『通勤自転車から始めるロードバイク生活』アリクラハルト

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『ドラクエ的な人生』とは?

心の放浪者アリクラハルトの人生を走り抜けるためのオピニオン系ブログ。

書籍『市民ランナーという走り方(マラソン・サブスリー。グランドスラム養成講座)』。『通勤自転車からはじめるロードバイク生活』。『バックパッカー・スタイル』『海の向こうから吹いてくる風』。『帰国子女が語る第二の故郷 愛憎の韓国ソウル』『読書家が選ぶ死ぬまでに読むべき名作文学 私的世界十大小説』Amazonキンドル書籍にて発売中です。

まえがき

みなさん、はじめまして。アリクラハルトと申します。

私は長年、市民ランナーとして走りつづけてきた者です。またランニング雑誌のプロライターとして活躍もしてきました。その集大成として『市民ランナーという走り方(マラソンサブスリー・グランドスラム養成講座)』という書籍を出版もしています。

そんな私が職場の人事異動で往復30kmの辺鄙な田舎へと飛ばされてしまいました。私は途方にくれました。どうやって通勤したらいいだろうか? と。

新たな通勤場所は、電車も通っておらず、バスもあるにはあるが不便な場所でした。同僚はみんなクルマ通勤していました。しかし私は車を持っていませんでした。通勤するだけのためにわざわざ車を買うなんて……迷った末に選んだのが、自転車通勤でした。私はロードバイクを買うことにしたのです。

この本は、自分の脚で走ることしか知らなかったマラソンランナーが、ロードバイクに乗って通勤バイク生活をはじめるところから始まります。そしてやがては強豪ロードバイククラブに所属してロードレースに出場するところまでを描いています。また、自転車キャンプツーリングをして、旅する自転車を楽しむなど、すっかり生活の中に自転車が欠かせなくなるまでを描いています。

その過程で、ロードバイクについて私が疑問に感じたことは読者のみなさんも疑問に感じるだろうし、私がぶち当たった壁は読者のみなさんもぶち当たるだろうと思ったので、それらを正直に書いているのが本書です。読者のかたと同じ立場、目線からロードバイク生活を描いているのが本書の特徴のひとつとなっています。

私はオピニオン系のブログを運営しています。その中でロードバイク生活についてもいろいろと発信しているのですが、たくさんの方からページビュー(閲覧数)をいただくことができました。それだけ内容に興味を持ってくださった人が多くいたということです。それらのロードバイク系の記事をまとめたものが本書です。内容の重複を省き、リライトして、編集したものです。

ブログの中で、たくさんの閲覧をいただいた人気記事はもれなく網羅してあります。それほど読まれていない記事でも、筆者としてはぜひ読んでもらいたいという記事も含まれています。

ロードバイクの特徴をわかりやすく説明するうえで、マラソン(ランニング)と比較するとわかりやすいと考えた場合には、マラソンを引き合いに出して説明しています。同じ有酸素系の単純ピストン運動であるロードバイクとマラソンですが、両者には決定的な違いがあります。ランニングは宙に浮いてスピードを稼ぐ競技です。体重処理が大きな問題となってきます。しかしロードバイクの体重処理は疲れ知らずのタイヤやフレームが受け持ってくれるため、筋力は推進力のみに使うことができます。それがわかっていれば、どうやれば効率的なライディングになるか、論理的に考えることができます。

自転車の本なのに、ランニングとの比較記事が多いのは、筆者がランニングのプロライターであることに加えて、比較対象を持ってきた方が自転車の特徴をわかりやすく表現することができるからです。たとえばマラソン本の時には「肉体のダメージなんか度外視してゴールしたら倒れるぐらいの気持ちで走れ!」と書けましたが、ロードバイク本だとそんなふうには書けません。後続のバイクを巻き込んで再起不能の大惨事になりかねません。そう簡単に転倒するわけにはいかないのです。

執筆に際しては、プロのロードバイク乗りには書けない内容を意識しました。たとえば「ロードバイクに名前をつける」というような記事は、プロのライダーにはなかなか書けないことです。なぜならプロのレーサーの機材は所属チームのスポンサーからの提供です。吟味の上で自分で選んだロードバイクではありませんし、そもそも自腹購入ですらありません。いい機材の提供があれば次々と乗り換えていくので「愛着」なんて湧いてる暇もないからです。

しかし私たち市民ロードバイク乗りは違います。吟味に吟味を重ねて自腹で愛車を購入しています。そして滅多なことでは乗り換えません。だからこそ「ロードバイクに名前をつける」ことが、あなたのロードバイク生活を豊かにするのです。

そのような市民ロードバイク乗りならではの悩みや愛情を、本書から感じていただけたらさいわいです。きっと共感していただけるのではないでしょうか。

本書は、通勤ロードバイク生活から、ロードバイククラブに入会しホビーレーサーになるまで、という構成になっています。

あなたの通勤バイク生活が成功しますようにお祈りしております。

 

著者 アリクラハルト

 

 

第一章 通勤バイク生活

人事異動によって勤務先が変更になったら通勤バイク(ロードバイク通勤)をはじめよう

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目次
  1. 人事異動によって勤務先が変更になった
  2. 通勤ルートの検討。通勤自転車の検討
  3. そもそも勤務先で自転車通勤を受け入れてもらえるか?
  4. 盗難問題
  5. 汗問題
  6. パンク問題
  7. 冬(寒いよ)対策。
  8. 夜(暗いよ)対策。
  9. 雨(冷たいよ)対策。
  10. 自転車通勤になると、最大の関心ニュースは「あしたの天気」になる
  11. 通勤ロードバイク無理!! 最悪の虫地獄(虫害)実体験記
  12. ママチャリと比較してわかる。「ロードバイクは面倒くさい」
  13. ママチャリは人類の英知がさりげなく盛り込まれている頂点の自転車
  14. 通勤バイクライフ。晴れの日はロードバイク、雨の日はパンクしないシティサイクル
  15. 東日本大震災でママチャリを買って帰宅した賢者たち
  16. 自転車で日本一周するならママチャリを選ぶ
  17. ママチャリは安心、快適
  18. 自転車は道路交通法上は「軽車両」として扱われ、車道を走るのが基本
  19. 雨の日の通勤バイクにママチャリを選んだ理由
  20. たまに乗ろうとするとママチャリはいつもパンクしている
  21. ノーパンク自転車のメリット・デメリット
  22. 自転車業界の闇? ノーパンク自転車の値段が高い理由
  23. ママチャリ・ダンシング最強伝説
  24. ロードバイクライフの未来を見据える
  25. やってはいけない買い方1。最安値のロードバイクを買う
  26. やってはいけない買い方2。試乗して、いちばん乗りやすいロードバイクを買う
  27. アルミバイクもカーボンバイクも手間がかかることに変わりはない。
  28. ロードバイクのフレームのカタチは変わらない
  29. 実店舗で買うよりも、通販サイトで買った方がいい理由
  30. ロードバイク乗りはフェティッシュな人が多い
  31. ロードバイクは室内犬。家の中で保管するのが基本
  32. ロードバイクの保管場所に、アパートの玄関以外の場所を検討してみる
  33. 輪行袋に収納して室内保管することにした
  34. 輪行袋から、いちいち組み立てるなんて、面倒くさい
  35. 果たして室内犬は外で飼えるのか?
  36. 台風の直撃でロードバイクがボロボロに
  37. ロードバイクを室内保管するにあたっての最大の壁は家族の説得
  38. 必ず自転車保険に入ろう。いや、もう入っているかもしれません
  39. ロードバイクに名前をつける
  40. 【提案】ロードバイクに名前をつける
  41. 命名するということは、命を吹き込むということ
  42. 命名のヒント。ロードバイクは飛ぶことを志向している
  43. 速度計。サイコン(サイクルコンピューター)をつける
  44. ロードバイクが、クロスバイクやマウンテンバイクに追い抜かれるというのは「恥」だ
  45. 草レース。通勤レースをはじめる
  46. 通勤ロードバイクは進化する
  47. 通勤レースの戦績が「全勝無敗」だった三つの理由と二つのからくり
  48. 速く走るコツは、軽いペダルをクルクル回すのではなく、重たいギアをガシガシ踏み込む
  49. 重たいペダルが軽く感じられるように筋力を鍛えることが速く走る唯一の道
  50. 人間の肉体が動力だから、ロードバイクのスピードは「人によって違う」が正解
  51. シロウトが「時速50kmぐらいで平気で巡行できる」という発言は疑わしい
  52. スピードは風や傾斜でいくらでも変わる
  53. 趣味サークルは、自分で立ち上げるか、インターネットで探す
  54. 地元のロードバイク販売店に聞いてみる
  55. 機材(ロードバイク)を、拠点のお店で購入していない
  56. ロードバイククラブの名前を冠したセレブリティ・サロン?
  57. 仲間外れの大義名分は、機材がボロいではなく、スピードが遅い
  58. 【嫌われる理由】機材の価格差無視。街乗りロードのくせに速すぎる
  59. 【嫌われる理由】気合い、迫力、実力差を見せつけすぎた
  60. 実力最強でない一匹狼は、ただ一匹なだけ
  61. スムーズな運転を身につけるために、ローラー台を購入
  62. 集団走行で嫌われないために
  63. 個人競技に見えて、実はビックリするほど集団競技なのが、ロードバイク
  64. ローラー台(サイクルトレーナー)には大きく二種類ある
  65. ローラー台よりも実走。実走に勝るトレーニングはない
  66. アパート暮らしがローラー台でトレーニングすることは可能か?
  67. 転倒する可能性がある三本ローラーは諦めて固定ローラー台を選ぶ
  68. ローラー台専用マットを敷くなど、ミルフィーユ的なレイヤード対策をほどこす
  69. アパートのローラー台トレーニングは「ひとり暮らし」が条件
  70. ローラー台練習の効果
  71. 自分のスタイルを貫くことよりも集団でいることの方が重要
  72. 自転車は、体重をペダルを踏みこむ力に変換することができる
  73. ランニングから遠ざかり、ロードバイク漬けの生活となる
  74. ロードバイクに乗り続けると、ロードバイク乗りの体形になる
  75. デブでウンチ(音頭音痴)だからロードバイク乗りなんだろう、は認識のあやまり
  76. ライディング・ポジションを調整して、ペダルに体重をかける
  77. 引き足をつかってペダルを軽くする
  78. 体幹(腸腰筋とお尻)を主に使った乗り方をする
  79. あまりにも伏せた耐風姿勢は、筋肉を効果的に使えない
  80. 筋肉の伸縮反射を使うため、骨はセンターのニュートラルポジションにセットする
  81. 『YOUは何しに日本へ?』前立腺炎で日本語自転車旅を中断したスペイン人のYOU。マルコさんの場合
  82. 自転車EDという言葉がある以上、自転車インポテンツはありえる事態
  83. ロードバイククラブの飲み会で相談したら笑い飛ばされた
  84. 自転車ED対策。お金で解決する方法。サドルを変える
  85. アウタートップの「ダンシング縛り」練習
  86. 「インナーロー縛り」練習
  87. ロードバイクでスプリントを決めるのは、ランニングの「ブレーキ筋」という矛盾
  88. 一流選手の身長・体重を検証してみる
  89. 競輪は短距離走。ツール・ド・フランスは長距離走
  90. 結論。両立は難しいものの、上位には入れる
  91. 二股かけた浮気な恋愛は、捨て身の一途な恋にかなわない
  92. 黒人選手がロードバイクの世界で勝てない最大の理由は「団体競技」だから
  93. チェーンが剥がれた実体験。壊れたチェーンはただのゴミ
  94. 旅サイクリング。ロードバイク大遠征でチェーンが壊れたらゲームオーバー
  95. ロードバイクで「ドライジーネごっこ」
  96. 自転車の歴史
  97. ロードバイクは、持参すべきものが多い乗り物
  98. リカンベント型自転車
  99. 『ペニー・ファージング型(ダルマ自転車)』ギア比の魔法以前の自転車
  100. ジョブズはパソコンを「コンピューターは知の自転車だ」とたとえて表現した
  101. 一番移動効率がいいのはコンドルというのは間違いではないか?
  102. そもそもスピードを無視した運動効率なんてありえない
  103. 限定し、条件を絞れば、トップに立つのは簡単
  104. 運動というものはスピードを出すために膨大なエネルギーを惜しげもなく使うものだ
  105. 言葉というのは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が重要

人事異動によって勤務先が変更になった

サラリーマンの皆さんには、人事異動っていうものがありますよね。職場の一方的な都合である日突然予想もしなかった人事異動の辞令をもらうことがあります。「××に勤務を命ずる」という辞令によって、これまでの生活がガラリと変わってしまいます。天国と地獄、これはサラリーマンの宿命と我慢せざるをえないところがあるでしょう。

「外国に勤務を命ずる」とかって話であれば、これはもう引っ越すしかないということになります。問題は国内です。片道15km程度の勤務地に転勤を命ぜられたらどうしますか?

片道15キロです。引っ越しするには近すぎますよね? 50kmも離れていれば、いっそ引っ越しも視野に入れると思いますが、15kmでは引っ越しまでする気にはなれません。

電車、もしくはバスがあれば、それを使いたいところです。しかし私の場合、田舎町だったため、公共交通機関を使うことができませんでした。新しい勤務先に電車はありませんでした。バスは通っていましたが一時間に二本程度のバスであり乗り換えも必要です。毎日使うにはあまりにも不便なのでした。

田舎町ではクルマこそが移動の王者です。クルマさえ持っていたら何も悩むことはなかったはずです。迷わず車通勤にしたと思います。しかし私は車のオーナーではありませんでした。

いっそ、クルマを買うか?

そこまで考えました。実際、同じ勤務先に人事異動になった同僚は、通勤のために新しく軽自動車を買いました。会社から通勤相当のガソリン代は出ますが、車本体の購入は自腹です。職場の人事異動のせいでクルマを買わなきゃいけないなんて、なんだか納得できません。転勤までは許せるとしても、そのためにクルマを買わなければならないとすれば影響が大きすぎます。

いっそ走ろうかとも思いました。当時、私はマラソンを2時間台で走ってしまうようなアスリート系の市民ランナーでした。脚力には自信がありました。片道15キロぐらいならマラソンランナーなら走れないこともないかも? と思いました。

が、しかし思い直しました。走るだけならまだしも、職場に着いてから仕事をしなければなりません。残業だってあります。とても体がもたないと判断しました。通勤は日常です。往復で30km走るというのは、その後に仕事をしなければならないことを考えると、さすがに毎日はきついと冷静に判断しました。

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通勤ルートの検討。通勤自転車の検討

悩んだ末、私は自転車で通勤することにしました。そう覚悟を決めると、なんだか新しい自転車生活を想像して急にわくわくしてきました。人事異動という外圧によって、人生の新しい扉が開けるような気がしました。

まずは脳内シミュレーションです。自転車通勤ルートを検討してみました。新しい職場を地図で調べると、河川敷ぞいにありました。河川敷にはサイクリングロードが整備されています。どうやらこのルートで通勤できそうでした。

そして通勤用自転車として、すでに所有しているシティサイクルを選ぶか、マウンテンバイクを選ぶか、クロスバイクを選ぶか、ロードバイクを選ぶか、いろいろ検討しました。

この本はロードバイクに関する本ですが、冒頭にシティサイクル・ママチャリについて述べています。もしかしたらあなたの場合、通勤自転車にロードバイクを選ぶべきではないかもしれません。ロードバイクを選んだ場合、シティサイクルからは想像もできなかったような問題が発生する可能性があるためです。高価なロードバイクを購入する前に、以下のことをよく検討してみましょう。

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そもそも勤務先で自転車通勤を受け入れてもらえるか?

そもそも新しい勤務先でロードバイク通勤を受け入れてもらえるかどうか、まず確認しましょう。勤務先に自転車置き場がないと、どうしようもありません。

私の場合は、一般の駐輪場ではなく、屋根のある車庫にロードバイクを隠して保管することができました。車庫の柱にいわゆる「地球ロック」をかけて仕事中は保管することができたのです。

もしも新しい職場にロードバイク通勤の実践者がいるなら、この機会にぜひお知り合いになって、いろいろ教えてもらいましょう。

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盗難問題

ロードバイク通勤の問題のひとつに盗難があります。高価な割に軽くて運びやすく解体して転売しやすいのでロードバイクにはいつも盗難される危険がつきまといます。ロードバイク盗難を避けるには「自転車を降りない」「目を離さない」のが一番ですが、仕事中はそういうわけにはいきません。職場でロードバイクが安全に駐輪することが可能かまずは確かめてください。

高価なロードバイクの駐輪は、人目のつかない場所で、地球ロックができるかどうか確かめてください。地球ロックとは、大地と一体化して絶対に動かないものにロードバイクを固定する鍵のかけ方を言います。たとえば電信柱とかガードレールにチェーンでくくりつければ泥棒は何かを破壊しないかぎり、バイクを盗むことができません。

またその場所に屋根があるといいですね。通勤時は晴れていても、仕事をしている間に雨が降ってくるかもしれません。ロードバイクはチェーンや変速ギアなどが剥き出しなので雨に弱いという弱点があります。雨に打たれて潤滑油が落ちてしまうとスムーズなコンポーネントの動きを阻害します。

来客用の一般駐輪場に停めるのもおすすめできません。隣の自転車が風で倒れたりするからです。帰社するころにはあなたのロードバイクは傷だらけになってしまっているかもしれません。人目につかない場所にこっそり隠すように保管できなければ、ロードバイク通勤は諦めた方がいいかもしれません。

もしロードバイク通勤ができる環境にあってそう決めたのならば、通勤ロードバイクの価格帯はおのずと決まってくるでしょう。ロードバイクの完成車の価格は高級なものになると軽自動車なみです。そもそも車を買いたくないから自転車通勤にしたわけですから、そんなにお金はかけられません。盗難保険もありますが、基本的には盗まれてもあまりガッカリしなくて済む価格帯のロードバイクを選ぶべきでしょう。初心者の場合エントリーモデルのアルミバイクでじゅうぶんです。高価なカーボンバイクを選ぶ前には熟考すべきでしょう。

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汗問題

ロードバイク通勤は汗だくになります。特に夏はしたたるほど汗をかきますので、汗の処理をクリアできないとロードバイク通勤はできません。職場でシャワーは使えますか? 更衣室はあるでしょうか?

また仕事中は通勤とは別の服に着替える必要が出てきます。

私の場合、職場でシャワーの利用はできませんでした。そのかわり汗は「使い捨ての制汗ペーパータオル」で拭いて処理しました。更衣室があったので、全裸になってパンツまで全部着替えるということをしていました。

片道15kmもあると着替える前提でないとロードバイク通勤は難しいでしょう。汗で仕事に支障をきたします。また大量の着替えを置いておくスペースが職場にありますか?

私の場合、毎日、着替えをバックパックに背負っての通勤となりました。雨の日もあるために、大量の着替えストックを職場に置いておく必要がありました。雨の日はバックパックを背負わなくてもいいように、晴れた日に着替えをよぶんに職場に運び込んでいました。その大量の着替えを確保できるスペースが職場にあることが重要です。

しかし雨が続けば、たとえ雨の日でも中身を濡らさないようにして職場まで着替えを持っていかなければなりません。

雑誌で見かけるようなスーツに革靴で自転車通勤なんてとんでもありません。クロスバイクで片道5kmぐらいならばスーツと革靴で通えるかもしれませんが……。

ですからどうしたってワイシャツやスラックスなどの着替えを運びながら通勤する必要があるのです。片道15km以上だと基本的にはスポーツする格好で通勤したほうがいいでしょう。私の場合、最終的には週末ホビーレーサーとまったく同じ格好で通勤することになりました。家のご近所さんには、とてもこれから仕事に行くようには見えなかったと思います。

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パンク問題

ロードバイクを購入する前に考慮すべきことはパンクの問題です。ロードバイクはパンクします。会社の始業時間に遅刻する危険性があるのです。ギリギリで通勤するわけにはいきません。ギリギリの時間だとパンク即遅刻です。趣味ではなく仕事ですから、遅刻するわけにはいきません。通勤中にパンクしたらどうしますか?

そのためには余裕のある時間に家を出なければなりません。そしてパンクを自分で修理できるスキルを身につけることが絶対条件になります。

さいわいにして、汗問題とパンク問題は「時間に余裕をもって早く家を出る」ことで一挙にクリアすることができます。

パンク修理は通勤初日までに慣れておかなければなりません。ロードバイクは「パンクセット」を持参して走ることになります。「タイヤチューブ」と「タイヤレバー」と「携帯空気入れ」を常に身に着けて走るのです。「自転車に乗るのに、空気入れを持ち運ばなければならないなんて」と、最初はもの凄く違和感がありました。しかしそうしなければならないほどロードバイクはよくパンクします。

パンク修理はそう難しいことではありませんが、慣れてもそこそこ時間がかかるものです。通勤の場合、パンク修理することを前提に、早めに出勤しなければなりません。

私の場合、通勤ロードバイクをはじめて一週間でタイヤがパンクしました。この頻度でパンクしてはとてもロードバイク通勤はできないと絶望しました。そのトラウマから、前輪、後輪がパンパンと音をたてて同時にパンクするという悪夢に夜中うなされたことがあります。実際には週一ペースでパンクするようなシロモノではないとわかりましたが、とにかくロードバイク通勤ではパンクのことはよく考えておかなければなりません。

パンクする前提で通勤しないと、遅刻常習者ダメ社員のレッテルを貼られてしまいます。

 

 

冬(寒いよ)、夜(暗いよ)、雨(冷たいよ)、虫害(キモイよ)の四重苦に耐えられるか?

ここでは通勤バイク三重苦を定義したいと思います。通勤自転車三重苦とは、冬(寒いよ)、夜(暗いよ)、雨(冷たいよ)のことです。

通勤というのは春夏秋冬ありますから、季節が非常に気になります。外界に敏感になるといってもいいでしょう。夏はまだいいほうです。ロードバイクは空冷効果で夏でもあんがい涼しいからです。基本的にロードバイクというのは夏の乗り物ではないでしょうか。雨に打たれても冷たくないし、どうせ雨に打たれたぐらい汗をかきますので問題になりません。

夏の問題は日焼けです。地面からの照り返しでロードバイク乗りの顔は真っ黒になります。ロードバイクは風の抵抗を避けるため、スーパーマンが空を飛ぶような格好で下を向いて走ります。すると地面からの照り返しを直で顔にうけることになります。通勤というのは毎日の往復ですからケアしないと確実に日焼けします。私は顔にシミができてしまいました。

問題は冬です。冬は寒く、そしてはやく暗くなります。冬の雨は、体の芯まで冷やします。ロードバイク通勤をやめたくなるのは、おそらく冬に三重苦に遭ったときです。

三重苦を乗り切れないかぎり、通勤バイク生活は成り立ちません。私の場合の対策を書いておきます。

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冬(寒いよ)対策。

冬の寒さ対策ですが、手袋と靴下は「二枚重ね」で対処しました。ビンディングシューズの空冷用の穴はガムテープで塞いでしまいました。あとはとにかく着込むだけです。「寒いよりは暑い方がまし」と思ってダルマのように着込んで乗りました。そうしないと家から外に出る気力がそがれてしまいます。通勤ですから「今日は走るのやめよう」というわけにはいかないのです。

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夜(暗いよ)対策。

川の土手がメインの通勤コースだったので、自前のライトがないと完全に真っ暗で、まるで宇宙を走っているようでした。コズミックライディングです。足元は完全な暗闇なので、どこを走っていいのか走路がまるで見えません。一灯体制だと電池が切れたら完全にアウトでした。ツールボックスには常に予備の電池を入れていました。そして自転車用の「外付けライト」と登山用の「ヘッドライト」を併用することで対処しました。二灯体制にしたので、視界が確保できました。とくにヘッドライトは目線の向いた方向を照らしてくれるので非常に便利です。

タヌキか、何かよくわからない動物を轢きそうになったこともありました。目だけが光った小動物が、暗い走路上を歩いていたのです。避けられず、小動物をひいていたら、こちらも転倒していたでしょう。夜のロードバイクはあまり飛ばすと危険です。子どものおもちゃが放置されてあったり、侵入防止ポールがあったりするからです。

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雨(冷たいよ)対策。

雨対策は、いろいろ手段を考えましたが……結局、雨具を着るしかありません。モーターバイクならば屋根つきバイクがありましたが、自転車にはありません。自分が雨具を着込むしかないのです。

クルマの何よりも素晴らしいところは雨に濡れなくてもすむというところです。逆にバイクの最大の欠点は雨が降るとライダーが濡れてしまうということです。

通勤バイクの雨具の考え方は二通りあります。どうせ濡れてしまう前提で安物の使い捨ての雨具をつかうか、できるだけ濡れずに快適であるように、ゴアテックスのような高価な素材をつかうか、どちらかを選ばなければなりません。

私は夏の通勤バイクでは、どうせ濡れてしまう前提で、安物の使い捨ての雨具をつかっていました。冬はできるだけ濡れずに快適であるように、登山用のゴアテックスの雨具を使っていました。

自転車通勤にはこのように「使い分ける」という発想が重要です。

雨の日はスリックタイヤが滑ります。ブレーキもリムが濡れて効きが悪くなります。風に飛ばされて路肩にたまっていたガラス片などが雨水に運ばれるため、パンクの危険度が高まるといわれています。速く走ることだけを考えてつくられたロードバイクは、雨の日に走行することなど設計に入っていないのです。

だから私の場合は「使い分ける」戦略を駆使しました。上記のとおり夏と冬では雨具も変えましたし、雨の日は「パンクしない自転車」、晴れの日は「ロードバイク」と、自転車そのものを使い分けることまでしました。このことは後述します。

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自転車通勤になると、最大の関心ニュースは「あしたの天気」になる

自転車通勤をはじめると明日の天気が非常に気にかかるようになります。

私のロードバイク通勤時代は、毎日がまるで登山をしているようでした。出勤前に雨合羽を着込んで外に出る準備をするさまは、まるで山小屋の朝のようでした。

私は登山もやるのですが、山小屋でもっとも大切な情報は明日の天気予報です。往復30kmの自転車通勤をはじめると、まるで登山家のように最大の関心事は「あしたの天気」になります。

私の場合は雨か晴れかで出勤時間(家を出る時間)が変わっていたほどでした。

このように鉄壁の準備で備えた三重苦(冬、雨、夜)ですが、実際に耐えられなかったのは、予想もしなかった敵でした。世の中にはやってみなければわからないことがあるのです。

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通勤ロードバイク無理!! 最悪の虫地獄(虫害)実体験記

通勤バイク生活の最大の障害、それは虫でした。

私は河川敷のサイクリングロードが主たる通勤経路だったのですが、川の土手にはある時期、小さな虫がトルネードのような蚊柱をつくって舞うのです。それはものすごい大群でした。

ここで重要なのは虫の種類や名前ではありません。ロードバイクの走路上に、小さな虫が蚊柱となって立ちふさがっているということです。

ものすごい数の蚊柱でした。進めど進めど虫が飛んでいました。そこにロードバイクで突っ込むのは、まるで砂嵐の中に突っ込んでいくようなものでした。全身に虫がくっつきます。ヘルメットのくぼみなどは黒い虫でひどいことになります。前を向いて息もできません。口を開けたら虫が飛び込んできます。キモチわるい……。

あまりの虫の嵐に、とうとう私はロードバイクを止めました。寒冷暗の三重苦でも走り続けた私のロードバイクはとうとう止まったのでした。通勤バイク生活で、虫害が一番耐えられませんでした。冬の三重苦よりも無理でした。これは実際にやってみなければ想像もできなかったことでした。

市街地ロードバイク通勤の人は信号など別の不快要件があると思いますが、川の土手などを通勤ルートにしている人は虫地獄がありえると経験者として警鐘を鳴らしておきます。

ママチャリとは頂点の自転車のこと

ここでは通勤自転車のマシンとしてロードバイクと双璧だと私が考えているシティサイクル(ママチャリ)について考えをまとめています。私がママチャリへの愛を自覚するようになったのは、実際のところ、ロードバイクに乗るようになってからです。これまで何気なく乗っていたマシンがどれほどすばらしいものだったのかを対極にあるロードバイクによって知ることになったのでした。

漫画『弱虫ペダル』にはロードバイクは「頂点の自転車」だと紹介されています。たしかにスピードのためにすべてを取っ払って走ることだけを考えたロードバイクは究極の自転車です。走るために生まれた自転車、それがロードバイクです。レース用ロードバイクは走る以外のすべてを取っ払って軽量化しています。ライトも反射板もありません。ベル、スタンド、フェンダーもありません。速く走るためには関係のない装備は一切ついていません。タイヤはすごい空気圧でカチカチになっています。サドルはお尻がダイナミックに動かせるように小さく固くなっています。ペダルと靴はビンディングシステムで一体化しています。専用のビンディングシューズは自転車を下りて歩くことをまるで考慮していません。コンビニでカチャカチャ靴音を鳴らしながら変な歩き方するロードバイク乗りを一度は見たことがあると思います。ロードバイクは速く走ることしか考えていません。速さの極み。その頂点の自転車に乗っている私が、どうして「ママチャリ」への愛を語るのでしょう。

中庸を知るには、極端を知るのが近道です。たとえば登山は都市生活とは真逆ですが、登山をすれば日常生活のすばらしさを実感することができます。蛇口をひねれば水が出ることがどれほど快適か知ることができます。日本の暮らしの素晴らしさを知るには、海外を放浪するのが一番です。言葉が通じて暮らしていくのに不安がないということがどれほどすばらしいサービスか、日本の暮らしに慣れきっている人には自覚できないでしょう。常にパスポートを持ち歩かなければならないことがどれほど面倒くさいことかわかりますか?

