人生において最も大切なのは時間である
わたしも昔から、時間こそ大事なもの、という考え方の持ち主です。その考えはこのブログの中でも折に触れて表明してきたところです。
ところで『ネバー・エンディングストーリー』が面白かったので同じ作者ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んでみました。
するとまさしく「人生において最も大切なのは時間である」という思想を寓話化した作品でした。
そしてこの本を読み終わった時、私は『TIME』という映画のことを思い出したのでした。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
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ミヒャエル・エンデ『モモ』
『モモ』のざっとしたあらすじです。
円形劇場の舞台下に住み着いた天涯孤独の少女モモ。モモは人の話しを聞くことが上手で、たくさんの友達がいました。みんながモモに話しを聞いてもらいたがります。そして喋っているうちに自分の本当の望みや考えていたことに考え至るのでした。
しかし世界は時間貯蓄銀行の灰色の男たちに支配されようとしていました。まずは大人から。時間貯蓄銀行に自分の時間を預けた大人たちは、次の日から忙しく効率だけを追い求めて働くことになります。
自分の時間を銀行に預けてしまうと、遊びとか生活のゆとりとかはなくなってしまいます。そしてモモと話しをする時間もなくなって、円形劇場からも遠ざかってしまうのでした。
やがて時間貯蓄銀行の灰色の男たちの魔の手はモモにも及びます。灰色の男はモモの時間を奪おうとしますが、モモは拒否します。
そしてみんなが豊かな時間や友情を失ったのは時間貯蓄銀行のせいだということを知って、モモはたたかうことを決意したのでした。
そんなモモを助けてくれる人物が現れます。マイスター・ホラという名前の老人で、彼は人間たちに豊かな時間を配る人物でした。
逆に時間貯蓄銀行は、人間たちを支配するために、人間の時間を奪おうとしています。時間を奪うことは人生を奪うことです。人間は利子がついて時間が戻ってくると信じて銀行に自分の時間を預けているのですが、いったん預けた自分の時間はもう二度と戻ってこないのでした。騙されていたのです。
マイスター・ホラの元から現実の世界に戻ると、モモは友だちがひとりもいなくなっていました。みんな忙しくてイライラしています。モモと遊んでくれる人はひとりもいません。モモには時間がたくさんあるのですが、ひとりぼっちでは時間をもてあましてしまいます。
やがてモモは灰色の男たちに取り囲まれて、マイスター・ホラのところへ案内するようにと脅迫されます。モモはふたたび時間の主マイスター・ホラのところに行きました。そしてマイスター・ホラが眠ることで時間を止めて、灰色の男たちの時間が尽きて消滅するという作戦を決行します。
時間が止まると灰色の男たちは時間貯蓄銀行の時間貯蔵庫へと急ぎました。他人から奪った時間を吸わないと灰色の男たちは消滅してしまうのです。その後をこっそり付けるモモ。
モモは時間の花を利用して灰色の男たちへの時間供給をストップして全滅させます。そして時間貯蓄銀行に奪われた多くの人たちの時間を解き放ちます。
モモが元の世界に戻ると、みんなの時間は元通りになっていました。人々はあくせくすることもなく、豊かな時間を楽しんでいます。
モモは友だちとふたたび楽しい時間を過ごせるようになったのでした。
映画『TIME』時間が通貨のように扱われているSF的世界観
映画『TIME』のあらすじをご紹介します。
映画の世界では、時間というものが視覚化され、通貨のように扱われています。通貨のように時間を稼ぎ、時間を使うという世界観です。
遺伝子操作によって不老不死が可能となった近未来のその世界では、人々の腕に残りの寿命がデジタル表示されます。デジタルカウンターがゼロになると寿命が尽きて死ぬのです。
主人公たちは窮地に陥ると、残りの寿命が数分、数秒となったりして、そのたびにドキドキします。まさに命のカウントダウンだからです。
