オランダ人が英語が得意なのは、言語が似ているから
私の英語の先生はオランダ人です。英語が母国語のかたではありません。第一言語が英語じゃない人に英語をならって大丈夫かって? まあ、私のレベルでは問題ありません。スローでクリアに喋ってくれるので、むしろアメリカ人の英語より聞き取りやすいです。
沢木耕太郎の『深夜特急』で、沢木は世界中のバックパッカーのドミトリーで一緒になるのですが「オランダ人はいつも英語がうまかった」と書いています。なぜそうなのかというと、オランダ語と英語がとてもよく似ているからです。うらやましい限り。
日本語と韓国語。英語とフランス語。どっちが近い言語か? 似てるのはどっちか。
そんなオランダ人の英語の先生。日本女性と結婚して、もう十年以上日本に住んでいます。だから日本語をそこそこ喋れるのですが、漢字は書けません。勉強したけど諦めたそうです。
しかし我らは日本人は漢字を理解できます。中国人と筆談ができます。
連想ゲームみたいで、筆談っておもしろい
中国を旅していた時のことです。私はタクシーに乗って「to the station please」と目的地を告げました。ところがこの中国人タクシー運転手、ステーションという意味が理解できないようなのです。「ステーション」「station!」連呼しましたが、わかってくれません。
わたしはほとほと困り果てました。ステーションなんて誰でもわかる言葉だと思い込んでいたのです。ほかにどんな言葉で言い換えたらいいのでしょう。もちろん中国語はまったく喋れません。
私は自分のノートを取り出して漢字を書きました。
【駅】
ところが、現代中国では【駅】という漢字は使わないみたいで、これでもダメでした。通じません。あとで知ったのですが【站】という漢字を使います。
私はむきになって、あらん限りの思いついた漢字をノートに書いてみました。
【電車・停留所】【列車・停車場所】【連結車両】【人民乗換】【北京行・連続車】とメチャクチャに書いていきました。
するとどの言葉がヒットしたのかわかりませんが、中国のタクシー運転手はこっちの意図を読み取ってくれて、ちゃんと駅へとのせて行ってくれました。
ちょっと連想ゲームみたいで、筆談っておもしろいなあ、と思ったものです。
欧米人には無理でも、日本人なら注文できる
同じく中国を旅していた時。屋台で肉まんを頼んだことがありました。私は英語の授業で、この時のエピソードを話したのですが、たぶんオランダ人の先生だったら、スムーズに注文することは無理だったでしょう。なぜって屋台のメニューは店の奥に、オール漢字で表記されているだけだったからです。
英語のメニューなんてあるわけがなく、漢字がわからなかったら、何の料理なのかまったくわかりません。しかし私たち日本人には、先のタクシーの運転手のエピソードとは逆に、なんとなくイメージがわかるのです。

ああ、これは生姜とタケノコが入っている豚まんなんだな、とか。ネギ入りの牛まんだな、とか、漢字からわかります。
屋台なので、指さし注文しようにも看板メニューが遠くて、しっかりと指で示して伝えられません。読み上げられればいいんですが、それもできないし……だからこれも紙に書いて注文しました。
ただ看板メニューを写しただけですが、たぶんオランダ人先生にはこれもできないでしょう。私たち日本人はベースとなる文字を知っているから、簡単に中国漢字を模写することができますが、ベースがないと模写も簡単ではありません。ギリシア文字やロシア文字をサクサク模写できないでしょ? それと同じです。
日中は漢字という偉大な遺産を共有している
とかく対立しがちな日中ですが、漢字という偉大な遺産を共有しています。それだけでも西欧人よりも親近感がわいてきませんか?
海外旅行に英語は万能ではありません。ステーションもわからない人に、どうやってコミュニケーションしたらいいんだろうと困っていたら、なんと漢字がありました。
中日の歴史というものを痛感した瞬間でした。