同じようにロードバイクは極端な乗り物です。この極端な乗り物と比べることでママチャリのすばらしさは際立ちます。みなさんはママチャリがどんなに優れているか自覚しているでしょうか。生まれた時からこの自転車に乗っていると、この自転車のすばらしさはわかりません。

「ママチャリがなければマウンテンバイクに乗ればいいじゃない」というのは「パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃない」というのと同じことです。とんでもありません。マウンテンバイクにママチャリの代わりはつとまりません。

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ママチャリと比較してわかる。「ロードバイクは面倒くさい」

もともと私がロードバイクに乗ったきっかけは通勤でした。片道15km往復30kmの距離がありました。どうせなら「これまでと違う世界を知りたい」冒険心で、ロードバイクを購入し、自転車通勤を始めたのです。

最初、私がもっとも違和感を覚えたのは、空気入れを持参して乗ることでした。ママチャリにしか乗ったことのない人は信じられないと思いますが、ロードバイク乗りはパンクにそなえて空気入れをいつも持ち運んでいるのです。

ロードバイクは面倒くさい乗り物です。定期的にオイルをさしたり、清掃や整備も必要です。愛がなければ乗れません。

雨の日は悲惨です。ホビーレーサーならば「雨の日は乗らない」という選択ができますが、自転車通勤だと雨でも乗るしかありません。会社に行くわけですから、雨を避けては通れません。

ママチャリには泥よけ(フェンダー)がついています。これがどれほど素晴らしいかは、タイヤ剥き出しのロードバイクやマウンテンバイクに乗ってみないとわからないと思います。私が「マウンテンバイクにママチャリの代わりはつとまらない」というのはこのためです。

自転車というのは泥除けがついていてあたりまえだと思ませんか? 私はそうでした。生まれてはじめて乗った自転車がシティサイクル(ママチャリ)で、ずっとシティサイクルに乗ってきましたので、泥除けや前カゴや前照灯が初期装備されているのは「あたりまえ」のことだと思っていました。

ところが泥除けのないロードバイクで雨の日に走ると、タイヤが雨水を跳ね上げて背中がビショビショになります。泥水を跳ね上げると背中が真っ黒に汚れます。

またロードバイクはツルツルのスリックタイヤを使っているため、雨の日は制動に難があります。速く走るための自転車なのに、雨の日には速く走れないということになるのです。これでは何のためにロードバイクに乗るのかわかりません。

チェーンカバーがないため、雨に打たれたらチェーンにオイルをささなければなりません。メンテナンスを怠ると、チェーンがギシギシして速く走れなくなってしまいます。それはスピードがすべてというロードバイクのレーゾンデートルを脅かすことになるのです。

結局、晴れた日はロードバイクで、雨が少しでも降りそうな日はママチャリで。と私は二台の自転車を使い分けて、バイク通勤することになりました。颯爽たるスポーツ自転車通勤を夢みていたのに、結局、私はママチャリを手放せませんでした。

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ママチャリは人類の英知がさりげなく盛り込まれている頂点の自転車

現在あるシティサイクルというのは、突然出来上がったものではありません。

現在、私の愛車マミーバイク(ママチャリ)には、シマノのレボシフトという抜群の正確性をもった6段変速ギアがついています。このギアがないとどういうことになるか知っていますか?

ディズニー映画『ターザン』で、ジャングル育ちのターザンに人類の文明についてジェーンが教えるシーンがあります。そこに『ペニー・ファージング型(ダルマ自転車)』と呼ばれる前後のホイールの大きさが全然違う自転車がでてきます。巨大な前輪と小さな後輪。なんであんな自転車が存在したのかというと「変速ギアがなかったから」です。

現在の自転車は変速ギアやチェーンのお陰で、ペダルを一回転させると、後輪ホイールをその何倍も回転させることができます。これをギア比といいます。

しかし変速ギアやチェーンがないと、ペダル一回転で前輪ホイールが一回転するだけです。その条件で速く走るためには、ホイールを大きくするしかありません。回転数(ピッチ)が決まっている中で速く走るためには円周長(ストライド)を伸ばすしか方法がありませんでした。

すこしでも速く走るために開発された過渡期の自転車が『ペニー・ファージング型』自転車でした。しかし車輪を大きくするあまり、サドルが高く、足が地に着きませんでした。落車したら高いところから落ちることになるので非常に危険な乗り物でした。

それに対してママチャリは簡単に足が着くため安全です。万が一、自転車が倒れても、大切な変速ギアを守るためのガードがさりげなく付いています。まったくなんという細やかな心づかいでしょうか。

チェーンカバーもついているのでズボンでも乗れます。カバーのないクロスバイクで通勤しようと思ったら、足首に裾バンドを巻かなければスーツのスラックスが巻き込まれて真っ黒になってしまうでしょう。スカートの巻き込み防止用ガードまで着いているものもあります。女性でも乗りやすいようにトップチューブが低く、またぎやすい構造になっていたりします。

前照ライトもハブダイナモの充電式です。暗くなると勝手に点灯します。それに対してロードバイクの外付けライトは電池式です。通勤バイクとして使うためには不意の電池切れに備えて乾電池まで持ち歩かなければ残業に対応できません。

最強の頑丈さ。メンテナンスフリーにも関わらず、価格も安く、盗難被害にも遭いにくい。人類の英知がさりげなく盛り込まれている頂点の自転車。それがママチャリなのです。これを愛さずにいられましょうか。これを通勤自転車の候補に選ばないなんてことは考えられません。走行距離が短ければ、通勤バイクはママチャリ一択といっても過言ではありません。

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通勤バイクライフ。晴れの日はロードバイク、雨の日はパンクしないシティサイクル

往復30kmの通勤バイク生活を、晴れの日はロードバイクで、雨の日はパンクしないシティサイクルで私は通勤することに決めました。試行錯誤の結果でした。ロードバイクの疾走感、爽快感も大切ですが、通勤バイクは信頼度が最重要です。

問題は雨の日でした。ロードバイクは駆動系コンポーネントが剥き出しのため雨に弱いマシンです。スリックタイヤも雨に弱い。どうせ雨の日はスピードを出せないので、ロードバイクに乗る意味があまりないのです。

そういったわけで雨の日にはロードバイクではなくパンクしない自転車で通勤していました。

結局、私は自転車二台体制で春夏秋冬の通勤バイク生活を乗り切りました。晴れの日はロードバイク。雨の日はママチャリです。二台はまるで違う乗り物でした。これは気分転換にもなって楽しかったです。

私はロードバイク乗りですが、もしも一台だけしか自転車を所有できないとしたら、パンクしないタイプのママチャリを選ぶと思います。それほどパンクしない自転車の信頼度は絶大でした。

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東日本大震災でママチャリを買って帰宅した賢者たち

2011年3月11日。東日本大震災がありました。その時のニュースで、驚いたことがあります。電車交通がマヒした東京都内で、サラリーマンたちは家に帰れず、会社に泊まったり、どこかで仮眠して朝まで過ごす人たちが大勢いました。

タクシーで帰る人もたくさんいました。しかしタクシー乗り場は大渋滞でした。いつ自分の番が回ってくるかわかったものじゃない状態でした。

ニュースで知ったのですが、そんな中、自転車を買って帰ったという人たちがいたそうです。ホームセンターなどの自転車が売り切れになったとニュースになっていました。世の中には賢い人がいるもんだなあと感心しました。私にはそういう発想はありませんでした。自転車というのは10年ぐらいは乗りつづけるはずの高価なもので、使い捨て感覚のものではなかったからです。

しかしよく考えてみれば、1台3万円ぐらいあればママチャリは買えてしまいます。都内から自宅までタクシーで帰るよりも安いかもしれません。おまけに震災当日は車は大渋滞でした。自転車ならタクシーよりも早く家に帰れたかもしれません。。距離20kmぐらいならば、たいしたことはありません。道さえ間違わなければ、自転車で家に帰れます。

緊急事態に「会社帰りにちょっと自転車を買って帰る」という自分にない発想をした人たちのことを「賢者だなあ」と驚いたことを今でもよく憶えています。

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自転車で日本一周するならママチャリを選ぶ

「YOUは何しに日本へ」というテレビ番組があります。その中で、日本語を学びながら自転車で日本を一周するというドイツ人を追いかけていました。自転車もテント泊も初心者という無茶な男でした。

しかしそのドイツ人はクロスバイクの固いサドルで尿道炎になってしまい旅が中断してしまいました。もしもママチャリだったならば柔らかく大きなサドルなので、尿道炎にはならなかったのではないでしょうか?

ロングライドの場合、どうせスピードなんて出さないのだから、ノーパンクタイヤのママチャリの方がいいと思います。ロードバイクで日本一周なんて、何回パンク修理することになるんでしょう。私だったら考えただけでウンザリします。

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ママチャリは安心、快適

ママチャリには標準装備で前かごがあります。また荷台に荷物を括りつけることもできます。ロードバイクならば背中に背負っているザックも前かごに入れれば快適です。

タイヤの泥よけや、ハブダイナモや、スカートの巻き込み防止(ドレスカード・ドレスカバー)など、叡智の結晶なのがママチャリです。ついでにノーパンクタイヤであれば、これ以上の乗り物は他に思い浮かびません。クルマがなくてもママチャリさえあれば、なんとか生きていけるのではないか。私はいつもそう夢想するのです。

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自転車は道路交通法上は「軽車両」として扱われ、車道を走るのが基本

自転車は道路交通法上は「軽車両」として扱われ、車道を走るのが基本です。ママチャリ乗りは歩道通行が基本と思っている人もいるかもしれませんが、実は例外です。

そのことはロードバイクに乗るようになるとよくわかります。ロードバイクで歩道なんて走れません。それがロードバイクの大欠点でもあります。車道は、危険です。日本の道路は自転車のことなんて考えていないので、居場所がありません。

せっかく歩道があるのにそこは走れない。しかし車道は狭くて危ない。ロードバイクはオートバイと違ってすべての車に抜き去られる交通弱者です。大型トラックなんかに追い越されるときには、死ぬ恐怖をあじわうことになります。

正直、怖くてロードバイクでは走れないような道がたくさんあります。そういうときにロードバイク乗りは歩道を走っているママチャリをうらやましく思うのです

ちなみに自転車が例外的に歩道を走っていい場合というのは、

※自転車通行可の標識があるとき

※交通量が多いとき

※道幅が狭い等安全確保のため必要な場合などやむをえないとき

が該当するそうです。

実際のところ、ほとんどの日本の道路は「道幅が狭い等安全確保のため必要な場合などやむをえないとき」に該当するのではないかと思います。それほどこの国には狭い道がたくさんあります。

私はロードバイクで歩道を走ったことはありませんが、ママチャリでの歩道通行を気にしたこともありません。よほど人混みの歩道でないかぎり、ママチャリで歩道を走って警察に捕まることはないと思います。毎日のように警察の前の歩道をママチャリで走っていましたが、一度も注意されたことはありません。

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雨の日の通勤バイクにママチャリを選んだ理由

さて、このようなママチャリですが、私が雨の日の通勤バイクにママチャリを選んだのには理由があります。

ロードバイクが雨に弱いマシンだという理由の他に「河川敷の自転車専用道路を通るよりも便利な、市街地のショートカットルートを発見した」ことがありました。

この発見は大きかったです。車さえ通らないようなマイナーな狭い裏道を、ときには歩道を走りながら、たくさんの交差点を曲がって、斜めにショートカットして勤務地まで通っていました。この道は逆にロードバイクでは選べません。

そして晴れた日は河川敷の自転車道をスピードを出して通いました。多少距離が長くなっても、信号もありませんし、曲がり角でスピードが落ちることもないので、このルートの方が時間的には早く職場に着くことができたのです。

往復30km以上あるような遠距離通勤の場合は、いっそロードバイクとママチャリという極端な自転車の二台体制にして天候によって乗り分けた方が、通勤バイク生活を攻略できるかもしれません。ご参考までに。

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たまに乗ろうとするとママチャリはいつもパンクしている

もうすこしだけママチャリの話しをつづけます。たまに乗ろうとするとママチャリっていつもパンクしていると思いませんか? 私の場合はいつもそうでした。

たとえば普段、歩いて通勤している人が、遅刻しそうだから珍しく自転車で行こうと思って漕ぎだすとパンクしていて「ガッデーム! サノバビッチ!」と叫んで自転車を放り投げて駆けだすといった経験は誰しも一度はあるのではないかと思います。

つねに乗っているとそうでもないのですが、普段使わない人がたまに使おうとすると、ママチャリはいつもパンクしています。だからひじょうに印象が悪く、ますます自転車から遠ざかってしまうんですよね?

ロードバイク乗りになって、自分で自転車を整備するようになって、どうしてあんなにママチャリはたまに乗ろうとするといつもパンクしているのか、原因がわかりました。

自転車のタイヤ(の中のチューブ)というのは、じつは常に少しづつ空気が抜けているのです。だからたまに乗ろうとすると常に空気が抜けきっているというわけです。

またさらに悪いことに空気のゆるい状態の自転車に乗ると、タイヤの中のチューブが体重で押し潰されて、パンクしてしまうのです。チューブが内側の金型(リムといいます)と潰れたタイヤに挟まれて、ホチキス(ステープラー)されたようなカタチになるのです。これをリム打ちパンクといいます。名前がついてるぐらいですから、ありふれたパンクです。これが「たまにママチャリに乗ろうとするといつもパンクしている」という状態の謎解きです。

たまにママチャリに乗るときには、まず空気を入れてから乗らなければなりませんのでご注意ください。クルマと違って、自転車というのは空気入れでしょっちゅう空気を入れながら乗る乗り物なのです。

「遅刻しそうで急いでいるのに、空気なんか入れてる時間あるかよ!」という方にはパンクしない自転車を本当にお勧めします。私自身、何度もそういう経験をして、今では「パンクしない自転車」を愛用しています。

パンクしない自転車というのは、子供のオモチャ三輪車をイメージしてもらえばわかりやすいのですが、そもそも空気で膨らませるチューブ式タイヤではないので、空気が抜けるということがないのです。

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ノーパンク自転車のメリット・デメリット

パンクしない自転車の信頼感は絶大です。どんな悪路を走行しようとパンクしません。マウンテンバイクよりも悪路に強いといっても嘘ではありません。比較的パンクに強いマウンテンバイクもパンクはします。しかしノーパンク自転車はどんなに段差があろうとも、ガラスの破片があろうとも、パンクしません。とくに通勤のようにぜったいに遅刻できない用途で使用する場合には、パンクしない自転車を本当におすすめします。

デメリットとしては、ノーパンク自転車は空気が入っていないために、乗った感じが「かたい」と感じる人がいるそうです。

ノーパンク自転車の「かたい」感触は、ロードバイクに近いものがあります。ロードバイク乗りなら、普段から7BAR以上のカチカチのタイヤに乗っているので、ノーパンク自転車の乗り心地を「かたい」と感じることはありません。

これまでにママチャリにしか乗ったことがない人は、ノーパンクタイヤを固いと感じるようですが、しょせんは慣れの問題です。むしろロードバイク乗りにとっては、ノーパンク自転車は慣れた感触に近い乗り心地だといえるでしょう。

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自転車業界の闇? ノーパンク自転車の値段が高い理由

パンクしない自転車は、ノーマルな自転車に比べて「価格が高い」というデメリットもあります。これについては、こんな話があります。

街角の個人経営の自転車屋さんというのは、基本的にママチャリのパンク修理がメインの収入源なんだそうです。ロードバイク乗りは自分でパンク修理してしまうために、彼らの顧客ではありません。

ノーパンク自転車が普及すると、主たる収入源がパンクの修理代金なのですから、自転車屋さんがメシの食い上げになってしまいます。だからノーパンクタイヤは「値段が高い」ことで、ロードバイクのような一部の人の需要あつかいとなり、自転車業界内で折り合いをつけて販売されているという噂です。パンクしない自転車に対する「乗り心地がわるい」という悪評もこれが原因だという噂もあります。町の自転車屋さんとしては「あまり売れてほしくないタイプの自転車」なんですね。

一般大衆がそれほど乗っているとはいえないロードバイクと同様に、ママチャリを駆逐さえしなければ、自転車屋さんからパンク修理の仕事を奪いとることはありません。本当かどうかわかりませんが、私はこの話しを自転車屋さんから直接聞きました。

パンクしない自転車がそれほど普及しないのには理由があります。しかし我々通勤ライダーにとっては関係のない話しです。乗り心地はロードバイクに近く、絶対にパンクしないわけですから、ロードバイク乗りのサブマシンとしては事実上一択ではないでしょうか。

通勤サブ自転車にはノーパンク自転車をおすすめします。信頼感は絶大です! その信頼性を買いましょう。

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ママチャリ・ダンシング最強伝説

ダンシングという自転車のテクニックがあります。いわゆる「立ち漕ぎ」です。ロードレーサーがゴール前スプリントのときにやっている、サドルから尻を上げて、車体を左右に振りながら前に進む、競技自転車特有のテクニックです。坂道などで誰に教わるともなく立ち漕ぎしている人は多いと思います。

自転車はペダルを漕がないと前に進まないと思っている人がいます。しかし実はそうではありません。ペダルを回さなくても、ハンドルを左右に振って車体を揺らせば自転車はクネクネと前に進んでいきます。ヘビのように蛇行すればペダルを踏まなくても自転車は前に進んでゆくのです。

ペダルに比べれば大した推進力ではありませんが、一秒でも、一瞬でも速く、たとえ一センチでもライバルよりも先にゴールラインを切るつもりで走るのならば、この蛇行走法を使わない手はありません。

だからゴール前でロードレーサーは車体を左右に振るのです。鮭が身をよじりながら渓流を登るように、自転車乗りも体を左右によじって全身の力で前へと進むのです。

スピードを出すための最終形態。このたち漕ぎ+車体をよじるテクニックのことを「ダンシング」と言ったりします。

このダンシングですが、ロードバイクでやるのはすこし技術が必要です。フレームのトップチューブが高い位置にあるために、車体をよじると内股が引っかかってしまいます。トップチューブが内股にぶつからないように、ロードバイクをよじらなければならないのですが、ある程度の技術が必要となってきます。

ところがママチャリだと簡単にダンシングができます。またぎやすいようにトップチューブが低い位置にある(トップチューブがない場合もあります)ので、内股にぶつかる心配がありません。車体はよじり放題です。このママチャリのフレーム形状をオープンフレームとかローステップフレームとか呼びます。

普通ばきの靴を履いているので、足首の自由度があることもママチャリ・ダンシングには有利に働きます。ロードバイクのビンディングシューズは足首を固定しているので、自由度が低いためにダンシングには更なるテクニックが必要になります。

ロードバイク乗りは、どうしてもマシンの価格とか性能を語りたがります。その気持ちはよくわかります。かくいう私もディープリムホイールを履いた改造ロードバイクに乗っていますから。

しかし実際のところ、オートバイじゃないんですから、「自転車のエンジンは人間だ」ということをこの際はっきりと認識すべきではないでしょうか。

たとえば私は総額18万円ぐらいのロードバイクに乗っていますが、堀江貴文さんがトライアスロンで乗った100万円超のバイクをぶち抜く自信があります。スピードは乗っている人次第なのです。逆にクリストファー・フルームやペテル・サガンが乗ってるママチャリには、きっと勝てないでしょう。モビルスーツじゃないんですから、そんなに機材でスピードは決まりませんよ。乗っている人間が、自転車の性能を決めるのです。

「自転車の性能の差が戦力の決定的な差でないことを……教えてやる」

そのぐらいの気持ちで乗れば、ママチャリだってロードバイクと並走できますよ。信号の多い市街地ならば「車よりも自転車の方が早い」というのは嘘ではありません。乗っている人次第ですが、ママチャリだって車と並走できます。いや、その気ならクルマを追い抜けます。挑戦してみてください。

頂点の自転車ママチャリで、車よりも速く走ろうとするならば、このママチャリ・ダンシングは欠かせません。もしもクロスバイクやマウンテンバイクが前方にいたら、ママチャリの真の力を見せつけてやりましょう。むこうはプライドを傷つけられて、むきになって抜き返してくるでしょう。勝負です。

実際のところ、マウンテンバイクやクロスバイクぐらいならば、ママチャリで追い抜けます。マミーバイクの本当の力を見せつけてやりましょう。

ママチャリ・ダンシング最強伝説をつくるのは「あなた」です。ママチャリは遅いというのは、錯覚です。もしそうだとしたら、あなたの足が遅いのです。

 

 

はじめてのロードバイク購入。どんなバイクを、どこで買えばいいのか?

さて往復30kmの通勤をロードバイクで通うことにした私ですが、とにかくロードバイクを手に入れなければ、ロードバイク通勤ライフははじまりません。

人事異動の辞令が出てから二週間ぐらいでロードバイク生活をはじめる必要があったために、近所の自転車屋さんを二三件まわって、一番乗りやすい、安いロードバイクを安易に購入してしまいました。拙速な買い物だったな、と後に後悔することになる買い物です。

ここでは私の失敗談を通じて、ロードバイクの購入に際しての注意点を見ていきましょう。

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ロードバイクライフの未来を見据える

最終的にはスピードを競うシリアスなホビーレーサーになっていく私ですが、最初の通勤バイクを購入するときには、そうなっていく自分のロードバイク生活の未来をまったく見えていませんでした。市民ランナーのグランドスラム達成など「究める走り」をしてきた自分の経歴を考えれば、ランニングシューズがロードバイクに代わっただけで、同じようなルートを歩むだろうと容易に想像できたはずだったのですが、通勤のことで頭がいっぱいで先のことまで考えていませんでした。

未来の見通しがなく、目先の通勤のことしか考えなかったために、私の購入したロードバイクは、ホビーレーサーとしてトップクラスで競い合うにはスペック不足のマシンになってしまいました。そのことで後日、悩むことになります。

はじめてロードバイクを買う場合には、この先、自分がどんなロードバイクライフを送ることになるだろうか、よく想像してみることが大切です。

本当に通勤だけにしか使わないのか。もしも趣味でツーリングしたり、ロードバイククラブに入会してローテーションの練習をしたり、レースに出て競い合ったりする可能性があるのなら、最初の一台とはいえ安易に値段だけで決めてはいけません。

ロードバイク(のフレーム)には寿命があるという説を聞きますが、それは「売りたい人の理屈」でしょう。きちんとメンテナンスをすればそうそう乗り換えるようなしろものではありません。レース用と通勤用と二台持ちになる選択肢は多くの人にとって現実的ではありません。保管場所に困ることになりませんか?

大多数の人にとって、最初の一台目があなたのロードライフバイクのもっとも長きにわたるパートナーになることはほとんど間違いありません。だからこそ自分の生涯にわたるロードバイクライフの未来を見据えることを、最初の一台目を買うときからやっておかなければならないのです。

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やってはいけない買い方1。最安値のロードバイクを買う

さて、自分のロードバイクライフの未来を見据えることもなく、ただ目先の通勤のことだけを考えて、近所の自転車屋さんを二三件まわっただけで、最初のロードバイクを買ってしまった私の失敗例とはこのようなものです。

まずは最安値のロードバイクを買ってしまったという失敗があげられます。毎日通勤で使うので「セダン車で十分、レーシングカーはいらない」という考えで最安値のロードバイクを買ってしまいました。

しかしそもそもセダン車で十分なら、シティサイクルで通勤すればいいのです。ロードバイクというだけでレーシングカーです。それに乗ったからには「スピードが命」という宿命からは逃れられません。

ロードバイクは、速く走ろうとするほど高スペックのものが欲しくなります。これはもう宿命のようなものです。だったらある程度お金を払っても、はじめから満足のいく車体を選んだほうがいいと思います。私は最安値でなくてもよかったな、と後悔しました。

私のロードバイクのコンポーネントはシマノ最安値の「クラリス」だったのですが、いざロードバイククラブに入ると、クラリスなんか使っている人は周囲に誰もいませんでした。最低でも105。デュラエースが当たり前の世界でした。イオンバイクなんかに乗っていると、仲間に入れてもらえないかもしれません。せめて105クラスを買うべきだったかな、とかなり後悔しました。

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やってはいけない買い方2。試乗して、いちばん乗りやすいロードバイクを買う

私は試乗して、いちばん乗りやすいロードバイクを買ってしまいました。よさそうな買い方に思えますが、これが間違いでした。なぜだかわかりますか?

これまで脊柱を立てて乗るシティサイクルタイプの自転車しか乗ってこなかった人がロードバイクに試乗した場合、最も乗りやすいと感じるのは、小さいフレームのバイクなのです。上半身を立てた従来の乗り方でもハンドルに手が届くからです。結果として、私が「乗りやすい」と感じて購入したバイクのフレームは、一般的に身長や足の長さから適正といわれるフレームサイズよりはかなり小さいものでした。

試乗場所も、自転車屋さんの店内の試乗スペースをクルクルとゆっくり回っただけでした。通勤スピードで走ったわけではありません。速さには速さにふさわしいフォームというものがあります。ところが試乗の時はたいていゆっくりと乗るので、遅いときのフォームで自転車を選ぶことになります。初心者ほど前傾姿勢に慣れていませんので「試乗して乗りやすいロードバイク」を選ぶと、適正なフレームサイズよりも小さいフレームを選んでしまうことになるのです。

ゆっくり試乗してもじつはあまり意味がありません。屋外を通勤スピードで試乗させてもらうのが一番ですが、それが無理なら、むしろ身長や脚の長さから割り出した一般的なフレームサイズのものを購入した方が、あとあと後悔がないでしょう。

適正なフレームサイズについては、身長や股下などから、一般的なサイズを知ることができます。初心者が試乗してすこし乗りにくいサイズの方が本来の適正サイズなのです。

適正サイズよりも小さいフレームを選ぶと、本当の意味でスピードを発揮することができません。私は間違った試乗方法で小さすぎるフレームのロードバイクを購入したために、ホビーレーサーになった後、ステムを伸ばして距離を稼ぐなど面倒なことをするはめになりました。

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アルミバイクもカーボンバイクも手間がかかることに変わりはない。

エントリー用ロードバイクはたいてい重いアルミ製だと思います。スピードに乗っている時にはさほど差を感じることはありませんが、同じ走力を持つ者同士で集団走行した時には、信号などで止まった後、初動で軽いカーボンバイクにアルミバイクは遅れをとります。

ママチャリのように錆びるにまかせてほったらかし(メンテしない)というのなら「通勤だから最安値のロードバイクでいいや」という理屈が通用するかもしれませんが、実際にはロードバイクに乗る以上、アルミだろうとカーボンだろうと日々のメンテナンスが必要になります。乗り終わったら車体を拭ってオイルを注すようなメンテは毎日やることになりますので、安いバイクも高いバイクも手間がかかることに変わりはありません。

仕事中に盗難される危険があるのなら安いロードバイクしか選択肢がありませんが、私のように職場で人目のつかない倉庫に保管できるなど、安全な運用ができるのならば、思い切って最初の一台目から高性能な憧れのバイクを手に入れる選択肢もありでしょう。

なぜなら繰り返しになりますが、その最初のバイクがあなたのロードバイクライフの思い出の大半に登場する可能性がひじょうに高いからです。

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ロードバイクのフレームのカタチは変わらない

さてロードバイクですが、どうしてフレームが三角形をふたつ合わせたような形なのかご存知でしょうか? ママチャリのようなオープンフレームとかローステップフレームとかのフレーム形状がないのはどうしてなのでしょう。

あれがもっとも走行効率のいい形だから? いいえ、違います。正解は、ヨーロッパのロードレースの世界に技術革新の嵐が巻き起こったときに、資金力の弱いフレームメーカーを守るために「三角形を組み合わせた形」じゃないとダメ、と業界がルールを決めたからです。そのルールが今でも生きているのです。

「三角形」の組み合わせは、それほど複雑な形状ではないので、弱小メーカーでも大手資本に対抗できるカタチだったのです。だから素材はアルミニウムからカーボンに変わったり、ビンディングペダルやエアロホイールなど他の部分には技術革新の成果が導入されましたが、フレームのカタチだけは昔から変わっていないのです。

これが日本の競輪になるとフレームの形状はおろか、素材の技術革新さえも認めていません。高額の資金力のあるメーカーが新素材の技術で競輪自転車をつくってしまうと資金力のバックのある人が勝つことになって、ギャンブルが成立しなくなるからです。

わたしたち通勤自転車族はこの三角形フレームの規制に縛られることはありませんが、ロードバイクレースの大会に出場したり、ロードバイククラブに所属して集団走行したりするときに支障となる可能性がありますので、みんなと同じ三角形フレームを選んだ方が無難です。

 

 

ロードバイクは通販で買おう

さてそのロードバイクですが、みなさん、どうやって買いますか? やっぱり自転車屋さんで見て買いますよね?

安く買えればそれでいいんですが、有名フレームメーカーの正規代理店だと、ロードバイクはビックリするほど高価格でしょう。軽自動車が買える価格帯のロードバイクが普通にあります。

自転車が自動車なみの値段だなんて、最初は衝撃でした。

でもよく考えると、おかしくないですか?

ロードバイクのフレームはカーボンとかアルミのパイプを溶接したり成型したりしたものです。そんなものがどうしてこんなにも高いのでしょうか? ロードバイクはどうしてこんなに高いのか、不思議だと思いませんか?

