ドラクエ的な人生

不老不死の薬『マクロプロスの処方箋』カレル・チャペックの内容、魅力、感想、書評

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カレル・チャペックの戯曲『マクロプロスの処方箋』

ここではカレル・チャペック『マクロプロスの処方箋』の内容と、魅力。書評、感想をしています。

なぜこの本を読もうかと思ったかというと、すっかりカレル・チャペックのファンになってしまったからです。チャペックの他の書評についてはこちらをご覧ください。

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『マクロプロスの処方箋』の内容、魅力、感想、書評

子供? どうしてご存知なんです?

だいじょうぶ、足りているから。足りているという言葉を使うのは貧乏人だけ。裕福な人間は満足を知らない。

どうして私を子ども扱いするのです? あなたの近くにいると子供のように感じる。

→ 謎の女エミリア。彼女こそが作品のキーマン。人間と対比することで人間を浮き彫りにする存在です。彼女の謎が戯曲冒頭をぐいぐい引っ張ります。

女が人を好きになる、それがどういうことか、あなたはわかってない。恋って自尊心を捨てることなの。誰かを愛したら自分のことなど顧みず召使のように愛する人を追いかけるはず。自分を捨て、相手と一緒になって。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

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すべてを彼女のもとに置いてきました。そのあと、生きた感じはしなかった。

おやおや坊やは父さんが怖いの。それは単なる形見なの。特段価値のないもの。ただ喉から手が出るほど欲しいの。

→ エミリアは時代感覚の合わないことを口にします。そうです。彼女は不老不死なのでした。不老不死の薬の処方箋こそが作品タイトルの「マクロプロスの処方箋」です。

つまり年齢は三十七歳ということですか? 三百三十七歳よ。

マクロプロスの処方箋。私の子供がどれだけこの世で駆けずり回っているかなんて知らないし、私はそれが欲しかった。もう私は終わりが近いから。もう一度試したいの。作り方が書いてあるの。人が三百年生きられるように、若いままでいられるように。

→ マクロプロスの薬は一回300年。しかし繰り返し飲めば永遠に生きることができるという設定です。

六十年という人生で、人は何ができる? 何を享受できる? 自分が植えた木の果実を手にすることはできないのか? 自分という作品を完成できず、自分という見本を残すこともできない。ちゃんと生きるよりも早く死んでしまう。

喜びを感じる時間もなければ、ゆっくり考える時間もなく、日々の糧を得るためにあくせく働くばかりで余計な時間は全くない。

→ 映画『銀河鉄道999』のことを思い出しました。銀河鉄道999では、不老不死の代わりに機械化人間というのが登場します。こちらもメンテナンスさえすれば永遠に生きられるという設定です。しかし永遠に生きられることになった機械化人は人間らしい心を失い、人狩りをして楽しむなど、優しい心を失ってしまったのでした。

人間は亀やカラスを超えた存在であるはず。人生が短いのはあまりにも不公平だ。

ありがたいことだ。三百年も、事務員でありつづけたり、ストッキングを編み続けたりするのだから。

役立っている仕事のほとんどは人間が無知だからこそできているのかもしれんぞ。

私たちの社会制度は短命であることを前提としている。

小さなものは途切れることなく繁殖していく。大きなものだけが死をむかえる。力と能力を有するものだけが死ぬ。なぜなら替えが効かないからだ。

命の特権。長寿の貴族制度。

こんなに長く生きるべきじゃない。人間は耐えられなくなる。百三十年までは耐えられる。その後知る羽目になる。魂が死ぬのを。あとは退屈だけ。人間が良くなることはない。何も変えることもできない。何も起きない。あなたたちの生き方が軽やかに見える。

あなたたちから見ればすべてに価値がある。だって十分にそれを満喫することはないから。あなたたちは幸せなの。私にはわからないものを信じている。

戯曲のラストでマクロプロスの処方箋は若く美しい女の手で焼失してしまいます。

永遠の命が! 人類は永遠に探すことになる。ここに、ここにあったものを……

子供。それこそ、永遠の命だ。誕生のことを考えるのだ、死の代わりに。生は短くはない。生命の源になりさえすれば。

戯曲をハッピーエンドにするには、限りある命を積極的に肯定する、高らかに謳うしかありません。生命は有限だからこそ短いからこそ価値があるというわけです。

しかし退屈して心を喪失してしまったエミリアさえも、300年の薬の期限が来たときに、死ぬのが怖いために「もう一度試したい」と考えたのでした。

たしかに永遠に生きられるなら、今日という日を大切にする意味はないでしょうし、一生懸命生きる意味はないという理屈はわかる気がします。

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しかし堕落するなら堕落してもいいから、可能な限りは生きてみたいと思います。とくにこれからのデジタル革命は世界をどのように変えるかまったく予測もできません。スマホ以前の世界を私は知っていますが、このデバイスは世界を劇的に変えましたよ。でもこれで終わりじゃありません。科学はもっと世の中を変えていくでしょう。その姿を見てみたい気がします。

私もマクロプロスの処方箋が欲しい!!

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