スピードスケートでは金メダルをとれた日本人が、陸上短距離だととれない理由
スピードスケートの選手で、夏はロードバイクを練習に取り入れている人がいるのを知っていますか? 冬のオリンピックはスケートで、夏のオリンピックは自転車で、両方出場してしまった橋本聖子さんとか関ナツエさんといった選手がいます。
ここで考えてほしいのは、どうして100m走などの短距離走ではなくてロードバイクなのでしょうか? 陸上短距離の方がスピードスケートに似ていると思いませんか?
ロードバイクならば人類最速ウサイン・ボルトに走り勝つことができる
なぜロードバイクなのでしょうか? その答えは「着地筋」です。
スピードスケートがロードバイクなみのスピードが出るのは、ストライドが圧倒的に長いからです。一歩ごとに氷の上をスケート靴のブレードがツルツルーーーーっと滑っていくからストライドが長いのです。
ホビーレーサー(アマチュアのロードバイク乗り)の最高速度ってどれぐらい?
スピードスケートの選手の太股がものすごく太いのは、ツルツル滑るスケート靴で氷の上で片足で踏ん張るためです。太股前面の大腿四頭筋は俗に「着地筋」を呼ばれる制止に使う筋肉です。必要以上に着地筋が肥大することはランニングにとってはマイナスとなります。大腿骨を前にふり上げるときに余計な重りとなってしまうからです。オリンピッククラスのハイレベルではわずかの差が勝敗を分けますから両立できないのです。
自転車(ロードバイク)とランニングの両立は可能か? サブスリーランナーはロードレーサーに乗っても速いのか?
ロードバイク乗りは「自転車の上で走っている」ようなものですが、どうして速く走れるのかというと、一歩ごとのストライドがタイヤホイールとギア比によってメチャクチャ長くなるからです。ギア比こそが魔法のタネです。ペダルを一回転すると、ギア比によって後輪ホイールは数回転します。そのホイールの円周分がストライド長となるために、ものすごくストライドが伸びて走るよりもはるかに速く走れるのです。
ところがこのギア比のためにペダルが重くなります。その重たいペダルを踏みしめる時に使うのが着地筋です。着地筋が発達すると太ももが太くなります。ケイリン選手を見てください。丸太のような太ももをしています。スピードスケートの選手を見てください。おなじような太ももをしています。金メダルをとった清水宏保選手なんかすごい太ももでした。使う筋肉が同じだからスピードスケートとロードバイクは両立可能なのです。両方とも「着地筋系競技」だからです。
ところで陸上短距離だと金メダルを取れない日本人が、スピードスケートだと金メダルを取れるのは何故なのでしょうか? 理由の一つに「着地筋の発達」があげられるかもしれません。
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このブログの作者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』のご紹介
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードをガチンコで競うようになるところまでを描いた自転車エッセイ集です。
※書籍の内容
●スピードこそロードバイクのレーゾンデートル
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
●アマチュアのロードバイク乗りの最高速度ってどれくらい?
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●アパートでローラー台トレーニングすることは可能か?
●ロードバイククラブの入り方。嫌われない新入部員の作法
●ロードバイク乗りが、クロストレーニングとしてマラソンを取り入れることのメリット・デメリット
●ロードバイクとマラソンの両立は可能か? サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?
●スピードスケートの選手がロードバイクをトレーニングに取り入れる理由
初心者から上級者まで広く対象とした内容になっています。
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西欧人は「押す文化」。日本人は「引く文化」
文化的にも西欧人は「押す文化」で日本人は「引く文化」だといわれています。日本人は包丁やノコギリ、田んぼの鋤、鍬などを、着地筋で踏ん張って引っぱってきました。日本人には身体の前面にある着地筋が発達しやすい遺伝子があるのかもしれません。
そういう意味では日本人は「着地筋系競技」であるロードバイクでは、世界的にいい成績をおさめられる素質があるだろうと思っています。世界自転車選手権で10連覇た中野浩一さんのような選手がそのうちまた登場するだろうと私は信じて待っています。