答えは「需要バランス」です。A社のロードバイクにはそれだけの価値がある、と信じている人がいるからです。その値段でも買いたいという人たちがいるから、強気の価格でも売れるのです。それがロードバイクが高い理由です。

値段というのは、需給バランスで決まります。需要があって買い人がいるから、高価格に設定されていますが、製造原価がそれほど高額だというわけではありません。ロードバイクの値段が高いのは商売上の理由です。

「何かを欲しがらせようと思えば、その物をなかなか手に入らないようにすればいい」と昔から言います。値段を高くすればするほど、プレミアムがついて、欲しがるお金持ちが出てくるのです。それがロードバイクの世界です。

ところがこういう購買マジックにひっかからない人たちも世の中にはいます。そういう人たちは「このロードバイクは高すぎる。もっと安く手に入らないの?」と正規代理店ではなく、別の手段でロードバイクを手に入れようと考えます。そして通販でロードバイクを手に入れるという手段に行きつくのです。

知っていましたか? ロードバイクは通販で買った安いということを。

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実店舗で買うよりも、通販サイトで買った方がいい理由

この時代、たとえばパソコンなどでも実店舗で買うよりも通販で買った方がたいてい安く買えるのですが、ロードバイクもまず通販で買った方が安く買うことができます。同じロードバイクでも店舗と通販では、ぜんぜん値段が違います。店舗がない分、テナント代、人件費などが不必要なぶんだけ安いという仕組みは同じです。

さらにここで通販で買うことをおススメするのは、安いからという理由の他に、ロードバイクの種類が、実店舗よりも通販のほうが断然豊富だからということがあります。

たいていのロードバイクはブランド力を高めるために、販売できる店舗が決まっています。販売契約というのがあって、たとえばスペシャライズドの契約店舗にはピナレロのロードバイクは売っていない可能性が高いのです。

また同じスペシャライズドでもたくさんのフレーム、サイズがありますが、あなたが自転車屋さんに行っても、あなたが本当に欲しかったバイクはまず置いてありません。店舗で購入するということは、結局、そこに置いてある自転車の中から選ぶ、ということになります。通販と実店舗とでは選択肢の幅が全然違うのです。だから私は通販で買うことをオススメしているのです。

適正なフレームサイズについては、算出表があります。身長や股下などから、一般的なサイズを知ることができます。初心者が試乗して得た感触で選ぶフレームサイズよりも、身長などから算出したフレームサイズのロードバイクを選んだ方がいいということは既に述べました。

「一般論でフレームを選んで、自分に合わなかったらどうする?」と、疑問が湧くと思いますが、身体に合わせたフレームを特注できるような特別な人は別として、一般人は多かれ少なかれバイクに身体を合わせるしかありません。どうせ完璧には合っていないんですから、あまり細かいことにこだわっても仕方がありません。ミリ単位でこだわるのは意味がないと思います。重要なのは大まかに身体とフレームを合わせることです。それは身長などから算出表がありますので、初心者は自分の感覚よりも算出表にまかせてしまったほうが無難なのです。

身体とフレームサイズとの目安は、いくらでもネット上で検索すれば調べることができます。だいたいの目安でフレームサイズを決めたら、後は身体が慣れるまで乗りまくるのが上達の秘訣です。ステムを伸ばしたり、サドルを下げたりして小さな調節はできますので、心配はいりません。

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ロードバイク乗りはフェティッシュな人が多い

クルマと比べて仕組みが単純なので、ロードバイクは研究しがいのある素材です。どうして自分の脚だけで、人類史上最速ウサイン・ボルトよりも速く走れるのか? その秘密はギア比にあるのですが、ロードバイクの秘密は剥き出しになっています。

パンクを直したり、バイクを掃除したりするたびに、ロードバイクの仕組みに詳しくなります。いつのまにかマシンの謎がわかるものです。そしてやがて「これは自分でも組み立てられるな」という日が来ます。ホイールも、タイヤも、チューブも、結局は通販で買って、自分で組み立てることになります。それがロードバイクの奥深い世界です。

どうせロードバイクはいろいろいじりたくなります。パーツを交換したくなります。そのときにもいろいろ調べます。どうせ調べずにはいられないのですから、最初から調べた方がいいのです。

アウトドアマンがギアを愛するように、ロードバイクは道具を愛するスポーツでもあります。キャンパーがキャンプ道具を愛するように、釣り師がルアーを幾つも所有しているように、ロードバイク乗りはバイクに乗ることそのものと同じぐらい、バイクを改造したり、手入れしたりすることを楽しみます。ロードバイク乗りはフェティッシュの人が多いのです。

バイクいじりが嫌いな人は、たぶんいつかロードバイクに乗るのをやめちゃう人です。乗り続けている人は、みんな自転車フェチです。改造が大好きです。穴あきサドルに取り換える。ローラー台を買う。DHバーとディープリム・ホイールを買う。ロードバイクを複数台所有する。通勤用マウンテンバイクを買う。そんな人たちばかりです。ロードバイクのディープな世界を知れば、自転車にクルマと同じぐらいのお金をかける人たちを日常レベルで見ることになるでしょう。

あなたはパーツを交換するたびにお店で買うのですか? あなたの欲しいロードバイクのパーツは、おそらくお店には置いてありません。

ロードバイク乗りは、フェティッシュで、道具を吟味しまくります。その結果、欲しいものが店舗に置いていないとなれば、結局、通販で注文することになるのです。いずれは通販サイトを利用することになります。だったら、はじめから通販をつかって慣れてしまいましょう。

 

 

ロードバイクは屋外で保管できるのか?

さて、愛車のロードバイクを購入する前に、さらに考えなければならないことがあります。それは自宅での保管場所です。一軒家の方はどうにでもなると思いますのでここでは除外します。問題はアパート暮らしの人です。アパート暮らしの人はロードバイクをどこに保管すべきでしょうか?

私がアパートにひとり暮らしだった頃、ロードバイクは玄関に乗り入れて、靴箱の前に立てかけていました。確かに出入りにすこし邪魔でしたが、誰も文句を言う人はいませんでした。

ところが結婚して、妻と同居することになりました。2LDKの狭いアパートにどうにか入居するために、様々な家具を大量に処分することになりました。さて問題はロードバイクの保管場所です。これまでのように玄関の靴箱の前に立てかけておくというわけにはいきません。どうしようロードバイク。そ、外に出すか?

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ロードバイクは室内犬。家の中で保管するのが基本

それぞれが快適に暮らしていた独身男女が結婚すると、何もかもがワンセット余ります。テレビも、冷蔵庫も、洗濯機も、食卓も、1台あれば十分です。ところがすべて2セットあるのです。同居をきっかけに、あるとあらゆるものを大量に捨てまくりました。片っ端から捨てないととても収納できません。市の焼却場に何度も往復して捨てまくり、ようやく2LDKのアパートに収納できましたが、それでも「狭い」という感覚は消えません。独身時代から占有面積が半分になったのだから当然です。同居は「狭い」という不快と向き合うことになります。

さて、ロードバイクです。うちの妻はロードバイクなんかに用はないという人間です。できれば処分してくれるとありがたいぐらいの感覚でした。独身時代のようにアパートの玄関入ってすぐのところに立てかけておく、というわけにはいきません。ソファさえも諦めるほど狭いアパートで、ロードバイクの室内保管が許されるでしょうか。

いちおう「玄関に置かせてくれないか」と妻に提案したみましたが、ひとことで却下されました。

「ただでさえ狭いアパートなのに、自転車を室内保管するなんてありえないよ。邪魔だよ。ジャマ。じゃま」

「そ、そんなあ……」

ロードバイク乗りが、どれほど機材を大切にしているか、そんなことは妻は理解してくれません。自分は乗らないために、とにかく一方的に邪魔なだけなのです。その気持ちはわからないわけじゃありません。妻が居間に巨大なピアノを置いたら、私は邪魔だと思うでしょう。しかし無理解から間違った判断をしていると気づかせることならできるかもしれません。そもそも妻は自転車は外で保管するものだと頭から思い込んでいます。ロードバイクのことをママチャリのような消耗品ぐらいにしか思っていないのです。

しかし実際にはママチャリとロードバイクはだいぶ違います。ロードバイクは軽くて高価なため常に盗難の危機にさらされており、室内保管するのが基本です。ギアやチェーンが剥き出しで錆びたり傷ついたりしやすいという面においても、やはり室内保管向きです。ロードバイクは丈夫な室外犬ではなく、かよわい室内犬なのです。

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ロードバイクの保管場所に、アパートの玄関以外の場所を検討してみる

部屋がものすごく広ければ、妻も文句を言わないでしょう。しかし2LDKのアパートに同居では、そのスペースがないのです。玄関以外の場所にロードバイクを置くとしたら、どこに置けばいいのでしょうか? 私は検討を始めました。

自転車が占める面積はけっこう大きなものがあります。どこに置いても確かに生活空間を大きく浸食してしまいます。一番置きたいのは玄関でしたが、出かけるときにいちいち邪魔なのは確かです。だいいち自転車が邪魔で靴箱を開けられません。独身時代は必要な靴は靴箱の外に出していたため、靴箱を開ける必要がありませんでした。しかし夫婦同居となるとそうはいきません。

第二候補は廊下ですが、廊下の半分が自転車で塞がってしまいます。狭い廊下をカニのヨコバイのようにして歩かなければならなくなります。

「自分の部屋に置いて」にべもなく妻は言いました。しかしそれは無理でした。狭い部屋は、ベッドとデスクトップパソコンと本棚で、もう既にスペースがありません。

だからといって居間に置くわけにもいきません。ソファもオイルヒーターも食器棚も捨ててやっと確保したリビングスペースです。そこにロードバイクを置かせてくれとは言えませんでした。

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輪行袋に収納して室内保管することにした

「室内。室内。ぜったい室内!」私は主張しました。

「ダメったらダメったらダメ。スペースないじゃん」しかし妻には受け入れてもらえません。

「ロードバイクを外置きするなんて、室内犬を外飼いするのと同じだ。虐待だ! 動物愛護団体に訴えるぞ」

支離滅裂なことをわめき散らしてみましたが、効果はありませんでした。

<メルカリで売ってしまって、いっそロードバイクに乗るのはやめようか?>

そんな考えが頭をよぎります。ロードバイクを維持できないのなら、手放すしかありません。

しかし、フェラーリじゃあるまいし、たかがロードバイクです。諦めきれません。手放したってどうせまた乗りたくなるに決まっています。

<いっそアパートの共用駐輪場に止めようか>

<いや、いや。ない、ない。ありえない!>

正気になるために、私は頭を何度も振りました。そんなところにロードバイクが停めてあるとしたら、それは「捨てる前提」でしょう。どうぞ傷つけてくださいと言っているようなものです。どうしても室内保管にこだわった私は、タイヤを取り外し、ロードバイクを解体して、輪行袋に詰めた状態を妻に見せてみました。

「ほら。これならどう? ロードバイクは輪行袋に詰めればこんなに小さくなるんだよ。知らなかっただろう?」

大きな自転車も、ホイールを外してフレームの横に括り付けたら、小さなスーツケースぐらい大きさになります。

「そのサイズなら何とかOK。部屋の隅っこの方に置いて」

やった。やった。やりました。ようやく妻から室内保管のお許しが出ました。輪行袋さん。ありがとう。これで問題解決です。

ようやく室内保管の許可を得て、なんとか愛車の保管にめどがたちました。よかった。

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輪行袋から、いちいち組み立てるなんて、面倒くさい

ところが、どうにかロードバイクを室内保管できるようになったのですが、結果として、ぜんぜん自転車に乗らなくなってしまいました。なぜって乗るためにはいちいち輪行袋から取り出して組み立てないといけないからです。これはたとえるなら、扇風機を使いたい時に、毎回、段ボールから取り出して組み立てないといけないのと同じです。そんな扇風機の使い方をする人はいません。輪行袋に収納して室内保管するというのは面倒くさいし、実用的じゃないのです。

これまでロードバイクは玄関に乗り入れる形で保管していました。そのために乗ろうと思えばすぐに乗れたのです。それが今では輪行袋から取り出して、ホイールをはめて、チェーンを噛ませて、ブレーキの位置からシフトワイヤーのテンション確認まで乗る前にさまざまな調整・点検をしなければなりません。これではいちいち面倒くさすぎます。ただでさえロードバイクはサイクルパンツをはいたり、ビンディングシューズを履いたり、タイヤに空気を入れたり、ヘルメットをかぶったり、乗るのが面倒な乗り物なのです。乗るだけでも面倒くさいのに、帰宅してからもまた面倒です。汗だくの体でシャワーをあびた後に、また輪行袋にしまわなければならないのです。そのときにまた手が汚れます。

私はランニングもやっているのですが、シューズを履けばすぐにはじめられるランニングに対して、輪行袋から取り出して機材を調整しなければ乗れないというのでは、あまりにも手間が違いすぎて、どうしたってランニングを選んでしまいます。そうしてあまりロードバイクに乗らなくなってしまったのでした。

輪行袋で室内保管するというのはいい案だと思ったのですが、いちいち面倒くさすぎるという大欠点がありました。せっかくのロードバイクも乗らなければ邪魔な置き物にすぎません。ロードバイクは乗ってナンボのシロモノです。お手軽に乗るためには、そのままのかたちで保管することが絶対に必要でした。やはり外に保管するしかないようです。

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果たして室内犬は外で飼えるのか?

室内犬は外で飼えるのか? ロードバイクは屋外で保管できるか?

ロードバイクは置きものではありません。輪行袋から取り出すのが面倒で乗らないというのでは話しになりません。私は何とかロードバイクを外置きできないか考えるようになりました。外置きならば面倒な準備なしにすぐに走り出すことができます。

しかしそもそもロードバイクを外で保管できるものでしょうか? ロードバイクを屋外保管する際、問題にすべきなのは「雨」と「盗難」です。我が家のアパートを眺めてみると、非常に条件がいいことに気づきました。

私のアパートは二階建てアパートの二階です。二階奥のどん詰まりなので、玄関前の共用廊下は、厳密には私たちの占用空間ではありませんが、そこを使う人は私たちしかいないため、物を置いても文句を言う人はいません。実質的に自分たちの専用スペースのようなものでした。ここにロードバイクを置いても迷惑な人は誰もいないはずです。

ここならば、なんとかロードバイクを外置きできるのではないか? そう私はそう考えました。その共用廊下には屋根があって、風は吹きこんでくるものの、自転車が濡れる心配もほとんどありません。もしかしたら室外保管できるかもしれない、と思いはじめました。希望の光が見えてきました。そこではななだ不本意でしたが、玄関外の廊下にロードバイクを保管してみることにしたのです。

ネット通販で購入した自転車カバーでロードバイクをすっぽり覆いました。さすがにロードバイクをむき出しに置くことはできません。これで強風が運んでくる雨や埃からバイクをガードすることができます。

自転車カバーを外せば、いつでも乗り出せる状態となりました。久しぶりに乗ったロードバイクの気持ちよかったこと。

窮すれば通ず。ロードバイクも屋外でなんとか保管できるものだなあ、と思いました。妻からの苦情もなく、私も不満なく、快適なロードバイク生活がしばらく続きました。

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台風の直撃でロードバイクがボロボロに

ところがある夏の夜、アパートを台風が直撃しました。夜中、雨戸がガタガタ鳴って「すごい風だなあ」と思いましたが、そのまま寝てしまいました。

翌日、玄関前にロードバイクが倒れていました。台風の強風でバイクは倒れ、倒れたときにフレームにすり傷が入っていました。雨にも濡れていました。ふつうなら雨には濡れないはずの場所でしたが、横殴りの強風が雨粒を運んできたのです。

私は愛車が不憫でなりませんでした。これまで愛されて室内でぬくぬくと過ごしてきたかわいいペットが、結婚して部屋が狭くなったばかりに外飼いにされて、雨風にさらされて、ピカピカだった車体に傷がついてしまいました。愛するバイクを過酷な運命から救い出せるのは飼い主である私しかいません。

妻の了解もなしに、私はロードバイクをアパート内に持ち込みました。廊下にブルーシートを敷いて、バイクスタンドにロードバイクを立てかけました。それを見て妻は「狭い、邪魔だ」ともちろん文句を言いました。しかし今回は私の覚悟が違います。

「アパートが狭いからって、ロードバイクを外置きするぐらいなら、テレビを捨てる」

きっぱりと私は言い放ちました。

居間のすみで大きなスペースを占めているテレビですが、私にとってはテレビよりもロードバイクの方が大事です。フレームについた傷を見せながら、絶対に室内保管する決心を告げると、妻もしぶしぶながら納得してくれたようでした。

現在、ひろびろとしていた廊下は狭くなりましたが、そこにロードバイクは王様のように君臨しています。ロードバイクは芸術作品、オブジェでもあります。妻がそれを理解してくれるといいのですが。

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ロードバイクを室内保管するにあたっての最大の壁は家族の説得

このような紆余曲折を経て、私はどうにかロードバイクを室内保管することができました。

アパート暮らしのロードバイク乗りの方は、私のように室内保管を躊躇している人もいると思います。たしかにロードバイクを室内に入れると急にアパートが狭く感じます。でもベッドや食器棚ほどではありません。ロードバイクを室内保管するにあたって最大の障害は家族の説得です。

「自転車は外!」という先入観をもっている家族に「ロードバイクは室内保管が常識」と意識を変えてもらうことが必要です。ベッドや食器棚がどれだけ部屋を狭くしても「仕方がない」と思われているように、ロードバイクも「仕方がない」と思ってもらうことが大切なのです。

「ロードバイクを外で保管するぐらいなら、テレビを捨てる」

その覚悟を見せたことで、妻にとってテレビが必要なのと同じように、私にとってロードバイクが必要なのだとわかってもらえました。家族さえ説得できれば、ロードバイクは室内で保管できます。

ロードバイクは屋外保管できるのか? その質問に対する答えは「できる。でもやらないほうがいい」です。

ママチャリは室外犬、ロードバイクは室内犬。そのように家族を説得できれば、バイクをアパートの中に置くことができるでしょう。ロードバイクを屋内で保管するための最大の障壁は、家族の説得に他なりません。家族を説得して、なんとか愛車を雨風から守ってあげてください。

 

 

ロードバイク乗りは必ず自転車保険に入ろう

ロードバイクはシティサイクルとは比較にならないスピードが出る反面、曲がりにくい、止まりにくい危険な乗り物です。保険なしでクルマに乗れないように、ロードバイクも保険なしには怖くて走れません。ロードバイクに乗る以上は、必ず自転車保険(自転車損害賠償保険等)に加入したほうがいいです。地方自治体によっては条例で義務化されている場合もあります。

私の知っている人で、河川敷をロードバイクで飛ばしていたのですが、車止めのポールに激突して車椅子生活になってしまった人がいます。人類最速ウサイン・ボルトよりも速く走れるこのロードバイクは、人を殺める危険性がじゅうぶんにあります。なによりも自分自身が転倒して入院するような危険が非常に大きいのです。

実は私は過去に大きな自転車事故を起こしたことがあります。ロードバイクで歩行者とぶつかってしまったのです。そのエピソードがみなさんのお役に立つところもあると思うので、その事故のことをお話ししましょう。

事故の相手は頭から後ろに転倒し、後頭部から出血しました。近くの人が呼んでくれた救急車で病院に運ばれていきました。被害者の方は8針縫ったそうです。耳石が倒れた衝撃でずれてしまったらしく、目まいがするということで、しばらくリハビリしていました。賠償金総額134万円かかりました。警察の事情聴取も受けました。

「自分だけは絶対に事故は起こさないと思っていた」

ときどき交通事故にあうとこんな感想を述べる人がいますが、私はそうではありませんでした。ロードバイクに乗る以上は、いつか必ず事故を起こすだろうと思っていたのです。危険に無神経だったわけではありません。

ただし思い描いていた事故は自爆のイメージでした。車に追突するとか、道路の溝につまづくとか、カーブを曲がり切れず転倒するとか、タヌキを踏んで自転車から放り出されるとか、事故の状況はわかりませんが、本気のロードバイク乗りがいつまでも無傷でいられるとは思っていませんでした。自分が死ぬかケガするような大きな事故をいつか起こすだろうと思っていたのです。その漠然とした感覚は、オートバイに乗る人も同じでしょう。事故の可能性がゼロだと思っているオートバイ乗りなんていないと思います。私の知り合いのオートバイ乗りは、たいていどこかしら骨折しています。それと同じ自覚を持っていました。

筑波山のダウンヒルでアスファルトのクラックにスリックタイヤをひっかけて転倒。頸椎に損傷を負ってしまったロードバイク仲間もいます。その人はしばらく入院していました。どうして自分だけがそういう目に遭わないといえるでしょう。

正直、ロードバイクは乗り手にとって危険な乗り物です。いくら速いといっても車に勝てる存在ではありません。一方的に引っ掛けられて傷つけられるだけの交通弱者です。

いつか事故を起こすだろうと思っていたのです。やられるか、自爆するかは別として。そのときに大怪我ではなく、軽い怪我だといいのだが、と思っていました。常に自分を被害者の立場でイメージしていました。それがまさか加害者になってしまうとは……。

とっさにブレーキはかけました。しかしビンディングを外す余裕がありませんでした。トウグリップだったら、足を抜いて自ら倒れこんで人身事故だけは避けられたかもしれません。しかしビンディングを外す前に事故が起こってしまいました。せめて自爆ならよかった。他人様を巻き込まない事故だったらよかったのに……。何度もそう思いました。しかし後悔しても後の祭りです。それが交通事故というものです。

そして知りました。これまで車にやられるだけの弱い存在だと思っていたロードバイクですが、歩行者にくらべたら交通強者だったのです。

今回の事故は私の責任です。治療費や慰謝料を支払わなければなりません。そんなまさかの時に自転車保険が私を助けてくれました。

じつは事故を起こしたのは新しいアパートに引っ越した直後のことでした。入居する際、火災保険に加入することが賃貸契約の中で義務づけられていました。なるべく安い火災保険に入ろうと、いろいろな火災保険をインターネットで検討して、もっとも安くていい補償内容の保険に入った直後の事故でした。その時、火災保険に自転車損害賠償保険が付帯していることを知りました。治療費や慰謝料などすべてをカバーする保険でした。そのことがまだ記憶に残っていました。

これまでアパートの火災保険なんて、まず使うことのない保険だと思っていました。アパート火災なんて起こしたことはありません。これまでに一度も利用したことなどありませんでした。

それが今回初めて使わせてもらいました。想像もしなかった使い方でしたが、非常にありがたかったです。こちらは保険会社にお金を払い込んでいる保険会社の「お客様」だからお金が支払われるのはある意味あたりまえなのですが、アパートの火災保険に付帯していた自転車保険に感謝しないわけにはいきませんでした。

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必ず自転車保険に入ろう。いや、もう入っているかもしれません

TSマーク付帯保険という自転車保険があります。簡単に加入できるので利用している方も多いかもしれません。しかしよく調べてください。この保険は案外つかえません。それは条件が厳しすぎるからです。ちょっとした事故だと保険がおりないのです。「自殺してお詫びします」ぐらいの大事故でないと補償金がでません。

実際に私が起こした自転車事故は、頭から血を流して8針縫うような大事故でした。賠償総額134万円の大事故だったのですが、このとき、TSマーク付帯保険では「保険対象外」でした。だって失明したり、聴力を失ったり、指を三本失ったりしていませんから。それぐらいの大惨劇じゃないと補償金がおりないのがTSマーク付帯保険です。自転車事故でこのレベルの大事故は、確率でいえばよほどのことです。ほとんど使えないレベルの条件の厳しさといっても差しつかえないでしょう。自転車保険であれば何でもいいというわけではないのです。

私のおすすめは、火災保険に付帯した自転車損害賠償保険です。あなたはどんな家に住んでいるでしょうか? 一軒家にせよ、アパート暮らしにせよ、たいていの人は火災保険には入っているのではないかと思います。

賃貸アパート暮らしだと、必ず火災保険に強制的に加入させられるはずです。そこに自転車保険は付帯していないでしょうか?

持ち家一軒家の場合も同じです。たいていの人は火災保険に入っているはずです。そこには自転車損害賠償保険が付帯しているかもしれません。個人賠償責任特約をつければ、自転車事故をカバーしてくれる場合もあります。そしてそれは世帯主だけでなく家族全員の自転車事故を補償してくれたりします。

自転車損害賠償保険というと、新たに加入しなければならないイメージを持つ人が多いのですが、あなたはもうすでに気づかないうちに自転車損害賠償保険に入っているかもしれません。火災保険をよく確認してみましょう。

もちろん保険商品によって条件が違うので、内容をよく確認してください。

第二章 スピードこそロードバイクのレーゾンデートル

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ロードバイクに名前をつける

自分の乗るロードバイクには、ひとかたならぬ愛着があります。とくにン十万円もするようなカーボンフレームのバイクに乗っているような人は、走った後の清掃、整備を欠かさないでしょう。フレームは磨けば磨くほど愛着が湧いてきます。掃除のたびにロードバイクをよく見るようになります。ママチャリと違ってロードバイクはコンポーネントが剥き出しです。見れば見るほどロードバイクの仕組みに詳しくなります。

駆動系はけっこう単純です。それでいて奥が深いものです。クルマほど複雑な構造ではありません。ロードバイクがどうして動くのかは「包丁がどうして切れるのか」ぐらいのレベルで理解することができます。やがてロードバイク乗りは、パーツを買いそろえるようになります。自分に合うと思われるサドルに変え、ステムを変え、バーテープを貼りなおします。そして既製品とは違う自分だけのロードバイクが完成するのです。こうなると愛車への愛着は加速していきます。

やがてロードバイクを壁にかけて飾る人まで現れます。乗って楽しんでいるうちはまだいいのですが、眺めて飾るようになるともう病気です。それほどロードバイクというのはフェティッシュなものなのです。

※フェティッシュとは、ただの物体ではなく、魂が宿ったかのような物神のことをいいます。祈りや願いのこもった崇拝の対象となる呪物のことをいいます。

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【提案】ロードバイクに名前をつける

そんなに愛情があるのだったら、いっそロードバイクに名前をつけてみたらどうでしょうか? 名前をつけるとさらにロードバイクを愛せるようになります。自分の恋人を愛称で呼ぶように、愛車に名前をつけてみましょう。

ペットショップで高価で購入した血統犬でも、近所からもらった雑種犬でも、愛犬と呼べるかどうかは飼い主の愛情しだいです。高い買い物だからではありません。

クルマの場合は、あまりマイカーに名前をつけて呼んでいる人はいないのではないでしょうか。普通は「うちのカローラ」とか「軽(自動車)で行くか」とか呼んでいるはずです。ただ「クルマ」と呼んでいる人が最も多いのではないでしょうか。

これがロードバイクだとフレームの製造メーカーで呼ぶのが一般的だと思います。例えば「そろそろビアンキに乗りたい」とか「今日はスペシャ(スペシャライズド)の掃除しなきゃ」とか、フレームメーカーで呼ぶ人が多いと思います。

クルマの方がロードバイクよりもよっぽど高価な乗り物ですが、クルマに名づける人が少ないのは、クルマがフェティッシュな対象ではないからです。

しかしロードバイククラブに所属すると、みんなが「ジャイアント」や「メリダ」に乗っています。「おーい。そこのジャイアント!」なんて呼ばれたら、五六人が一斉に振り向くこと請けあいます。あなたの愛機がそんな扱いでいいのでしょうか?

