『しくじり先生』のしくじり人生が、過去の自分を見ているようで辛かった
テレビ朝日系列『しくじり先生』というテレビを毎週楽しみに見ている。いつもは笑いあり学びありで楽しみのこの番組だが「気持ち悪くて」最後まで見ていられない回があった。『恋愛偏差値がクソ低い、山口真由先生』という回である。この先生がどんな人生のしくじりをしたかというと、勉強ができて東大を出て官僚になってエリートコースを驀進してきたけれど、異性にもてない、ということであった。お受験お勉強に性格を捻じ曲げられてしまい明るい男女交際がもはやできなくなっているというのである。
「ああ。まだこんな場所をさまよっている人がいるのか」とおれは思った。この回に限って何で「気持ち悪くて見ていられなかった」のかというと、まるでかつての自分を見るようだったからである。成熟し、卒業する前の過去の自分を見るようで、つらくて最後まで見ていられなかったのである。
幸せは幸せを呼ぶ。遊んでいる奴らの方がモテるのだ。
早稲田大学には受験で外部から入ってきたやつと、付属高校から上がってきたやつと、2種類の学生がいた。偏差値が高く勉強ができるやつは受験で外部から入学してきたやつであったが、趣味を持っていて人間として圧倒的に面白い奴らはたいてい付属高校から来たやつらだった。たとえば小室哲哉のようにお勉強とは関係のない特異な才能を発揮して圧倒的に面白いやつらはたいてい偏差値の低い付属高出身のやつらだったし、異性にモテるのももちろん付属校から上がってきたやつらだった。
勉強というものが人生にもたらすマイナスについて、このあたりから薄々おれは感づいていたと思う。スキーやサーフィンや音楽やダンスに興じるやつらの方が、受験勉強(参考書)しか知らないやつらより人間として面白いのは当然のことであった。遊んでいる奴らの方がモテるのだ。そのことにおれは気づいた。決定的だったのは恋愛において恋敵に負けたことである。要するにフラれたってことだ。失恋は人生を揺るがすような大事件だった。恋敵よりもおれの方が偏差値が高かったけれど、それがいったい何の役に立っただろう。人生の幸せに、お受験は何の役にも立たなかったのである。
お受験からの変節、転向。生き方で本当の頭の良さがわかる
おれは遊ぶことにした。しかし受験マシーンがそう簡単に遊べるわけがない。そこでおれは「受験勉強のやり方」で遊びを追求することにしたのである。スイスや台湾での登山も、エベレストやサハラ砂漠やピラミッドやルーブル美術館やインド亜大陸を自分の目で確かめたのも、地球一周以上のランニングも、お受験時代からの変節、転向の結果である。海外放浪という遊びはおれに人生をサバイブする能力をあたえ、自信をあたえてくれた。今のおれは本当の意味で面白く価値ある情報を持っていて、もう異性にモテないタイプではない。結婚も二回している。
ジャコモ・カサノバ『回想録』世界一モテる男に学ぶ男の生き方、人生の楽しみ方
ところが『恋愛偏差値がクソ低い、山口真由先生』というしくじり先生は、おれが失意の中で転向、変節したところを変わらぬままそのまま突き進んでしまっているのだ。この人はどうして勉強が好きなのだろう。親や先生に「頭がいい」と褒められたことが切っ掛けなんじゃないのか。他者に承認されたくてはじめた勉強が天井なしにできたものだから、行き過ぎて、結局いちばん大切な「愛する人に愛される」ってことがかなわない。そして本人が人生に失敗したと思っている。そういうところが痛くて、見ていられなかったのだ。
異性問題は人間をもっとも成長させてくれる
史上最高の恋愛小説『マノン・レスコー』の内容、書評、あらすじ、感想
お受験のようなつまらない情報で頭の中をいっぱいにすることをやめて、もっとスリリングで、もっと愉快で軽快な情報に脳みそを曝すことも重要なことだ。孔雀の美しい羽根は異性を引き付けるためにあるという。自分が魅力的な存在になるっていうことは、そこそこ重要なことである。
しかしもっとも重要なことは「知り合い」「口説く」。これに尽きる。自分がどれほど魅力的になったとしても「知り合わなければ」恋はできない。とくに男は「口説かなければ」異性を手に入れることはできないと思っておいた方がいい。恋愛を成就させたいのならば、恋愛を成就するために努力することだ。恋愛を成就させるために魅力的な人間になろうと努力することは、迂回路を行くようなものだとおれは思う。出世したら彼女が振り向いてくれるかも、と決して思わないことだ。自分を磨く時間すらも異性を口説くことに費やした方がいいとおれは思う。ダイレクトで直接的な努力をしたほうがいいってことだ。
美女がいてあなたが彼女を口説きたいのならば、誰よりも先んじて彼女を口説くことだ。あなたが自分の魅力を磨いている間に、他の男が彼女と知り合い口説いたら、あなたがどれほど魅力的な人間になっても、おそらくもう勝ち目はないだろう。
男女の相性とは鍵と鍵穴のようなもの
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『ハッピーメール』がおすすめなのは、相手が最初から恋モードであること
聞香。コーヒーの香りの香水をつければ、異性にモテると思うのだ。
もうひとつ、フラれたら、さっさと次に行くことだ。一人の人に長々と恋々としないで、次にはもっといい人が現れると信じてさっさと次に行くことである。
気持ちはわかる。相手が誰でもいいわけではない。たったひとりの「あの人」が大事だって言うんだろ?
初恋を失ったとき、これ以上生きていても仕方がないような気持におれもなった。あなたと同じだ。連内の感傷に満ちた若かりし日の思い出だ。
しかしそれは未熟な思い込みゆえのことだ。幸せな人生を歩みたいのなら卒業しなければならない。転向しなければならない。お受験を捨てたように、初恋の感傷も捨てるのだ。次に行け、次に。世界は広い。