時間は通貨なので、何かを食べたりサービスを利用したりすると、時間を支払わなければなりません。支払うとカウンターの数字が減っていきます。逆に労働すると賃金が時間で支払われ、腕のカウンターの数字があがっていくのです。貧しい人は労働せざるをえないのです。
誰もが不老不死では人口過剰です。誰かが死ななければならないため、貧民街では税金の値上げと物価の上昇が同時に行われます。その日暮らしのスラムでは、時間の支払いができず、時間が尽きて死ぬ人が続出しました。
その反面、お金持ちは無限に近い時間を所有しています。タイムゾーンで居住区域がわけられており、通行料も時間で支払うため、時間貧乏はお金持ちゾーンに近づくことさえできません。
そんな世界で、時間に退屈して倦怠感で死にたくなっている時間持ちの男を助けたことから、大量の時間を手に入れた貧民街出身の主人公ウィルは、あり余る時間を利用して富裕層区域に侵入して、復讐を考えます。
カジノで知り合った大胆でワイルドなスラム出身の男に、お金持ちの令嬢シルビアは、惚れてしまいます。スラムの人間はだいたい一日分しかタイムをもっていないためウィルは「今」を生きています。その生き方が無限の時間をもっている富裕層には魅力的に見えるというわけです。
しかし時間強盗に襲われて、寿命を奪われたことから、ふたりは生きるために協力し合わざるをえなくなります。タイムキーパー(警察)に追いかけられながら。
富豪が貧民に惚れるところは『タイタニック』的でもあり、警察に追われるうちに愛が深まるところは『ボニーアンドクライド(俺たちに明日はない)』的でもある展開となります。ふたりは時間を盗むという銀行強盗をやって町中に時間があふれ出します。永遠の命を持つ者と限りある命の者たちがたたかうという『銀河鉄道999』的な展開となります。
ウィルは世界のカラクリを知り、シルビアと協力して、貧富の差(持ち時間の差)のあるこの世界をぶっ壊そうとするのでした。
設定が斬新すぎて、オチよりも印象に残る作品
じつは映画館で『TIME』を見たのですが、オチのことを忘れていました。そのくせ、設定が斬新で、「時間=通貨」という設定のことだけは明確に覚えていました。
それほど時間=通貨という設定が、斬新だったのです。
人々に100万年の時間を配るが、自分自身の時間はたったの一日しかありません。でも一日あれば十分だと主人公たちは考えます。人は今日一日のことだけに集中して生きていけばいいということでしょう。
膨大な時間がふたりによってスラムに配られ、人々を隔離していたタイムゾーンの壁はなくなっていきました。まるでベルリンの壁の崩壊のように。
二人は時間銀行から時間を奪い人々に配る義賊(銀行強盗)として、パートナーとして生きていくのでした。
『モモ』も『タイム』の時間に対する考え方の共通点
どちらの作品にも、時間銀行的な組織が登場して、庶民の時間は「奪われるもの」として描かれています。
実際に現実社会では、資本のない庶民というのは、自分の労働力(時間)を提供してそれをお金に変えています。ブラック企業に勤めるサラリーマンなんかは、自分の時間を極限まで搾り取られている存在だといえるでしょう。
忙しいという漢字は心を亡(な)くすと書きます。『モモ』はここを痛烈に皮肉っている作品です。
『タイム』はもっと映画的でBonnie and Clyde的な銀行強盗映画になっていますが、それでも「時間こそがこの人生でもっとも大切なもの」というテーマは、痛烈に伝わってきます。
ふたつの作品に共通して言えることは、とにかく「時間こそ最も大切なもの」作品をつくるときには、SF的でもいいから、作品世界の設定がもっとも大切だということではないでしょうか。
お金は損してもまた儲ければ取り戻すことができます。しかしあなたの時間は去って二度と戻りません。
時間は生命そのものであり、あなたの時間が尽きた時、この世界とサヨナラしなければならないのです。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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