愛犬のことを「チワワ」とか「シーズー」とか「トイプー」と呼ぶ人はいません。それは犬種です。ちゃんと名前をつけるでしょう。しかしロードバイクをフレームの名前で呼んで、独自の名前をつけないということは、それと同じことをしているのです。

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命名するということは、命を吹き込むということ

こんなことを書くくらいですから、私は自分のロードバイクに名前をつけています。愛車の名前を公開しましょう。「スピットファイア」といいます。

名前の由来は第二次世界大戦時のイギリス空軍の戦闘機。スーパーマリン・スピットファイアです。スピットファイアには「火を吐く」という意味があります。戦闘機は機銃掃射して敵機を撃墜するので「火を吐く」のです。ドイツの戦闘機メッサーシュミットを撃退したことから「救国戦闘機」とイギリスでは呼ばれて愛されています。

私のロードバイクのフレームは、アメリカ『MARIN』社製です。フレームにMARINと刻印されています。しかし「ただのマリンではない。スーパーなマリンなのだ」ということから「スーパーマリーン=スピットファイア」と命名しました。戦闘機の名前をもらったのは、われながらいいセンスだったと思っています。

命名するということは命を吹き込むということです。ロードバイクに戦闘機の名前をつけたのはふさわしかったと思っています。背後から他のバイクを追い抜くことは、撃墜するようなものです。

愛機に戦闘機の名前をつけたら、奇跡が起こりました。敵機を次々と撃墜できるようになったのです。スピットファイアの名前に恥じない戦果をあげることができるようになりました。

早朝、川の土手をスピットファイアで疾走していると、鳥たちが驚いて草むらから飛び立ちます。同じ方向に飛び立った鳥たちとは、スピードがほぼ変わらず、一緒に飛んでいるような感覚をあじわいました。それはまるで戦闘機が編隊飛行をしているかのようでした。

こんなこともありました。鳥が走っている私のロードバイクの前を横切ろうとしたのですが、スピットファイアが速すぎて横切ることができず、接触してしまいました。これはまさしく撃墜だといえるでしょう。ランニングではこんなことはありえません。

スピットファイアは旧式のプロペラ戦闘機です。最新鋭ジェット戦闘機ではありません。そういうところも含めてこの命名が気に入っています。愛機MARINはアルミ製の通勤用「街乗りロード」です。カーボンフレームの「レーシング・ロードバイク」ではありません。たとえばファントムとかイーグルとかホーネットのようなジェット戦闘機の名前は、レーシングロードが名乗るべきでしょう。街乗りロードにはプロペラ戦闘機ぐらいの名前がちょうどいいのです。そういう意味でも自分の命名が気に入っています。

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命名のヒント。ロードバイクは飛ぶことを志向している

ママチャリに乗っていた時にはあまり感じなかったことですが、ロードバイクに乗るようになって、これは飛ぶことを志向しているなあ、と強く感じました。ロードバイクのスムーズな動きは、地面をすべるようです。まるで氷の上を滑るように。ロードバイクが目指しているのは、究極的には飛ぶことだと感じます。まるでジェット機が離陸するときのようにロードバイクは走ります。ほんとうは離陸したいのに、飛べないまま走り続けているのがロードバイクではないでしょうか。

スーパーマンが空を飛ぶような格好で、ロードバイクは地面に伏せるようにして走ります。DHバー(TTバー)は、すこしでも速く走るために、空気抵抗を避けて上半身を伏せて、腕をぐっと前に突き出します。これを開発した人は本当はスーパーマンになりたかったんじゃないでしょうか。あのアメリカンヒーローのように、最終的には空を飛びたかったんじゃないかという気がします。

ロードバイクは「飛行機」「戦闘機」に似ています。ロードバイクは速さを競うためのマシンです。それは戦闘機も同じです。遅い戦闘機は背後から撃墜される定めです。

ロードバイクのレースはときに命がけです。怪我を覚悟して走るのがロードの世界です。命をあずけるマシンだというところも戦闘機と同じです。

クルマでも峠でドリフトしている公道レーサーは、もしかしたら愛車に名前をつけているかもしれません。それは自分の棺桶になるかもしれないマシンだから。

ファミリーカーに名前をつけないのは、ただの移動のための道具だからでしょう。「ここで死ぬかもしれない」と思ってファミリーカーに乗る人はいません。ファミリーカーにネーミングは似合わないのです。

もしあなたが私の意見にインスパイアされて、愛車に名前をつけてみようと思ったら、どんな名前がいいでしょうか。一緒に考えてみましょう。

命名のヒントはやはり飛行機や鳥です。戦闘機の名前をつけるようなイメージで命名したらカッコイイんじゃないでしょうか。愛車が戦闘機の名前だと気分的にもノッてきますよ。

だが、命名のヒントはそれだけではありません。

ツール・ド・フランスの常勝チーム・スカイの使用機材はここ数年は「PINARELLO DOGMA」です。ドグマというのは宗教の教え、教義のことです。

速いもの、強いものだけが命名のヒントではありません。ドグマのような哲学的な命名もかっこいいですよね。マントラとかニルヴァーナとか、お気に入りの名前でロードバイクに名前をつけて、魂を吹き込んであげましょう。

他の誰かに明かさなくてもいいのです。心の中でこっそりと命名することで、ロードバイクに命が吹き込まれます。ロードバイクの世界がもっと楽しくなること間違いありません。

通勤ロードバイクは退屈。ならば通勤レースをはじめよう。

さて往復30kmの通勤ロードバイク生活をはじめた私です。最初の頃はパンクに怯えつつも、ロードバイクに乗ること自体がとても新鮮でした。わくわくして、毎朝とても楽しかったことを覚えています。

しかしすぐに楽しいとばかりは言っていられないようになりました。そもそも通勤ですからこれから仕事に行くわけです。遊びに行くわけではありませんから、気持ちが高揚するといっても限界があります。週末ホビーレーサーとは違って気分の乗らない日も雨の日も風の日も通勤バイクには乗らなければなりません。

ロードバイクに乗ることも、毎日乗っていると飽きが来ます。とくにこの気持ちに拍車をかけたのが私の通勤ルートでした。通勤の主たるルートは、河川敷のサイクリングロードでした。サイクリングロードで通勤だなんて楽しそうですって? 最初のうちは、その通りでした。

サイクリングロードは、平坦で、一直線で、信号もないし、スピードを出すには最高の環境でした。しかし毎日続ける通勤ロードバイクの場合、それが逆にあだとなります。平坦ノンストップということは、ブレーキをかけることがほとんどないということです。ギアチェンジをする必要がないということです。一直線ということは、ハンドル操作をすることがないということです。これでは退屈します。

唯一楽しめるのはスピード感だけですが、河川敷のサイクリングロードというのは、ほどんど景色が変わらないので、スピード感というものもあまり感じません。どれだけ速く進んでも周囲の景色がぜんぜん変わらないからです。

たったひとりで、これから仕事に行くという条件で、河川敷サイクリングロードをひたすら往復するというのは、慣れてくるとひじょうに退屈なものでした。だんだん刺激がほしくなってきました。

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速度計。サイコン(サイクルコンピューター)をつける

退屈した私が考えたのは、ロードバイクそのものを「遊べる道具」に改造しようということでした。ギアチェンジをすることはないし、ブレーキはないし、ハンドル操作をすることもない。そんな条件の中でロードバイクを「遊ぶ道具」にする方法がありました。それが速度計、いわゆるサイクルコンピューター(サイコン)をつけることです。

サイコンは、タイヤの円周と回転数を掛け算することで、航続距離やスピードを表示してくれる機械です。最近ではGPS機能のついた高機能なものまであります。これによって私はまるでオートバイに乗っているかのように自分の現在スピードがわかるようになりました。速度計は退屈を紛らすには最高のオモチャでした。

たいてい「退屈だあ」と感じている時には、スピードも出ていません。今日は昨日よりも疲れているなあと思うと、感じたとおりにスピードも出ていません。でも数値ではっきりスピードが表示されると「気のせいか」では済まされません。じゃあちょっと気合いを入れて漕ぐか、と脚に力を込めると、速度計の数字がみるみる跳ね上がります。スピードメーターを見るのは退屈しのぎになりました。このスピードプレイに夢中になって、自分史上最高速度を出そうと、これから仕事があることも忘れて、死ぬ気でペダルを回した朝もありました。

通勤ロードバイクに退屈している人にはサイコンの設置をおすすめします。それだけで急にロードバイクが楽しくなりますよ。

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ロードバイクが、クロスバイクやマウンテンバイクに追い抜かれるというのは「恥」だ

サイクルコンピューターでスピードを計測して、自分のスピードに自信がついてくると、自分がどれだけ速いのか試してみたくなります。

速さというのは絶対値ではなく、あくまでも相対的なものです。ロードバイクは歩行者にくらべれば速いですが、新幹線にくらべたら遅いに決まっています。おなじ自転車の中で比較すれば、速いといえるでしょう。

私はロードバイクに乗っている以上、クロスバイクやマウンテンバイクに抜かれるのは恥だと考えていました。カゴや泥除けやスタンドなどあらゆる装備を取り払ってスピードを出すためだけに特化したロードバイクが、いくら通勤とはいえ、クロスバイクやマウンテンバイクに追い抜かれるというのは恥ずかしいことだと通勤当初から意識していました。

たまたま市街地の交差点でクロスバイクと信号待ちで並んでしまうことがよくありました。その場合、必ずすべてを抜き去ることにしていました。こっちが速くてあたりまえです。だってロードバイクに乗っているんですから。ロードバイクに乗っている以上、すべての他のジャンルの自転車を抜いていました。

私はマラソンを走れば2時間台のシリアスランナーだったこともあり、そもそもロードバイクに乗り始めた当初から速かったです。「おれが走り勝ってあたりまえ」という心構えでいつもロードバイクに乗っていました。

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草レース。通勤レースをはじめる

「恥」という感覚から、シティサイクルやマウンテンバイク、クロスバイクなど他のすべての自転車をロードバイクで抜いてきた私です。さて、いよいよ頂上決戦をするときがやってきました。ロードバイクのライバルはロードバイクだけです。いよいよ最速の勝負です。あくまでも通勤の範囲内で。

河川敷には私の他にもロードバイク通勤をしている人がたくさんいました。退屈な通勤バイク生活の次の刺激は、この通勤ロードバイクの中で最速を目指すことでした。

自転車と名のつくものには「誰にも抜かれず、すべて抜き去る」という縛りの草レースの開幕です。そういう刺激に満ちた通勤をしようというゲームを、自分の中で思いついて楽しみました。

基本的に同じ方向に向かう河川敷のロードバイク同士は、よほどのスピード差がないかぎり、一定の距離を保ったまま職場にコースアウト(到着)するので出会うことはありません。しかしそれでも時々、側道からサイクリングロードにコースインするタイミングで、近い距離で走るような場面に遭遇します。さあ開幕のゴングが鳴りました。先行車が近くを走っていたら死ぬ気で追い抜きます。後続車が近くを走っていたら意地でも抜かれないように走ります。これが気合と意地の通勤レースです。

こちらは通勤用のプロペラ戦闘機(アルミ製の廉価なロードバイク)でしたが、通勤なのにジェット戦闘機(カーボン製高級ロードバイク)に乗っている人もたくさんいました。

毎回、バトルして顔なじみ(自転車なじみ)になった人もいます。通勤バイクなので、走る時間帯・コースが毎日同じなので、遭遇するのも同じ人の場合が多いのです。

ビアンキ、ジャイアント、メリダ、キャノンデールなど、私は数々のジェット戦闘機を撃墜してきました(と、いう通勤バイクレースを楽しんでいたという話しです)

通勤時間がいつもより5分早かったり、5分遅かったりすると、これまでとは違ったロードバイク通勤者と遭遇しました。するとまた新しいバトルが始まります。

また時々、平日なのに、明らかに通勤ではないホビーレーサーが軽快にロードバイクを走らせていくことがありました。有給休暇でもとったのでしょうか。こういう人にはサッと抜かれてはじめて気づきます。さあ、バトル開始です。通勤族の意地にかけても負けられません。

「これから遊びに行くなんてふてえやろうだ。こっちはこれから仕事なんだよコノヤロー。負けねえぞ!」

いつもの通勤ロードバイク族とは違って、趣味で乗っているホビーレーサーは本当に強敵でした。デローザやピナレロなど、必死で漕いでも追いつけない猛者もいました。通勤ロードレーサーと違い、ホビーレーサーは速いのです。

そういう場合は長距離戦にもちこみ、コースアウト直前(職場近く)で、死ぬ気のスパートをかけて追い抜くというギリギリの勝負を展開していました。勝ち逃げです。

……と、いう通勤バイクレースを楽しんでいました。

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通勤ロードバイクは進化する

風景の変わらない退屈な通勤ロードバイク生活を乗り切るために、通勤レースごっこを私ははじめました。通勤レースでは常に勝ちをおさめていたものの、ギリギリだったことは何度もありました。そのたびに私のロードバイクには改造が加わっていきました。

脚力は簡単に向上しませんが、ロードバイクの改造には即効性があります。とくに私のアルミ製ロードバイクには改造の余地がたくさんありました。

当初、フラットペダルだった足元には、トゥ・クリップを導入しました。これでいちおう引き足が使えるようになりました。ペダルにトゥ・グリップを導入したことで、私のスピードはさらに上がりました。

これでもいちおう通勤なので、さすがにビンディングシューズには抵抗がありました。会社に対する遠慮です。そこまでやると、あきらかに仕事に行く格好ではなくなってしまいますので。

しかしある日、トゥ・クリップでも、心臓と肺が破裂するほどペダルを回さないと勝てない強敵のホビーレーサーと競争した結果、ついにはビンディングシステムを導入することを決意しました。このままでは勝ち続けられないと思ったからでした。

(あくまでも通勤の話しです。私がどれほど通勤レースを楽しんでいたか伝わればさいわいです)。

仕事に使う靴は職場に置いておきます。そして通勤はビンディングシューズで通いました。これによって私はさらに速く走れるようになりました。そして一般的に通勤中と思われる格好とはまるで別物の、完全にホビーレーサーの格好になっていきました。

いつしか夏場はサイクルパンツを履くようになっていました。上着はTシャツでした。サイクルジャージではなかったのは常にバックパックを背負っていたからです。バックパックなしのサイクルジャージだったら、誰も私のことを通勤だとは思わなかったことでしょう。

とくに夏場は汗でビシャビシャになります。どうせ職場で着替える前提なので「通勤はどんな格好でもいいや」という心境になっていきました。

ここまでやっても通勤バイクが退屈だという人には、パワーメーターの導入をおすすめします。パワーメーターとは、自転車を漕ぐパワーの大きさを、金属のゆがみ、ひしゃげによって測ることができる装置です。左右のペダルにかかっているパワーや方向などもわかるので、自分のペダリングを客観視することができるマシンです。ペダルを回すペダリングスキルを向上させて、ペダルを左右均等に効率的に回せるようになれば、さらに速くロードバイクを走らせることができるようになります。スマホに記録したり、データをグラフ化したりもできるので、通勤トレーニングのモチベーションが爆上がりしますよ。

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通勤レースの戦績が「全勝無敗」だった三つの理由と二つのからくり

このように通勤ロードバイクを進化させていくことで、私の通勤スピードはどんどん速くなっていきました。その結果、私の通勤レースの成績は「全勝無敗」でした。この競争は本当に面白かったです。疲れましたが、まったく退屈しませんでした。「江戸川左岸の撃墜王」と自称して悦に入っていましたが、この全勝無敗にはもちろん理由があります。三つの理由と二つのカラクリが存在します。全勝無敗の秘密をここにお教えしましょう。

理由の一つめは、そもそも私に実力があったことです。ランニングだったら走友会でいちばん速く走れる走力があるのに、同じ有酸素運動であるサイクリングで遅かったらランニング業界に対して申しわけがたちません。はじめから私が勝って当然という心構えでした。

理由の二つ目は、このレースは一方的な競争だったということです。ときどき明らかにこの競争に乗ってくる人もいましたが、基本的には相手にレース意識があったかどうかは微妙なところです。こちらは競争のつもりで走っていましたが、相手にその気はなかったかもしれません。

理由の三つ目は、常に勝ち逃げをしていたということです。こちらは通勤ですから職場近くでサイクリングロードをコースアウトしなければなりません。つまりそこがこちらが一方的に決めたゴールだということです。相手のゴールはそこではありません。だからコースアウト直前でスパートをかけて追い抜けば、常に勝ち逃げできたのです。

からくりの一つ目は、通勤レースというのは基本的にはいつも同じ人との勝負だということです。会社の始業時間は同じで、通勤コースも同じですから、会う人も同じなのです。だから勝てる相手には何度勝負したって毎回勝てるというわけです。はじめは競争に応じていたライバルたちも、やがて私にはかなわないとわかると、諦めて競争に応じてこなくなりました。するとあっさりと道を譲ってくれます。ときどき有給休暇のホビーレーサーが立ちふさがったにすぎません。

からくりの二つ目は、私の通勤コースが同じ江戸川左岸でもかなり上流の方だったということです。同じ江戸川でも下流に行くほど面白くなるし、通勤人口も増えます。ロードバイク乗りも下流に行くほど強い人が多いはずです。逆に上流に行くほどライバルは減ります。私が走っていたのはかなり上流の方でした。それが全勝無敗のからくりでした。

このように三つの理由と二つのカラクリにまもられていたから、通勤レースの戦績は全勝無敗だったのです。人を抜いていくのは抜かれるよりも気持ちがアガります。その勢いのまま仕事に向かえば、ちょっとぐらい難しい仕事でも「おれならできる!」とやってしまえるのでした。走り負けて仕事に向かうよりも、走り勝って仕事に向かった方が、間違いなく仕事によい影響をあたえます。退屈を感じたら、通勤レースをおためしください。

 

 

ロードバイクならば人類最速ウサイン・ボルトに走り勝つことができる

ロードバイクに乗れば、私はウサイン・ボルトよりも速く走ることができます。自分の筋力だけで人類最速の男よりも速く走ることができるのです。

人類最速の男というといかにも凄そうですが、実はそんなにたいしたことはありません。世界記録の100m9秒58というのは時速にすると37~38㎞です。瞬間最速時速でも44.72キロに過ぎません。日本人がなかなか達成できない100m10秒は時速36㎞です。たいしたことありませんよね。直立二足歩行の人類そのものが、そんなに速く走れる生き物ではないのです。

ロードバイクに乗れば、時速36㎞なんてそれほど鍛えていない人でも達成することができるスピードです。ところがこれが人類最速44.72㎞となるとそう簡単には打ち破れません。もちろん人によりますが私にはそれほど簡単ではありませんでした。100mの距離でこのスピードを出すのは不可能でした。河川敷の一直線のコースで、サイクル・コンピューターを眺めながら徐々にスピードをあげて、最後は死ぬ気で重たいペダルをぶん回します。血の味がするぐらいペダルを回さないとウサイン・ボルトには勝てません。しかしやがては人類最速に追いつき追い抜くことができました。ウサイン・ボルトの時速44.72㎞は一瞬ですが、ロードバイクならその速さで数百メートルは走り続けることができます。朝の通勤バイクの途中で、日々、人類最速を追い越すことが可能です。人類最速に勝った満足感を得て、スピードを緩めます。フレームの上に倒れ込むようにしてハアハアとあえぎました。きつすぎて、よだれが出そうですが、それでも日常レベルでウサイン・ボルトを打ち破ることができるようになりました。それがロードバイクという驚異の乗り物なのです。

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速く走るコツは、軽いペダルをクルクル回すのではなく、重たいギアをガシガシ踏み込む

死ぬ気でウサイン・ボルトと勝負する中で得たロードバイクで速く走るための秘訣を教えましょう。ボルト越えに一番効果的だったのはグランマギア(弱虫ペダル=軽いギア)を素早く回転させるというロードバイクの鉄則を捨てて、重いギアをパワーでグイグイぶん回していくことでした。

ロードバイクで速く走るためには「重たいギア」を「なるべく速く回す」ことです。それ以外に方法はありません。単純明快な世界です。しかし「重たいギア」と「速く回す」が両立できないときは、長距離走なら「速く回す」を優先し、短距離走なら「重たいギア」をパワーで押し切ることを優先すべきだと私は考えています。ここでの長距離走とは100㎞以上だと考えてください。

ツール・ド・フランスのような長距離走になると、軽いギア(グランマギア・弱虫ペダル)をクルクル回すという「速く回す」選択肢が有効です。肉体へのダメージを減らして持久戦で勝つという戦略を採用するからです。

これはランニングの場合も同じです。速く走るためには「大きなストライド」「高速ピッチ」という選択肢しかありません。しかし「大きなストライド」と「高速ピッチ」が両立できないときには、長距離走なら「高速ピッチ」を優先し、短距離走なら「大きなストライド」を優先すべきだと私は考えています。つまり長距離走ならピッチ走法、短距離走ならストライド走法を採用すべきなのです。

ふつうロードバイクの先輩からは、軽いギアをクルクル回転させた方がいいと教わります。それはツール・ド・フランスなどの本当の意味での長距離勝負をしているプロのロードレーサーのテクニックが、ホビーレーサーのところまで無審査で降りてきたものだと私は考えています。

しかしプロのロードレーサーと私たちでは一日に走破する距離が違いすぎます。100㎞ぐらい走ってようやくロードバイクでは長距離といえるのではないでしょうか。それより短いのは短・中距離走といってもいいでしょう。通勤バイクの往復30㎞なんて中距離走に過ぎません。ロードバイククラブの練習会でも100㎞走ることはありませんでした。ホビーレーサーの勝負はいつでも短距離走なのです。軽いギアをクルクル回して、ダメージ回避、体力温存で勝負を決する場面はほとんど来ないといってもいいでしょう。

ランニングと比較するなら、このような図式になります。「軽いギアをクルクル回す=ピッチ走法」「重たいギアをブン回す=ストライド走法」

ピッチ走法は筋肉にダメージを残さないための長距離走の走り方です。しかしホビーレーサーのスピード勝負というのは厳密には「長距離勝負」ではありません。たとえ100㎞走ってもロードバイクではたいした距離ではありません。ホビーレーサーの勝負はいつも「短距離勝負」なのです。だから短距離走の走り方をした方が有利なのです。短距離走の走り方というのは重たいギアを力の限りブン回せということです。

ロードバイクの書籍を書くような人は元プロレーサーの場合が多く、彼らはほんとうに「長距離走」を走っています。ジャパンカップは144㎞、ルール・ド・おきなわは210㎞です。ルール・ド・フランスなどは連日100㎞超の勝負です。ワンデーのスピードよりも、筋肉の回復がはやい人が勝つのです。体にダメージを蓄積しない人が勝ちます。この勝負なら「長距離走」の走り方をするべきでしょう。元プロレーサーは、著書の中で「自分の走り方」を紹介するために、しぜんと「長距離走」の走り方を推奨してしまうのです。しかしプロレーサーは長距離走者、しかしホビーレーサーのあなたの普段の勝負は、常に短距離走です。それを忘れないでください。ですから「長距離走」の走り方ではなく「短距離走」の走り方をするべきなのです。

軽いギアをクルクルとすばやく回すというのは長距離走の走り方です。でも私たちホビーレーサーは常に短距離を走っているのですから、この走り方では駄目です。重たいペダルをぐいぐい回すことが短距離走の走り方です。

100マイル以上の長距離走ならば、相手がばてるのを待つという持久狩猟の戦略をとることができます。しかし私たちアマチュアのロードバイク乗りには、そんな場面はまず訪れません。常に勝負は短距離で決まります。軽いギアをクルクル回していては、ライバルに勝てません。

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重たいペダルが軽く感じられるように筋力を鍛えることが速く走る唯一の道

そもそもペダルの重い軽いは個人の感覚の問題で相対的なものです。ある人にとっては重たいペダルでも別の人にとってはそうではありません。重たいペダルが軽く感じられるように筋力を鍛えることが速く走る唯一の道です。ロードバイクで本当に速く走りたかったら、回転数で勝負するという巷間の伝説を捨てて、重たいギアを血の味がするまでぶん回してください。ホビーレーサーの勝負はいつも短距離勝負です。だから短距離走向けの走り方をすべきなのです。

ロードバイクに乗って、人類最速のスピードってやつを体験してみてください。爽快ですよ。

ホビーレーサー(アマチュアのロードバイク乗り)の最高速度ってどれぐらい?

ロードバイクに乗れば人類最速ウサイン・ボルトのスピードを自分の力だけで抜き去ることができます。

もちろん人によりますが、ロードバイクの最高速度っていったいどれぐらいなんでしょうか。

クルマの背後に風防の覆いをつけてロードバイクを完全に覆ったうえでギネスブックに挑戦したようなケースや、競輪選手、ツール・ド・フランスのスプリンターのアタック時の最高速度などは、ネット検索すればいくらでも調べることができます。

そうではなくて、ここで問いたいのは、ホビーレーサーの最高速度です。プロではないアマチュアの一般的な限界速度についてです。

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人間の肉体が動力だから、ロードバイクのスピードは「人によって違う」が正解

もちろんロードバイク乗りの最高速度はピンキリです。なぜなら人間の肉体が動力だからです。「クルマの性能とは違って、ロードバイクのスピードは人によって違う」というのが正解です。ですからこれから述べるのは私のことです。私は私のこと以外、語ることはできません。

私は長年、シリアス市民ランナーとして走り続けてきました。サブスリーランナーであり、走ればそこらへんの市民ランナーの中ではもっとも速いぐらいの実力をもっています。

サブスリーの難易度というのは、およそ全人類の上位1%ぐらいではないかと見積もっています。そこいらの市民が100人走ったらトップでゴールできるぐらいの走力ということです。

そんな私がロードバイクに乗った場合ですが、自分のことを人よりも遅いと感じたことはありません。シリアスなロードバイククラブの中でもトップ選手にこそなれませんでしたが、上位の実力者であったことは間違いありません。

ロードバイクに乗ればウサイン・ボルトよりも速く走れました。ウサイン・ボルトの人類史上最速スピードが瞬間時速44.7kmだといいますが、私の場合、サイコンで時速45キロ以上は日常レベルで出すことができました。

もちろん時速45kmを出すのは簡単ではありませんでした。血の味がするぐらいペダルをブン回さないとそのスピードは出ませんでした。しかしアマチュアのロードバイク乗りでも人類最速を抜き去ることができるのがロードバイクという乗り物の魅力です。

それでも時速40km超で走れるのは、ウルトラマンでいられるぐらいの時間、せいぜい3分ほどだと思います。それがホビーレーサーのスピードであり持続時間です。あくまでも私の場合ですが。

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シロウトが「時速50kmぐらいで平気で巡行できる」という発言は疑わしい

≪Yahoo!知恵袋≫などのアマチュア・ロードバイク乗りのネット上の意見を見ると「時速50kmぐらいで平気で巡行できる」なんて書いている人が驚くほどたくさんいます。しかし私には容易には信じられません。一瞬ならともかく、そのスピードで巡行するのはかんたんなことではないはずです。

もちろん中にはそういう熟練者がいることは承知しています。しかしそれほどの熟練者ならば自分の客観的な実力をよくわかっているはずです。「時速50kmぐらいで平気で巡行できる」自分は特別な存在であって、普通の人にかんたんにできることではないということを認識しているはずだと思うのです。つまり熟達したロードバイク乗りにしては「言っていることがヘン」なのです。レベルの高い者だと自称しながらレベルに見合った現状分析ができていないというわけですから。

「時速50kmぐらいで平気で巡行できる」ということは、もはやロードバイクは原チャリ並みということです。私は決して遅いロードバイク乗りではありませんが、自分は原チャリよりも速いと思ったことはただの一度だってありません。原チャリはロードバイクの天敵です。原チャリにはまったくかないません。

「時速50kmぐらいで余裕で巡行できる」とネット上で素人ロードバイク乗りが自分のスピードを誇っているのは眉唾ものだと思っています。かなり盛っているか、サイコンが壊れているんじゃないかしら。嘘つき、あるいは自慢したいだけだと思います。

あくまでも私の実力とスピードを基準に話しをしているので、私のサイコンが壊れていて常に低速表示になっていたのだとしたらまた話しは別ですが。

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スピードは風や傾斜でいくらでも変わる

そんな私ですが、これまでに過去最高スピードで時速60キロを記録したことがあります。河川敷のフラットコースを猛スピードで走り抜けたときのことです。耳元で風がゴウッと鳴って、頭に血がのぼり視野が狭まり、異次元の世界を体験しました。

「おおっ。なんてスピードだ!!」

そのときのスピードがサイコンで時速60キロでした。瞬間最速スピードであり巡航スピードではありません。

しかし家に帰るためにくるっとUターンした途端にものすごい逆風が吹きつけてきました。ガツンと壁にぶつかったようにロードバイクはピタッと止まりました。帰り道はどんなに必死にペダルを漕いでも時速30キロしか出ませんでした。

必死にペダルを回していたので気づきませんでしたが、往路はものすごい追い風だったのです。川に沿って下っていたので、走路はゆるやかな下り坂でした。

Uターンすれば下り坂は上り坂になり、追い風は向かい風になります。結局プラスマイナスせいぜい45kmぐらいしか出せないというのが私の実力のようです。

くりかえしになりますが、決して私は遅いロードバイク乗りではありません。通勤バイクでの戦績は全勝無敗でした。そんな私のホビーレーサーのスピードに関する正直な意見です。その程度がアマチュアのロードバイク乗りのスピードの限界だと思います。

ネット上にあふれる「時速50キロぐらいで平気で巡行できる」という証拠のない意見を真に受けてはいけません。

 

 

ロードバイク・クラブの入り方。嫌われない新入部員の作法

マラソンからロードバイクに本格的に軸足を移した私は、ものすごく強いロードバイク乗りになりたいと思っていました。自分がどこまでやれるのか。マラソンを始めた時と同じ初心にかえって、ロードバイクの世界に挑戦してみたかったのです。楽しかったマラソンの世界、初心者から上級者になるまで試行錯誤しながら階段を一段づつ登りました。その過程をランニングシューズをロードバイクに履き替えてもう一度経験できるのならば最高です。

私が市民ランナーのグランドスラムを達成するまでマラソンにのめり込んで走り続けることができた理由のひとつに走友会に所属したということがありました。ライバルとの熾烈なサブスリー競争なしにはグランドスラム達成はありませんでした。だから決めていました。ロードバイクの世界でやっていくならば、絶対にロードバイククラブに所属しよう、と。

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趣味サークルは、自分で立ち上げるか、インターネットで探す

さてロードバイクのクラブですが、どうやって入ったらいいのでしょうか?

ロードバイクの世界は初心者でしたが、だいたいの想像はつきました。ランニングでは私は『走友会』のリーダーをしていました。だから会員を募集する執行部側の気持ちがわかります。ロードバイクのクラブも走友会と同じようなものだろうと予想しました。

趣味サークルというのは、自分で新規に立ち上げるか、既存のクラブに入れてもらうしかありません。楽しみたいだけならば、自分で立ち上げるのもアリです。

会社など身近でロードバイクに乗っている友人・知人に「一緒に走ろう」と声を掛けて、走った後に居酒屋で宴会して、そこで勝手にロードバイククラブを名乗れば、それで新しいロードバイククラブの誕生です。「走友会」や「山岳会」はこのようにしてこの瞬間も日本中に立ち上がっています。

会社にそういう仲間がいなければ、SNSで仲間を募ることもできます。地元掲示板のメンバー募集などを利用しましょう。

しかし私は自分でつくるのではなく既存のロードバイククラブに入れてもらおうと思いました。「強くなりたい」ならば、既存のクラブに入れてもらった方が確実です。それも「自分よりも強そうな人のいる真剣に練習している強豪クラブ」に。

たとえばブルベに参加したいと思ったら、経験者から話しを聞くことがどれほどブルべを身近にしてくれることでしょうか。そうやってマラソンの世界を私は広げてきました。ロードバイクの世界だって同じことでしょう。

既存のクラブはインターネットで探すのが一番簡単です。インターネットで「ロードバイク」「サークル」「××(地元名)」で検索すると、いろいろなクラブが出てきます。その中で「なるべく近く」でよさそうなクラブを探せばいいのです。

拠点(練習の集合場所)があまり遠くのクラブでは、練習会に継続参加するのが難しくなります。ロードバイクで一緒に走ろうとすれば、拠点までは自走するか、クルマで運ばなければなりません。電車での輪行は非日常の「旅」です。「日常の練習」で輪行するのにはものすごく抵抗がありました。現実的に考えれば、自走もしくはクルマでロードバイクを運べるところに練習会の集合場所があったほうがいいでしょう。そうでなければ、練習会に参加しつづけることができません。

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地元のロードバイク販売店に聞いてみる

インターネットで探せない場合、もう一つ、ロードバイク・クラブを探すべき場所があります。それは地元の自転車屋さんです。ロードバイクを販売している近所の自転車屋さんを当たってみましょう。

ロードバイクの練習会は四人もいれば十分なので、インターネットで会員募集なんてそもそもやってない場合があります。ロードバイクを販売している地元の自転車屋さんは、そこを拠点にしたロードバイクチームをもっている可能性があります。店主にこっそり聞いてみましょう。店長を中心に少人数でロードバイクチームを作っているかもしれません。そういうチームは友達感覚でやっていることが多いのが特徴です。地元の自転車屋さんに聞いてみましょう。

ロードバイクライフを楽しむならば、ロードバイククラブに所属することを絶対におすすめします。独りで走っているよりも、ずっと楽しい世界が待っています。友人・知人の情報や頑張っている姿が刺激になって、趣味を長続きさせてくれるはずです。

基本的には誰でも受け入れてもらえるはずです。ところが私の場合はそうではありませんでした。その失敗談をこれから語ります。参考にしてください。

私が所属したロードバイククラブは、本気でレース入賞を目指す人たちが集まっている競技志向のクラブでした。そこで私はとても「受け入れられている」とは言えない状況でした。受け入れてもらえなかった理由は、自己分析ですが、たぶん3つほどあります。

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機材(ロードバイク)を、拠点のお店で購入していない

これが「一緒に楽しむことを目的とした仲良しクラブ」だったら、何の問題もなかったのだろうと思います。しかし所属したクラブは「本気で入賞を目指す人たちが集まっている競技志向のクラブ」でした。普通、ロードバイククラブの入会条件は「ロードバイクが好きなこと」が唯一の条件だと思いますが、ウチのクラブは「ビンディングシステム装備」が必須条件でした。

休日、東京・江戸川の土手を走っていると、たくさんのロードバイクとすれ違います。しかし、みんながビンディングシューズを履いているわけではありません。ロードバイクに乗っていても、普通のシューズにペダルの人もたくさんいます。乗り始めたばかりの初心者はみんなノーマルペダルにノーマルシューズではないでしょうか。

「ビンディングシステム装備」が入会条件というのは、暗に初心者お断りと言っているようなものです。速く走りたい人。しっかりと機材にお金をかけて整備することができる人しか仲間に入れないというわけです。

そんな競技志向のクラブだから、メンバーの機材はそれはものすごい自転車ばかりでした。見たこともないようなウルトラ・ディープリムホイールの人。ピナレロ、コルナゴ、BMC、S-WORKS、サーヴェロ、TIME、SCOTT、トレックの最高級車MADONEなどなど。 台湾製GIANTだとちょっと肩身が狭いというような高級車揃いのチームでした。機材総額50万円越えはあたりまえ。100万円をこえるような人もいました。

それをみんなロードバイク・クラブの拠点となっている自転車店を通して購入しているのです。その自転車店は自転車本体はもちろん、ロードバイクチームのロゴ入りジャージや給水ボトルを制作して販売したりもして儲けていました。その代わりロードバイククラブに集合場所を提供したり、自転車旅行を企画したり、様々な便宜を提供して持ちつ持たれつの関係になっているのです。

このようなロードバイククラブの場合、入会資格に「クラブの拠点のお店で自転車を買うこと」は、あからさまには謳ってはいませんが、暗黙の了解となっている場合があります。入会した時のバイクは仕方がないけれど、買い替えの時は「拠点のお店」で買うようにと諭され、圧力がかかったりします。

さて、私のロードバイクは通勤用ロードでした。『MARIN ARGENTA SE-A』通勤用のアルミバイクです。「街乗りロード」とか呼ばれるレース用ではない普段使いのロードバイクでした。10万円もあればお釣りがくるような低価格帯のロードバイクです。本当は高級車が欲しかったのですが、通勤用ロードバイクというのは「仕事中にいたずらされる」「盗まれる」危険が常につきまとうものです。高級バイクに乗るわけにはいかなかったのです。出発点が通勤ロードバイクなのだから仕方がありません。このことで後日肩身が狭い思いをするとは思ってもみませんでした。

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ロードバイククラブの名前を冠したセレブリティ・サロン?

