『旅に出ろ! ヴァガボンディング・ガイド』と『バックパッカーズ読本』
リアルドラゴンクエストと称して、世界中を旅するのを趣味にしている。旅行者としては、バックパッカーと呼ばれる範疇に入れられるであろう。
バックパッカーとしてバイブルにしている本はいくつかある。その最大のものは『旅に出ろ! ヴァガボンディング・ガイド』という本である。
人生を変えた本『旅に出ろ! ヴァガボンディング・ガイド』リアル・ドラゴンクエスト・ガイドブック
私にとって精神的なガイドブックが『旅に出ろ! ヴァガボンディング・ガイド』だとすれば、実戦的なノウハウ・ガイドブックは『バックパッカーズ読本』という本(旅行情報研究会「格安航空券ガイド」編集部)だった。私が熟読したのは2007年版である。
来年度には、中ボス(ヨーロッパ大遠征)、大ボス(南米大遠征)討伐戦が待っている。そこで戦略を練るために2007年度版の『バックパッカーズ読本』を読んだら、情報が古くて非常に面白かった。そのことを書いているのが本稿である。
× × × × × ×

本書の内容
・「ユーミン主義(遊民主義)」→ 限りある時間の人生を、遊びながら生きていく方法。
・「プアイズム(ビンボー主義)」→ お金を使わないからこそ、人生はより楽しくなる。
・「新狩猟採集民としての新しい生き方」→ モノを買うという行為で、どこででも生きていける。
・「お客さまという権力」→ 成功者にも有名にもならなくていい。ただお客様になればいい。
・「スマホが変えた海外放浪」→ なくてよし、あればまたよし、スマートフォン。
・「強くてニューゲーム」 → 人生ゲームをもう一度はじめからプレイする方法。
・「インバウンド規制緩和」→ 外国人の感受性が、日本を自由に開放してくれるのだ。
× × × × × ×
古い旅行ガイドブックを読んだら、古くて面白かった話し。

まず2007年度版の『バックパッカーズ読本』にはスマホやeSIM、Wi-Fiのことがまったく出てこない。地図やガイドブックを持ち歩くのが前提の旅となっている。eSIMでネットに接続したり、ホテルや鉄道をネットで予約したり、GPSで現在地を確認したり、行きたい場所をデジタル地図にポインティングしたりといった最新の旅のテクニックのことが何も書いていないのだ。時代ですねえ。逆に読んでいてそこが面白かった。この二十年でネット環境が急速に進歩したことがわかる。
その代わり日本との電子メールでの連絡や情報収集には、ネットカフェを利用しようなんてことが書いてある。そういえばあったな、ネットカフェ。日本ではマンガ喫茶と一体化してまだ生き残っているが、諸外国ではほぼ絶滅している。まず見ることはない。わずか20年ぐらいで社会は激変したのだ。これがスティーブ・ジョブズのイノベーションの威力である。
スティーブ・ジョブズはIT長者というよりも成功したヒッピーだ
そして海外での現金入手方法として、トラベラーズチェックや、国際キャッシュカードを利用しようなんてことが書いてある。トラベラーズチェックなんてものはもう絶滅している。クレジットカードに取って代わられたのだ。トラベラーズチェックのメリットは、現金を持ち運ばないでいいことと、盗難されても大丈夫という二点にあったが、クレジットカードはその二点を満たしている上に、軽くてラクチンであったのだ。
外貨を手に入れるには、クレジットカードと国際キャッシュカードのどちらが得か?
国際キャッシュカードというのは、デビットカードみたいなものだ。自分の口座と連携して、口座から直接現地通貨を引き出すという仕組みである。口座残金以上のお金は引き出せない。
クレジットカードのキャッシングは自分の口座とは連携しておらず一時的な借金のようなものだ。だから口座に残額がなかったとしても、キャッシング枠の限度額までお金を引き出せる。後日、ふつうは毎月の締め日に、他のクレジット支払いと一緒に借金返済することになる。
と、こう書くと利息のない国際キャッシュカードの方が得、利息のあるクレジットカードのキャッシングの方が損に見える。しかしここからが摩訶不思議なところで、実はクレカのキャッシングの方が得なことが多いらしい。問題は引き出すときの為替手数料にある。現金を引き出すときの為替手数料はそれぞれの会社が独自に設定しているのだが、そのコミッションフィーがクレカのほうが安いのだ。つまりクレジットカードの利息と、キャッシュカードの為替手数料の勝負になるのだが、クレジットカードの方が往々にして安いのである。ものによって違うのだが、いちおうクレジットカードのキャッシングで十分だと覚えておきましょう。
バックパッカーってなんだ? 本質は自由。そして歩くこと
あらためて思うのだが、ツアー旅行者と、バックパッカーの違いって何だろう。
私だってツアー旅行に参加したことがある。ツアー旅行っていうのは、たいていバス移動が多く、あまり歩かない。泊まったホテルの前から次のホテル前までバスで移動することもある。ぜんぜん歩かない。ツアーによってはその日の歩行の目安を表示しているものもある。歩かないツアーにしないと客がつかないのであろう。
しかし私は歩くのが大好きなのだ。マラソンの本を出版しているが、歩くのも大好きである。人生の目的とは体をつかってたくさんの感動を得ることだと思っている。
× × × × × ×

雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。
(本文より)
【入力ワード】写真からランニングフォームを学ぼうとする人が多いので注意喚起したいと思います。写真からフォームを学ぶのはお勧めできません。写真というのは瞬間を切り取ったものなので、間違った解釈をする可能性があるからです。「振り上げた脚」(往路)なのか「戻ってきた脚」(復路)なのか、写真ではわかりません。大地を蹴ったように見えている脚が本当に大地を蹴っているのか、大地を蹴ったように見えているだけなのか、写真からはよくわからないからです。写真で振り上げた膝の高さを見て「ふむふむ、膝はここまで上げるのか」と思い込んでマネするのもよくありません。慣性の法則で結果として脚がそこまで上がっているだけで、実際のランナーの意識としてはそこまで上げようとしていないかもしれません。「結果としてのフォーム」と「ランナー本人の走るときのフォーム意識(入力ワード)」は、必ずしも同じではないのです。
【腹圧をかける走法】そもそも息をするのは、酸素を吸うためです。吐くことよりも、吸うことに意識をおくほうが自然な発想です。肺の中に残っている空気(残気量)は、どうせゼロにはできないのです。吐き切るという努力は、動かない壁を押すような無駄な努力です。そこに力を割くべきではありません。持ち上がらないバーベルを無理やり持ち上げようと喘ぐと、余計に息が苦しくなってしまいます。楽に息するのとは真逆のことです。それよりも思いっきり吸うことです。そのための走法が腹圧をかける走法です。肺を絞って痩せた人のように走るのではなく、腹はたるんたるんと力を抜いてだらしなく腹が太った人のように走ります。そもそも重力は下向きなのだから、横隔膜を下げることは理にかなったことです。それに対して、吐き切ることを意識すると、重力に逆らって横隔膜を持ち上げながら肺を絞らなければなりません。どちらが楽にできると思いますか?
【ストライド走法】ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
【踵落としを効果的に決める走法】私はカラテ素人ですが、サブスリーランナーとして、すくなくとも「踵落とし」を無力化する方法をすぐに思いつくことができます。答えはカンタン。攻撃側が踵を振り上げて止まったポイント(これを上死点といいます)に、自ら打撃ポイント(脳天など)を近づけていくことです。上死点では運動エネルギーがゼロになっているために、破壊力もゼロです。上死点から距離をとらないことで「踵落とし」というキックを無力化できます。
ストライドを稼ぎたいあまりに、未熟ランナーほど振り出した前足が最も伸びきったところで着地してしまうのです。つまり「膝が伸びきったまま」「踵から着地」してしまうのです。これは「踵落とし」の運動エネルギーがゼロになっている上死点で着地してしまっているのと同じことです。これでは速く走ることはできません。
言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論の書。言葉による走法革命。とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。本書はあなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法」「腹圧をかける走法」
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
× × × × × ×
バックパッカーは歩く。歩くということが顕著な特徴だ。駅やバスターミナルまでは歩く。目的地でも歩く。歩くために旅行に行っているといってもいいぐらいだ。バックパッカーの持ち物で三種の神器の次に大切なのは靴ではないだろうか。それに対してツアー旅行者にとっては靴はそれほど大事ではない。
ツアー旅行者には、日程表がある。ときには終日フリーという日が一日ぐらいあるかもしれないが、決められた日時には、スケジュールに従って移動しなければならない。それに比べるとバックパッカーには圧倒的に自由がある。スケジュールなんてあってないようなものだ。旅を自由に組み立てることができる。つまりそれは自分の人生を自由に組み立てられるということだ。ツアー旅行者はサラリーマンのようなものだ。従うべきルールがあり大きく逸脱することはできない。
ツアー旅行ではそれほど学びは必要ではない。ただ付いていくだけ、運ばれるだけだから。しかしバックパッカーは学ぶ必要がある。どうやって列車のチケットを入手すればいいのか。どうやってバスを乗り継げばいいのか。どうやって国境を超えればいいのか。どうやって現金を入手すればいいのか。そのためにただ移動するだけのことが学びと冒険になる。私がリアルドラゴンクエストと呼ぶのは、この点にある。ツアー旅行者には冒険がない。なぜならまず失敗がないからだ。今夜泊まる宿がないかもしれない不安もないし、現金を盗難されても旅行会社が助けてくれるだろう。大きな旅行会社がバックについているということは、それだけ安心な反面、自力で難関を突破するようなドラクエ的な冒険とはならないのだ。
現地の人につきまとわれたり、ボッタくられたり、舐められたり、パスポートや現金を紛失して真っ青になったり、文字は読めないし日本人はおろかアジア人すら一人もいないし周囲がみんな爆弾テロリストみたいに見えて右に行けばいいのか左に行けばいいのかすらわからなかったりして心臓がキュッと絞めつけられたような思いをするのがバックパッカーである。でもそれがなきゃ面白くないと感じるのがバックパッカーという知恵と勇気の関門突破ゲームなのである。

