海外旅行のアテンド・添乗員・ツアコンになる資格、難易度。注意点
知り合いの娘さん(仮にA子ちゃんと称す)が、海外好きで、ツアーコンダクター(添乗員・アテンド)になりたいのだそうです。そこで海外経験が豊富と思われているわたしに、いろいろと情報を求めて聞いてきました。就職希望の第一候補はHISなんだとか……お世話になったなあHIS。
おおっ、よくぞ聞いてくれました。わたしはホノルルとラスベガスとニューヨークを別個に数える計算方法ならば世界100カ国以上を旅したドリフターズ・ワンダラーズ・エグザイルスで、しかも海外ツアーコンダクターの女性と付き合っていたことがあります。
リアルなツアコンさん以外で、質問する相手としては、わたしほど最適な人間はいないのではないでしょうか??
うん……わたしに言える最大のチップスは「旅というのは、アテンドではなくお客様として行くのが一番」だというです。これが結論。これこそが真理だ!
このコラムではツアコンになるために必要な資格と、ツアコンの元彼女に聞いたよもやま話について書いています。
ツアコンに資格は必要か? 必要です。
海外旅行の添乗員には資格が必要です。「総合旅程管理主任者資格」というのを取得する必要があります。旅行業法で定められているのです。相談された娘さんは「旅行業務取扱管理者」の資格をすでに取得しています。
「旅行」を仕事に生きていく。観光業に就職するための進路とは?
「旅程管理主任者」と「旅行業務取扱管理者」は別ものです。「旅行業務取扱管理者」はどちらかというと営業所の内勤向けの資格です。ツアーの企画をしたり、お客様にレコメンドしたり、契約したり手配したりするための仕事ですね。この資格はA子ちゃんがのぞむツアーコンダクター必須の資格ではありませんが、旅行会社に就職する際に圧倒的に有利になる資格です。
これに対してアテンドに必要な資格は「旅程管理主任者」です。現地での時間管理や次の予約の確認などの旅程管理、お客様のアテンドです。
資格の難易度は「旅行業務取扱管理者」の方が高いので、娘さんは後から「旅程管理主任者」の資格を取得すればいいのではないかと思います。一発試験というよりは研修タイプで取得する資格です。旅行会社に就職できれば、会社の補助を受けて「旅程管理主任者」資格を取得できるかもしれません。個人でも所得できますが、お金がよけいにかかります。
新卒で最初からフリーのツアコンになるってことは考えにくいので(私の元カノはフリーのツアコンでした)、就職の第一関門は何と言っても旅行会社への就職です。
皮肉なことですが、資格の難易度は「旅行業務取扱管理者」(内勤)の方が上ですが、仕事の苦労は「旅程管理主任者」(外勤)の方が上ではないかと思います。なぜならイレギュラーに対応しなければならないからです。
あなたが旅程管理主任者なら、こんなトラブルにどう対応しますか?
もしもあなたが旅程管理主任者だったら、たとえば観光地で集合時間にツアー客が集合しなかったらどうします? わたしだったらパニックになりそうですね。
わたしが【お客様】として体験した実話です。
お客様が旅行中にパスポートをなくしたら、どうします? バックアップ(誰かの助け)なしにはどうにもなりません。これもわたしが【お客様】として体験した実話です。
もしも自分だったら、経験豊富な旅人として、自分ひとりだったら何とかしてみせます。
でも、他人のお世話はたいへんです。正常な人と、イレギュラーな人の両方のお世話をしなければならないのは、相当に腕が必要になります。っていうか、誰かの助けがないと無理ではないでしょうか。だって分身できないもん。
イタリアのミラノでは完全予約制の絵画鑑賞『最後の晩餐』がツアーに組み込まれていたのですが、なんとバスが道に迷って予約時間を過ぎてしまいました。その時は、ツアコンがバスの通路で土下座していました。
ミラノ『最後の晩餐』ツアコン土下座事件。フェラーリバスが鑑賞予約時間に遅刻してしまったらキャンセルか
土下座してもなお「一生に一度のつもりで来ているのに、ありえない」とお客さんたちは添乗員を憤慨、罵倒していました。「青の洞窟」は天候次第で見られないこともあると納得していましたが、「最後の晩餐」はぜったいに見られると思っていますから。道に迷って予約時間に間に合わないなんてありえないと怒る気持もわかります。
カンボジアで急に深夜に体調を崩した人がいたらどうします? 英語がペラペラでもどうしようもないわな?? 私は旅行中に骨折したこともあります。
大手旅行会社ほど海外旅行に添乗できる可能性はすくない
海外添乗員になりたくて、大手旅行会社に勤めようと考えている人はいないでしょうか?