インターネットでよさそうなロードバイククラブを探したところ、私の場合はラッキーなことに、自走していける距離に強豪チームがありました。そこの代表に連絡をとり、とりあえず練習会に参加させてもらうことになりました。

はじめて練習会に参加した時から、周囲から「そのバイクで?」という目で見られました。新入部員がこの手の視線の洗礼を受けるのはどこでも一緒だと思います。

こうして私はロードバイククラブの練習会に参加させてもらうことになりました。軽自動車よりも高額のロードバイクがサイクルラックにバンバン吊るしてあるのは壮観でした。これはもうロードバイククラブの名前を冠したセレブリティ・サロンだと思いました。磨き上げた自転車がまるで宝石の展示会のように並んでいます。

そんなサロンに、ただひとり貧乏人が入ろうとしたらどうなるか。だいたい想像がつくでしょう? こういう場面でのセレブ側の反応は古今東西共通です。あからさまには言われませんが「貧乏人の来るところじゃねえぞオーラ」が半端なく発せられます。『ベルサイユのばら』で、マリー・アントワネットのサロンに入りたくて懸命に背伸びをするポリニャック夫人の気持ちがよーくわかりました。映画『タイタニック』のディカプリオがセレブにイジメられているのを見ていると、あの頃の自分を思い出します。コンポーネントがシマノ「CLARIS」なんて人は誰もいません。みんな「DURA-ACE」でした。

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仲間外れの大義名分は、機材がボロいではなく、スピードが遅い

「そんな機材じゃダメだ。機材を買い替えないと、おれたちの仲間には入れないよ」という金持ちオーラが容赦なく浴びせられました。高級クラブのドレスコードのようなものです。もちろん「貧乏人は来るんじゃねえ」と、そんな風にあからさまにはいわれません。セレブは遠まわしな表現をとるのです。「そんな機材でおれたちについて来られる?」というニュアンスで仄めかされます。「ついてこれない」というのは「仲間にはいれない」というのと同じことです。

機材がボロいので仲間外れにするというのでは、貧困問題と根は同じで、社会的にすこし問題があります。しかしスピードが遅くてついてこられないのが理由なら大義名分がたちます。入賞を目指してガチ練習しているのですから、遅い奴は足手まといです。

確かにこれがクルマだったら、フォーミュラカーにセダン車がスピード勝負でかなうわけがありません。しかし幸いなことに「自転車」です。自転車を動かすのは肉体です。コンポーネントが「DURA-ACE」だからって「CLARIS」よりもぜったいに速いという保証はありません。しかしカーボンフレームの「DURA-ACE」たちは、アルミフレームの「CLARIS」よりもぜったいに速く走れると頭から思い込んでいるようでした。

しかし私はサブスリーランナーです。町中をジョギングしているランナーたちの中で、私の方が速いのは普通のことでした。そんな私が一番遅いと決めつけられることが不思議で仕方がありませんでした。

ロードバイク・クラブの走行練習ではスピード別にA,B,Cの三チームに分かれてローテーションを組んで走ります。もっとも速いA集団で私は走ろうとしましたが「バカ言っちゃいけない。A集団がどれだけ速いか知っているのか」と周囲に止められました。私はむしろ「自分がいちばん速かったらどうしよう?」ぐらいに思っていました。しかし周囲は真逆の評価です。自転車の価格帯のせいでしょう。そしてリーダーの指示で強制的にもっとも遅いC集団に入れられてしまいました。

A集団は市民レースで優勝、入賞を狙うような人たちが集まっているクラブです。しかし私も市民マラソンの世界では何度も入賞しています。A集団でやりたかったのですが、ロードバイク業界では素人なので、いちおうリーダーの指示に従いました。

ふりわけられたC集団でも「果たしてその街乗り用ロードで俺たちについてこられるかな」という新人の実力を値踏みするような視線を感じないわけにはいきませんでした。

ランニングとロードバイクは、どちらも体幹、脚をつかった有酸素運動です。市民ランナーのグランドスラム達成者が、通勤バイクで往復30kmを毎日走り込んだ上で、ロードバイクに挑戦しようとしているのです。通勤レースの戦績は全勝無敗でした。これまで自分よりも速く走るロードバイク乗りを見たことがありません。走ってみれば、すべてがわかるはずです。

こうしてロードバイククラブの練習会が始まりました。A集団、B集団、そしてC集団の順にスタートしていきます。基本的には速さを競い合うのではなくローテーションの練習なのですが、

「速い!」

すぐにそう感じました。C集団がこんなに速いペースで走るのか、と衝撃を受けました。C集団です。AよりもBよりも遅い人たちが走るのがC集団のはずです。そのC集団がこんなに速いのか! さすが入賞を狙う人たちが集まっているチームです。驚きました。確かにハンパな実力ではローテーションに入っていくことさえ難しいレベルの高さでした。楽しみながらポタリングというレベルではありません。周囲の視線の意味がわかった気がしました。きっとこれまでにも軽い気持ちで街乗りロードで参加して、スピードについていけずに脱落した初心者ロードバイク乗りがたくさんいたのでしょう。だから私も同じような目で見られたのだと思います。

走っている最中にも「上から目線の指導」が入りました。「軽いギアをクルクル回すんだ」「そんなペダリングじゃダメだ。遅れたら容赦なく置いていくぞ」と言われました。

これは完全に「自分の方が速い」という前提での発言です。この人は私の何を見ているのでしょうか。ロードバイクの価格しか見ていないのではないかと思いました。

私はC集団の誰よりも速く走ってみせようと決めました。ぶっちぎってロードバイクは機材ではないことを証明してやろうと思いました。

「ロードバイクの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを……教えてやる!」

『機動戦士ガンダム』でシャアがつぶやいた言葉を、あのときの私も呟いていたと思います。

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【嫌われる理由】機材の価格差無視。街乗りロードのくせに速すぎる

ローテーション練習の終了まぎわにある直線コースでは各人が自由に走っていいことになっていました。ここでいわば「競争状態」になります。ローテーション練習は重要ですが、そればかりに終始してはおもしろくありません。ラストの直線コースを全力で走ることで自分を解き放つことができるのです。それが練習会に参加する醍醐味でした。

私はすべての力を振り絞ってペダルをぶん回しました。軽いギアをクルクル回せなんてクソくらえです。その理論では短距離走を速くは走れないことを私は通勤バイク生活で体得していました。だから重たいギアを力の限りガシガシと踏みしめます。アドレナリンがあふれ出しました。やるならA集団です。C集団でやるなんて市民ランナーの三冠王の恥です。とりあえずこのC集団はすべてぶち抜いて、自分の力を示さなければなりません。そして私は、C集団全員をはるか後方に置き去りにして、圧倒的な速さでゴールしたのです。

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【嫌われる理由】気合い、迫力、実力差を見せつけすぎた

ゴール後、C集団の誰も、私に何も言いませんでした。みんな遠巻きにして、誰も話しかける人はいません。真剣すぎる気合い、まじめすぎる迫力といったものは人を遠ざけます。当然、上から目線の指導なんかひとつも入ったりはしません。そのロードバイククラブは『本気で入賞を目指す人たちが集まっている競技志向のクラブ』でした。『高級自転車、見せびらかしクラブ』ではありません。一番速いやつが一目置かれるのは当然のことだと私は思いました。

ロードバイクの値段でいうと5~10倍も違うスーパーカー軍団をすべて抜き去ることができました。自転車は機材の価格ではありません。自転車は脚です。肺です。肉体です。実力を示すことができて、私は満足していました。しかしこのことで私はますます孤立していきます。

みんなに受け入れてもらうのならば、今考えれば、もっといい方法があったと思います。下手に出て指導をもらいつつ、本当の実力は隠して、みんなのちょっと後ろで手抜きゴールするとか。実力はレースで示せばいいのです。

しかし私は最安値の機材で、最高級のロードバイクに乗る人たちを圧倒的にぶち抜いてしまいました。街乗りロードでレーシングロードに大差で勝ってしまったのです。これでは何のためにレーシングロードに大金を投資しているのかセレブリティクラブの人たちはわからなくなってしまいます。拠点となっている自転車店は、できるだけ高い高級車を買ってもらいたいと思っているわけですから。

こうして私は孤立していったのです。

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実力最強でない一匹狼は、ただ一匹なだけ

次の練習会で、B集団も完全に抜き去る実力を示すと、もう誰も私がA集団でやろうとするのを止める人はいませんでした。やるならA集団、はじめからそう決めていました。

ところがこのレースで優勝を狙うA集団のもの凄いこと凄いこと。本当に凄い奴はごく一部で、その凄い奴らがA集団には固まっていたのでした。

「速い! 速すぎる!」

思わず「埼玉銘菓10万石まんじゅう」みたいなフレーズが脳裏に浮かびます。A集団には実業団の選手も参加していました。向こうはクルージング・スピード(巡航速度)、こっちは全力(バトル・スピード)でようやく互角という感じです。向こうが本気を出せば、とてもついていけたものじゃありませんでした。

ここでは当然「上から目線の言葉」が容赦なく飛んできます。「ふらついている。あぶねえ!」「もっと前つめろ!」というような。そもそも私は通勤バイクからスタートしているので、集団走行はあまり得意ではありませんでした。

A集団は私の機材なんて見ちゃいません。ただロードバイク乗りとしての実力だけを見ていました。そしてその実力が問題でした。私の実力に対してA集団のペースがそもそも速すぎるのです。意識が朦朧とするぐらいまで足を回さないとついていけません。こっちは我流でやってきたから、本気でスピードを出そうとすれば車体をよじってダンシングを使います。そこまでやらないとA集団にはついていけません。

ところがこれが大問題となりました。集団走行の中で、みんなが真っすぐ整然と走っているところに、ひとりだけハアハアと息を荒くした本気野郎が車体をよじってダンシングするものだから、非常に嫌われました。

「危ねえ!」

大声で怒声を浴びました。先行車との車間距離はタイヤ半分ほどしかありません。隣との距離も肩が触れるほど近いプロトンの中に「下ハン握って全力ダンシング」する奴がいたら誰だって嫌だっただろうと思います。それが危険走行と見なされました。

「後ろに下がれ」ついにリーダーから命令されました。「お前とは一緒に練習できない」という意味です。

己の実力だけが頼りの一匹狼が、実力においてオオカミの実力を示せないとすれば、残るのは一匹ということだけです。

こうして私はロードバイククラブの中で孤立してしまったのでした。

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スムーズな運転を身につけるために、ローラー台を購入

みんな仕事も家庭もあります。週末のロードバイクのローテーション練習で落車して怪我するわけにはいきません。ふらつくような奴と一緒に練習したくないのは当然のことです。

要するに、集団の調和を乱さなければいいのです。ふらつかなければいいのです。そのためには「必死でやっとついていける」トップ集団でやるのは得策ではありません。

A集団失格の烙印を押されて、B集団に私は戻りました。スピードに余裕のある集団でテクニックを磨かなければ問題は解決しません。ローラー台を購入して、その上で練習するようになったのはこのためです。車体をよじって走る癖を矯正するためでした。

練習会に頻繁に顔を出すようになると、セレブ・サロンの人たちとも打ち解けました。元々「一緒に走ろう」「ロードバイクで遊ぼう」という人たちなのです。もう安い機材をどうこう言う人もいません。速さを求めるロードバイクの世界で、自分よりも速い人に「街乗りロードのくせに……」と批判する人はいません。そんなことをしても自分が恥ずかしくなるだけです。機材は「街乗りロード」でも、私にはサブスリーランナーの心肺機能があります。セレブ・クラブにもB・C集団なら余裕でついていくことができます。私はもうA集団にこだわることはなくなり、時にはA集団で、時にはC集団で走っていました。

ただしローテーション練習のふらつきだけは容赦がありませんでした。それは「自分を守る」ことでもあるし「集団を守る」ということでもあります。集団で落車をすれば、下手をすれば命を失うからです。

集団走行では、下ハンではなくブラケットを握って上半身を起こし、遠く(二台前ぐらい前)をぼんやりと見て、スピードに余裕をもって走るとうまく走れます。車間距離は感覚でつかみます。先行車の後輪を凝視するようではいけません。そうやって走れば嫌われません。

はじめてロードバイククラブに入会した頃のことを思いだして書いてみました。私のようにのっけから嫌われる人はあまりいないと思いますが、はじめてロードバイククラブの仲間に入れてもらおうという人の参考になれば幸いです。

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集団走行で嫌われないために

市民レベルのレースや練習会は、まず100㎞以下です。この程度の距離ならば、翌日にほとんどダメージを持ち越さないほどの肉体的負担しかありません。しょせんは短距離なのだから、長距離走ではなく、短距離走の走り方をすべきだということはすでに述べました。具体的には「軽いギアをクルクル回す」ピッチ走法ではなく「重たいギアをぶん回す」ストライド走法を選択すべきだ、という内容でした。

しかし矛盾するようですが、この「アウタートップ走法」は集団走行ではやらない方がいいです。何故って……嫌われるからです。

アニメ『弱虫ペダル』の小野田坂道くんのように、軽いギアをクルクル回転させるのがロードバイクにおけるペダリングの基本とされています。ほとんどの方はこの基本通りのペダリングをしているでしょう。私も最初のロードバイククラブでこの走り方を指導されました。その指導者をアウタートップ走法でぶち抜いて黙らせたことは既に述べたとおりです。

このようにロードバイクの世界では、長距離走の乗り方を、しょせんは短距離でしかない練習会やレースでも使うように指導する伝統があるのです。あなたのまわりのロードバイク乗りのほとんどは、定石どおりに弱ペダをクルクル回しているだろうと思います。

そのような集団のローテーションの中に、ひとりだけ重たいギアをブンブン回すロードバイク乗りが混じるとメチャクチャ嫌われます。リズム感(回転数)がひとりだけ違うので、集団走行の感覚が狂ってしまうからです。

それだけではありません。もっとも問題なのは「アウタートップ走法」は自分で思っている以上に車体がぶれている可能性があります。重たいペダルを踏みしめるときに、どうしてもフレームがブレるのです。軽ギアの人がスイスイまっすぐに走っているのに、重ギアの人が車体を揺らして走るので「危険」とされて集団から敬遠されてしまうのです。

ツール・ド・フランスなどのレースでもゴールスプリントでは、ダンシングした選手が車体を左右に揺らしながら猛スピードで走っています。重ギアのあなたは無意識にあれと同じことをやってしまっている可能性があります。アウタートップ走法はタイムトライアルのような単独走行の時ならば構いませんが、集団走行ではやらない方が無難です。みんなと同じ回転数になるように軽めのギアに落としてインナーロー走法で周囲のリズムに合わせましょう。

練習会はしょせんは「遊び」です。みんなと仲良く調和して走りましょう。もしもビッグギアなら余裕で付いていける集団に、グラニーギアだとキツイと感じるのだとしたら、その集団はあなたには速すぎるのです。もっと遅い集団の中で同じリズムで走行した方がよいでしょう。ローテーションのスキルは集団走行しなければ身に付きませんし、みんなから爪弾きにされては結局、ロードバイクで楽しく遊べません。

ひとつ遅い集団で、楽しく遊ばせてもらいましょう。そしてあなたの実力はレースで示せばいいのです。そこでは封印していたビッグギアをブン回して、力の限り、涎がたれるまでスピードを出しても、文句を言うやつはひとりもいません。

レースはレース、ローテ練習はローテ練習です。テクニックを使い分けて、メリハリをつけて走りましょう。

 

 

ロードバイクのエンジンは肉体

私がはじめて強豪ロードバイククラブに入会したとき、機材で実力を測られたエピソードをご紹介しました。しかし実際にはどんな機材であっても、それを走らせるのは乗り手の肉体です。総額10万円ほどの機材でも、総額100万円の機材のロードバイクを、あなたの肉体次第で、いくらでも追い抜くことができます。

なまじっかロードバイクにお金をかけられると、肉体を鍛えることを忘れて、お金でスピードを買う発想になってしまいがちです。エアロホイールがいいと聞けばそれを買い、スピードプレイのビンディングペダルがいいと聞けばそちらに乗り換えるというように。

そしてついにはサイクルラックが高級車陳列会のようになって、機材の良さが乗り手の実力であるかのように勘違いされてしまうのです。ロードバイククラブがセレブリティ・サークルみたいになってしまうのは、このためです。

本来はもっと汗臭い集団であるべきでしょう。速くなりたかったら、お金を使うのではなくて体を鍛えるのです。私は市民ランナー出身なので、マラソンで強くなったやり方でロードバイクに強くなろうと思っていました。それは脚の筋肉を鍛えることであり、効率的なフォームを追求することでした。ロードバイクのエンジンは肉体なのです。それを忘れてはいけません。

ロードバイクはオートバイとは違います。排気量(肺の換気能力)はお金では買えません。ところが自転車の雑誌を眺めれば、まるでクルマの雑誌のように機材の紹介ばかりです。そして機材を買い替えればロードバイクの世界が一変するかのような売り文句がおどっています。これではすべては機材で決まるかのように初心者が錯覚してしまっても無理はありません。

どうしてこんなことになっているのかというと、自転車雑誌は、自転車メーカーの広告収入をアテにしているからです。機材を売って儲けようという人たちが雑誌に広告を出しています。いい広告を引っ張ってきた編集者がえらくなります。つまり雑誌は、機材を買わせようとする商業主義の協力者でもあるのです。売らんかな主義の結果、自転車雑誌はニューモデルの発表会のようになっています。体を鍛えようという記事は、隅に追いやられています。

このロードバイクの価格、定価ですが、実際には「あってないようなもの」です。プレミア付きの価格であることはまちがいないでしょう。機材の価格というのは需給バランスで決まります。ロードバイクに信じられないほど高価な値段がつくのは、その値段でも買いたいと思う人がいるからです。たかがホビーレーサーの一市民がわずか数秒のタイム短縮のために数十万円のお金を投じるから機材価格が高騰するのです。

自分のお金を何に使おうが勝手ですし、あの世に持っていけるものでもありませんから、愛するロードバイクに突っ込んでしまえ、という気持ちはよくわかります。しかし、ロードバイクで速くなりたかったら、空気抵抗がどうだとか、回転効率がどうだとか、わずか数秒のタイム短縮のために数十万円のお金を投じるよりも、まずは体を鍛えましょう。それが先です。

ロードバイクはスポーツです。スポーツの成績は、体を鍛えて競うものです。金メダルはお金で買えるものではありません。

フレームの重量が1キロ軽くなるから新しいフレームに買い替えるのではなく、まずは自分の体重を1キロ減らしましょう。それでトータル重量は変わりません。体を鍛えて減らした体重1キロならば、フレームを買い替えて減らした1キロよりも、速く走ることができるようになるでしょう。それがスポーツのいいところです。ロードバイクはスポーツなのです。

ロードバイクで成功するのは、どのスポーツからの転向者か?

ロードバイクのマンガ『弱虫ペダル』の主人公・小野田坂道くんは他のスポーツはぜんぜんダメだけれど、ロードバイクのヒルクライムだけは強いというキャラクター設定になっています。漫画的な誇張はありますが、これはまったくありえない設定ではありません。小野田くんをロードバイクの世界に誘う場面で、鳴子章吉くんが「たいていのスポーツでは体重の処理が大問題だけれど、ロードバイクは車体が体重を支えてくれるからそこは気にしなくてもいい。ただ前に進む筋肉だけあればいい(だからキミは向いている)」というニュアンスの発言をします。さすが作者の渡辺航先生はよくわかっています。さらりと核心を突いた奥深いセリフですね。

ロードバイクは転向者が多い競技です。最初にはじめた競技スポーツが自転車だという人は、日本には少ないのが現実です。これは競技自転車が、テニスやサッカーを始めるのとは比較にならないほどお金がかかることと、場合によっては死ぬこともあるほど危険なことが、初心者の敷居を高くしている原因だと想像されます。

もしも野球部がない学校だったら「まともな学校か?」と疑ってしまいますが、自転車競技部がなくても奇異には感じません。そういう状況もあって、ロードレーサーはたいていが他の競技からの転向者なのです。

だったらどのスポーツからの転向者が、もっとも自転車の世界で成功するのでしょうか?

まず最初に思い浮かぶのは陸上選手ではないでしょうか。同じように脚を回転させる競技ですから応用がききそうです。ミスター競輪・中野浩一選手は陸上(短距離)からの転向組だそうです。

新城幸也選手はもともとはハンドボールの選手だったそうです。ロードバイクの本場ヨーロッパならともかく、日本では自転車競技部をもっている学校なんて少ないですから、やはりはじめは何か別のスポーツをやっていて、何かきっかけがあってロードバイクをはじめたという人がほとんどなのですね。

この本の筆者はマラソンからの転向組です。そのときの経験からいうと、マラソンとロードバイクで世界トップレベルになるというのは極めて難しいと思います。どのスポーツにも最適の筋肉量や体重というものがあります。上位レベルになればなるほど、その競技に適した筋肉をしているかどうかが問題となります。レベルが上がるほど両立は難しくなります。しかし市民レベルならば心肺機能や使う筋肉、毛細血管の発達など共通部分も多いので、どちらとも高いレベルで競技することが可能でしょう。

私がロードバイクに転向した時、師匠格の人に言われた忘れられない言葉があります。

「ロードバイクは陸上系の人よりも、野球やバスケなど球技系の人の方が上達することが多いんだ」

なるほど、よく観察された、重みのある一言だと今では思います。この言葉を解説しましょう。

マラソンランナーの熱中とは、自分の領域(ゾーン)に行くことです。無心になることが最高の境地です。きわめて個人的で孤独な競技です。

ところがロードバイクに乗っていると、無心でなんかいられません。路面状況や、集団の動きや、ローテーションなどで、常に周囲に意識を配っていなくてはなりません。無心でいたりしたら、たちまち周囲と接触して落車してしまうでしょう。

このようにランニングとロードバイクはじつは似て非なる競技なのです。単純なピストン運動であることは似ていますが、頭の中身はぜんぜん違います。周囲に気を配るという意味で、ロードレーサーに似ているのはむしろ球技です。

野球やサッカーのような球技はひとりではできません。仲間や敵の動きを見ながらプレイするものです。そういう脳の働きが似ているから、陸上選手よりも球技系の選手の方が上達することが多いと私の師匠は言ったのでしょう。名言だと思います。

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個人競技に見えて、実はビックリするほど集団競技なのが、ロードバイク

スポーツは筋肉だけで行うものではありません。頭を使って行うものです。無心や無我夢中を愛する孤独なマラソンランナーよりも、周囲とコミュニケーションをとって連携したりする野球やサッカーの選手の方がロードバイクには確かに向いていると言えるかもしれません。

たとえば会社員の仕事は、独りでできることではありません。サラリーマンとしてうまく生きていくには周囲をよく見回すことが大切です。企業の採用担当者はマラソンランナーよりもロードバイク乗りを採用したほうがいいかもしれませんね。

個人競技に見えて、実はビックリするほど集団競技なのがロードバイクです。孤独に見えて、実はそうではありません。

 

 

アパートでローラー台トレーニングをすることは可能だろうか?

通勤ロードバイクにも慣れ、自分が決して遅くないということを実感したあたりで、私はロードバイククラブに入会しようと思いました。もともと市民ランナーとしてマラソンをやっていて、走友会に所属したことで世界が大きくひろがった成功体験をもっているので、ロードバイククラブに所属することにまったく抵抗はありませんでした。

ところがこのロードバイククラブで、私はすっかり周囲から嫌われてしまいました。思い当たる理由はいくつかあるのですが、その最大のものは「車体をよじって進む我流フォームが危険走行あつかいされた」ことでした。本格的に入賞を狙うような強豪ロードバイククラブだったために、クラブの専用サイクルジャージがありました。そういうものを私も購入してみんなに溶け込もうと努力をしました。しかしいくらクラブのサイクルジャージを着ていたって、安定してきれいにまっすぐに走れない人が、ローテーション練習に快く受け入れてもらえるはずがありません。

私は安定した走りをして、クラブのローテーション練習に受け入れてもらうために、ローラー台を購入して練習しようと思いました。スピードだけならクラブの上位レベルでした。だから決して「ローラー台練習で速くなろう、強くなろう」と思ったわけではありません。ローラー台を購入した動機は、クラブの仲間に受け入れてもらいたかったからでした。フォーム矯正のために、ローラー台を買ったのです。

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ローラー台(サイクルトレーナー)には大きく二種類ある

「速くなる」「強くなる」ためではなく、「真っすぐきれいに走るために」「集団に受け入れてもらうために」ローラー台練習に取り組むことにしました。ローラー台を購入することになるのですが、ローラー台には大きく二種類あります。

まずは自走式の三本ローラータイプ。ふつうに自転車を走らせますが、路面がタイヤと逆に回転するため前に進まないという仕組みです。ランニングでいうトレッドミルですね。

もうひとつが固定式ローラー台です。駆動輪である後輪だけを宙に浮かせて前に進まないようにします。このタイプはローラーの回転負荷を変えることができます。

さて、どちらのローラー台を採用するべきでしょうか? ローラー台を購入する前に、実はもうひとつよく考えておかなければならないことがあります。それは「どこでローラー台トレーニングをするか?」という場所の問題です。

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ローラー台よりも実走。実走に勝るトレーニングはない

三本ローラーにせよ、固定ローラーにせよ、それほど重たいものではないので、どこにでも持ち運びすることが可能です。たとえば自宅のコンクリート駐車場でローラー台トレーニングすることだって可能です。しかしあまりそういう人は見たことがありませんよね? なぜかというと外にローラー台をセッティングしているヒマがあったら、外を走りに行った方がずっと気分爽快だからです。楽しいし、走力もつきます。

ランニングでいえば、屋外を走るのと、室内のトレッドミル(ランニングマシン)練習に相当します。実走とランニングマシンでは、微妙に着地の仕方、角度などが変わるため、実走にまさるトレーニングはありません。

それと同様にロードバイクというものは風(空気抵抗)とたたかいながら前に進む乗り物なので、やはり実走に勝るトレーニングはないのです。風のないところでいくら走っても、本当のスキルは身につきません。ローラー台は速くなるためではなく、いいライディングをするため、フォーム矯正のために使うべきでしょう。

ローラー台を置く地面は固く平らである必要があります。だから同じ自宅でもコンクリート駐車場ならトレーニング可能ですが、芝生の庭では厳しいかもしれません。もろもろ考えると、ローラー台は、室内で利用することがベーシックな使い方だとなるのです。室内ならば地面が固く平らです。そして雨が降ってもトレーニングすることができます。雨の日は実走できません(しません)ので、雨の日にもロードバイクに乗れるというのは、ローラー台の大きなメリットだといえるでしょう。

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アパート暮らしがローラー台でトレーニングすることは可能か?

