- 【相続・実体験】真っ先にすべきことは「法定相続情報一覧図」作成と
- 生命保険(死亡保険金)の受け取りは比較的はやく進む
- 【遺産分割協議書】相続人全員の押印と印鑑証明が必要
- 叔父叔母の遺産を甥、姪が代襲相続する場合
- 「法定相続情報証明制度」とは? 法定相続情報一覧図があれば戸籍謄本や住民票の提出をしなくてもいい
- 「法定相続一覧図」の作成方法と注意点
- 叔父の死。甥、姪の代襲相続のケース
- 死んだ人の名前は書かない。実名は被相続人(本人)と相続人のみ
- 住所の「の」が抜けているとイチャモンをつけられる
- 隠し子、異母兄弟、異父兄弟はいないか? 戸籍が抜けていると却下
- 相続発生時に死亡していないか? 戸籍の発行日に注意
- 法定相続情報証明制度は厳密な書類審査で却下される場合がある
- 法務局の仕事は遅い。
【相続・実体験】真っ先にすべきことは「法定相続情報一覧図」作成と
親が亡くなり、遺産相続人となった場合、真っ先にすべきことは何でしょうか?
死亡届の提出? その通り。そりゃあそうです。それをやらなければ火葬することもできません。あたりまえのことです。ここでは役所の手続きではなく、遺産相続を主語として述べています。遺産相続に関して真っ先にすべきことは何でしょうか? 遺産分割協議書の作成? 人によってはそうかもしれません。相続人が一人の場合はそれさえ必要ありません。
ここでは実体験から法務局に提出する「法定相続情報一覧図」の作成と認証を最初にすべきこととしてオススメしています。すくなくとも私の実体験としてはそうでした。
そして叔父さん叔母さんの遺産相続を甥、姪が相続する場合の代襲相続のケースについて法定相続情報一覧図の書き方について解説しています。
生命保険(死亡保険金)の受け取りは比較的はやく進む
死亡届の提出や、葬儀費用の支払いなど、お金が発生しない手続きや、お金を支払うケースについてはサクサク進むのが相続です。それに対して遺産を受け継ぐなどお金を受け取るケースでは遅遅として進まないのが相続というものでした。
お金を受け取る系の事務処理の中で、遺産相続を経験したものの実体験として、初期に手続きが終わるのは役所への葬祭費(埋葬料)の請求などです。これは本人の死亡を条件に手続きが開始できるためすみやかに手続きが完了できます。
老齢年金の最後の一回分の請求なども、手続きはサクサクと進みます。同居の親族しか請求できないなどの条件があるため、相続人全員の同意が必要ないからです。
みなさんの中には、お役所は手続きが遅く、民間は手続きが早いイメージがある人も多いと思いますが、こと遺産相続に関しては真逆になります。役所の手続きは早く、銀行や証券会社の手続きは遅遅としてすすみません。
ただその中でも「生命保険金の受け取り」は比較的早く進めることができます。死亡保険金の受け取り人はたいてい誰か一人に決まっているため、相続人全員の同意が必要ないためです。そもそも死亡保険金は相続財産にカウントされないルールなので、遺産分割協議書の対象ですらありません。
【遺産分割協議書】相続人全員の押印と印鑑証明が必要
ウチの相続の場合、遺産分割協議書の中で、遺産はすべて現金化して、換価分配しようということになりました。株式や投資信託などもすべて現金化して分割することになりました。そして証券会社で投資信託を現金化する手続きから始めたのですが、「相続人全員の同意」がないとほとんど手続きを進めることができませんでした。遺産相続でお金を受け取る場合、基本的には「相続人全員の同意」が必要になると考えていいでしょう。それがないと手続きがまったく先に進みません。この「相続人全員の同意」というのは「遺産分割協議書」&「相続人全員の実印押印と印鑑証明」が証拠書類になります。こいつがないと手続きがぜんぜん進みません。
遺産分割協議書には決まりきった書式がありませんのでいちおう「何をどう書いてもいい」ということになっているのですが、実はそうはいきません。「すべての遺産をAが受け継ぐ」のようなあいまいな表現だと銀行や証券会社はいい顔をしませんでした。実際に私も銀行や証券会社でのヒアリングで「一円単位まで金額まで書く必要はないが、せめて●●銀行●●支店ぐらいまでは具体的に書いてください」と注文をつけられました。参考にしてください。
叔父叔母の遺産を甥、姪が代襲相続する場合
叔父・叔母の遺産を甥・姪が代襲相続する場合、