皮肉なことに、大手旅行会社ほど海外旅行のツアコン業務ができる可能性は減ってきます。
大手旅行会社になればなるほど、仕事は細分化、専門化されているために、就職したのはいいけれど、経理や企画ばかりやらされて、すこしも海外に行けない可能性があるのです。旅行業にたずさわれればサラリーマン生活でもいいという人ならば大手旅行会社もいいでしょうが、ぜったいに海外旅行の添乗員になりたい場合は注意が必要です。とくに大手の場合は添乗員業務を業務委託している場合が多いからです。現地ガイドやアテンドは社員ではなく外注してしまっているのです。
実際に海外旅行の添乗員には、わたしの元カノのようにフリー(添乗員派遣会社に登録)の人が多いのです。彼女の身分的にはよく言えば「カリスマ添乗員」でしたが、悪く言えば「ハケン、外注」でした。
その点、中小の旅行会社の場合は、なんでもかんでもやらされる場合も多く、企画から販売、添乗までやらされることもあるそうです。仕事が細分化されていないからです。
ツアコンのみを仕事にしたい場合には「添乗員の派遣会社に登録」を選ぶのがいいでしょう。でもイレギュラーに対応するのは、そうとうな人間力が必要ですよ。
正直、わたしにはできません。
海外ツアーコンダクターとお付き合いする方法? わたしの場合
ツアーコンダクターをしていたわたしの元カノですが、彼女のアパートの押し入れの中にはボロボロになるまで読み込んだ「地球の歩き方」が全セットずらーっと並んでいました。本屋、図書館以外であれほど旅行本を揃えている個人の本棚を見たことがありません。
カリスマ添乗員だった彼女とわたしが付き合うことになったきっかけですが、それは「忘れ物」でした。わたしは彼女のツアーのお客さまでした。しかしホテルに「忘れ物」をしてしまったのを空港で気づいたのでした。それはわたしにとっては大切な思い出の品でした。
そのことを相談したところ、彼女は偶然にも来週もまた同じ日程のツアーの仕事が入っていました。同じホテルに泊まることから、彼女がホテルに電話して「忘れ物」を破棄せずに預かってもらうことになったのです。彼女はホテルの従業員とも顔なじみなので頼み事は問題なく受け入れられました。そして数週間後、日本に戻った彼女と会って「忘れ物」を受け取りました。そのお礼に(もちろんわたしのおごりで)飲みに行ったのがきっかけです。
旅行もいいが、人生のパートナーがちゃんといることが重要
当時、彼女はいろいろな旅行会社から引っ張りだこの人気添乗員だったので、国内にいるよりも海外にいるほうが長いような生活をしていました。そして当然のように彼氏がいませんでした。だってほとんど会えないんだもの。放置されすぎたら彼氏だって他の会える子に行ってしまいますよ。それが人の世の常でしょう。わたしもそれが理由で別れました。
その後の彼女ですが、激務のために海外添乗員生活にはピリオドを打って、実家に戻ってしまいました。もう海外旅行はウンザリするほど行きつくしたのでしょう。実家の東北地方の市役所で観光客を掘り起こして集客する仕事をしていると聞きました。もちろん非正規職員です。
その彼女ですが、あんまり幸せそうには見えませんでした。日本に帰ってきても、彼女を待っている人が誰もいない生活というものは(わたしにも責任がありますが)。海外旅行もいいのですが、人生のパートナーがちゃんといることが重要なんだと思います。その激務ぶりは、結婚しても続けられるようなあまい仕事スタイルではありませんでした。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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私は世界中を旅してきましたが、それは常に恋人がいたからです。旅行も大好きでしたが、それよりも大切なことがありました。人生のパートナーというのは生きていく土台です。その土台がなかったら、他の何かをやる気になりませんし、やったとしても楽しさは半分以下でしょう。すくなくともわたしはそう思っています。
【結論】添乗員よりも、客として行くのがいちばんいい
その添乗員彼女ですが、海外ツアーに単独で参加している男性に、夜に誘われるようなことは頻繁にあったそうです。
また、海外ツアーも、会社単位の社内慰安旅行のアテンドを頼まれることも多く、ワンマン社長の社内旅行などで不手際があると一般客では考えられないほどきびしく怒られたこともあったそうです。土下座させられた(自分からした)こともあったと聞きました。
添乗員を希望する人は、お金をもらって海外旅行できるなんて、という動機の人が多いと思いますが、そういう人にひとこと述べておきたいと思います。このように海外旅行の添乗員は「お金をもらって旅行に行ける」なんて思っていたら、とんでもないしっぺ返しを食らいますよ。
結婚式の花嫁の介添え人は、幸せな気分をおすすわけいただけるでしょうが、結婚する本人ほど幸せではありません。旅はアテンドではなく、お客として行くのがいちばんいいのです。このことだけは覚えておいてほしいと思います。
それでも海外旅行の添乗員になりたいと思うなら、ガンバレヨ、A子ちゃん!!