こうして室内でローラー台トレーニングをすることになった私ですが、もうひとつ大問題がありました。それは賃貸アパート暮らしだということです。私は軽量鉄骨アパートの二階に住んでいます。

一軒家の人だったら悩みはありません。騒音、振動といっても家族内のことなので、折り合いをつけてどこでも好きな場所でトレーニングしてください。

問題は集合住宅の場合です。ローラー台の騒音、振動は、ご近所さんに問題にならないのでしょうか。

アパートを何度か引っ越したことがある人ならおわかりでしょうが、同じ軽量鉄骨のアパートでも、騒音振動の具合は、建物によってぜんぜん違います。下の階からの物音なんてまったく聞こえなかったアパートもあれば、下の階の子どもが駆け回る足音が上の階まで伝わってくるようなアパートもあります。だから実際、アパートの下の階(上の階)に騒音振動が伝わっているかどうかは、建築の設計・普請しだいです。建物によるので一概にはいえません。それゆえ明確に「こうすれば大丈夫」と言うことはできないのですが、一般的なことは言えます。ここからは購入前に私が考えたことと、実際に対策したことを述べます。参考にしてください。

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転倒する可能性がある三本ローラーは諦めて固定ローラー台を選ぶ

集合住宅の二階に住んでいたことから、最悪、転倒する可能性がある三本ローラーははやばやと諦めることにしました。一階の住人への騒音、振動を気にしたのです。まさかローラーが急に回らなくなって自転車が自走して二階のガラス窓を突き破って死のダイビングすることはないと思いますが、いちおうそれも気にしました(笑)。

熟慮の結果、ミノウラの固定ローラー台を購入しました。ロードバイクの後輪のタイヤを「ローラー台専用」のものに代えておそるおそるペダルを回してみます。タイヤを替えるのはローラー台は路上走行よりもタイヤが削られやすいからです。専用のタイヤが販売されています。おそるおそるローラー台を回すと、ゴウゴウと騒音、振動がしました。

アパートでは、大人よりも、子どもの足音が響きます。これは打撃音が響くことを意味しています。そういう意味でロードバイクのローラー台は、打撃音を下のフロアに伝えるものではありません。どちらかというと振動を気にすればいいということになります。

私は可能な限りの対策を施すことにしました。

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ローラー台専用マットを敷くなど、ミルフィーユ的なレイヤード対策をほどこす

快適なロードバイク生活のために、この際、お金で解決できることは、お金で解決してしまいましょう。

ローラー台の騒音、振動対策に、専用のローラー用マットが販売されています。このマットの上にローラー台を置けば、横振動をある程度吸収してくれます。この上にさらに私はミルフィーユ的な対策を施しました。ローラー台専用マットの下に、ヨガマットなどの横にブレても振動を吸収してくれそうな素材を、レイヤードで重ねて対策をしたのです。

このように専用マットやヨガマットなどで、ミルフィーユ的なレイヤード対策したこともあってか、下の階から騒音、振動の苦情をもらうことは一度もありませんでした。

しかし実際のところ、まったく騒音・振動を感じなかったのか、それとも許容範囲で我慢してくれていたのかは、わかりません。だから「こうすればあなたのアパートでも騒音、振動の苦情が来ません」とは言えません。私の場合はなかったということでしかありません。

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アパートのローラー台トレーニングは「ひとり暮らし」が条件

もうひとつ。ひとことで軽量鉄骨アパートといっても私の場合は「ひとり暮らし」だったのでローラー台トレーニングができました。同居人がいたら、とてもローラー台トレーニングなんてできなかったと思います。

いかに振動の対策をほどこしたとしても、後輪がものすごい速さで回転して、同時にローラーを回している騒音はすさまじいものがあります。同居人はそれに耐えられないでしょう。

またひとり暮らしのローラー台は、たいていは「自転車置き場」を兼ねています。同居人がいたら、そもそもローラー台トレーニングをするだけのスペースを確保できないのではないかと思います。

ローラー台購入前に、そのこともよく考えておかなければなりません。

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ローラー台練習の効果

このように対策して私はローラー台トレーニングをすることにしました。最後にローラー台の効果について述べます。

私はロードバイククラブのローテーション練習に受け入れてもらうために、車体を左右に揺らさずに真っすぐに走るためにローラー台トレーニングをはじめました。それには一定の効果があったと思っています。

そもそもスートステーの先が固定されているローラー台の上ではバイクをよじって漕ぐことはできません。そして周囲への騒音、振動に気をつけて走ると、どうしたってお上品な走り方になるのです。専用のルームならともかく、一般アパートの一室ではとてもローラー台の上で「速くなるために、もがくような必死のトレーニング」をすることはできません。しかし静かで上品な走りをする習慣をつけるのには一定の効果があったと思っています。

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自分のスタイルを貫くことよりも集団でいることの方が重要

集団走行で嫌われるのには、いろいろな理由が考えられます。そのうちのひとつに「重たいギアをぶん回すスタイルだと、集団とリズムが合わない」ということもあります。私の場合はまさしくこれでした。

マラソンでいえば、ピッチ走法の走者とストライド走法の走者はリズムが合いません。マラソンの場合はロードバイクほど集団でいることが重要ではありませんので、自分のスタイルを貫くべきです。しかしロードバイクの場合は、集団の中にいることがマラソンよりも圧倒的に重要です。風の抵抗を集団がみんなで負担しあうからです。

日曜日のローテーション練習会で、自分のスタイルを貫く意義は薄いでしょう。むしろ周囲のリズムに合わせて軽いギアをクルクル回すようにしてみましょう。ロードバイクでは自分のスタイルを貫くことよりも集団でいることの方が重要だったりします。マラソンは自分と戦っていますが、ロードバイクは空気抵抗と戦っているからです。

ブラケットを軽く握って上体を起こし、余裕のスピードで走ります。先行バイクの後輪を凝視するのではなく、二台前のロードバイクを眺めるぐらいに視線をあげて走ります。目の前のバイクとの車間距離は感覚でとります。そしてローラー台での走りのように、まっすぐにスウーッとペダルを回すようにすれば、集団に受け入れてもらえるでしょう。私も「上手になったなあ」と褒められて、受け入れてもらえました。

最近ではズイフトZwiftというローラー台トレーニング・アプリケーションがあります。バーチャル空間で世界中のロードレーサーと競争ができるというゲーム感覚のものです。ローラーの回転音はけっこう大きいので、音楽を聞きながら走るのは難しいでしょう。ローラー台では、音楽を聴くよりも映像を眺める方が向いています。

バーチャル・トレーニング・ゲーム。そんな新しい世界を展開してくれるのがローラー台です。VRカメラまで装着したら寝食を忘れて乗ってしまいそうで怖いですね。ゲームをしているのか、ロードバイクのトレーニングをしているのか、どっちだかわからなくなります。

人間、同じものばかり食べていると飽きてしまうものです。ローラー台は、あなたのロードバイク生活に変化をあたえてくれるはずです。

 

 

ロードバイク乗りは太っている? ローディーはうんち(運動音痴)?

私は元々シリアス市民ランナーでした。ランニングの世界のことは専門書でライターをしていたこともあるほどよく知っています。そんな私がロードバイクの世界に足を踏み入れたわけですが……ロードバイク乗りは「太っている人が多いなあ」というのが最初の印象でした。ランナー目線からはビックリするような太っちょが多いのが、市民ロードバイク乗りの世界です。

スポーツというのは、デブの成績が悪いのが普通です。だからこう思いました。この人たちは、スポーツ自転車を舐めているのだろうか。あるいはスポーツができないからロードバイクに乗っているのだろうか?

膝にやさしいロードバイクは、まるでリハビリ施設のように、サッカーやバスケやランニングができないデブの受け皿になっているのかしら? そう思ったことをおぼえています。

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自転車は、体重をペダルを踏みこむ力に変換することができる

走る場合には、アスファルトを踏み抜くことはできないから、体重がそのまま膝への負荷として返ってきます。太っていると膝に悪いのです。さらに言うとランニングは宙に浮いて前に進む競技なので、体重はタイムに直結します。どれだけジャンプしつづけられるかが勝負になるため、体重は軽い方が圧倒的に有利です。

ところが、ロードバイクでは、体重をペダルを踏みこむ力に変換することができます。ダンシング(立ち漕ぎ)はまさに体重を推進力を変換する乗り方です。むしろ短時間、爆発的にスピードを出す場合、体重があった方がパワーを出すことができるのです。

無敵のアスファルトを蹴ることで膝にダイレクトに負荷が跳ね返ってくるランニングと違って、ロードバイクのペダルは負荷をペダルを回す力に変換してくれるので膝への負担を吸収することができます。ランニングにくらべるとロードバイクは膝への負担がやさしく、さらには体重が重いほど有利といえなくもないわけです。

そのようなことから、ある程度、ロードバイクの世界では、デブでも大目に見られているところがあるように思います。もちろんプロではなくアマチュアの話です。プロは練習量が違うので筋肉質の人はいても太っている人はいません。

ケイリンじゃありませんから、ロードバイクに乗る以上、わずか数キロで走り終わるということは、まずありません。結局は、どれだけ肺が酸素を取り込んで、全身に血を循環させるか、心肺機能でロードバイクの成績は決まります。体重を推進力に変換できるからって、酸素負債に陥ったら、もうそれ以上、走り続けることはできません。肉体ぜんぶをつかって勝負するところは他のスポーツと変わりありません。競技レベルが上がるほどに「体重=スピード」の理屈の上にあまえることはむずかしくなります。

私の場合、太り気味のロードバイク乗りに瞬間的に抜かれることがあっても、心肺機能勝負の長期戦に持ち込めば、最終的には抜き去ることができました。サブスリーランナーの心肺機能があらかじめ備わっていたからです。足が細い棒みたいな純粋長距離ランナーと違って、私は短距離を走っても速いタイプなので、脚力もないわけではありませんでした。どちらかといえば太い腿をしています。通勤バイクレースで勝ち続けるたびに「やっぱりロードバイク乗りは体重を戦力化できるってことにあまえているよ。もっと体を鍛えてダイエットすればいいのに」そんな思いがどんどん強くなっていきました。

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ランニングから遠ざかり、ロードバイク漬けの生活となる

通勤ロードバイク生活をはじめて、私はランニングをあまりしなくなっていきました。ひとつにはロードバイクの世界でスピードを極めてみたいと思ったからでした。新しい世界の方が単純に新鮮で楽しかったのです。

サブスリーランナーがロードバイクに乗ったらどれぐらい速いのでしょうか? それを確かめてみたいと思いました。それを実証できる人はそれほど多くはありません。レースに出場して、マラソンの距離を一時間以内(サブワン)で走りたいと思いました。

しかしそれよりも「疲労感」が問題でした。往復30kmの毎日の通勤を、常にレースモードで人と勝負したり、人類最速ウサイン・ボルトとスピードメーター勝負したりするような乗り方をしていると、疲労感もハンパではありません。平日、仕事の後にランニングをするという習慣が、だんだんなくなっていきました。

それでも週末はランニングを続けていたのですが、ロードバイクの整備にも魅力を感じるようになり、ロードバイククラブに所属するようになると、もう週末の運動もロードバイク一辺倒になりました。いつしかランニング習慣がなくなり、ロードバイクばかりに乗るようになっていました。すると……いつしか私は太っていました。自分が「太っちょ」と呼んでいた人のような体形になっていたのです。

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ロードバイクに乗り続けると、ロードバイク乗りの体形になる

まず体幹が丸太のように太くなりました。ロードバイクでは風の抵抗を避けるために伏せて走るために、ランニングよりも背筋を使います。またランニングよりも大腿骨をお腹にくっつけるように高く上げます。同じ有酸素運動といっても、使う筋肉は微妙に違います。同じ筋肉をつかうにしても角度や負荷強度が違います。

人間の肉体はよくできていて、ずっと続けていると、そのスポーツに相応しい体形に適応するのだと知りました。ずっとサッカーをやっていればサッカーにふさわしい体形に、ずっとマラソンをやっていればマラソンにふさわしい体形になるのです。そしてずっとロードバイクに乗っていると、ロードバイク乗りにふさわしい体形になるのです。

私はロードバイクに乗り続けて、ロードバイク乗りにふさわしい体形になっていきました。それはかつて私が「スポーツできない太っちょ」と思っていた体形そのものでした。

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デブでウンチ(音頭音痴)だからロードバイク乗りなんだろう、は認識のあやまり

たしかにデブで膝に負担がかかるのでロードバイクに乗っているという人もいます。そういう人を見て、これからロードバイクに乗ろうとしている人や、初心者の方は、

「ロードバイク乗りは太っている。太った人が、膝に負担をかけないためにバイクに乗っているんだろうな。このウンチ(運動音痴)野郎!」などと思う人もいるかもしれません。かつての私のように。

ところが今、私は「そうともいえない」と感じています。ひとつの競技を長く続けていると、その競技に適した体形になります。ランニングに熱中していた時には細い体幹でしたが、ロードバイクに熱中すると体幹が太くなりました。ロードバイクに長く乗っていると、体が最適化されて、ロードバイク乗りに最適な体形になっていくのです。それを「適応」といいます。

ロードバイクに「適応」するためには、自由に走りましょう。走り方をあれこれ考えるのではなく、リラックスして肉体に「まかせる」のです。こう走ればいいとか、どこの筋肉を使うべきだとか、そういうことは考えずに、肉体を解放しましょう。

心臓ひとつ、あなたは自分の意志で動かせません。リラックスして肉体にまかせれば、力むことから解放されます。

そういう練習を繰り返していると、肉体が「適応」します。マラソンならマラソンに、サッカーならサッカーに、そしてロードバイク乗りならロードバイク乗りにふさわしい体形になっていくのです。

あなたの練習量、あなたのスピードから、そのちょうどいいところを肉体は判断して、最適なところでおさまるのです。それがちょっと太めだったからって、無理してダイエットする必要はありません。そんなことをしたら却って弱くなります。それが肉体にまかせるということの本当の意味です。

 

 

テクニック不要。筋力がついたら、できなかったことが自然とできるようになった体験談

ロードバイクにおける筋肉の重要性について、ひとつのエピソードをご紹介します。私のパートナーは学生時代に体操部の選手でした。体操部だった彼女は、鉄棒なんかも得意だったのですが、体操はじめたての頃は「蹴上がり」ができなかったそうです。蹴上がりというのは、ぶら下がった鉄棒から足を前に振り上げて、下がってきた勢いを利用して鉄棒の上にひょいっと上がるという技です。

中学生になって、はじめて体操部に入った彼女は、体操部の顧問に筋トレばかりやらされたそうです。この顧問先生は体操経験者で指導実績もある先生だったのですが、体操のテクニックは一切教えることなく、最初はひたすら筋トレをやらせたそうです。

ロードバイクに比べると、体操ははるかに高度なテクニックが必要な運動です。それなのになぜ体操部の顧問はテクニックを教えなかったのでしょうか?

イメージを人に伝達するのは、自分ができちゃうこととは別の能力が必要です。それが足りなかったのでしょうか?

さて、ここからが重要なエピソードです。

腕や腹筋が鍛えられてきたなあと実感し始めたころ、彼女が試しに蹴上がりをやってみたら、なんとあっさりできちゃったのだそうです。何らのテクニックを教わったわけじゃないのに、筋肉がついたら、できなかったことが自然とできるようになっちゃった。

これは重要なことを示唆しています。

もちろん「蹴上がり」にはテクニックがあります。それを教えることも可能でしょう。しかしどういうタイミングでどういう筋肉の使い方をするかが分かっていても、足を振り上げる筋肉や、体を持ち上げる筋力がなければどうすることもできません。

鉄棒の蹴上がりにおける経験ですが、ロードバイクだって同じことです。筋力さえつけば、効率的なペダリングとか、耐風姿勢とか、テクニックうんぬんいう前にもっと速く走れるようになれます。これまで以上の長距離を走れるようになります。まずは筋力がなければどうにもなりません。私のパートナーの体操での経験は、そのことを如実に教えてくれているのです。

 

 

体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方

ロードバイクのペダリングは、筋力で踏み込むのではなく、体重で踏み込みます。このとき「筋肉が働いているなあ」となるべく感じないようにする感触が重要です。なぜかというと「筋肉が働いているなあ」と感じるときには、必ずしも効率的なフォームをしているとは限らないからです。

わたしたちがもっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるのは、筋肉が不自然な負荷を感じているときです。わたしたちは筋トレしているときに「筋肉が働いているなあ」と感じますが、それは筋肉に不自然な負荷をあたえているからです。ゼロ負荷で筋肉が働いていることを意識するのはむずかしいのです。逆に言えば、もっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるためには、不自然な負荷を筋肉にかければいいのです。不自然なフォームで必要以上の負荷を筋肉にあたえたときに、私たちはもっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるのです。「筋肉が働いているなあ」と感じないフィーリングが大切というのは、この意味です。あなたは筋肉が働いていることを実感したいあまりに、不自然なフォームになっていないでしょうか。

頑張っていることを自分で確認したいために、マゾヒスティックに筋肉に過剰な負荷を強いるよく人がいます。これを筋トレ・ペダリングと私は呼んでいます。トレーニングならともかく、レース本番で筋トレ・ペダリングするのはおすすめできません。レース本番では、筋肉の動きを意識するより、骨格を意識しましょう。筋肉ではなく骨でペダルを踏みこむのです。それは筋力ではなく体重で踏み込むということです。

ペダルは筋力ではなく体重で踏み込みます。骨で踏み込むようにするのです。私たちは骨がなければ立っていられません。姿勢は筋肉ではなく骨が支えています。骨が体重を支えるとき、姿勢を維持する筋肉の負荷は最小限になります。それと同様にロードバイクのペダルは骨で踏み込めば筋肉にかかる負荷は最小限になります。不自然なフォームをとったときに筋肉には過剰な負荷がかかるのです。

もっとも効率的なペダリングは、もっとも筋肉負荷を感じさせないものなのです。軽く感じるほどいいペダリングだということです。

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ライディング・ポジションを調整して、ペダルに体重をかける

ロードバイクのライダーの体重はペダル、サドル、ハンドルの三点にかかっています。そのうち推進力に関係しているのはペダルです。サドル、ハンドルにかかる重さを減らせばペダルにかかる体重が増える計算です。ロードバイクのライディング・ポジションが重要なのは、このためです。

サドルを適正な高さまで上げるのは、椅子にどっしりと腰かけた状態にならないようにするためです。スクワット状態で座ってはいけません。どっしりと座ったままペダルを回すのは、体重で回しているのではなく、筋力で回しているのです。

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引き足をつかってペダルを軽くする

また、踏み込んだ足は仕事を終えたら力を抜く必要があります。力を抜かないかぎり、片足でブレーキを踏んだままもう片足でアクセルを踏んだ状態になります。踏み込んだ足が下死点を過ぎたら心もち足を持ち上げましょう。これを引き足といいます。ビンディングペダルが有利だとされているのは、足を固定することでこの引き足が使えるからです。

ペダルを回転させる主力はあくまでも踏み足ですが、引き足も忘れないようにしましょう。踏み足のパワーを減殺しない程度でじゅうぶんです。

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体幹(腸腰筋とお尻)を主に使った乗り方をする

足を持ち上げる筋肉に「腸腰筋」があります。腸腰筋というのは腰椎と大腿骨をつないで太ももを前に持ち上げるための筋肉です。

ロードバイクの教本を読むと「腸腰筋を使うペダリングがいい」と書いてあります。ロードバイクでは腸腰筋は「引き足」に使います。ペダルに足の重さが残っていると踏み脚の負担になるために腸腰筋で片方のペダルを持ち上げて踏み込むペダルを軽くします。逆にペダルを踏むときは対抗筋である大殿筋を使います。

太もも前面には大腿四頭筋があります。大腿四頭筋でも大腿骨をもちあげることができるのですが、ロードバイクでは大腿四頭筋はペダルを踏みしめるときに主力で使います。ランニングでは大腿四頭筋のことを「着地筋」といったりします。ペダルを踏みしめるときに使う大きな筋肉です。

ダンシング(立ち漕ぎ)のときにはこの筋肉を主動筋にします。こちらは大きなパワーが出る半面、長持ちしません。決戦用の筋肉です。それに対して腸腰筋は長持ちするけれども大腿四頭筋ほどのパワーは出せません。

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あまりにも伏せた耐風姿勢は、筋肉を効果的に使えない

ロードバイクは風に抵抗するスポーツなので、ときどき極端に前傾姿勢をとるロードバイク乗りがいます。この耐風フォームは風の抵抗が小さくなるメリットがある反面、デメリットもあります。あまりにも伏せた姿勢を取ると筋肉がうまく使えません。

筋肉というのは主動筋と対抗筋が対になって働いています。主動筋(A筋)が収縮したとき対抗筋(B筋)は弛緩することで関節が曲がります。曲がった関節が元に戻るときにはB筋が収縮し、A筋が弛緩するという先刻とは逆の働きをするのです。

たとえば大腿骨を持ち上げる働きをするお腹の深部にある腸腰筋(A筋群)ですが、腰からお尻の筋肉(B筋群)と対になって働いています。

この対になって働く筋肉群ですが、あまりにも体を伏せると効果的に働きません。上半身が前に倒れ込むと、A筋群は余裕がありすぎてこれ以上縮めず、B筋群はすでに伸ばされきっていてこれ以上伸びることができない状態になっているからです。ニュートラルの状態から使わないと筋肉は効率的に伸びたり縮んだりできません。

だからスポーツはリラックスが重要だといわれるのです。対抗筋がリラックスできずに緊張したままだと、主動筋の収縮に対してブレーキになってしまうからです。

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筋肉の伸縮反射を使うため、骨はセンターのニュートラルポジションにセットする

筋肉は引き伸ばせば、まるでゴムのように、元のサイズに戻ろうとします。これを伸縮反射といいます。

ロードバイクのようなピストン運動の場合、骨はセンターのニュートラルの状態にあるのがいいのです。そうすれば伸びた筋肉が勝手に縮もうとする伸縮反射をつかえます。この運動は不随意運動なので、わざわざ収縮命令を出さなくてもいいのです。筋肉は対になっているので、伸縮反射は往路でも復路でも使えます。伸縮反射をつかえば効率的にピストン運動することができます。

体幹を鍛えれば、骨盤を立ててニュートラル状態のままハンドルに寄りかからずに体重でペダルを回すことができます。伏せた耐風姿勢をずっと維持するということは、背中の筋肉が常に緊張している状態です。筋肉が常に緊張しているということはダイナミックに動かせないということです。筋肉は対になって動いていますから、腰の筋肉がダイナミックに動かせないということは、対抗筋である腸腰筋も活発に動かせないということです。骨盤を立てて、腹と腰の筋肉を緩めてはじめて腸腰筋はダイナミックに動くことができるのです。

ロードバイクの巡航フォームではすこし骨盤を立てましょう。そうすると空気抵抗が増してしまうことはわかっていますが、体幹の筋肉を効果的に使えないよりはマシです。

骨盤を立てれば、大腿四頭筋だけでなく腸腰筋をつかってペダリングすることができます。

人の肉体は、それぞれ骨のバランスや、筋肉の付き方が違っているので、ある人に最適なフォームが他の人にも最適とは限りません。理屈は同じですが、ライディングフォームの姿勢は、本来は各人それぞれのベストポジションがあるはずです。それぞれが試行錯誤して、自分にとって最適なフォームを追求しましょう。それもロードバイクに乗る楽しみのひとつです。

 

 

インポテンツ(前立腺炎・尿道炎)になるという噂と対応策について

骨盤を伏せる耐風フォームはどうしても固いサドルが会陰部を圧迫するため、前立腺炎、インポテンツのおそれがあるといわれています。前傾姿勢が強くなれば会陰部にかかる圧力は強くなります。これが会陰部の血行障害を引き起こす可能性があるというのです。

ペダルの重さも重要です。ペダルがあまりにも軽いと、足がスカッと回り、股間に体重がかかります。大きな「動きながらの圧迫(摩擦)」が会陰部にかかります。これが会陰部にはよくありません。

重いペダルなら片脚ごとに体重がかかるので、会陰部には負担がかかりません。しかし軽いギアだと脚に体重をかけられないぶんだけ、必然的にサドルに体重がかかりがちです。

つまり前立腺炎・尿道炎にならないロードバイクの乗り方というのは、重たいギアをつかって、骨盤をたてて座骨からサドルに乗るということになるのです。重たいペダルに骨盤を立てて座ることで、インポテンツなどの壊滅的な悲劇を避けつつ、スピードを出してロードバイクに乗ることができます。前立腺炎・尿道炎になりにくいロードバイクの乗り方は、スピードを出すのにも理にかなった乗り方なのです。

それでもあまりにも向かい風が強い時は、低く伏せた耐風姿勢で走ることもあります。体幹を使った乗り方を犠牲にしてでも、空気抵抗を避けたほうがベターな場合もあります。しかしそれはやむにやまれぬ選択の結果です。常に耐風姿勢で走ろうとするホビーレーサーを見かけますが、伏せすぎると体幹の筋肉を使いにくくなるために最良のフォームとはいえません。骨盤を立てて、猫背にして背中をまるめてハンドルに手を伸ばします。サドルの上に座骨を立てた方が、体幹の筋肉の伸縮反射を使って効率的に進むことができるのからです。

ずっと同じフォームを取りつづけないことも重要です。ずっと同じフォームを続けていると、同じ筋肉ばかりに負荷がかかります。常に下ハンではなく、たまにはブラケットを持つなど、複数のフォームを使い回すことができるようになれば、特定の箇所にかかる筋肉疲労を分散することができます。

ところでこのロードバイク乗りがかかるという噂のインポテンツ、尿道炎、前立腺炎というのは、ほんとうなのでしょうか? いくらロードバイクが快適で楽しいからって、インポになるのは困ります。本当にロードバイクは尿道炎・インポになるのでしょうか? なるとしたらどれぐらいの確率でなるものなのでしょうか? 私はこの問題を非常におそれて詳しく研究しました。以下がそのレポートになりますので参考にしてください。

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『YOUは何しに日本へ?』前立腺炎で日本語自転車旅を中断したスペイン人のYOU。マルコさんの場合

『YOUは何しに日本へ?』というテレビ番組があります。日本に旅行に来た外国人たちが「どういう目的で」「何をしに」来日しているのかを聞いて追いかけ取材するという人気番組です。旅人の中には、とんでもなくムチャな旅をする人たちがいて、YOUたちの無鉄砲ぶりがとても魅力的にうつります。そんなムチャクチャな旅人のひとりが、日本語自転車旅YOUのスペイン人のマルコさん。東京から沖縄まで自転車で旅をしながら、日本語の勉強をするという旅のスタイルでした。積極的に町の人に話しかけて日本語を学ぶというドラクエ的なスタイルでどんどん日本語をおぼえていく姿が共感されて大人気シリーズだったようです。そのマルコさんですが、毎日何時間も自転車に乗っていたために、前立腺炎を発症してしまいました。そのために三ケ月ほど自転車旅を中断するハプニングに見舞われています。

マルコさんが乗っていたのはクロスバイクですが、これを見て「ああ、やっぱり前立腺炎になるんだなあ」という感想をもちました。クロスバイクで炎症を起こすなら、ロードバイクならもっとなるでしょう。硬く尖ったサドルが股間に与える悪影響にビビりました。

実際に、自転車で尿道炎、前立腺炎を起こす人はいるようです。あの硬く尖ったサドルが股間に食い込んで、走行時の細かい振動を伝えますので、股間は圧迫され振動されつづけます。すると、排尿時に痛みが出たり、残尿感があったり、白濁した尿、血尿が出たりするそうです。それが尿道炎です。前立腺炎は、発熱や悪寒、圧痛、排尿障害、倦怠感などの全身症状を起こすそうです。会陰部に違和感があった場合には、専門医に診断してもらったほうがいいでしょう。大腸菌などの細菌感染が原因だった場合には薬を処方してもらいます。しかしそうでない場合は、当分、自転車に乗らないという安静療法が基本になります。

ホビーレーサーの場合は安静にしていればいいのですが、通勤自転車族にとっては「自転車に乗らない」という選択肢はありえません。どうにかして尿道炎・前立腺炎にならないようにしなければなりません。

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自転車EDという言葉がある以上、自転車インポテンツはありえる事態

尿道炎・前立腺炎よりも、もっとおそろしいのがED(インポテンツ)です。自転車EDについても「なってからでは遅い」とばかりに調べまくりました。EDについても、やはり原因は「硬く尖ったサドル」でした。ロードバイクの硬く尖ったサドルが、股間の会陰部を強く圧迫することで、その部分の勃起に関係する神経や血管が障害を受けてしまうことがあるんだそうです。圧迫による神経血管障害によって勃起不全になってしまうことがあるということです。

たしかに低い耐風姿勢で伏せてロードバイクを漕ぎまくっている時、サドルは会陰部を突き刺すように食い込んでいます。止血しているような状態ですから血液循環は悪くなっているでしょうし、もしかしたら神経が切れてしまうことだってあるかもしれません。だからアメリカには「自転車ED」という言葉があります。自転車EDという言葉がある以上、そういう症状があります。症状があるから言葉(病名)があるのです。自転車でインポテンツになることはありえると言わざるをえません。

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ロードバイククラブの飲み会で相談したら笑い飛ばされた

自転車EDの話しがあまり知られていないのは、恥ずかしい話題なだけにみんなが話題にすることを躊躇しているからだと思います。自転車EDにビビっていた私は、ロードバイククラブの飲み会で、みんなが酔っぱらってきた頃、おそるおそる聞いてみました。聞いた相手は私なんかよりも圧倒的にバイクに乗っている年上会員Aさんです。海外のブルベなども完走されているベテランさんに聞けば、インポ説の真偽ははっきりするに違いありません。

私「あの……ロードバイクに乗ると下手するとインポテンツになると聞いたんですが、Aさん、平気ですか?」

Aさん「全くそんなことないよ。おーい、Bさん。ロードに乗るとEDになるか聞きたいんだってさ。Bさんはどうよ?」

Bさん「ああ。よく聞くね、その噂。おれは大丈夫だけど。おーい、会長。ロードに乗り続けるとインポになるか新人さんが聞きたいんだってさ」

会長「いや、ぜんぜんないから。そんなこと」

Cさん「おれもいたって元気ですよ」

という感じで……自転車EDをネタにロードバイククラブの飲み会が非常に盛り上がったのでした。みんな「アホか」という感じで笑いとばしていました。そしてインポを心配していた自分がバカバカしくなってしまいました。

もちろん状況は人によって違うでしょう。みんなが大丈夫でも、あなたはダメかもしれません。しかしこれだけ多くの先輩たちの全員が大丈夫だと太鼓判を押すのだからきっと大丈夫だろう、と私は思いこむことにしました。

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自転車ED対策。お金で解決する方法。サドルを変える

尿道炎にせよ、前立腺炎にせよ、EDにせよ、ノーズが硬く尖ったサドルが会陰部を強く圧迫することで起こる症状です。サドルを替えるというだけで、不安は小さくなります。

ED対策その①。肉厚のサドルカバーをかける。超肉厚のサドルカバーをクッションにする手があります。柔らかいサドルは会陰部の圧迫を除圧して血流をうながしますから、EDなどの対策になります。

