ドラクエ的な人生

ノートルダム寺院の火災事故。パリ市民の悲嘆を思う

な、なにぃ!? 朝から衝撃的なニュースを聞いた。ノートルダム大聖堂が火災で焼け落ちたというのである。

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ノートルダム大聖堂の火災事故は日本なら「東大寺大仏殿消失」ぐらいの衝撃

ノートルダム寺院といえばフランス屈指の名所である。私の感覚からいうとパリの観光地ではルーブル美術館が60%、ノートルダムが10%、残りの30%をサクレクール寺院とかムーランルージュとかエッフェル塔とか凱旋門などでわけあっているぐらいパリの名所中の名所である。

 

その教会が焼けてしまったというのだ。これから新婚旅行でパリに行こうという予定のカップルは大衝撃だろうな。ノートルダム聖堂の火災は、日本でいえば「伊勢神宮」や「清水寺の舞台」が焼け落ちた以上の衝撃をパリ市民にあたえていると思う。式年遷宮するような神社とはわけがちがう。ノートルダムとはイエスの母、聖母マリア教会のことである。「富士山が消えた」までいうとさすがに言い過ぎな気がするが、フランス人にとっては「厳島神社」消失以上の衝撃だろう。「厳島神社」とか「清水寺の舞台」なんて木造だし、その気になればいくらでも元通りに再建できそうだものなあ。しかしノートルダムはそう簡単にはいかないぞ。「東大寺大仏殿消失」ぐらいの衝撃だろうか。でも東大寺も過去に何度か消失しているからなあ。。。

私は過去に二度、ノートルダム寺院を訪れている。現役の教会であるため信者が日曜礼拝に訪れている。ステンドグラスから光が差し込むだけの聖堂内部は薄暗く、どこか死のにおいがたちこめ、靴音さえ響くような広間で聞いた讃美歌には胸が震えた。あの聖堂の天井が焼け落ちてしまうなんて……!

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ノートルダムの象徴。正面ファサードは健在

パリの人たちはどれだけ胸を痛めていることだろうか。津軽の人は岩木山がなくなった故郷を想像してみてください。セーヌ河に囲まれたシテ島の大聖堂はパリ市民にとってはそれぐらいの存在である。

フライングバットレス工法によって四方から支えられたセンタードーム上の尖塔は焼け押してしまったそうだ。しかしノートルダムの顔は尖塔ではない。もちろん正面ファサードこそがノートルダムの顔である。

ヴィクトル・ユーゴーやディズニー映画でおなじみの『ノートルダム・ド・パリ』『ノートルダムのせむし男』『ノートルダムの鐘』でカジモドが鳴らしていたのはこの正面ファサード上にある鐘である。ファサード前には広場がある。ここが美女エスメラルダが妖艶なジプシーダンスを踊る例のあの場所だ。

さいわいにして正面ファサードは残ったと聞いてほっとしている。最悪の事態ではなかったといえるのではないか。全焼ではない。いちばんいい場所は残ったのだ。

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暮らすように過ごしたパリ生活。ノートルダムはパリの象徴

実はこのニュースを聞いて、私は2008年の韓国ソウル南大門の全焼事件を思い出してしまった。私は韓国人ではないが幼いころを帰国子女としてソウルで過ごしており、南大門は数えきれないほど見ている。幼いころの思い出と切り離せない崇礼門が消失してしまったというニュースを聞いた時の衝撃は今でもはっきりと覚えている。

パリ市民にとってセーヌの川向こうにそびえる美しいノートルダムは、ソウル市民にとっての南大門に匹敵しただろう。火災は同じような衝撃をもって受け止められたに違いない。真っ赤で美しかったあのバラのステンドクラスも破片になってしまったかと思うと本当に悲しい。

パリには2週間住んでいた。2週間程度でなにが「住んでいた」とお思いだろうが、パリではホテルを借りずにアパルトメンを借りて現地の人が暮らす場所で現地の人と同じように過ごした。食事も近くのスーパーで買って自炊し、洗濯物を室内に干して、本当に「暮らしている」ように過ごしたのだ。

帰国するときは本当に立ち去りがたかった。後ろ髪をひかれまくって背中から倒れそうなほどに

パリジャンなんて気取っていて嫌い、フランス人なんてキチガイで大っ嫌いという人をたくさん知っているが、私はパリが好きで好きでたまらない。

世界を旅行して経験を積み、強くなったかと思ったら、弱くなったという人の話を聞いたことがある。経験値を積んでレベルアップして強くなるかと思ったのに、旅先でふれあった人たちの顔が思い出されて、紛争や不幸が他人事でなく自分事の悲しみとなって胸をつき、オロオロしてしまう自分がいるというのだ。

私のこの動揺もそれと同じものかもしれない。パリ市民の衝撃を感じることができる。

週末早朝、セーヌ河畔ではまるでマラソン大会かと思うほどパリ市民がジョギングを楽しんでいる。その視界にはいつもノートルダム大聖堂があった。

あの素晴らしい大聖堂が焼け落ちてしまうなんて…!

ノートルダムはヨーロッパの象徴といってもいい場所だ。どうか再建してもらいたい。

私にとってパリは、大好きなのに一緒になれない愛人みたいな街である。

 

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