①叔父・叔母(被相続人)に配偶者、子供がいないことを証明するために被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要
②被相続人の父母が亡くなっていることと、すべての子供(被相続人の兄弟)を洗い出すために、被相続人の父母両方の出生から死亡までの戸籍が必要
③甥・姪が代襲相続するためには、被相続人の兄弟が亡くなっていて、そのすべての子供がわかるようにする必要があるため、被相続人の兄弟の出生から死亡までの戸籍が必要。
金融機関に提出するのは、遺産分割協議書だけでは書類が足りません。そこにサインした人が法定相続人全員であるのか、金融機関は確認しなければなりません。すべての法定相続人が同意していることが証明されなければならないのです。だからそれがわかる証拠が必要なのです。そのために被相続人の出生から死亡までの戸籍などが必要となってくるのです。叔父さん叔母さんの遺産を甥、姪が代襲相続する場合だと上記のように必要資料は膨大な厚みとなります。これら有料の資料をいちいち金融機関に原本提出していたら、バカにならない時間と費用がかかります。
「法定相続情報証明制度」とは? 法定相続情報一覧図があれば戸籍謄本や住民票の提出をしなくてもいい
証券会社や銀行には「遺産分割協議書」を提出するだけでは不十分です。三人兄弟なのに二人ぶんのハンコしか押してないのは論外として、腹違いの兄弟や隠し子などすべての相続人の同意がないと手続きが先に進みません。
これを証明するのが被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本なのですが、この書類の取得に結構なお金がかかります(相続人の戸籍や住民票なども求められます)。多くの銀行、証券会社と付き合いがあると、膨大な書類と金額が必要になってきます。この手間を簡略化するためにできたのが法務局が無償サービスで行っている「法定相続一覧図」です。一度、法務局にすべての必要書類(被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本。相続人の戸籍や住民票など)を提出して、法務局が「法定相続一覧図」に間違いがないことを確認すると、一覧図に法務局の認印を押してくれます。そしてその写しを発行してくれます。
金融機関は法務局お墨付きの「法定相続人情報」があれば、いちいちすべての戸籍の提出や相続人のチェックなどをしなくなります。法務局でちゃんと確認しましたよ、というお墨付きがあるからです。この「法定相続一覧図」があれば証券会社などに戸籍謄本などを提出しなくて済むようになります。「法定相続一覧図」を一度作ってしまえばその後の相続が格段に楽になります。相続人の数が多ければ多いほど「法定相続一覧図」を先に作った方がいいでしょう。
「法定相続一覧図」の作成方法と注意点
法務局に「法定相続一覧」申請するときには、戸籍謄本などの原本還付をお願いしましょう。とにかく遺産相続において原本は返却してもらうことです。その原本は他でも使いますから。銀行や証券会社なども昔は原本提出を義務づけていたようですが、最近では原本を確認して、その場で自社でコピーをとって原本は返却してくれるケースが多いようです。戸籍などは最悪また役所で発行してもらえますが、遺産分割協議書などは原本は一部しかないのでどのみち原本を提出するわけにはいきません。
私は二度ほど「法定相続情報証明制度」を利用させてもらったのですが、いずれも法務局のチェックを一度では通りませんでした。それほど「法定相続情報証明制度」のチェックは厳密なものです。私の失敗をここに書き残しますので、これから作る人は参考にしてください。
叔父の死。甥、姪の代襲相続のケース
親が死んで子供が相続するような一般的なケースは比較的簡単です。法務局に様式および記載例があります。そこに自分の名前や住所を記入するだけです。
ところがウチの場合は叔父の死亡で甥と姪が代襲相続という特殊なケースだったので、適切な様式も記載例もありませんでした。
普通、相続財産は妻子のもとに行くのですが、叔父は独身で子供はありませんでした。この場合、父母に遺産が行くのですが、父母も老齢で死んでいます。この場合、叔父の兄弟に遺産が行くのですが、兄弟も全員亡くなっていました。甥と姪がいますので、甥と姪が代襲相続することになったのです。
さて、この場合の法定相続一覧図はどう書いたらいいのでしょうか?