ED対策その②。穴あきサドル(ホールタイプ)にサドルを交換する。会陰部が空洞になっているタイプのサドルに買い替えます。すくなくとも穴の部分は、前立腺や尿道を圧迫しないという理屈です。

ED対策その③。ノーズレスサドルに交換する。穴あきサドルの場合、巡航速度の場合はいいのですが、戦闘速度で耐風姿勢で伏せて走ると、どうしてもサドルのノーズが会陰部に食い込んできます。いくら中央に穴の開いているサドルでも先端が会陰部に刺さります。それを避けるために「ノーズレスサドル」というものもあります。どうしてもインポテンツは嫌という人は検討の価値ありです。

ED対策その④。サドルに体重のかからない乗り方に変える。すでに述べたようにサドルに体重のかからない乗り方は、スピードを出すために効率的な乗り方でもあります。この乗り方を習得、実践することが、最大のED対策となります。

ロードバイクは体重を推進力に変換することができる乗り物です。体重をペダルにかけると、ペダルが押し下げられてホイールが回転します。最高に速く走ろうとするときはダンシング(立ち漕ぎ)して、全体重をペダルに乗っけようとするわけです。ダンシングのときは会陰部に圧迫はまったくありません。体重というのはペダルにかけるのが正解で、サドルに体重がかかるというのは効率的な漕ぎ方ではありません。いくらサドルに体重をかけても自転車は前には進みません。ペダルに体重をかけてこそ、速く走れて、なおかつ、会陰部の障害を避けることができる一石二鳥の方法なのです。

EDの心配を吹っ切ってその後、私は通勤バイク、週末ホビーレーサーと、ロードバイクに乗りまくりました。尿道炎、前立腺炎になったことは一度もなく、もちろんインポテンツにもなりませんでした。

いちばんのED対策、前立腺炎、尿道炎対策は、サドルにどっかりと座り込まないフォームに変えることです。ロードバイク乗りになって、尿道炎、前立腺炎、インポテンツが心配の方は、サドルに体重をかけない「スピード走法」をするようにおすすめします。この乗り方は脚力を必要とする上級者向きの乗り方ですが、もっとも抜本的な自転車ED対策だといえるでしょう。自転車に乗って尿道炎などになる人は、やはり初心者が多いそうです。ペダルに体重をかけ、サドルに体重をかけないスピード走法ができていないのが最大の理由でしょう。

 

 

ダンシングの極意『フレームを支柱にした体幹運動』

「運動は筋肉でやる」と思っている人が多いのですが、人間の肉体は骨がベースです。骨を動かすために筋肉はあるのです。筋肉は骨がなければ何の役にも立ちません。

筋肉は骨に付着して伸びたり縮んだりすることで骨を動かしています。筋肉は一方が固定されていないともう一方を引っ張ることはできません。骨折するとどうして運動できないのかというと、折れた骨が支柱になることができず、筋肉が折れた骨を引っ張るからです。支点がグラグラしていては筋肉は使い物になりません。逆にいえば支点が強固であればあるほど筋肉は大きな力を発揮することができます。

これが肉体が行う運動の本質です。しかしロードバイクの場合、発想転換すれば、さらに飛躍することができます。フレームという固い物質に付着した、身体全体をひとつの筋肉のようにつかう運動だと認識を変えるのです。

私はロードバイクに乗れば人類最速ウサイン・ボルトよりも速く走ることができますが、その秘密のひとつが、この言葉の中にもあります。とくにゴール前のダンシングの場合、骨と筋肉だけで考えるよりも、フレームと肉体全体で考えた方が理解しやすいかもしれません。

世の中には筋肉の力が強すぎて支点である骨をへし折ってしまう人もいるほどです。しかしアルミやカーボンのロードバイクのフレームならば折れる心配はいりません。骨よりも強力なフレームに骨の役割を担わせるのです。

ランニングでは、脊髄のまわりの大きな体幹の筋肉をつかうことが重要ですが、ロードバイクではこの脊髄の役割をフレームが担います。ランナーが背骨周りの筋肉をダイナミックに動かすように、フレームを支柱にして全身を使って前に進むのです。激流を遡上する鮭が背骨をよじって全身の力で泳ぐように、ロードレーサーはフレームをよじって全身の力で前に進みます。それがダンシングです。さらに前輪をメビウスリングの軌跡のようによじれば、さらに速く進むことができます。

トップチューブを背骨、全身を背骨まわりの筋肉のようにイメージしましょう。これがダンシングです。だから速いのです。あなたの背骨よりもトップチューブは固く、あなたの一部分の筋肉よりも肉体全身は大きくて強いからです。

支柱が強固であればあるほど、筋肉は大きな力を発揮することができます。フレームにしがみついてすべてのパワーを振り絞って走りましょう。

 

 

「ダンシング縛り」「インナーロー縛り」練習

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アウタートップの「ダンシング縛り」練習

『ルール・ド・おきなわ』が開催されている当日でのことです。私の所属するロードバイククラブからも、市民レース 部門210kmに何名かが出場しました。クラブ最強の男が一日100km、月間3000kmの練習を積んで、行けるところまで先頭集団で勝負する覚悟だということです。健闘を祈りながら、私は地元で通常練習に参加していました。今日は「B集団」で行くことにしました。

最速のA集団はまるで「野武士の集団」です。最初は美しいローテーション練習をしているのですが、最後はめいめい勝手に走ってものすごい速さの競争になります。気合の入った精神状態の時でないと、とても辛い練習になります。チギられるのは精神衛生上よくありません。

ところがB集団になると「どうせBだしマッタリ行きましょう」感を一部の人が出してくるので、参加しやすくなります。「マッタリ」の人の後ろに付けば休めます。競争区間は一部あるものの、精魂尽き果てるところまではいきません。私としてはスピードに余裕がある集団なので、周囲に目線を配る余裕があります。

B集団C集団は、ときどき独特の「縛り練習」をやって遊んでいます。今日のは「ダンシング縛り」でした。アウタートップの「立ち漕ぎ限定」でずっと漕ぎ続けるというアソビ練習でした。私の場合、ダンシングは足よりも腕がつかれます。脚はサブスリーランナーなので鍛えられていますが、腕はキーボードを叩くのが専門の文化人みたいなものだからです。ダンシングはロードバイクの上で腕立て伏せしているようなものです。腕がパンパンになって、とくに肩甲骨のあたりの筋肉が最初に悲鳴を上げます。

ダンシング縛り練習は、A集団の猛烈なスピード勝負とは違った意味で「苦しい練習」になります。筋肉は使わなければ発達しません。自転車に乗って腕をパンプアップするというのも、ときにはおもしろいものです。

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「インナーロー縛り」練習

もうひとつアソビ練習をご紹介します。それは「インナーロー縛り」練習です。一番軽いギア限定で必死に足をすばやく回して前に進もうというアソビです。

必死にペダルを回しますが、進まないこと進まないこと。インナーローだと漕いでも漕いでもぜんぜん前に進みません。

そもそも私はスプリンター系で、重たいギアを力まかせに踏み込むタイプです。普段から軽いギアをクルクル回すタイプではありません。実際に、スピード競争区間ではB集団のなかでは私がもっとも速かったのです。ところが「インナーロー縛り」練習の場面では、集団についていけません。

うおおおおおおお、と必死にペダルを回しましたがダメでした。ぜんぜんスピードが上がらずついていけません。みんなから置いていかれます。やはり普段からクルクル回す乗り方をしている人は、回すペダリングが上手です。脚力にまかせて踏み込むペダリングをしている私は、スカスカのペダルに体重が乗せられず、いつもの乗り方ができません。体重はなるべく推進力になるペダルに乗せて、推進力にならないサドルには置かないのが私の乗り方です。しかしインナーロー縛りでは、ペダルが軽すぎて手ごたえ(足ごたえ?)がまったくありません。しかたがないのでサドルに体重を乗せて、その状態で必死に足を回しますが、圧迫された股間が擦れて尿道炎になりそうでした。

いやはや。やはり人それぞれの乗り方があるということでしょう。

しかしこのような「ダンシング縛り練習」や「インナーロー縛り練習」は、気分がかわって楽しいだけでなく、自分の乗り方を見直すきっかけにもなります。

みなさんも積極的に取り入れてみてください。

 

 

自転車(ロードバイク)とランニングの両立は可能か? サブスリーランナーはロードレーサーに乗っても速いのか?

「サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?」マラソンを二時間台で走れるランナーがロードバイクに乗ったとき、その高い偏差値は維持できるのか? それに答えられるのは、ロードバイク乗りのサブスリーランナーだけです。その該当者のひとりである筆者が、その疑問にお答えします。

マラソンランナーはカラダのバネがものをいいます。そのバネでバウンドして宙に浮いて前に進みます。しかしロードレーサーに必要なのはバネよりもパワーです。バネは必要ありません。ロードバイクに乗っただけでもう宙に浮いているのと同じことだからです。

この章では、大腿四頭筋の役割がロードバイクとランニングでは決定的に違うことをまずはじめに解説します。

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ロードバイクでスプリントを決めるのは、ランニングの「ブレーキ筋」という矛盾

「ロードレーサーとランナーの両立は難しいなァ」それが私の実感です。ロードバイクとマラソン。どちらも持久系の有酸素運動ですので、両方で好成績をおさめられそうですが、レベルが高くなるほど、そうは問屋が卸しません。

私の場合、ロードバイクに特化して身体を仕上げた結果、体幹が太くなりました。伏せた前傾姿勢を長時間維持するために、とくに背筋が肥大化して、ロードバイクは強くなった半面、マラソンは弱くなりました。マラソンは軽い体重がすべてといってもいい競技です。必要以上の筋肉は走るのに邪魔でしかありません。

重たいギアを回してロードバイクで速く走れるようになると、大腿四頭筋がものすごく太くなります。大腿四頭筋はランニングの世界では「着地筋」あるいは「ブレーキ筋」と呼ばれている筋肉です。ランニングでは必要以上に着地筋が大きくなることはありません。着地の衝撃に、先に膝が悲鳴をあげて、そこで練習が止まるからです。

しかし着地の衝撃がないロードバイクではランニングでは手に入れられないほど太く大きな大腿四頭筋を手に入れることができます。ジムの筋トレで手に入れられるボディビルダーの筋肉に近いものがあります。

とくにロードバイクのスプリントにおいて、強靭な大腿四頭筋は決定的な役割を演じてくれます。しかしその肥大化した着地筋で速くランニングできるようになるか、というとそうでもないのがランニングとロードバイクの両立の難しいところなのです。

ランニング中に膝が曲がらないようにするための「ブレーキ筋」で、ロードバイクでは重たいペダルを踏みしめて前に進んでいくのです。しかしブレーキ筋がいくら発達しても速く走ることはできません。そもそもいい走りとはなるべくブレーキのかからない走りかたです。ランニングにおいて必要以上の大腿四頭筋の発達は、膝を上げるときの重りとなって、むしろスピードには逆効果となります。

どのスポーツでも同じですが、必要以上の筋肉は単なる邪魔な重りにすぎません。その競技に最適な筋肉の付きかたというものがあるのです。

このように、ロードバイクとマラソンは高いレベルでの両立は難しいと言えるでしょう。競技レベルが高くなればなるほど、わずかな差が大きな意味を持ってきます。そしてロードレーサー最上位の資質と、マラソン最上位の資質は、決して同じではありません。もしも同じならば、両方で勝った選手が過去に何人もいていいはずですが、そのような記録はないのです。

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一流選手の身長・体重を検証してみる

ランニングは宙に身体を浮かせる運動なので、体重の軽さが絶対的に有利に働きます。ランニングの究極は「飛ぶこと」であり、鳥たちが大切な骨格をスカスカにしてまで体重が軽くなるように進化したことと、ランナーのダイエットは無縁ではありません。

ロードバイクの究極もまた「飛ぶこと」です。スーパーマンが飛ぶときのような恰好でロードレーサーは疾走します。ただ飛ぶためのアプローチがランニングとは違います。

重さ・重力という問題を車体やタイヤに処理してもらうことで、筋肉はひたすら動力部分だけを受け持つというのがロードバイクの発想です。体重や着地の衝撃を「タイヤ」「フレーム」が処理してくれるので、体重の軽さよりも、ペダルを回す筋力や、姿勢を維持できる筋力がより重要な意味を持ってきます。

体重がそのままペダルを踏み込むパワーに変換できるので、体重は必ずしも不利な要素ではありません。その証拠にロードバイクのトップ選手は体が大きいことが多いです。太っている、と言ってもいいような選手もいます。

ツール・ド・フランスを連覇したクリストファー・フルームは身長186cm、体重69kgだそうです。日本人の平均サイズから見ると巨人です。本来、人並み外れたカラダをもっている超人たちが「神々のたたかい」に近いものを見せるというのがオリンピックの原点ですから、よりスポーツの原点に近い「神に近い天性の資質」が自転車競技には必要なのです。

自転車王ランス・アームストロングは身長177cm 体重75kgでした。同じぐらいの身長のマラソンランナーの川内優輝は175cm62kgです。これで川内は「太っちょランナー」と揶揄されることさえあるのです。ランナーは細く、ロードレーサーは太いことがわかるでしょう。ロードレーサーの新城幸也は身長170cm体重65kgとなっています。マラソンランナーだったら体重が重すぎます。要するにユキヤはロードバイクの偏差値をマラソンでは発揮できないということです。

私の一番好きなマラソンランナー藤原新は全盛期で167cm54kgでした。バルセロナ・オリンピック銀メダリストの森下広一は165cm54kgと公式記録されています。これは平均的な日本人男性よりも小さい選手だということです。それほどマラソンでは体重が軽いことが有利に働くのです。

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競輪は短距離走。ツール・ド・フランスは長距離走

世界選手権10連覇、世界のナカノこと中野浩一さんの現役時代は、身長172 cm体重85kgだったそうです。もはやマラソンランナーとしてはレッドカードな体重です。

私の身長も172cmですが勝負レース前には62キロぐらいまで体重を落としていました。23kg差は決定的な要因になるでしょう。マラソン勝負なら、全盛期の中野浩一に私は勝てたかもしれません。

もっとも競輪選手はどちらかというと短距離選手なので、陸上ならばマラソンではなく短中距離走の選手と比較するのがより公正な比較ということになります。ツール・ド・フランスの選手はどちらかというと長距離選手なので、スプリンターよりもマラソンランナーと比較した方が公正な比較となります。

NHKのテレビ番組「ラン×スマ」に出演していたマラソンの金哲彦さんが、ある日、同じくNHKの「チャリダー」に出演しているのを見たことがあります。固定バイクを漕いでスピードを計測していたのですが、一緒に出演していたロードバイクの宮澤崇史さんに比べたら、金さんは全然スピードを出せませんでした。でもマラソンを走ったら金さんの方が宮澤さんよりずっと速いのは疑いようがありません。マラソンとロードバイクは、それほど違うものなのです。

肺で酸素を取り込んで、毛細血管で全身に運ぶといった有酸素運動に共通の部分も多いことから、サブスリーランナーがロードバイクに乗ったらいきなり最後尾ということはありません。「砲丸投げ」の優秀選手が「重量挙げ」をしたって、全然ダメということはないでしょう。それと同じです。

サブスリーランナーの私の場合は、ロードバイクに乗ったらいきなり速かったです。通勤バイク時代の河川敷での成績は全勝・無敗でした。往復30kmの通勤バイクで、他のバイクに抜かれっぱなしだったことは一度もありませんでした。

しかしそれは平日の通勤時間帯のこと。本当に強い人は週末のホビーレーサーです。サーキットのレースに出れば話しはぜんぜん別です。速い人は本当に速い。全勝無敗なんて夢のまた夢でした。マラソンを走ったって、サブスリーレベルでは本当のトップ選手には全くついていけません。ロードバイクでもそれは同じことなのです。

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結論。両立は難しいものの、上位には入れる

サブスリーランナーはロードレーサーに乗っても速いのか?

結論を言えば、遅くはないが、マラソンほど上位には入れない、というところです。

実際にロードバイクレースに出て走ってみればわかります。わたしはマラソンの世界でレースに出ることが習慣になっていたので、ロードバイクに乗り始めてからもすぐにレースに出場しました。

4時間エンディーロというサーキットで行われる自転車レースでは平均時速37kmを超えていました。日本人最速ランナーがだいたい100m10秒(時速36km)です。陸上競技でいう日本人最速ランナー以上の速さで4時間ぶっ続けで走れたということです。

カーブや坂でスピードはガクンと落ちますから、瞬間速度はウサイン・ボルトの人類最速時速44kmを軽く超えています。もちろんロードバイクのおかげですが、初心者が乗り始めていきなりこのスピードは出せないと思います。サブスリーランナーだからこそ出来たことでしょう。しかしそれでも上位の成績ではありません。

とくにロードバイクは競技自転車特有のドラフティング(スリップストリーム)という技術がどうしても必要であり、ランニングよりも必要な技術が多いことは間違いありません。ロードバイクはランニングよりももっと複雑な集団競技なのです。

サブスリーランナーは、全ランナーの「上位5%」ぐらいだと思いますが、ロードバイクでそこまでは届きませんでした。

私はランニングから始めたので、マラソン基準になりがちですが、逆にロードバイク乗りがマラソンを始めても、結果は同じだと思います。遅くはないが、ロードバイク時代ほど上位には入れないでしょう。

やっぱり専門分野があるのです。違う競技である以上、専門にやっている人にはかないません。

ランナーはカラダのバネがものをいいます。そのバネで宙に浮いて前に進みます。しかしロードレーサーに必要なのはバネよりもパワーです。バウンドは必要ありません。ロードバイクに乗っただけでもう宙に浮いているのと同じことだからです。

呼吸への負荷もロードバイクの方が圧倒的に上で、きつかったです。ハアハアと喘ぐほど速く走ったらマラソンではオーバーペースです。しかし膝に負担のないロードバイクでは喘ぐほどペダルを回すのは普通のことです。

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二股かけた浮気な恋愛は、捨て身の一途な恋にかなわない

マラソンとロードバイクは両立できるのか? サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?

その答えは、やはり専門にやっている人にはかなわないということです。

高いレベルでの両立は難しいが、もちろん低いレベルならば両立は可能です。

しかし自己ベスト狙いの時期には、どちらかの競技に絞った方がいいと思います。

どんな競技でも、すべてを賭けてきている人には、負けてしまうのが世の常というものでしょう。二股かけた浮気な恋愛が、捨て身の一途な恋にかなわないように。

肺で酸素を取り込んで、発達した毛細血管で全身に酸素を運ぶといった有酸素運動に共通の部分もあるので、サブスリーランナーがロードバイクに乗ったらいきなり最後尾ということはありません。

しかし所詮は違う競技です。同じ偏差値は出せません。すべてを賭けてきている人の迫力には、負けてしまうのです。

 

【ロードバイク】サイクル・フルマラソン。夢のサブワンを狙え!

日本でのロードバイク・レースは、マラソンにくらべて公道で行うことはすくないといえるでしょう。ヒルクライム(山岳レース)のようなスピードがでないレースの場合は公道で行われることもありますが、平坦レースの場合はサーキット場で行われることが多いようです。

平地レースの場合、筑波サーキットとかツインリンクもてぎのようなオートレース場を借り切っての4時間とか6時間の耐久レースがメイン種目となります。100マイル(160km)をどれだけのタイムで走れるか競うという種目もあります。

そんな中で、面白いレースがあったので参加してきました。「サイクル・フルマラソン」42.195kmをロードバイクで走ろうというレースです。

市民ランナー兼ホビーレーサーの私としては、参加しないわけにはいきません。42.195kmは、かつてはゴール後にぶっ倒れてもいいぐらいの気持ちで、全身全霊で挑戦したディスタンスです。これに燃えないわけがありません。やってやろうじゃありませんか、サブスリー! ……おっと、まちがえました。サブスリーじゃありません。ロードバイクでマラソン3時間切りなんて簡単すぎます。目指すはサブワン。1時間切りです。時速42.195kmで走れば、マラソンを一時間でゴールできるはずです。

マラソンランナーの場合、オリンピッククラスでもキロ3分ぐらい(時速20km)なので、それにくらべたら倍以上のスピードですが、ロードバイクならばやってやれないことはありません。こっちはその気になればウサイン・ボルトよりも速く走れるんですから。

このときロードバイク歴は一年以上二年未満というまだ未熟な段階での挑戦でした。集団走行などのロードバイク技術はまだまだ発展途上でした。しかしサブスリーランナー相当の脚力・心配能力だけはありましたから、実力不相応の集団で走りました。

するとどうなったか?

レースでは、直線コースではいいのですが、カーブで周囲と同じ速度で曲がれません。カーブのたびに私だけが集団から遅れていくのです。まわりの人たち、迷惑かけてごめんなさい。こういう人にはそばで走ってもらいたくありませんよね。直線で、力づくで集団に追いつくというレース展開になりました。へたくその見本のようなレースでした。結果は1時間6分でした。

残念ながら夢のサブワンには届きませんでした。しかしレース結果を見ると、59分でゴールできたら優勝でした。どうやら目標が高すぎたようです。たとえロードバイクであってもマラソンを一時間以内で走るのは簡単なことではないようです。カーブで遅れて直線で追いつく「サーキットの狼」の逆レース展開では、サブワンはかなり難しいと感じました。

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黒人選手がロードバイクの世界で勝てない最大の理由は「団体競技」だから

同じ持久系・有酸素運動でもロードレースはマラソンに比べると、ものすごく団体競技です。陸上で圧勝する黒人選手たちがロードバイクの世界で白人選手に勝っていない最大の理由はおそらくコレだと思います。

マイペースで力尽きてちぎられるよりは、後続集団で力を温存した方が速くゴールすることができると実感しました。ペースを落としてガンバリ度を下げてでも、集団の中で風圧を避けながら走ったほうがロードバイクでは有利です。マラソンのようなイーブンペース戦略は、ロードバイクでは通用しません。

もちろんロードバイクとマラソンは似ているところも多々あります。私のようなサブスリーランナーがいきなり上位で通用してしまうのも、似ているところが多いからこそです。

他種目でも、たとえばスピードスケートの選手なんかは、マラソンよりももっと筋肉の使い方が似ているからでしょう。冬はスピードスケート、夏は自転車で、両方オリンピックに出場した橋本聖子さんや関ナツエさんといった名選手が過去にいました。スピードスケートの選手で、夏はロードバイクを練習に取り入れている人がいるのは、使う筋肉が同じだからなのです。

アスリートレベルで、マラソンは時速20kmなのに対し、スピードスケート時速50~60km。ロードバイク時速60~70kmです。ロードバイクとスピードスケートはスピードも近いものがあります。

ここで考えてほしいのは、どうしてスピードスケート選手は100m走などの短距離走ではなくてロードバイクを選ぶのか? ということです。陸上短距離の方がスピードスケートに似ていると思いませんか? なぜロードバイクなのでしょうか? その答えは着地筋にあります。

スピードスケートがロードバイクなみのスピードが出るのは、ストライドが圧倒的に長いからです。一歩ごとに氷の上をスケート靴のブレードがツルツルーーーーっと滑っていくからストライドが長いのです。そのときに太ももで踏ん張ります。その証拠に、スピードスケートの選手の太股がもの凄く太いのは有名な話しです。ツルツル滑るスケート靴を履いて片足で踏ん張るためです。競輪選手も太ももの太さで有名です。

太股前面の大腿四頭筋は俗に「着地筋」「ブレーキ筋」を呼ばれる制止に使う筋肉です。必要以上に着地筋が肥大することはマラソンにとってはマイナスです。大腿骨を前にふり上げるときに余計な重りとなってしまうからです。オリンピッククラスのハイレベルではわずかの差が勝敗を分けますから両立できないのです。

ロードバイク乗りがどうして速く走れるのかというと、ストライドがギア比によってメチャクチャ長くなるからです。ギア比こそが魔法のタネです。ペダルを一回転すると、ギア比によって後輪ホイールは数回転します。そのホイールの円周分がストライド長となるために、ものすごくストライドが伸びるのです。そのために速く走れるのです。

ところがこのギア比のためにペダルが重くなります。その重たいペダルを踏みしめる時に使うのが着地筋なのです。着地筋が発達すると太ももが太くなります。ケイリン選手を見てください。丸太のような太ももをしています。スピードスケートの選手を見てください。おなじような太ももをしています。金メダルをとった清水宏保選手はもの凄い太ももでした。使う筋肉が同じだからスピードスケートとロードバイクは両立可能なのです。両方とも「着地筋系競技」だからです。マラソンは着地筋系競技ではありません。

陸上短距離だと金メダルを取れない日本人が、スピードスケートだと金メダルを取れるのは理由の一つに「着地筋の発達」があげられるかもしれません。

文化的にも西欧人は「押す文化」で日本人は「引く文化」だといわれています。日本人は包丁やノコギリ、田んぼの鋤、鍬などを、着地筋で踏ん張って引っぱってきました。日本人には身体の前面にある着地筋が発達しやすい遺伝子があるのかもしれません。

そういう意味では日本人は「着地筋系競技」であるロードバイクでは、世界的にいい成績をおさめられる可能性を秘めています。世界自転車選手権で10連覇した中野浩一さんのような選手がそのうちまた登場するだろうと私は信じています。

 

 

競技自転車特有のテクニック「ドラフティング」「スリップストリーム」

速く走れるようになるためのもっとも効率的なトレーニングは、実際に速く走ってみることです。しかし速さとは相対的なものであり、自分独りでは速さを実感することはなかなか難しい場合があります。できれば競争相手がいた方が速さというのは実感しやすいものです。

自転車ロードレースの場合、集団をつくって風の抵抗をみんなで分担し合いながら進むのが常識です。ロードバイクの世界ではこの集団のことをプロトンと呼んでいます。ロードバイクはスピードが速いため風の影響をモロに受けやすく、とりわけ先頭の選手はもっとも風の抵抗によって消耗させられます。集団の先頭に立っているのは、ゴール地点で勝てる選手ではありません。単なる「風よけ」なのです。

自転車のペダルを漕ぐ力のほとんどは、空気抵抗とのたたかいに費やされています。時速40kmで走った場合、ペダルを漕ぐ力の80%以上は空気抵抗とのたたかいに消えてしまうそうです。

その証拠に自転車の世界最速記録は時速296㎞だそうです。信じられないスピードですが、達成した時の環境にからくりがあるのです。すっぽりと前・上・左右を覆った覆いをつけた車の後ろにぴったりとロードバイクをくっつけて、空気抵抗をなくした状態で走ったときの記録です。風の抵抗がある状態では競輪やツール・ド・フランスのゴール前スプリントでも時速70kmほどがロードバイクのスピード限界のようです。それほど風の影響は大きい。

懸命に脚をぶん回したパワーの80%以上は風(空気抵抗)との闘いに消耗されてしまっているということは、推進力につかえるのは20%しかありません。その空気抵抗を他人に担ってもらうためにプロトンがあります。

プロトン戦法とは「集団の後ろについて、集団の前に出ない戦略」「集団の先頭に出るな、集団を引くな」というレース戦略のことです。集団に「乗っていく」戦法のことをいいます。

集団の後ろにいる選手は、前の選手の後ろにピッタリとくっついて、先行車が空気を切り裂いたスポットに吸い寄せられるようにして走ります。これがドラフティングとかスリップストリームと呼ばれる競技自転車特有のテクニックです。先行選手を風よけに使うというわけです。そして空気抵抗の小さくなったスポットに自分の体をねじ込みます。先行車の後輪とホイールの直径ほど離れたらもはや離れすぎです。離れてもホイール半分ぐらいと考えましょう。

スリップストリームの効果はびっくりするほどで、単独走行ではとうてい無理なペースで楽に走ることができます。空気抵抗との戦いにエネルギーを消耗しないので、その分、推進力にパワーを割り振ることができるからです。だからロードレースにはチームのエースを背後に引っ張る「運び屋」という存在がいるのです。ロードバイクは団体競技なのです。

心理的にも集団の先頭には立たない方がいいと思っています。ただでさえ後続車よりも空気抵抗が大きいというのに、先頭は視界が開けるために、視点を定めなければならず目が疲れます。目が疲れると脳が疲労します。脳が疲労すると走りに影響します。景色が変わらなかったりすると、先頭はスピードを感じにくいため、走っても走っても前に進んでいるような気がしません。つい、もがき、力んでしまいます。このペースでいいのかと不安がよぎって後続が気になったりしたら、もはやレースどころではありません。

後ろから急かされている感覚も、焦りを生みます。後ろからハアハアと荒い息を吐かれてこっちまで息が上がってしまったことはありませんか? 後ろにピッタリとつかれることは「あおり運転」をされているような状態ですから、心理的にリラックスできません。よくありません。

ただついていけばいい後続の方が、肉体的にも心理的にもずっと楽なのです。これをロードバイクの世界では「運んでもらう」「(プロトンに)乗っていく」と言います。スポンサーのロゴを胸に貼ったプロの選手なら話しは別ですが、ホビーレーサーが集団の先頭に立つメリットはほとんど何もありません。

自分でペースをつくるよりも他人に任せてしまった方が絶対的にラクチンです。ロードバイクのスピードなんて絶対値ではなく相対的なものに過ぎません。自分の集団が遅いと感じたら自ら先頭に飛び出すのではなく、後続集団が追い抜いていくタイミングで、そちらの集団に乗り換えましょう。まるで電車を乗り換えるように集団を乗り換えて、上手にレースを走り切ってみてください。それがもっとも効果的なレース戦略だったりします。

集団の前に出ないレース戦略『プロトン戦法』を駆使して、秒単位でタイムを削りとりましょう。

 

 

第三章 自転車・ロードバイクのコラム

旅サイクリング。ロードバイク大遠征では、チェーン、タイヤを持参すべき理由

ロードバイクで遠出をしてみたいと、ロードバイク乗りなら誰でも一度は思うものです。しかしロードバイクは徒歩では戻れないほど遠くまで行けるため、旅先で回復不能なトラブルに遭った場合に取り返しがつきません。

ロードバイクは繊細な乗り物です。常に調整や点検が必要です。調整、点検をしていてもトラブルに遭ってしまうことがあります。走行中にチェーンが外れるぐらいのトラブルは、さほど驚くようなことではありません。

