ドラクエ的な冒険の旅。トラブルは敵ボスキャラと遭遇したようなもの
年末年始の旅はベトナムでした。成田からハノイ、ダナン、ホイアン、ホーチミンから羽田空港に帰国するという「ぐるっと一筆書きの旅行計画」でした。
これまでにパスポートを紛失したり、飛行機に乗り遅れたり、たくさんのトラブルを経験してきた私です。今回はどんなトラブルに巻き込まれるのかしら? そんなふうに考えていました。トラベルはトラブル、それが私の旅の信条となっています。何もないってことは滅多にありません。トラブルを楽しめるようにならないと旅の上級者とはいえません。ドラクエ的な冒険の旅でいうと、トラブルは敵ボスキャラと遭遇したようなものだといえるでしょう。敵ボスキャラのいない冒険にどんな価値があるでしょうか?
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メーターを動かさないボッタクリタクシーを怒鳴りつけて成敗する
ところがベトナムではまったくトラブルに遭いませんでした。空港からのタクシーはたいてい「メーターを作動させないボッタクリタクシー」が待機していて、まだその国に慣れていない旅人からボッタクリ行為を働くというのが通例です。お金の相場がわからないから反論できないところに付け込んでくるんですね。こうしてしょっぱなから嫌な思いをさせられるのが常ですが、ベトナムのタクシーはちゃんとメーターを作動させてくれました。あれ? めずらしいね。社会主義の国だから? ちゃんとモラル教育が行き届いているなあと感じました。
唯一、最終日のホーチミンシティでメーターを作動させないタクシードライバーにあたりましたが、こっちはもうダナン、ホイアンと旅をしてきて、お金の相場がわかっています。他のみんなが真面目にメーターで稼いでいるのに、ボッタクリを許すわけにはいきません。私たちの後に続く旅人のためにも、ふざけたボッタクリには断固抗議することにしています。
メーターを動かせ。と大声で叫びました。タクシー運転手はスマホで市街地までの金額を提示してきましたが、そんなものはボッタクリ価格に決まっています。
「ノー!」「空港に戻れ! 戻れ!」とケンカ腰に叫びます。最後は日本語で。「ふざけんな。メーター使わないなら払わねえぞ。おまえ!」こっちの怒気は伝わるものです。ボッタクリタクシー運転手はしぶしぶメーターを動かしました。これはドラクエ的に言うと、こちらの攻撃が決まって、敵ボスキャラを倒したようなものです。ちゃんとメーターで仕事をしている他の真面目なタクシードライバーに対しても正義を貫くことができました。
あれ? すべての関門をクリアしたかしら? もしかしてベトナム旅はトラブルなし?
そう思っていたところ、最後の最後でダブルトラブルに巻き込まれてしまいました。
それを報告するのが今回のレポートの主眼です。
羽田空港。日航機、海保機の衝突炎上事故に巻き込まれて、飛行機が飛ばなかった
国際空港ではフリーWi-Fiが使えるため、日本の羽田空港で日航機と海保機が衝突し炎上していることは知っていました。しかしホーチミンと羽田では空路で七時間ほどフライト時間があります。自分と直接関係のある事故とは思いませんでした。
しかし……機内で眠っていたのですが、離陸直前の帰国便がなかなか出発しません。それどころかとうとう機内から降ろされてしまいました。は?
どうやら羽田の事故の影響だそうです。滑走路が炎上しているために飛べないということでした。
いや、七時間もフライト時間があるんだからそのあいだに何とか処理できるでしょ?