死んだ人の名前は書かない。実名は被相続人(本人)と相続人のみ
「法定相続情報一覧図」は自分で作成する必要があります。法務局は調査して認印を押してくれるだけです。私の場合、法務局に相談して「法定相続情報一覧図」を完成させました。そのときのノウハウをここに書き残しておきます。
まず被相続人(本人)に妻子がいないことは、一覧図上は系図を示す線を引っ張らないだけで済みます。次に父と母ですが、一覧図に「父」「母」とのみ書けばOKでした。叔父の父母ですからもしも生きていたら100歳を超える年齢です。常識的に死亡していると考えられるので死亡日も記入しませんでした。父母の欄をしっかりと書かなければならないとすると、法定相続情報が三層(父母、本人、甥と姪)になってしまうので困ったことになるのです(様式、記載例は二層が前提となっている)。しかし父母と書くだけで済みました。
叔父の兄弟については、死亡日をしっかりと記入します。和暦(令和×年×月×日)を使わないと駄目です。お役所の文書では西暦は使いません。亡くなっている人の名前は書きません。「被代襲者」とのみ書きます。
そして代襲相続人である甥と姪の住所と生年月日、名前をしっかりと記入します。
簡単そうに見えるでしょ? でも私はこの法定相続情報一覧図を認めてもらうために二回もはねられてしまいました。そう簡単ではないのです。
次に、私が受けた役所のイチャモン(厳密なチェック)を以下に書き記します。
住所の「の」が抜けているとイチャモンをつけられる
みなさん。住所と地番は違うって知っていましたか? 私は知りませんでした。この手の言葉づかいを俗に「お役所文学」と揶揄したりしますが、ほんとうに法務局などの役所では独特な言葉づかいをするのです。
地番 ××1丁目2番地3
住所 ××1丁目2番地の3
「同じじゃねえか! 郵便届くぞ! 頭、使えや! 人間でしょ?」とツッコミたいところですが、役所にはいっさい通用しません。法定相続情報には住所を記入する欄があるのですが、私は「の」が抜けている、と指摘を受けて却下されました。普段書いているとおりに気楽に書いたらダメです。住民票とピッタリ一字一句同じ住所を書かないと却下されます。「の」があるかないかは役所では死ぬほど大事なことなのです。
隠し子、異母兄弟、異父兄弟はいないか? 戸籍が抜けていると却下
私の場合、祖母(被相続人の母)の戸籍の途中一部が抜けていたために却下を食らいました。要するに遺産相続人に該当する「隠し子」「異母兄弟」「異父兄弟」がいないことを証明しないとならないのです。したがって父母の戸籍は通しで欠けていては通りません。
相続発生時に死亡していないか? 戸籍の発行日に注意
私の申請の場合、遺産相続が一カ月おきに連続して起こったため、取得した戸籍が流用できると思っていました。さすがに三カ月以上前の古い戸籍だったら取り直したのですが、一カ月前のものなら使用できるだろうと思いました。ところが法務局で却下されました。
なぜダメなのか法務局に理由を聞いたところ、「被相続人の死亡日前の戸籍では、相続発生時に相続人が生きていたことが確認できないから」という理屈でした。
