YouTubeは自分に心地の良い動画ばかりが見つかるが、必ずしも世界を映し出していない
先だって東京都知事選挙がありました。現職が立候補した場合、負けた例がないことは知っていましたが、私は石丸伸二氏が勝つのではないかと思いました。だってオレのYouTube、石丸さんの応援一色だったんだもの。まるで石丸が選挙を制覇したかのような勢いでしたよ。
ところが開票してみると現職の小池百合子さんが100万票以上の大差で圧勝です。私は唖然とすると同時に猛省しました。YouTubeは必ずしも世界を映し出していないんだな、と。
いけないのは個人の趣味嗜好にあわせて動画をレコメンドしてくるYouTubeのパーソナライズドです。これによってYouTubeでは視聴者の趣味嗜好にあった動画ばかりが上がってくることになり、YouTubeを開けば自分に心地の良い動画ばかりが見つかります。しかしこのことによって世の中が見えなくなっているのだな、と都知事選の結果から反省したのでした。
個人の趣味嗜好にあわせて動画をレコメンドしてくるYouTubeのパーソナライズドがイカンのだ
なんでこんなことが起こったのかというと、元をただせば、安芸高田市の市長だった石丸伸二が市議会と劇場型の討論をしているのが面白くて、一種のコンテンツとして見ていたのがきっかけだろうと思います。その彼が市長をやめて東京都知事選挙に立候補したのでネット界隈では彼の動画制作がさかんになりました。東京都知事は日本有数の権力者ですから、地方の首長とは比較にならないほど有象無象が群がって多大な関心をよせてきます。公式・非公式問わずたくさんの人が都知事選の動画を作成しました。それらの石丸伸二系の動画が私のところに「あんた、石丸さんの動画、好きでしょ? これまでも視聴してたものね。知ってるんだから」とAIチョイスによっておすすめされてきたものです。
私も嫌いじゃないからおすすめされた動画をいくつか見ているうちに「ほら見なさい。あたしのおすすめは完璧じゃないの。あんたはあたしのおすすめ動画だけ見ていれば、あなたを全肯定してくれる世界で安楽に過ごせるんだから、他の動画なんて見る必要ないのよ」とばかりに石丸の動画ばかりがレコメンドされるようになったのでした。
気づけば私のYouTubeのホームにあがってくる動画は石丸のものばかり。これでどうして小池や蓮舫が勝てるでしょうか。石丸が勝つに決まっています。だって石丸の動画で世界(オレのYouTube界)は埋め尽くされているんですよ。
ところが現実は……100万票差です。YouTubeばかり見ていると、いかに世界を読み間違えるか、といういい見本でしょう。
YouTubeばかり見ていると、自分を肯定する心地よい世界に安住してしまう
YouTubeばかり見ていると、自分を肯定する心地よい世界に安住してしまい、そこから抜け出せなくなります。これはかなりやばいことです。
かつて私は親のとっていた朝日新聞をいつもイライラしながら読んでいたものでした。なんでこんなバカ記事ばかりなんだろう。どうしてこんな論調なんだろう。どうして日本の新聞が日本を否定するんだろう。と、いつもムカつきながら新聞を読んでいました。自分と反対の意見を聞いたり読んだりしなければならないのが世界というものです。石丸が勝つと思っても小池が勝つのが世界というものです。
しかしパーソナライズドされたあなたのYouTubeにはこのような自分の興味のない世界や不愉快な意見はやがて淘汰されてレコメンドされなくなります。結果、とても心地よいパーソナルスペースが誕生します。
ずっとその世界ですごしていると、それが世界なのだと勘違いしてしまいます。しかし必ずしもそれは世界を映し出していません。映し出しているのは「あなた自身」でしかありません。
東京都知事選を通してそんなことを思い知ったのでした。私のYouTubeにはロシア・ウクライナ戦争の最新の戦況が次から次へと報告されますが、世の中の人がみんな戦争に興味を持っているかと思ったらそれは大間違いです。それはパーソナライズドされた「私の世界」でしかないのでした。
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このブログの筆者の著作『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』
戦史に詳しいブロガーが書き綴ったロシア・ウクライナ戦争についての感想と提言。
『軍事ブロガーとロシア・ウクライナ戦争』
●プーチンの政策に影響をあたえるという軍事ブロガーとは何者なのか?
●文化的には親ロシアの日本人がなぜウクライナ目線で戦争を語るのか?
●日本の特攻モーターボート震洋と、ウクライナの水上ドローン。
●戦争の和平案。買戻し特約をつけた「領土売買」で解決できるんじゃないか?
●結末の見えない現在進行形の戦争が考えさせる「可能性の記事」。
ひとりひとりが自分の暮らしを命がけで大切にすることが、人類共通のひとつの価値観をつくりあげます。それに反する行動は人類全体に否決される。いつかそんな日が来るのです。本書はその一里塚です。
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