と思ったのですが、他の飛行機もありますので、滑走路が大渋滞で押し合いへし合いしているのかもしれません。
ここは待つしかありません。待って、待って、待ちました。チェックインカウンターに表示されるディレイ時間も一時間ごとに表示が伸びるのでぐっすり眠れません。一時間ごとにチェックインを確認します。
そしてとうとう五時間後に飛行機は出発しました。インドのニューデリーで8時間ディレイしたことがありましたが、それに次ぐディレイ記録です。
結果
飛行機の五時間ディレイという直接の被害を受けたので、JAL機炎上のニュースには帰国後も関心をよせていました。もちろん飛行機のヘビーユーザーのひとりとしても無関心なニュースではありません。
海保機からは死者が出たものの、JAL機からはひとりの死者も出なかったことから、SNSやニュースメディアでは、JALクルーの対応が賞賛されているようです。機内の様子をスマホで撮影した動画も見ましたが、女の子が「はやく扉を開けて、外に出してください」と丁寧語で泣くように懇願しているのを尻目に、大人の乗客は無言、冷静で、そのことも賞賛されています。着陸炎上から最後に機長が機外に脱出するまで18分かかったそうです。
賞賛ですか……でもね、18分って遅すぎませんか? 結果誰も死ななかったからよかったものの「結果よければすべてよし、結果悪ければすべて悪し」ではないはずです。
シリアス市民ランナーとして血の小便を流して一秒二秒を削ってきた私としては窓の外が炎上しているのに脱出まで18分もかかったというのは、あまりにも遅すぎるといわざるをえません。十八分ですよ、それがどれだけ長い時間か、賞賛派の人は本当に理解しているのでしょうか。たとえば自分の部屋で目を閉じて十八分何もせずに立っていられますか? ほとんどの人には無理だと思います。十八分は長すぎます。私がもしもマラソンのタイムを自己ベストよりも18分速く走れていたらもしかしたら人生が変わっていたかもしれません。18分というのはそれぐらいの長さです。
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
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本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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どんなレースに出ても自分よりも速くて強いランナーがいます。それが市民ランナーの現実です。勝てないのになお走るのはなぜでしょうか? どうせいつか死んでしまうからといって、今すぐに生きることを諦めるわけにはいきません。未完成で勝負して、未完成で引退して、未完成のまま死んでいくのが人生ではありませんか? あなたはどうして走るのですか?
星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。
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機内の動画を見て、賞賛よりもむしろ私は韓国のセウォル号沈没事故を思い出しました。この事件は海難事故で明らかに船が傾いているのに「動かないで待機して」という指示があったために、あたら船客が死亡してしまったというものでした。
今回のJAL機の事故も結果として人が大量に死んでいたら、セウォル号沈没事故と同様の評価が下されていただろうと思います。十八分は遅すぎます。もっと早く乗客を外に出すべきでした。
私には「はやく扉を開けて、外に出してください」と叫んでいた女の子の気持ちがよくわかります。結果によって賞賛されているJALクルーですが、はっきりいって仕事が遅すぎると思います。
トラベラーズシック。新型コロナウィルスに感染
今回のベトナム旅はまったくトラブルなしと思っていたのに、最後の最後でトラブルに見舞われました。滑走路で飛行機が衝突というありえない事故のために、飛行機が飛ばなかったのです。我々は帰国のための最終便だから多少遅れてもよかったのですが、羽田でトランジットして次の飛行機に乗ろうという人は困っただろうな。
それだけではありません。
ホーチミンの空港で五時間寝て待つ間に、ハードな旅の間に体力を削られた妻イロハが、体調を崩してしまいました。
これはドラクエ的な冒険の旅で言うと、洞窟や搭などのダンジョンから無事に戻ってはこられなかったようなものです。
帰宅するとバタッと寝込んでしまいました。まさかと思いましたが、医者にかかると新型コロナウィルスが陽性でした。
ありゃりゃ。。。まったくトラブルなしと思っていたベトナム旅が、最後の最後で飛行機事故による飛行機のディレイと新型コロナウィルス発症という、けっこう大き目なトラブルに見舞われてしまったのでした。
やっぱりトラベルはトラブルのようです。
錠を中に入れて南京錠を施錠。鞄を開けられなくなっちゃった事件
妻よ。よく帰国するまで頑張った! 海外旅行保険も未加入だしな
しかし妻よ。帰国するまでよく頑張った。ベトナムで発症してたらたいへんな事態になっているところだった。海外旅行保険も入っていないし、検疫を通れなかったら、しばらくベトナムでステイしなければならないところだった。きみだけ残しておれだけ帰るわけにもいかないし、あやうくちょっとしたトラブルでは済まないところだった。
検疫を通る時にはドキドキしたぜ! しかしもう安心だ。日本国内ならば保険もきくし、言葉も通じるし、いくらでも休んでくれ。
回復したら、またどこかに行こう。えらいぞ、本当によく耐えたな。