ドラクエ的な人生

『進撃の巨人』のオチ(伏線)回収に学ぶ認識論「そもそも設定」の変更

『進撃の巨人』というアニメ・マンガがあります。

わたしは冒頭からこのマンガを見ていますが「こんなむちゃくちゃな設定、後々うまく回収できるのかよ」と思っていました。

連載漫画っていうのは、人気が落ちてくるとすぐに「打ち切り」になってしまいます。

壮大な物語の設定があっても、人気が出なければ、打ち切られてしまいます。後半盛り上がっても遅いのです。

連載打ち切りでよくあるのは「物語はつづく……」というカタチにしておいて、実際には二度と続かないというパターンです。

雑誌の連載の中で人気の下位1~3番ぐらいの常連だと「打ち切り」の危険があるそうです。

人気に余裕度がない場合、作者は焦りますよね。大ネタを出し惜しみしている場合じゃありません。打ち切られたらすべてオシマイなんですから。読者が驚いて喜んでくれれば、つじつまあわせなんて、とりあえず必要ありません。なにがなんでも最初から盛り上げなければ!

わたしが作者だったら、後先考えずに、とにかく人気が出そうな大技を次から次へと繰り出すだろうと思います。ネタあわせ(伏線回収)なんか、連載が続いてからでじゅうぶんです。

失礼ながら『進撃の巨人』もそのパターンかと思いました。

次から次へと人気が出そうなあっと驚く設定を放り込んで、人気だけは出ましたが、物語のつじつま合わせを後々できるわけがないと思っていたのです。

ところが物語も後半にすすんで、風呂敷ひろげすぎてオチを回収できないと思われていた『進撃の巨人』が、どうやらオチを回収できそうではありませんか。そのことに驚いたのです。

このページではマンガ作者の伏線の回収におけるオールマイティーぶりについて書いています。

マンガ作者はヒーローだけでなく、世界そのものをつくることができるのです。そのことをつくづく『進撃の巨人』の伏線回収の仕方から学びました。

作品の「そもそもの設定」に縛られているから伏線の回収ができないのです。

「そもそもの設定」さえ変えることが可能ならば、どんなオチだって回収できます。

それを見ていきましょう。

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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。

「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」

「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」

※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。

アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

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大丈夫? 煽りすぎて、むちゃくちゃな設定

ガラスの仮面』の「紅天女」を思い出してください。「幻の名作」とか「なりきることでしか演じられない天才役者が演じるのは人間じゃなくて「梅の精」」だとか、設定を煽りすぎて、作者の筆は止まってしまいました。

『進撃の巨人』も同じパターンに陥るんじゃないかとひそかに心配していました。

人を食う巨人が襲ってくる城塞都市。人類はもう三重の城塞都市の中にしか存在しません。その壁のひとつが破られてしまいました。しかし主人公が巨人に変身して撃退します。巨人は巨人を食うのです。うなじのところには人間が潜んでいます。

だって「かなりぶっ飛んだ設定」です。「紅天女」の比じゃありません。

やがて、敵の力を味方の力として利用して戦うというデビルマン的な展開になります。

そして、最初はそうではなかったのに、後で自分のタイミングで巨人になることができ、巨体を意のままに操ることができる設定になりました。人の心をパイルダーオンしたときにはじめて正義の味方になるマジンガーZぽい設定が追加になるのです。

とにかく人気取らないと、連載打ち切りになっちゃうから、勢いと設定だけで、運を天に任せて、後の辻褄のことなんて考えずに、とにかく盛り上げるだけ盛り上げて、とうとうここまで来ちゃったんだな……

わたしはそう思いました。

「強いものが弱いものを食らう。親切なほどわかりやすい世界。最初からこの世界は地獄だ……」

巨人とたたかうことで、人間の運命が際立ちます。

「人類の力、思い知れ」立体起動装置で小さな人間が巨人に切りかかります。

ところが人類を守ってきた城塞の中にはなんと巨人が埋もれていました……いや、これどうやっても物語にオチをつけられないでしょう。(と思いました)

人気が出たのでサイアクの連載打ち切りだけは免れました。ムチャなことをやってでも、打ち切りよりマシです。

さあ後半戦です。どうすりゃあ収集できるか、必死に考えるしかありません。でもこれどうやって収拾つけるんだろう。私の興味はそこにありました。

巨人は実は「乗り捨て可能」で「乗り捨てた後は消滅する」ことがわかりました(設定追加)。

巨人に変身する奴の正体は、じつは訓練兵として主人公エレンの同期でした。彼のセリフのツジツマも考えなければなりません。これは心を病んで兵士と戦士の二重人格をもっていたことにしてクリアします。

巨人は人間を食うのですが、巨人のうなじには人間が入っています。人間が何のために人間を襲うのでしょうか。

「おめでとう!!」エヴァンゲリオン的オチにならないように、「夢オチ」にしないために、作者&編集者は必死に考えただろうと思います。

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作者は神。そもそもの設定を変更することで、必ずオチをつけることができる

私は過去ブログで、どうして小説家はスターになりえるのに、マンガ作者はスターになれないのか、と説明しました。

小説は神の視点で描けないため、というのがその結論でした。それゆえに小説の人気がそのまま小説家の人気に転化される現象が起こります。「視点」にしばられるがゆえに、です。