「被相続人の死亡日以後の戸籍なら、たしかに相続発生時に相続人が生きていたことを確認したと言えるでしょう。でもオタク(法務局)が認印を押す前日に相続人は事故で死んでいるかもしれないじゃないですか。それなのに法定相続一覧図に認印を押すんですか? そういうことは言い出したらキリがないんじゃありませんか?」ムッとしてこのように反論しようかと思ったのですが……やめておきました。ちょっと反論したぐらいでお役所のルールが変わるとは思えません。高い有料サービスならば文句を言ったかもしれませんが、法務局の法定相続情報証明制度は無料サービスです。相続書類が多くて難儀している日本中の相続人の便宜のために無料サービスでやってくれているので、あまり文句をいうべきではないと思い、黙りました。
法定相続情報証明制度は厳密な書類審査で却下される場合がある
このように法定相続情報は非常に便利な反面、審査がイチャモンレベルで厳しく、書類が一度で通るとは限りません。却下されると、その都度電話がかかってきて、郵送もしくは書類持参しなければなりません。その間、法務局の仕事は止まっているわけなので、急がないとそれだけさらに時間がかかります。
法務局の仕事は遅い。
法務局の法定相続情報証明制度は、相続のための戸籍など原本提出を求める金融機関が多くて難儀している日本中の相続人の便宜のために無料サービスでやってくれていることです。実際、これが通ってくれると遺族の私も助かることなので、あまり文句をいうべきではないと思い、対面で文句を言うのは避けたのですが、ブログなのでここでは言わせてもらいましょう。法定相続情報一覧表の書き方を解説したこのページを法務局の人が読むことはないと思いますので。
法務局(お役所)では決裁というシステム(稟議書という合議制)で仕事をしているので、決裁の途中で上司の指摘で書類が通らないと、何回かやりなおしになります。
実際に私も二度続けて書類の再提出を命じられました。その都度、切手代がかかっています。「一度で指摘してくれりゃあいいじゃないか」と文句を言いたかったのですが言いませんでした。決裁の中で上司に指摘されて書類が差し戻されたものなので、担当者に悪気はないのです。
また、法務局の仕事は遅いです。なんでこんな簡単なことにそんなに時間がかかるのか、と思うぐらい仕事は遅いです。住所の「の」の字を目を皿にしてチェックしているせいだと思いますが。
皮肉は別にして、他に本業があるんだろうことは想像できます。法定相続情報証明制度なんていうものは新しく増えた仕事で、たぶん政治家のつくったルールのせいで人は増えずに仕事だけが増えたんじゃないかと推測します。本来、やりたくない仕事、あるいは自分たちの本来の仕事じゃないと考えているから、出来あがるまでおそろしく遅遅としているのだと思います。
このように法務局の法定相続情報証明制度は、すぐにはできません。審査も厳密で厳しいし、そもそも彼らの仕事が遅いので。
相続財産に株式や投資信託などがあり、それらが下がり基調の場合、急いで売却して現金化したいと焦るのですが(私がそうでした)、売りたくてもそう簡単に金融機関は売らせてくれません。もともとが他人の財産だったものですから。
それを相続人だということでやっと引き継いで売却できるのですが、そのためには「遺産分割協議書」と「法定相続人情報一覧図」が必要になります。作成に時間がかかるのは法定相続情報証明のほうです。したがって相続が発生した場合、まっさきに片づけるべき書類は法務局の「法定相続人情報」ということになります。これがないとすべての他の仕事も途中で止まってしまいます。あるいはバカにならない手間とお金がかかります。
だから法定相続情報証明をまっさきにやるべきです。参考になさってください。
【相続・実体験】株式・投資信託の評価基準日。死亡日がはっきりしない場合の税務署に申告する金額は?