チェーンが外れるのはたいていシフトチェンジをしたときに起こります。シフトチェンジとは回転しているチェーンを強制的に脱線させることに他ならないからです。脱線したチェーンが隣のギアにうまくはまってくれればギアチェンジは成功ですが、うまくはまらなかった場合、最悪チェーンが落ちてしまいます。

万が一チェーン落ちしたら、ペダルの感触ですぐにわかります。テンションがなくなってペダルがスカスカに軽くなるか、あるいは挟まって重くなるかのどちらかです。もしも重くなった場合にはチェーンがどこかに落ちて挟まってしまっています。無理して乗り続けず、まずはすぐに自転車を降りましょう。「ああ、手が汚れるなあ」とすこし嫌な気分になりますが心配いりません。安全な場所で降車して、テンションプーリーを前に押してチェーンのテンションを緩めて、ブラブラになったチェーンを外れたギアにはめれば元に戻ります。その際、プーリーやチェーンには触らざるを得ないので手が黒く汚れます。

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チェーンが剥がれた実体験。壊れたチェーンはただのゴミ

ところが私が体験した≪チェーン落ち≫は、それだけでは済みませんでした。落ちたチェーンを戻して乗り出したはずなのですが、チェーンがどこかにひっかかってペダルが回りません。どうしたものかとよく確認してみると、チェーンの輪っかがめくれあがってしまっていました。

チェーンというのはプレートと呼ばれる遮光器土偶の眼鏡のような、二つ穴の小さな部品が組み合わさってできています。そのアウタープレートがちょうど剥がれかけたカサブタのようにめぐれあがってリアディレイラーに引っかかってしまっているのです。チェーン落ちしたのに、わたしがしばらくペダルを回し続けたのが原因でしょう。トラブルに遭ったら即座にペダルを漕ぐのは中止しなければなりません。

めくれあがったチェーンを指の力だけでは戻すことはできませんでした。しばらくあれこれ試してみましたが、どうにもなりません。しかたがないのでチェーンは外して自転車を押して歩くことにしました。家までの距離は20kmほどあったでしょうか。ロードバイクを押して歩いていると、トラブルに遭ったのが明白なので周囲のみんなが「かわいそうに」という視線を送ってきます。もっこりしたサイクルパンツと、歩きにくいビンディングシューズで歩道を長い時間歩くのは恥ずかしかったです。

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旅サイクリング。ロードバイク大遠征でチェーンが壊れたらゲームオーバー

まだ20kmぐらいだったから歩いて帰れましたが、これが最寄りの自転車屋さんが100kmも離れたところでの故障だったら、いったいどうなっていたでしょうか。自転車を押して歩きながら、妄想がどんどん膨らみます。

100kmともなると押して歩くのはとても無理です。近くに軽トラのある家を探して自転車さんまで荷台で運んでくれるように拝み倒すしかありません。そのためにはお礼ができるように現金を持っている必要があります。

「しかしチェーンが壊れるなんてこともあるのか」と思いました。想定外のトラブルでした。つねにパンクは想定しています。タイヤチューブはいつも携帯していました。しかしさすがにチェーンまで携帯していません。予備のチェーンまで携帯している人はまずいないのではないかと思います。

日帰り程度のロードバイク遠征ならば構いませんが、本気で旅サイクリングをするならば予備のチェーンが絶対に必要だと知りました。

タイヤだって万が一裂けたりしたらそこで終わりです。タイヤが裂けたら中のチューブがいくつあっても足りません。軽傷ならば千円札を折りたたんで内側からパッチするという応急技がありますが。

旅サイクリングで辺鄙な場所へ大遠征する場合には、チェーンやタイヤなどの予備が絶対に必要になってくるのです。万が一の事故ですが、その万が一が起こった時にどうしようもありません。そこで旅が終わってしまいます。

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ロードバイクで「ドライジーネごっこ」

私の場合ですが、まずはチェーンを完全に外してしまいました。引っかかって回らないチェーンはもはや邪魔でしかありません。壊れたプレートのところからチェーンを力づくで外しました。ずっと下り坂ならば、これで自転車に乗ったまま帰ることができます。

しかし平坦な道の場合、蹴って進まなければなりません。サドルが高い位置にあるため、そのままでは地面を蹴る事ができません。アーレンキーは持っていたのでサドルを目いっぱい下げて、サドルに乗りながら両足で地面を交互に蹴ってみました。

「おおっ。これは自転車の元祖、ドライジーネじゃないか」

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自転車の歴史

自転車の元祖、ドライジーネを知っていますか? ドライジーネを話しのきっかけに、自転車の歴史について見ていきましょう。まずは質問です。チャリンコとクルマ、先に発明されたのはどちらでしょうか?

たいていの人は、自転車が先、自動車が後だと答えます。自転車はローテク、自動車はハイテクです。ロードバイクが前に進む仕組みは目で見て理解できますが、自動車の構造は複雑すぎて素人にはわかりません。

しかし不思議なことに、先に発明されたのはクルマです。この世に誕生したのは自転車の方が後なのです。複雑な方が先に出来て、簡単な方が後に出来るなんて、実に不思議なことではないでしょうか?

クルマの起源は1769年。ガソリンじゃなくて蒸気機関を利用したものですが、オートモービルがチャリンコよりも先にできたのです。クルマの発想の原点は「馬車」です。中世を舞台にした映画には馬車がよく登場します。天蓋がついて雨に濡れないようになっている馬に引かれる馬車。あれがクルマの発想の原点です。

それに対して自転車の起源は1813年のドライジーネ。車輪とフレームだけの木馬を両足でまたいで両足で交互に蹴るというオモチャみたいな乗り物でした。今の子供が三輪車に乗るときのような、歩行補助器のようなものが自転車の発想の原点でした。

筋肉をつかって進む単純な構造の自転車の方が、機関をつかって進む複雑構造のクルマより後にできたのは不思議な現象ですが、要は発想の問題でしょう。クルマには馬車という元ネタがありました。馬という動力を蒸気機関やエンジンなどに替えただけで、クルマは発想しやすかったのです。それに対して自転車のような乗り物はこれまで誰も見たことがありませんでした。前に進んでいないと倒れてしまうという、動的バランスが必須の、二輪の乗り物なんて元ネタがないのです。

馬は四つ足だからやはり四輪車を発想します。四輪車は四つ足の動物に似ています。しかし二輪の自転車はどんな動物にも似ていません。ゼロから自転車を発想するのには、何らかの発想の飛躍が必要でした。馬車から進化した自動車とは違って、走るのを補助するオモチャから進化したのが自転車なのです。

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ロードバイクは、持参すべきものが多い乗り物

自転車をまたいで左右の足で蹴って進む「ドライジーネごっこ」はつかのま楽しかったのですが、すぐに飽きました。ロードバイク特有の浮遊感がまったくありません。

ロードバイクのサドルは固いので、左右の足で強く地面を蹴っているうちに股間が痛くなりました。下り坂ならともかく、これでは歩いたほうがましです。

結局、いちばんよい方法はシューズのビンディングをアーレンキーで外して、平らな靴底で歩きやすくして、自転車を押して帰ることでした。

この経験から言えることは、もしもこれからロードバイク日本一周のようなことをやろうと考えている人がいたら、予備のチェーンとタイヤを持っていくことを強くおすすめするということです。山奥でチェーンが壊れたりしたらツーリングがあっというまにただの歩行苦行に変わってしまいます。

ロードバイクは、壊れたときの予備装備として持参すべきものが多い乗り物なのです。旅に使うならば、タイヤチューブや空気入れだけでは足りないかもしれません。

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リカンベント型自転車

ランナーだった私がロードバイクに乗るようになって初めて感じたことは「こりゃあ空を飛んでいるみたいだなあ」ということでした。下ハンにして腕を突き出し、上体を水平近くまで低くして滑るように走っていると「まるでスーパーマンみたいだ」と思ったものです。

みなさんはリカンベントという自転車を知っていますか?

サドルではなく背もたれに座り、ペダルは骨盤直下ではなく前の方にあります。この自転車は、世界一速いと言われています。ロードバイクよりも速いのです。

私がはじめてこの自転車を見たのは『ツール・ド・フランス』のテレビ中継でした。世界一のロードレーサーたちが争っているアスリート集団の横(側道のようなところ)を一般市民がおかしな自転車で並走しているではありませんか。

最初はオートバイかと思ったのですが、足を一生懸命回しているのを見て「これは自転車だ…」とびっくりしました。「でも、ありえない…」目を疑うような光景でした。ツールの選手と一般市民が並走できるはずがありません。それができたのはこのおかしな自転車のおかげです。それがリカンベントの実力でした。

寝そべるように乗るために、低い姿勢で空気抵抗を抑えることができます。ロードバイク乗りは低い姿勢を維持するために脊柱起立筋を酷使するのですが、リカンベント乗りは背もたれるだけです。疲労度がぜんぜん違います。またペダルを踏み込む力は反力として自分に戻ってくるためロードバイク乗りは体が浮き上がってしまうのですが、リカンベント乗りは反力を背中の椅子で受け止めて足に返すことができます。パワー効率が違うのです。量産されていないため、現在のところ高嶺の花の高級車ですが。

テレビ番組に『鳥人間コンテスト』というのがあります。人力プロペラ機部門は、まるで自転車競技大会のようです。人力プロペラはペダルを漕いで回します。風の抵抗をなくすためコクピットは流線形となり、パイロットは寝そべってペダルを前で回すことになります。そうです。リカンベントを漕ぐときと同じフォームになるのです。

普段はロードバイクで脚を鍛えている人たちが、懸命にペダルを漕いでプロペラを回しています。自転車用ヘルメットにサイクルジャージを着ているパイロットもいます。だから『鳥人間コンテスト』は「チャリダーの祭典」のように見えるのです。

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『ペニー・ファージング型(ダルマ自転車)』ギア比の魔法以前の自転車

かつて人類は『ペニー・ファージング型(ダルマ自転車)』という自転車に乗っていました。前輪がものすごく大きな自転車です。ギアの発明以前は、ギア比の魔法がつかえなかったため、速く走るためには車輪を大きくするしかなかったのです。

しかし人類はその後、チェーンや変速ギアを発明しました。そしてついにはリカンベント型にまで自転車を進化・発展させたのです。

人類初の有人動力飛行に成功したライト兄弟の本業は自転車屋さんでした。自分がロードバイク乗りになるまでは、「そうなんだ」としか思いませんでしたが、ロードバイクに詳しくなってくると、なるほど人類初の有人動力飛行機を開発した人が自転車屋なのはむしろ必然だという気がします。

エンジンの回転をプロペラに伝えることは、ペダルの回転を後輪に伝える自転車のチェーンを活用すれば解決できそうです。実際、ライト兄弟の飛行機(ライトフライヤー号)は、自転車と同じ仕組を利用してエンジンの回転をプロペラに伝えていたそうです。チェーンをつかってプロペラを回していたのです。

ロードバイクにおけるエネルギーの80%以上は空気抵抗とのたたかいに費やされるという空気抵抗問題があります。近代では風洞実験などを行って空気抵抗を研究しているのですが、ライト兄弟も風洞実験を行ったそうです。まさに自転車屋さんがつくった飛行機、それが人類初飛行を果たしたライトフライヤー号だったのです。1903年に初飛行に成功しました。わりと最近の発明ですね。初飛行といっても、たったの12秒、37mだそうです。赤ん坊がはじめて歩いたときのようなものでした。しかしこの飛行機は、恐るべき可能性を秘めていました。軍事に利用すれば、要塞も、万里の長城も、すべて無意味なものにしてしまうほどのイノベーションだったわけです。大平洋戦争は、大砲を積んだ戦艦と、航空機を積んだ航空母艦とのたたかいでした。勝ったのは飛行機でした。わずか40年たらずで世界は飛行機の時代になったのです。

さて、クルマとチャリンコでは先に発明されたのはクルマでしたが、飛行機と近代自転車では、先に発明されたのはどちらでしょうか? 答えは近代自転車です。1896年にフリーホイール(ラチェット)と変速ギアが発明されています。この年をもって近代自転車の完成といってもいいのではないかと思います。ライト兄弟の初飛行は1903年ですから、近代自転車が先、飛行機が後ということになります。ライト兄弟の本業が自転車屋さんだったのですから、このクイズは簡単すぎましたね。

いずれにしても、21世紀初頭がIT革命によって劇的に変化した時代であるように、19世紀初頭は飛行機によって交通が大進化を遂げた時代でした。当時、蒸気機関車、ガソリン自動車、そして気球、飛行船、グライダーはありました。ライト兄弟が目をつけたのはグライダーでした。そして自分がパイロットになって飛ぶという選択を彼らはします。いかにも自転車屋の発想ですよね。だって自分は自転車にいっさい乗らないなんていう自転車屋さんを見たことがありません。

ライト兄弟は、グライダーで操縦技術を学び、後から動力をくっつけるという戦略をとりました。まずは乗ってみることが先決でした。実際にやってみないとわからないことが世の中にはたくさんあります。ライト兄弟の場合、飛行機をつくるということも、自転車の技術を活用することで可能となりました。パイプを溶接してフレームをつくり、自転車をつくることができれば、ライトフライヤー号の骨組みだってつくれたでしょう。

自転車の年表にライトフライヤー号は載っていませんが、ライト兄弟の人類初飛行は、自転車の歴史の栄光のひとつだといってもいいと思います。自転車の年表に書き込んでもいいと私は思っています。

やっぱり自転車は空を飛ぶことにつながっているのです。『鳥人間コンテスト』を見ながらそんなことを考えていました。必死にプロペラを回すパイロットの姿は、ロードバイク乗りのそれとまったく同じです。まだ未熟な大学生が力まかせに漕ぐ飛行機はコクピットがワッサワッサと揺れていました。あらら、集団走行したら嫌われちゃいますよ。それではペダルが重すぎます。軽いペダルをクルクル回すんですよ。 ペダルは軽く速く回して、ジャイロ効果を利用しましょう。寝椅子に体幹の振動を伝えてはダメです。ロードバイク乗りだからこそ、そんなアドバイスが頭に浮かびます。

鳥人間コンテストは、強風で競技不成立となることがよくあります。風に弱いところもロードバイクとまったく同じです。風にはかないません。すべては風まかせ。それが人生。飛べるかどうかも風次第です。それが運命。

自転車は空を飛ぶことにつながっている。ロードバイク乗りのみなさんはそう思いませんか?

 

 

スティーブ・ジョブズ「知の自転車」。論文の嘘を暴け

パーソナルコンピューターの生みの親の一人、スティーブ・ジョブズは、パソコンのことを知の自転車と譬えています。ロードバイク乗りとしては気になる比喩ですよね?

ジョブズはある論文をもとにこの発言をしているのですが、この論文は嘘っぱちではないか、というのが本稿の趣旨です。

ロードバイク、なめんなよ!

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ジョブズはパソコンを「コンピューターは知の自転車だ」とたとえて表現した

「コンピューターは知の自転車だ」これはアップルの創設者スティーブ・ジョブズの言葉です。Macプロジェクトの暗号名は『Bicycle』だったとか。ジョブズはよほど自転車が好きだったのでしょうか?

調べたところ、どうもそうではないようです。自転車が好きということではなく「コンピューターという道具を使うことで、人間が本来もっている能力をもっと効率的に発揮して、すぐれた性能を発揮することができる」ということを、自転車に乗った人間の運動効率にたとえて表現したものがこの言葉です。「たとえ話」なのです。

著名な画家が「あなたにとって絵とは何か?」と聞かれるように、スティーブ・ジョブズは「あなたにとってパソコンとは何か?」と生涯聞かれ続けました。いわばお決まりの質問です。それに対していちばん有名な回答が「知の自転車」というたとえ話での回答だったというわけです。ジョブズはこう言ったそうです。

「それについては、自転車とコンドルとのアナロジーで答えたい。数年前に、僕は『サイエンティフィック・アメリカン』という雑誌だったと思いますが、人間も含めた地上のさまざまな動物の種の、運動の効率に関する研究を読みました。その研究はA地点からB地点へ最小限のエネルギーを用いて移動する時に、どの種が一番効率が良いか結論を出したものです。結果はコンドルが最高だった。人間は、下から数えて3分の1のところにいて、あまり印象に残っていません。しかし、人間が自転車を利用した場合を、ある人が考察しました。その結果、人間はコンドルの倍の効率を見せました。つまり、自転車を発明した時、人は本来持っている歩くという肉体的な機能を拡大する道具を作り出したといえるのです。それゆえ、僕はパーソナルコンピュータと自転車とを比較したいのです。なぜなら、それは人が生れながら持つ精神的なもの、つまり知性の一部を拡大するツールだからです。個人のレベルでの生産性を高めるための特別な関係が、人間とコンピュータの関わりの中で生まれるのです」

おおっ。拍手! これが有名な「知的自転車」発言ですね。

「人間の知的能力がコンピューターという道具を使用することで拡張される」と抽象的に表現するのではなく「自転車」「コンドル」という「動きでたとえた」ことで、名言としての箔がつきました。Think different.

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一番移動効率がいいのはコンドルというのは間違いではないか?

しかし、この話し、すなおに聞けますか?

ロードバイク乗りとしての私には、にわかには信じられません。っていうか直感的に「違うだろ!」と思います。ジョブズの発言ではありません。発言の元ネタとなった「サイエンティフィック・アメリカン」に載っていたという動物の移動効率の話しです。

「移動効率が一番いい動物はコンドルだ」というのは、どう考えても間違っているのではないでしょうか。わたしには違和感しかありません。あきらかにおかしいと思います。

コンドルというのは、南米に生息する現存する最大の猛禽類です。ダチョウなどの飛べない鳥を除けば、飛べる鳥の中で最大級の大きさを誇っています。翼開長3m体重は15kgほどの巨鳥です。死肉を食らうスカベンジャーであり、空中戦を得意とするファイターではありません。

空中戦をする猛禽ではないため、獲物に追いつくスピードも、獲物を捕らえる旋回能力も必要ないのがコンドルです。屍肉食なため獲物を狩るための高度な飛翔能力をもたないと一般的に言われているのがコンドルなのです。

そうです。コンドルは体が重いために、飛行能力は低いと一般的にいわれているのです。体重の重いランナーが軽々と走れないのと同じ理屈です。動物園でコンドルを観察してみればすぐにわかることです。鈍重なコンドルが動物界でもっとも効率よく移動できるとはとうてい思えません。そのコンドルの移動効率が動物界で一番いいって、いったい誰がどういう計算をしているんでしょうか?

みんなジョブズの言葉に感動して、そこを突っ込んでいる人を見たことがありません。ジョブズの言葉に聞き入るのはコンピューター関係者で、鳥類学者や動物学者、自転車関係者ではないことが原因でしょう。

発言の元ネタとなった「生物の移動効率論」というのは、どうやらこういうことのようです。

「1km進むための空、海、大地の生き物の移動効率について、消費カロリーを体重で割り返して、体重当たりの消費カロリーが小さい順に並べたもの」

なるほど、体重で割り返しているのですか。だとすれば猛禽類最大の体重で割り返せば、消費熱量は小さくなるかもしれませんね。もしも1kmの飛行にかかるエネルギーが他の鳥と同じだとすれば、ですが。

しかしF1など自動車レースの世界でも同じですが、車体重量は軽いほどいいのです。およそ移動効率の計算をするときには軽い方が有利に決まっています。重たいコンドルが最高効率というのは、ちょっと考えただけでおかしいのです。

最大で15キロにもなる体重を宙に持ち上げるだけで、ものすごいパワーが必要になります。約3メートルの巨大な翼をバッサバッサと羽ばたく必要があるのです。運動効率どころの話ではありません。効率よく飛ぶ鳥はサッと音もなく飛ぶはずでしょう。

動物界最速のスピードを発揮するハヤブサは翼開長はコンドルの半分ほどですが体重は1kgほどしかありません。15分の1ほどしかないのです。だからあれほどすばやく飛ぶことができるのです。鳥類というのは飛ぶために骨をスカスカ中空にしてまで体重を軽くしています。文字通り身を削って体重を軽くする進化をしてきた生き物なのです。そういうハヤブサに対して、翼開長2倍、体重15倍のコンドルの移動効率が鳥類で一番だと言われても、私にはまったく信じられません。

太っちょランナーの運動効率は悪いに決まっています。デブの足が遅いのは宙に浮くことが困難だからです。体重は浮遊に決定的な影響を及ぼします。あまりに重ければ飛ぶことさえできません。ダチョウが好例です。ダチョウの羽根のカタチが飛ぶことに適しているとかいないとか云々するよりも、そもそもダチョウは飛ぶには重たすぎます。オスの体重は100kgを超えるのです。

自然界でコンドルは腐肉を食べ過ぎて、まれに体重が重くなりすぎて飛び立てなくなることもあるそうです。翼は大きいけれど、その翼を動かすのに十分な胸筋がないといわれています。そのため、ほぼ羽ばたくことはせずに滑空飛行を行うのだそうです。生息地が南米の山岳地帯なのは、滑空するために風の助けが必要だからだそうです。斜面上昇気流に乗って滑空できるだけの谷がある地域にしか生息できない生き物なのがコンドルなのです。

なるほど上昇気流に乗って滑空しているのか……。えっ? 滑空? 風の力を利用してもいいの? これってそういう勝負なの? 自分の筋肉を使っての比較じゃないと、公正に比較できないんじゃないかしら?

ね? なんかおかしいんですよ。ジョブズが引用したこの論文は。

風を利用するのが「あり」なら、田んぼの害虫ウンカなんて中国から風に運ばれて日本まで飛んでくるのです。ものすごい運動効率じゃありませんか。やはり一般的な意味で「移動効率が最もいいのはコンドル」だというのは確実に間違いだと断言していいでしょう。

仮に「滑空はアリ」だとしましょう。コンドルが風の助けを得て滑空している時の運動効率を計測しているとすれば、かなりいい運動効率でしょうね。

しかしそういう鳥はコンドル以外にいくらでもいます。コンドルだけが滑空OKで、ほかの鳥はダメというんじゃあ、そもそも条件が平等じゃない「バカ論文」です。なんのための比較だかわかりません。

鳥類の中には風の力を借りて海や山脈を越えるものさえいます。キョクアジサシの年間移動距離は80,000kmです。アネハヅルのようにヒマラヤ山脈を越えてしまうような鳥だっています。彼らだって上昇気流を翼にはらんで滑空している時の運動効率でコンドルと比較しなければ公平な競争とは言えません。

私にはコンドルがヒマラヤ山脈を越えられるとは思えません。どう考えてもジョブズが引用した論文はおかしいのです。そして誰もそれを指摘しないことに呆れてしまうのです。

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そもそもスピードを無視した運動効率なんてありえない

さて「自転車」です。元ネタの論文では、自転車を使うと移動効率最高のコンドル(←間違っていると断言します)の2倍も効率がいいということになっています。つまり「ありとあらゆる生物の運動効率の中でも、自転車に乗った人間がダントツに運動効率がいい」ということです。

他の生物を全く寄せ付けないダントツ大差で、自転車の運動効率がいいですって? この学者は自転車に乗ったことが一度でもあるのでしょうか?

ロードバイク乗りの皆さんどうですか? 実感としてそう思いますか? またまた恐縮ですが、わたしには到底そうは思えないのです。

ランニングに比べてロードバイクの効率がいいことは間違いありません。こんなわたしが自力でウサイン・ボルトよりも速く走れるのですから。

しかし鳥類にくらべて二倍の運動効率で、地球上の生物の中で圧倒的に最高の効率で前に進んでいるとは、とうてい思えません。だって運動効率がもの凄くいいってことは、ぜんぜん疲れないってことでしょう?

そんなことはありません。ロードバイクだってスピードを出せば非常に疲れます。「ツール・ド・フランス」の選手たちは、苦しさのあまり涎や鼻水をたらして走っているではありませんか。

この自転車の移動効率最高理論は、どういう学者が、どういう実験をした上で言っているのでしょうか。ジョブズのせいでバカ論文が歴史に残っちゃって、いまごろ困惑しているのではないでしょうか。

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限定し、条件を絞れば、トップに立つのは簡単

専門家が本当のことを言っているとは限りません。御用学者という言葉があります。自分にお金をくれる人や団体に都合のいいようにデータをつくってスポンサーが喜ぶような結果をつくりだす魂を売った学者のことです。

学者バカという言葉もあります。詳細のデータに夢中で全体が見えていないため、詳細から見れば正しいが、全体から見るとどんでもないバカな結論を導き出してしまう学者のことです。

たとえばコンドル保存協会から仕事を依頼された学者は、コンドルのすばらしさを世に知らしめる目的のために、はじめからコンドルが勝つようにねつ造したデータを作るでしょう。これはそういう論文だったのかもしれません。

あるいは自転車普及協会に仕事を依頼された学者は、自転車に都合のいいデータをつくったり、結論を導いたりすることがありえます。たとえば競争相手を勝てる相手に限定するとか。自転車に都合の悪い条件は無視するとか。

条件を絞れば、トップに立つのは簡単です。やり方はいくらでもあります。たとえばスピードは考慮しない、という限定方法がそのひとつでしょう。

おそらく自転車で最高に運動効率を発揮するためには「惰性で進む」ことです。ペダルをひと漕ぎしたら惰性で進み、スピードが落ちてきたらペダルが重くなる前に、さらにひと漕ぎする。スイーッと進みます。四足動物は動きを止めたら止まってしまうため、自転車の惰性で進む力は、運動効率の意味ではかなりの有利さを発揮するかもしれません。ベアリングのおかげです。水の抵抗は大きいから、イルカやマグロなど海中の動物も、やはり動き続けないと、すぐに止まってしまうでしょう。やはりライバルは「鳥」です。空中は空気抵抗が少ないから、スイーッと進むことができます。斜めに落下しながら飛べます。

飛ぶのが苦手なコンドルを「運動効率最高」としたときに滑空を条件に入れていたとすれば、自転車は坂道を下るときには、まったくエネルギーを使わずに済みます。

下り坂の自転車と、滑空するコンドル? そんな比較がありますか?

やっぱりこの論文はどこかおかしいのです。

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運動というものはスピードを出すために膨大なエネルギーを惜しげもなく使うものだ

「風は無視」「自力勝負」という平等な条件ならば、自転車もいい線までいけるかもしれません。その場合、コンドルの優勝は完全になくなりますけれど。

しかし、そもそもスピードを全く無視した運動効率なんてありえないと思っています。

自転車ロードレースでは、速く走るために膨大なエネルギーをつかって空気抵抗という壁と戦い、空気抵抗を押しのけて速くゴールに到達しようと必死になるのです。スピードを上げるためにエネルギーを使うのは当然のことです。レーシングカーとセダン車の運動効率は、不必要なものはすべて取っ払ったレーシングカーの方がいいに決まっています。しかしガソリンをまき散らして走っているのはレーシングカーの方です。速く走っているからです。運動というものはスピードを出すために莫大なエネルギーを使うものなのです。ジェット飛行機だって、レーシングカーだって同じです。

ロードバイクに乗った人類最高のアスリートたちがフランス一周したぐらいで疲労困憊してしまうのは、スピードを出して走っているからです。そのあたりが自転車の限界と言っていいでしょう。海を越える渡り鳥よりも運動効率がいいわけがありません。1位の自転車が、2位のコンドルに2倍の大差で圧勝というのは、どう考えてもおかしいのです。

自転車が生物史上最高に運動効率がいいだなんて、絶対に間違っているというのが、ロードバイク乗りとしての私の実感です。理性で考えれば、誰でもわかることだと思います。

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言葉というのは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が重要

スティーブ・ジョブズの「知の自転車」発言にケチをつけるつもりはまったくありません。ジョブズが言いたかったことは「道具で、人間の能力を拡張できる」ということなのですから。

ただ発言の元ネタ「コンドルが運動効率一位」というのが、あまりにも違和感があったことから、このようなことを書いています。私のほかに誰も元ネタへの違和感を表明した人がいなかったので。本気でロードバイクに乗った経験があるからこそ、気づけたことなのかもしれません。

ノーベル賞を受賞した本庶佑さんは「(科学誌の)ネイチャーやサイエンスに出ているものの九割は嘘で、十年経ったら残って一割」だと言っています。コンドルが動物界の運動効率第一位というのは、確実に嘘の九割に入るトンデモ論文のたぐいでしょう。スティーブ・ジョブズの歴史的な名言は、このようなバカ論文を元ネタに発言されているのです。

しかし十年後には残らなかったはずのトンデモ論文だったものが、スティーブ・ジョブズが引用したことで命を吹き込まれてしまいました。十年経っても残る一割の方に入ることになってしまったのです。このトンデモ論文は、ジョブズの言葉とともにずっと語り継がれていくことでしょう。

ああ、恥ずかしい。誰ですか、こんなバカなこと発表した学者は?

でも歴史に残るとは、こういうことなのかもしれません。言葉というのは「何を言ったか」ではなく「誰が言ったか」が重要なのです。スティーブ・ジョブズが言ったということが重要なのです。

あとがき

この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードを競うようになるところまでを描いたエッセイ集です。

その過程で、ママチャリのすばらしさを再認識したり、どうすれば速く効率的に走れるようになるのかに知恵をしぼったり、ロードレースは団体競技だと思い知ったり、自転車の歴史と出会ったりしました。

自転車はエコな乗り物です。そして健康によい乗り物です。私たちが思っているよりももっと遠くまで行けますし、もっとたくさんの荷物を運べます。今さらですが自転車にはもっと大きな可能性があると思っています。

ここに集められた自転車エッセイは、筆者が運営するブログ『ドラクエ的な人生』の中から、とくに閲覧数の多かった評価の高かった記事を集めたものです。

車で観光地に行く途中、曲がりくねった坂道で、ロードバイクに乗っている人たちと出会うことがあります。見ているだけで、その気持ちが伝わってきます。頑張れよと声をかけたくなります。自分もそっち側に回りたいと思うのです。

街中で小さな子供を前後に乗せて自転車で走るお母さんを見ても、つい応援したくなります。自転車に乗っている人はみんな仲間だという気がするのです。

2022年7月

アリクラハルト

 

 

【奥付】

 

著   者  アリクラハルト

初   版  2022年7月

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