の名前やパスポートナンバーなどを記入します。

そして入国するときにイミグレーションで、カードを切り離して入国カードを提出します。そして残りの半券の出国カードは、旅のあいだは旅人がずっと持っていて、出国するときにそれを提出するというシステムでした。

ところがこの出国カードというのが小さな紙片で、なくしやすいのです。はじめ私はパスポートに挟んでいたのですが、ホテルに宿泊するときなど、さまざまな場面でパスポートの提示を求められることから、挟んでいた出国カードを紛失してしまいました。そしてそのことに出国ゲートまで気づきませんでした。

出国カードを紛失。賄賂を求められる

さて帰国の日です。とうぜんのように出国ゲートで「出国カード」の提出を求められました。さいしょ、なんのことだかわからなかったのですが、周囲の人たちを見て「ああ入国カードの半券だ」とすぐに理解しました。そして探したのですが、それが見つかりません。たしかパスポートに挟んでいたはずだけど……。

しかしいくら探してもありません。時間が過ぎていきます。私のうしろにはたくさんの人が並んでいました。私が通らないと、その人たちはずっと待っていなければなりません。焦りました。

しかしないものはないのです。私は、

Sorry, I lost my departure card.

と係官におずおずと申し出ました。すると係官は「それでは困る。探しなさい」と態度で示してきます。通してはくれませんでした。私は困り果てました。

するとその係官は手で小さく私を呼んで「ブライブ」と小声で言います。

当時の私は今ほど英語を喋れず、彼が何と言っているのかわかりませんでした。ただ、なんとなく彼が私をこっそり助けようとしてくれているのだけは感じました。

I can’t understand what you say, Is there someone Japanese speaker?

こうなったら、誰か日本語のわかる人を呼んで、助けてもらうしかありません。しかし係官はこっそりと「ブライブ」と繰り返すばかりで、言葉の通じる人を呼んでくれる気配はまったくありませんでした。

しかたないので、私は列の後ろに人たちに大きな声で呼びかけました。

「すいませーん。誰か通訳をお願いします!」

日本便の出発時間が迫っているし、私のせいで列の流れが止まっているので、行列の中の誰かが協力してくれるはずだ、という読みがありました。

すると私の大きな声にびっくりしたのか、係員が「OK」と言って通してくれたのです。

私にはなにが起こっているのかわかりませんでしたが、こうしてまあなんとか出国ゲートをくぐり抜けることができたのでした。

悪徳空港職員にワイロを求められちゃった事件

帰国してから、あの係官がこっそり言ってた「ブライブ」という言葉の意味を辞書で調べたところ、なんとワイロという意味でした。

あのやろー、おれにワイロをもとめてやがったのか。悪徳空港職員め!

こうもあからさまにワイロを求められたのは、はじめての経験でした。なまじ言葉がわからなかったばかりに助かりました。大きな声で誰かに助けを求めたら急に通してくれたのはそういうわけだったのか!

たぶんもうデジタル化されていて、これとまったく同じシチュエーションになることはもうないと思いますが、このエピソードから学べることはあります。

ワイロをもとめられるような場面では、ほかの人を呼ぶなど、状況をオープンにすることです。むこうは悪いことをしているので、こっそりと秘密裡に処理したいのです。それに対してこちらは状況をオープンにしてしまえば、向こうはこっそりワイロを請求することができません。

あれから旅の経験を積んだ今ならば、「出国カードなんて、もう一回書き直せばそれでいいだろ! ノープロブレム!」と開き直れますが、当時は、まさにその半券がないとダメだと思い込んでいたので、本当に焦りました。

それからしばらくパスポートにはクリップをつけていました。もちろん半券の出国カードを止めておくためのものでした。なつかしいなあ!

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