このページでは、日本脚本家連盟で作劇術を学んだこともある、物書きのはしくれが「物語のあらすじを紹介することについて」の考え方をまとめたページです。
ネタバレだからといって物語のあらすじを紹介することをタブー視する人がいますが、あらすじを紹介したことで物語の価値はまったく損なわれないばかりか、むしろ新しい読者層を獲得するばかりで、むしろどんどん紹介するべきだ、というのが私の考えです。
書評に対する基本スタンス
本ブログでは書評をじゃんじゃん書いていきたいと思っています。とくに文学作品については、読書へと誘うイントロダクションとしてガイド的な稿を充実させていきたいと思っています。
私はものごとを単純化するのが得意です。それは人に「簡潔に」「要点を」紹介できるということです。大切なことが何なのか、はっきりと言うことができるということです。
※雑誌『ランナーズ』のライターにして、市民ランナーの三冠王グランドスラムの達成者の筆者が走魂を込めた書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
言葉の力で速く走れるようになる、というのが本書の特徴です。走っている時の入力ワードを変えるだけで速く走れるようになります。言葉のイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く効率的に走ることができるようになります。踵着地とフォアフット着地、ピッチ走法とストライド走法、どちらが正解か? 本書では明確に答えています。あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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たとえば『アトムのジェット走法』や『踵落としを効果的に決める・走法』のように、独特の表現力によって、初心者に大切なことを、わかりやすく理解してもらえるようにできるということです。
文学作品ではあらすじを紹介することをおそれません。ネットの世界では「ネタばれ」としてタブー視されることもあるストーリー紹介であるが、私のあらすじ紹介に関する基本的なスタンスを以下に表明しておきたいと思います。
あらすじは地図のようなもの
さて、往々にしてわかりにくく、冗漫で、刺激の少ない文学作品を、刺激を求めてさすらう若者が読むためには、どうすればいいでしょうか。そこで登場するのが「あらすじ」です。
文学作品は物語的な面白さ(スリル・サスペンス)なんかまるで追求していない場合もあります。それよりも「こころ(心象風景)」を追求している場合が多いでしょう。桃太郎が鬼を退治したというストーリーそのものではなくて、桃太郎が鬼を斬ったときにどんな感情がよぎったのか、とか、桃から生まれたことの自己のアイデンティティ不在をどう解消したのかとか、そういうことが文学作品の核心であることが多いものです。それがないから『桃太郎』は文学ではなく、昔話の範疇なのです。
おそらく名作と呼ばれる作品ほど人間の深淵を描いていることでしょう。同じ恋でも、恋人の幸せのために身を引く恋もあれば、破滅に向かう恋もあります。文学者は言葉の達人、表現の名人です。文学にはあなたが感じたけれどうまく言葉にできなかった思いが表現されているはずです。
それと出会うのが読書という旅のよろこびでもあります。
文学作品の核心を知るには、詳細(ディテイル)を読むしかありません。あらすじは文学の理解を助けこそすれ邪魔しないのです。「あらすじ」を最初に読んで大きな流れを頭に入れれば、自分が全体の中でどこにいるのかわかります。あらすじは地図のようなものです。
葛藤を感じている最中なのか、葛藤と格闘しているところなのか、葛藤を解消しようとするクライマックスを読んでいるのか。全体の中で自分がどこにいるか把握していれば、道に迷うこともありません。
あらすじで把握したその場所、状況の中で、作者が何を訴えようとしているのか。どんな技巧を発揮しているのか。それを追求することが、読書という冒険、旅になります。
読書の面白さはディテールにある。あらすじに本当の味はない
文学にはあなたが気づけなかった感情が描かれていて、それを発見し、それに触発されることもあるでしょう。その淵源の感情を追体験することも文学の目的のひとつです。
だから、あらすじには文学の本当の味はないのです。私はそう思っています。
旅先の市場や路上や安宿街を歩くことと、地図を眺めることは全然違います。
読書という冒険のおもしろさはディテイルにこそあるのです。
読書することで、自分を知ることができる。
あらすじで把握した状況の中で表現されている「作者の思い」と感じた「あなたの思い」が違っていれば、それが「あなたの個性」です。同じ状況でも、作者とは目の付け所が違うかもしれない。胸をよぎる感情が違うかもしれない。それが「あなた」なのです。読書することで、自分を知ることができます。
あらすじを読んで面白そうと思ったら、実際に照会している作品を手に取って読んでみてください。ガイドブックを読むだけでなく、実際の、本当の旅をしてください。
そのためのイントロダクション・ガイダンスが、私の書評にできたらいいな、と思っています。
※本は電子書籍がおすすめです。

