ベトナムドン・パニック。桁が大きすぎて頭が真っ白で思考停止に……
ベトナムドンのパニック。……といったら、みなさんどういう意味か分かるでしょうか。
ベトナムドン・パニックとは、通貨の桁が大きすぎて頭が真っ白、思考停止になって計算ができなくなる症状のことです。
先日、ひさしぶりにベトナムに行ったのですが、またやってしまいました。
ユーロとベトナムドンでは通貨の単位が違い過ぎる
かつてフランスからベトナム経由で帰国したときのことです。パリでの2週間で私はすっかりとユーロを使うことに慣れていました。
2024年7月現在、1ユーロは174円です。この通貨レートだと普段の食事などでは3ユーロとか8ユーロとかしか使いません。ちょっと高めの1万円の食事をしたとしても57ユーロにしかなりません。
慣れるとわかるのですが、通常使うお金が手のひらの指の数以内におさまっていることは非常に便利です。1400円とかよりも8ユーロのほうが通貨が身近なものに感じられます。
しょせん人間は肉体を使って外界を認識しているからです。手のひらに収まるというのは合理的な考え方だといえるでしょう。
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ユーロとドンの通貨レートの差に愕然とする
ところがパリからハノイに飛んだら、私はあまりの通貨価値の差にパニックになってしまいました。
2024年7月現在、1ドンは0.0063円です。バナヒルズツアーを申し込んだとき、夫婦二人で二万円ほどかかったのですが、二万円というと317万ドンとかいっちゃいますからね。
さんびゃくまんですよ。三百万!(ドンだけど)
いやもう桁が大きすぎてわけがわかりません。ついさっきまでパリで7とか9とかいう数字で支払いをしていたのに、急に1,500,000とか言われても……いや、なんか超ボッタくられてないか、おれ??
きちんと支払って、お釣りをもらわなければならないのに、あまりに通貨の額が大きすぎて手が震えます。ボッタクリバーで支払いをしているような気分です。
支払いは英語でやりとりします。300,000だったら、スリーハンドレッド・サウザンド、と英語でいいます。現地のベトナム人も通貨の単位が大きすぎることは認識していて千円単位を省略して、スリーハンドレッドと言ってきます。
「なるほど300ね」と思ってると、隣のイロハさんが「30万だよ」と至極まっとうなことを教えてくれます。ところが1万ドン以下の買い物なんてまずないので慣れてくると「万」を省略して「30だよ」と教えてくれます。いや、教えてくれるのはありがたいんだけどさ(汗)。こっちはただでさえボッタクリバーで支払いしている気分なのに、もう30だか300だかわけがわかりません。頭の中は真っ白です。引き算なんてできません。完全に思考停止してしまいました。
円の世界からドンの世界に来ただけでも通貨パニックなんですから、ユーロの世界からドンの世界に来たら、あまりのことに思考停止してしまうというのをご理解いただけるでしょうか?
このように通貨の単位が大きすぎてパニックになるという症状のことをベトナムドン・パニックと私は呼んでいます。
通貨パニックを起こさないためには、頭の中で円に換算しないこと
このような通貨パニック(ベトナムドンパニック)を起こさないようにする唯一の方法は、現地の通貨のまま感じることです。頭の中でいちいち円に換算して考えないことです。私は英語の勉強をしているのですが、英語の勉強でも頭の中で和訳しているうちは初心者で、上級者は英語のまま理解すると言われています。その要領で、ベトナムドンだったら現地の相場観を現地の価格で感じることができればパニックにならずに済むでしょう。
……そうはいっても「言うは易く行うは難し」なんだよな。だって外国で買い物をするときって「値切れなかったけど、これでも日本で買うことを思ったら安いよな」という視点が必ずあるはずですから。
「日本で買うことを思ったら安い」を実感するためには、どうしても円に換算する必要があります。しかしそれをやっていると……頭の中が数千円の世界(日本円の相場観)に切り替わってしまうため、数百万円の世界(ベトナムドンの相場観)に震えおののいてしまうのです。
おれ、ぼったくられてないよね(泣)。