円高・円安とは? 対ドルと対ペソでは話しが違う
先日、3年9か月ぶりに海外旅行に行ってきました。コロナ禍自粛、長かったなあ~。
「円安だし旅行にお金がかかったでしょう」と母親や友人など多くの人に言われました。何度も言われているうちに、ふと疑問が頭をよぎります。
円安、円安と気軽に言うが、それは対ドルの通貨基準だろうに。フィリピンはペソなんだけどなあ
両替する相手が違うから、話しは単純ではありません。私の友人、知人たちはテレビで見る「円安でたいへん」「海外旅行が高い」というニュースを丸呑みにして私たちの旅行もそうなんだろうと声をかけてくるのですが、それはアメリカに旅行した場合の話しです。
アメリカ以外の国に旅行する場合、両替のレートはまた別の話しなんですよ。だって話しの主語が違うのだから。
意思疎通のキモ。会話は「頭に描いている主体語」のすりあわせから。
ビザ(査証)の必要性は、国と国との関係性次第
話しをわかりやすくするために、ビザ(査証)の例で説明します。外国に滞在するときに必要なビザというのは国家間の関係を反映しているといわれます。VISA(査証)というのは基本的に必要なのですが、国家間の協定により一定期間、ビザを取得しなくても滞在(旅行)ができるという仕組みになっています。
たとえばタイにビザなしで滞在できる期間は日本人なら30日、韓国人なら90日、カンボジア人なら14日と決まっています。これは国と国との関係性の濃さなどを反映したもので国によって違います。
日本人は韓国にノンビザ(ビザなし。パスポート見せるだけ)で90日滞在することができます。逆も90日です。日韓は対等ですね。
日本人が中国に滞在したい場合、15日以内ならビザなしで大丈夫です。逆に中国人が日本に訪問する場合、短期滞在ビザが必要になります。中国人はビザなしでは駄目なんですね。対等ではありません。
これがビザ(査証)です。絶対的な基準ではなく、国と国との関係性によって相対的に決まるものなのです。
※ここに記した日数は執筆時のものです。国家間の関係性が変化すれば日数も変化します。
対ドルでは「円安」。対ウォンでは「円高」という状況がありうるのだ
海外旅行や両替にあまり詳しくない人は、円高というニュースだけで「今は旅行が高い」という発想に飛びついてしまいがちです。
海外で両替するときのノウハウ。we sell we buyの意味
しかし日本人が円安を嘆いているとき、韓国人はウハウハなのでしょうか? 彼らはもっとウォン安を嘆いているかもしれません。
日本人が円安を50%ほど嘆いているとき、韓国人がウォン安を100%ほど嘆いていたとすれば、それは円はウォンに対しては円高ということになるのです。
通常、円高・円安という言葉は基軸通貨であるドルに対して使われている言葉なのです。
実際にこのコラムの執筆時(2023年10月3日)
1ドル=149.88円 1ウォン=0.11円
でした。ドルに対してはたしかに円安ですが、ウォンに対してはむしろ円高だと思います。なんとなく私は韓国のウォンは日本円の十分の一(1ウォン=0.1円)という感覚をもっています。買い物で円換算するときに計算機の要らない便利な国が韓国だと思っていました。
おそらく日本人が円安を嘆いている以上に、韓国ではウォン安をもっと嘆いているのではないでしょうか。