ベネチアで道に迷ったらワポレットに乗ればいい?
水の都ベネチア。道路の代わりに運河(というか海)が走っています。
そして乗用車の代わりに船が走っています。
有名なゴンドラは、日本でいえば「人力車」にたとえられます。観光客のためにものです。地元民(ベネチア市民)が乗るものではありません。
バスにたとえられるものにワポレットというエンジンで動く船があります。水上バスです。
ベネチアの散策は、楽しくて仕方がありませんでした。ちいさな運河を渡るちいさな橋を、どんどん先へ先へと進んでいきました。
奥へ奥へと行けば行くほど、観光客がいなくなり、地元民だけになります。そして町の裏側まで行っても「道路の代わりに水路」というベネチアは変わりませんでした。
観光客のための表向きの顔だけでなく、裏の顔まで「期待通り」の面白すぎる街でした。
同じ道をUターンして帰るのが惜しいと思いました。そのやり方では元の場所(サンマルコ広場)に戻れて当然です。
ベネチアでは道に迷うのが楽しいのです。知らない道を歩くのが楽しいのです。観光客が誰も来ないところを歩くのが通だと思います。
私は来た道を戻るのをやめました。先に先に進んで、旅の起点となる「サンマルコ広場」に戻る、というゲームを楽しむことにしたのです。
ところがなかなかサンマルコ広場に戻れません。モロッコのスーク以上の迷路なのがベネチアでした。
そのとき、私はひらめきました。
そうだ、ワポレット(水上バス)に乗ればいいんじゃね? だってワポレットは「セントロ(サンマルコ広場)」に行くに決まっているもの。
バスがバスターミナルに行くとは限らないように、ワポレットがサンマルコ広場に行くとは限らない
サンマルコ広場は、バスターミナルのようなところです。海路でベネチアに入る場合、サンマルコ広場から上陸するのが王道ルートになります。
先に先に進んで、旅の起点となるサンマルコ広場に戻れなくなってしまいましたが、ワポレットはサンマルコ広場に行くに決まっています。
ワポレットは山手線のようなものです。ぐるっと一周まわるかもしれませんが、新宿や渋谷(サンマルコ広場)に到着するに決まっているではありませんか。
イタリア語は喋れないし、読めないので、えい、やあ、とうで、感覚でワポレットに乗り込みました。なあにベネチア一周したってたかが知れています。ところが……サンマルコ広場にたどり着くどころか、なんと離島ツアーになってしまいました。どんどんベニス本当から離れていきます。な、なにい。
行く予定じゃなかったムラーノ島。ちょっとした船旅エクスカーションになってしまいました。ビックリしました。戻ってくるまでに半日かかりました。
予定外のワポレット・小船旅の途中でピサの斜塔(ベネチアの斜塔)を発見。ぜったい傾いていました。
予想した通り、サンマルコ広場に帰ってきましたけれど、とんでもない大回りをしてしまったのです。
ワポレットも、いろんな種類があります。私が乗ったのは中型のものでした。
小型ワポレットだったら、たぶん意図したとおりに、ぐるっと一周するにせよサンマルコ広場に戻ったと思いますが、想像もしなかった離島ツアーになってしまって焦ったのをおぼえています。
ワポレットはサンマルコ広場(サンマルコ地先の船着き場)に行くに決まっている、というのは思い込みでした。
バスがバスターミナルに行くとは限らないように、ワポレットがサンマルコ広場に行くとは限りません。
ハウステンボス号がハウステンボスに行くとは限らない
ワポレット(水上バス)がサンマルコ地先の船着き場に行くとは限りません。ベネチアでワポレットに乗られる方は注意してください。
ところで書いていて思い出したことがあります。これと似た体験を日本でしたことがありました。
「青春18きっぷ」を使って日本一周をしていた時の話しです。
ハウステンボスの近くのホテルを予約していました。翌日の朝いちばんからハウステンボスを満喫したかったのです。
私は急いでいました。列車の連結の問題(地方なので電車の本数が少ないのです)で、予約したホテルに「青春18きっぷ」で行けるか行けないかギリギリの時間だったのです。
佐賀駅だったと思います。時間がないと焦っているところ、なんと目の前に「ハウステンボス号」が停まっているではありませんか?
天の助けです。渡りに船です。ハウステンボス号はハウステンボスに行くに決まっています。
思わず私は飛び乗りました。とにかく時間がなかったのです。とにかく急いでいました。
時刻表で想定していた電車ではありませんでしたが、予定変更です。ハウステンボス号ですよ。ハウステンボスに行くに決まっています。
ところが……なんとハウステンボス号は福岡方向に走り出したのです。逆方向でした。
……そうか。電車だから逆方向もあるのか……。
大失敗でした。結局、予約していたホテルにはタクシーで行くことになってしまいました。
「ハウステンボス号がハウステンボスに行くとは限らない」と、そのとき教訓を得ていたはずなのに「ワポレットはサンマルコ広場に行くに決まっている」と思い込んで、飛び乗ってしまったのでした。
懲りないバカがわたしです