賢者の本から本当に知りたかったことは「なぜ人は死ななければならないのか?」

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ヨハネの福音書には「はじめに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神であった」と書いてあります。かつて私は聖書だとか、聖賢の残した古典文学だとかには、この世界の真理、悟りの境地のようなものが記されているはずだと思い込んでいました。そのためにたくさんの本を読みました。

しかし歴史的名著にも、世の中の真理なんてものは、なにひとつ書いていないのだということが、たくさん読んでつくづくわかりました。そこには、ありきたりの、あたりまえのことが、表現を変えて書いてあるだけでした。

私が賢者の本から本当に知りたかったことは、「どうして人は死ぬのか」「なぜ私は死ななければならないのか」という問いに対する答えでした。いわば人類最大最古の問いだといってもいいでしょう。

人類最古の物語である『ギルガメッシュ叙事詩』で、ギルガメッシュが求めたものは、まさに私の問いかけと同じものでした。

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しかし古今東西の大賢者たちの本を読んでも、生と死と今を肯定する議論のほかに、真理のようなものは書かれていませんでした。ソクラテスも、プラトンも、アリストテレスも、デカルトも、カントも、キルケゴールも、レオナルド・ダ・ヴィンチも、ニュートンも、アインシュタインも、フロイトもダーウィンも「人は何故死ぬのか」という問いに真正面から答えた人はいませんでした。イエス・キリストもブッダもマホメットも万人が納得するような答えを出してはいません。彼らは「死後に復活できる。死には意味がある」とか「それは理であり避けられないが、解脱することはできる」と変化球のような答え方をしています。切実な質問に対して、真正面から答えたとはいえません。

ところが先日、YouTubeを眺めていて、ビックリするような動画を見ました。その動画は「死とは何か? 人はなぜ死ななければならないのか?」という疑問を、小学生にもわかるように説明する試みだといいます。

「は? バカ言っちゃいけない。古今東西の大賢者たちが答えられなかった人類最大の疑問を、たかがユーチューバーに説明できるわけがないじゃないか」

なかば呆れ、なかばバカにした気持ちで、私は動画を眺めていました。ところがその結末に驚かされることになったのです。

「世界は、生存に有利なシステムを採用した種だけが生き延びて、その結果として今がある。たとえば細胞分裂で同一個体を複製する方法よりも、有性生殖のほうが多彩な遺伝子が残せるので生存には有利だったからその方法が生き残った。しかし生物は長いこと生きていると細胞分裂時にミスコピーが起きたり、ちょっとづつ遺伝子情報にダメージが蓄積されていく。傷ついた遺伝子が複製されると、その瑕疵を子孫に伝えることになるので長い目で見ると種の生存に不利になる。そこで寿命という死のプログラムが生まれた。老いて傷ついたDNAが死によって個体ごと消えてしまうことにより、種として遺伝子の傷が蓄積されにくくなる。もしも死のプログラムがなくて老いた個体がずっと生きていると、子孫はエラーのある遺伝子ばかりになってしまい、種全体として生きのびる可能性が減る。種のために個は死ななければならない。これが私たちが死ななければならない理由である」

その動画は、要約するとこういうことを言っていました。

驚きました。「どうして人は死ぬのか」「なぜ私は死ななければならないのか」という問いに対して真正面から答えていますし、その説に納得している自分がいたのです。

個の生存よりも種の生存を優先したのが個体の死だというのです。なるほど、そうかもしれません。

哲学や宗教や文学が解けなかった人類最大の難問が解決済みだった

哲学や宗教や文学が解明しようとしてきた「なぜ人は死ななければならないのか」という問いに対する答えを、こんなところで聞けるとは思いませんでした。

なんだ、人類最大の疑問に対する答えは、もう出ていたのか。

たとえば「歳を取るとどうして異性にモテなくなるのか?」という質問に対して、同じ理屈で答えることができます。種として瑕疵のある遺伝子を残さないようにするためには、歳を取ると異性にモテなくなれば問題ありません。受け入れられなければ繁殖行為を行うことができませんから、瑕疵遺伝子は伝わっていきません。

『ギルガメッシュ叙事詩』にも描かれなかった、人類最古の問いに対する本当の答え

「エンキドゥが死ぬなら、自分もいずれ死ぬのだ」

ギルガメッシュは「死を超えた永遠の命」を探し求めて旅立ちますが、結局、それを見つけることはできませんでした。

「人間は死ぬように作られている」

そんなあたりまえのことを悟って、ギルガメッシュは帰ってくるのです。

しかし私の読書の旅で見つけた答えは、ギルガメッシュとはすこし違うものでした。

なぜ人は死ななければならないのか?

その答えは、個よりも種を優先させるように遺伝子にプログラムされている、というものでした。

子供のために犠牲になる母親の愛のようなものが、人の世の真実だったのです。

エウレーカ! とうとうたどり着いた。そんな気がしました。わたしはずっと答えが知りたかったのですから。

『読書家が選ぶ死ぬまでに読むべきおすすめの名作文学 私的世界の十大文学』≪あとがき≫に続く。。。

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『ギルガメッシュ叙事詩』にも描かれなかった、人類最古の問いに対する本当の答え

(本文より)「エンキドゥが死ぬなら、自分もいずれ死ぬのだ」

ギルガメッシュは「死を超えた永遠の命」を探し求めて旅立ちますが、結局、それを見つけることはできませんでした。

「人間は死ぬように作られている」

そんなあたりまえのことを悟って、ギルガメッシュは帰ってくるのです。

しかし私の読書の旅で見つけた答えは、ギルガメッシュとはすこし違うものでした。

なぜ人は死ななければならないのか?

その答えは、個よりも種を優先させるように遺伝子にプログラムされている、というものでした。

子供のために犠牲になる母親の愛のようなものが、なぜ人(私)は死ななければならないのかの答えでした。

エウレーカ! とうとう見つけた。そんな気がしました。わたしはずっと答えが知りたかったのです。

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