小説の視点【神の視点】神が書いた文章なんて読んだことがない
私たちは、人間が書いた文章は読んだことがあるが、神が書いた文章は読んだことがありません。複数視座【神の視点】で小説を書くと、読者は「人間が書いた文章ではないもの」を読んでいる気がして、違和感を感じて気持ちが悪くなってしまうのです。語り部を選ぶ際のコツは、魅力的な行動家は話主にしないことです。ひらたくいうと、カッコいいヤツは話主にしない方がいいのです。

逆にマンガは神の視点で描けるために、作者がスターになることはなく、代わりにキャラクターがスターになります。マンガ作者はスターメーカーなのです。

マンガは動きを目で見せる芸術。表現力は古今無双。
感情の起伏をおこすことが、小説の命です。それに対してマンガは動きを目で見せる表現です。ふきだしのカタチや字の大きさで音声情報さえも目に見える形で表現を可能にしたマンガは日本で独自の進化をした世界に誇れる表現なのです。

そしてマンガ作者はヒーローだけでなく、世界そのものをつくることができるのです。そのことをつくづく『進撃の巨人』の伏線回収の仕方から学びました。

作品の「そもそもの設定」に縛られているから伏線の回収ができないのです。「そもそもの設定」さえ変えることが可能ならば、どんなオチだって回収できます。

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「そもそも設定」の変更。進撃の巨人、の場合

マンガ作者のオールマイティ具合「そもそも設定」の変更について『進撃の巨人』を例に見てみましょう。

◎当初の設定

人類は壁の中にしかいない。壁の外は人食いの巨人がいる。

◎オチの回収

壁の外には他国があることが後でわかりました(そもそも設定の変更)。壁の外にも人間がいました。王様がもつ超能力で記憶を消して、そう思い込まされていただけということになりました。そもそも設定」の変更です。そのために記憶をあやつることができる巨人が後に登場します。

作者は世界観を説明したのではない。キャラクターの認識を説明したのであって、作品世界を誤解していたのはキャラクターであって、作者に隠す意図はなかった、というわけです。

「人類の力、思い知れ」そう叫んで立体起動装置で小さな人間が巨人に切りかかるマンガだったのですが、実際には主人公エレン達は巨人族で、本当の人類は壁の外側にいました。

巨人は人間だということは前半からわかっていましたが、なんとエレン達種族こそ「巨人族(巨人になりうる素質をもった種族)」だったのです。このコペルニクス的転換……これほど大きな「そもそも設定」の変更が許されるなら、もはや何にだってオチをつけられます。

実は宇宙人だった……とか、ね。強さがインフレーションを起すと、こうなります。『ドラゴンボール』のパターンですね。

たとえば「人間だと思っていた人たちは実はみんな神様で、事件はすべて神の国での出来事だった」設定にすれば、どんな無理でも通ります。神なら巨大化でも消滅でも何でもできるでしょう。問題は、読者にドン引きされないようなそもそも設定の変更ができるかどうかだけです。この神様設定だと「なんだ。ほとんど夢オチだな」とドン引きされてしまうでしょうが『進撃の巨人』はうまくやりました。

敵の巨人(怪獣)が登場すると、こっちもシュワッチ(巨人化)。まるでウルトラマンではありませんか。

巨人は実は「生物兵器」でした。そうすることでそもそも「巨人対人間」という構図だったはずのものが「人間対人間」のたたかいに置き換えられてしまいます。もはや巨人の謎はメインテーマではありません。

作者はそもそも設定を変えることでオチを回収してしまいました。

『約束のネバーランド』も「そもそも設定」を変えて、ムチャな環境をなんとか説明しようとしています。『進撃の巨人』と似たような「そもそも設定変更」です。

世界を変えれば、無理が通ります。これがマンガ作者の神のごとき力なのです。

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このブログの著者が執筆した純文学小説です。

「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」

「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」

本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。

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物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちらをご覧ください。

物語のあらすじを紹介することについて
あらすじを読んで面白そうと思ったら、実際に照会している作品を手に取って読んでみてください。ガイドブックを読むだけでなく、実際の、本当の旅をしてください。そのためのイントロダクション・ガイダンスが、私の書評にできたらいいな、と思っています。

私は反あらすじ派です。作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

たいていの物語は、主人公が何かを追いかけるか、何かから逃げる話しですよね? 生まれ、よろこび、苦しみ、死んでいく話のはずです。あらすじは短くすればするほど、どの物語も同じものになってしまいます。だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。作品の命はそこにはないのです。

人間描写のおもしろさ、つまり小説力があれば、どんなあらすじだって面白く書けるし、それがなければ、どんなあらすじだってつまらない作品にしかなりません。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

偉そうに? どうして無名の一般市民が世界史に残る文豪・偉人を上から目線で批評・批判できるのか?
認識とか、発想とかで、人生はそう変わりません。だから相手が世界的文豪でも、しょせんは年下の小僧の書いた認識に対して、おまえはわかってないなあ、と言えてしまうのです。それが年上だということです。涅槃(死。悟りの境地)に近いということなのです。
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