
見た目だけでもサーファーのようになりたい!

また出たわね。ハルトの「なんでもなりたい病」が。
九十九里浜のサーファーを見て刺激を受けたのね。
元サーファーガールのあたしが教えてあげるわよ。
っていうか、ハルトには無理じゃない。なんとなく。

なんでやねん。おれ、小麦色に日焼けしてるし。細マッチョだし、サーファーっぽいじゃん。

雰囲気がサーファーと違うんだよね。

おれ、遊び人の雰囲気ない? サーファーよりも、ぜったいオレのほうが遊び人だぞ(そこは断言!)

海外旅行とか、登山とか、ランニングとか、読書とか、ある意味ではそのとおりだけど、サーファーとは何かが違うんだよな……。たとえばハルトはいつもサンダル履いてるけど、突っ掛けサンダルじゃない? サーファーはまずビーサン履いてるもん。

おれ、ビーサン嫌い。長く歩いていると鼻緒と親指の付け根が擦れて痛くなったりするから。ワラーチとか、テバとか、走れるサンダルじゃないと無理。

ほらね。ランナー臭はするけど、サーファー臭はまったくしないんだよな。

さすがにランナー臭はするか。マラソンの著作もあるし、もう地球一周以上走っているからなあ。でもサーファーもランナーも軽装だし似たようなものじゃない?
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雑誌『ランナーズ』のライターが語るマラソンの新メソッド。ランニングフォームをつくるための脳内イメージ・言葉によって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。
(本文より)
【入力ワード】写真からランニングフォームを学ぼうとする人が多いので注意喚起したいと思います。写真からフォームを学ぶのはお勧めできません。写真というのは瞬間を切り取ったものなので、間違った解釈をする可能性があるからです。「振り上げた脚」(往路)なのか「戻ってきた脚」(復路)なのか、写真ではわかりません。大地を蹴ったように見えている脚が本当に大地を蹴っているのか、大地を蹴ったように見えているだけなのか、写真からはよくわからないからです。写真で振り上げた膝の高さを見て「ふむふむ、膝はここまで上げるのか」と思い込んでマネするのもよくありません。慣性の法則で結果として脚がそこまで上がっているだけで、実際のランナーの意識としてはそこまで上げようとしていないかもしれません。「結果としてのフォーム」と「ランナー本人の走るときのフォーム意識(入力ワード)」は、必ずしも同じではないのです。
【腹圧をかける走法】そもそも息をするのは、酸素を吸うためです。吐くことよりも、吸うことに意識をおくほうが自然な発想です。肺の中に残っている空気(残気量)は、どうせゼロにはできないのです。吐き切るという努力は、動かない壁を押すような無駄な努力です。そこに力を割くべきではありません。持ち上がらないバーベルを無理やり持ち上げようと喘ぐと、余計に息が苦しくなってしまいます。楽に息するのとは真逆のことです。それよりも思いっきり吸うことです。そのための走法が腹圧をかける走法です。肺を絞って痩せた人のように走るのではなく、腹はたるんたるんと力を抜いてだらしなく腹が太った人のように走ります。そもそも重力は下向きなのだから、横隔膜を下げることは理にかなったことです。それに対して、吐き切ることを意識すると、重力に逆らって横隔膜を持ち上げながら肺を絞らなければなりません。どちらが楽にできると思いますか?
【ストライド走法】ピッチ走法には大問題があります。実は、苦しくなった時、ピッチを維持する最も効果的な方法はストライドを狭めることです。高速ピッチを刻むというのは、時としてストライドを犠牲にして成立しているのです。
【踵落としを効果的に決める走法】私はカラテ素人ですが、サブスリーランナーとして、すくなくとも「踵落とし」を無力化する方法をすぐに思いつくことができます。答えはカンタン。攻撃側が踵を振り上げて止まったポイント(これを上死点といいます)に、自ら打撃ポイント(脳天など)を近づけていくことです。上死点では運動エネルギーがゼロになっているために、破壊力もゼロです。上死点から距離をとらないことで「踵落とし」というキックを無力化できます。
ストライドを稼ぎたいあまりに、未熟ランナーほど振り出した前足が最も伸びきったところで着地してしまうのです。つまり「膝が伸びきったまま」「踵から着地」してしまうのです。これは「踵落とし」の運動エネルギーがゼロになっている上死点で着地してしまっているのと同じことです。これでは速く走ることはできません。
言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化して速く走れるようになる新理論の書。言葉による走法革命。とくに走法が未熟な市民ランナーであればあるほど効果的です。本書はあなたのランニングを進化させ、市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」「ハサミは両方に開かれる走法」「腹圧をかける走法」
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
●【肉体宣言】生きていることのよろこびは身体をつかうことにこそある。
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サーファーの人たち見てよ。たしかに夏だから軽装だけど、みんな高級サーフブランドよ。すごくお金がかかってる。
ハルトはいつもマラソンの完走Tシャツじゃない?

まずサーファーは着ないメーカーだね。サーファーはね、クイックシルバーとかロキシーとかハーレーとか着るのよ。

「筋肉こそ最高のファッション」って言葉もあるぐらいだから、この際、肉体で勝負しよう。サーファーってロン毛の人が多いよね。おれもロン毛にしようかな?

くせっ毛じゃん。毛も太いし、似合わないと思うよ。

じゃあ髭だ。ヒゲ。サーファーってヒゲの人が多くない?

九十九里浜に移り住んじゃうような人は企業勤めのサラリーマンじゃないからだよ。

どうすりゃサーファーみたいなかっこいいヒゲになるんだ?
ヒゲトリマーで整えればいいのか。

どう見ても世捨て人のウルトラマラソンランナーという感じ。
あとは……眼鏡よね。やっぱり。眼鏡がサーファーっぽくない最大の原因じゃない?

実際、視力が悪いから眼鏡はしょうがないんだけど、おれはインテリゲンチャにも見られたいんだよ。

結局、なんにでもなりたいのよね。ウルトラマンにも仮面ライダーにもなりたい子供なのよ、ハルトは。

この眼鏡(視力)のせいで、ガチンコのサーファーになるのは無理そうだしなあ。視力がよくないとハンデあるよね、サーファーって。

そのインテリにも見られたいという眼鏡のせいで、遊び人臭も消えちゃってるわよ。お受験してきた真面目な頭のいい人に見えるもん。

何も考えずに波の上でプカプカしていてしあわせ、ってタイプじゃないからじゃない? サーファーは遊民だけど、主義者じゃないと思うよ。

おれは「主義者」なのか……なかなか深みのある意見だねえ。

