書籍『帰国子女が語る第二の故郷・愛憎の韓国ソウル』あとがき
私は韓国とは縁が切れないように運命づけられています。たまたま親の都合でソウル帰りの帰国子女という存在になりましたが、帰国したらそれで終わりということにはなりませんでした。
帰国直後は韓国人あつかいされていじめられたこともありました。歴史を学ぶたびに、ニュースで韓国人の反日感情が報道されるたびに、自分のことのように感じてきました。挙句の果てに、こうして本を出版しようとしています。本のタイトルは『帰国子女が語る第二の故郷・愛憎の韓国ソウル』。
私の韓国に対する思いは、単純に大好きとか大嫌いとか、そんな単純なものではありません。たとえて言えば、面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境に近いものがあります。感謝はしているんだけど、あまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、ものすごく複雑な思いをもっています。
ソウル日本人学校の偏差値レベルと韓国語。卒業生の進路と有名人。同窓会と将来
そんな私だからこそ本書には「ほかの人には書けないこと」がたくさん書けたと自負しています。
ベトナムを旅行したときに感じたことです。東南アジアの地図を眺めていて「もし自分がラオス人だったら、ベトナムを邪魔だなあと思うだろうな」と。ベトナムがあるせいでラオスは内陸国になってしまい、船で貿易することも、魚を捕ることも、難しくなっています。すこしは海をくれてもよさそうなものなのに、まるでそれを邪魔するかのように海岸沿いに細長くベトナムは存在しています。
日本と韓国も似たような関係にあります。歴史問題、領土問題が解決しても、どうしたって朝鮮半島にとってフタをするように存在する日本列島は永遠の邪魔ものです。それでも両国が仲良くしてくれることを私は願っています。
インターネット世界市民。感動によって世界世論が動く
竹島・独島問題にしても、私は他国と積極的に紛争してでも領土問題を解決しろと願っているわけではありません。むしろその逆で、あいまいなまま未来に解決をゆだねた方がいいと思っています。国家なんてものは共同幻想で、金銭と同じで頭の中の虚構にすぎず、未来の国境線は今とは違っているだろうと思っています。
私はインターネット世界市民といった未来を予想しています。国際企業・外国株式投資や仮想通貨、インターネットで電子投票できるようになれば、やがて人間は国家の枠を飛び越えて個人どうしが繋がることができるでしょう。正直、あまり日本という国にこだわるのは道を誤る元だと思っています。それが太平洋戦争の教訓ではないでしょうか。
独立した個々の人間が、この地球上をひとつの祖国として、列島も半島も関係なく生きていく。未来の世論は、ネット空間において、世界の関心を集め、ひとりひとりの感動によって世界世論が形成されるだろうと予想しています。何人だとか、肌の色とか関係なく、個人として生き方を選択する未来がきっと来ます。
無人島がどこの国に帰属するかなんて、将来、世界市民がみんなで電子投票して決めればいいではありませんか。
そしてその頃には電子投票さえする必要がない未来であってほしいと思っています。
最後に、我が第二の故郷・韓国ソウルに向けて、心からの愛とエールをおくりたいと思います。いつかまたきっと遊びに行くよ。
私にとって韓国は「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」だから。
2024年2月26日
アリクラハルト
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旅人が気に入った場所を「第二の故郷のような気がする」と言ったりしますが、私にとってそれは韓国ソウルです。帰国子女として人格形成期をソウルで過ごした私は、自分を運命づけた数々の出来事と韓国ソウルを切り離して考えることができません。無関係になれないのならば、いっそ真正面から取り組んでやれ、と思ったのが本書を出版する動機です。私の第二の故郷、韓国ソウルに対する感情は単純に好きというだけではありません。だからといって嫌いというわけでもなく……たとえて言えば「無視したいけど、無視できない気になる女」みたいな感情を韓国にはもっています。
【本書の内容】
●ソウル日本人学校の学力レベルと卒業生の進路。韓国語習得
●関東大震災直後の朝鮮人虐殺事件
●僕は在日韓国人です。ナヌン・キョッポニダ。生涯忘れられない言葉
●日本人にとって韓国語はどれほど習得しやすい言語か
●『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』南北統一・新韓国は核ミサイルを手放すだろうか?
●韓国人が日本を邪魔だと思うのは地政学上、ある程度やむをえないと理解してあげる
●日本海も東海もダメ。あたりさわりのない海の名前を提案すればいいじゃないか
●天皇制にこそ、ウリジナルを主張すればいいのに
●もしも韓国に妹がいるならオッパと呼んでほしい
●「失われた時を求めて」プルースト効果を感じる地上唯一の場所
●「トウガラシ実存主義」国籍にとらわれず、人間の歌を歌え
韓国がえりの帰国子女だからこそ書けた「ほかの人には書けないこと」が本書にはたくさん書いてあります。私の韓国に対する思いは、たとえていえば「面倒見のよすぎる親を煙たく思う子供の心境」に近いものがあります。感謝はしているんだけどあまり近づきたくない。愛情はあるけど好きじゃないというような、複雑な思いを描くのです。
「近くて遠い国」ではなく「近くて近い国」韓国ソウルを、ソウル日本人学校出身の帰国子女が語り尽くします。
帰国子女は、第二の故郷に対してどのような心の決着をつけたのでしょうか。最後にどんな人生観にたどり着いたのでしょうか。
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