アイディアとは異質なものの組み合わせ
ショートショートの神さま、星新一のエッセイを読むと、アイディアとは異質なものとの組み合わせだと書いてあります。たとえば天使と悪魔が結婚したら……と想像すれば、はい、すでにショートショートの物語が一本完成できました。
では漫画の神さま手塚治虫はどんなふうに物語(ネーム)を考え出していたのでしょうか?
『ブラック・ジャック創作秘話』というマンガがあったので読んでみました。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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ストーリー(ネーム)を考えるだけでは満足できなかった人
『ブラック・ジャック』は言わずと知れた一話完結の医療マンガ。一話完結ストーリーの中で人間の命に対するこだわりや生きることの感動などが描かれている手塚治虫の代表作です。
手塚(尊敬してますが、敬称略)はどんなふうにしてこれらの物語を考えついたのか?
『ブラック・ジャック創作秘話』この本を読んでも、ストーリーを考えるための秘訣はどこにも書いてありません。
肉体労働者のように、手塚治虫はただひたすら原稿に向き合っています。
細切れに仕事に向かいます。会議に出かけても、旅先でも、飛行機や車の移動中でも、ひたすら細切れに原稿を仕上げようとします。これは大きな仕事を成し遂げるコツだと言えるかもしれません。
絵なんてアシスタントでも書けるんだから、ストーリー制作に集中して、絵は他人にまかせればいいのに……と思うのですが、基本的には絵を描くのが好きだったんですね。そして映画を撮るように、構図を考えるのも好きだったのでしょう。それが漫画家ってものですから。
ふたつの創作。ストーリーをつくる。商品をつくる。
『ブラック・ジャック創作秘話』というタイトルがついていますが、想像していた創作とは違う意味の創作でした。
創作にはふたつの意味があります。ひとつはストーリーを創作すること。それは手塚治虫という作家の頭の中で構成されたものです。
もうひとつはマンガという紙媒体の商品を創作すること。『ブラック・ジャック創作秘話』の創作とはこちらの意味でした。ひたすら漫画という商品を創作しようと、手塚のみならず、アシスタント、編集者、印刷業者などが時間に追われて精いっぱい頑張っています。
手塚が徹夜して仕事するのと同じ分量、編集者の〆切との格闘が描かれています。手塚は描くのは早いのだけれど、いかんせん仕事の量が多すぎて、いつも〆切に追いまくられています。〆切に間に合わない原稿を、どうにかして取ってくるのが編集者の仕事です。手塚の仕事場で待つのが仕事でした。徹夜で手塚の仕事につめて、ひたすら原稿が上がるのを待っています。そうまでしてなぜ待っているかというと、手塚の仕事場につめていないと、他社の編集者が自社の作品を先に書き上げるようにしてしまうからでした。監視していないと作品を仕上げる順番が最下位になってしまったからです。
『ブラック・ジャック創作秘話』における創作秘話とは、商品としての漫画をつくるための秘話のことでした。編集者たちは「チョコレートがないと描けない」という手塚のわがままを聞いて、使い走りも厭いません。すべては手塚に気持ちよく原稿を仕上げてもらうため。すべては原稿を手に入れるためです。
「長編よりも短編を数多く完成させてください。それが上達の近道です。16ページで起承転結できれば、長編もできる」なんていう(もう一つの意味の)創作秘話もありましたが、手塚の頭の中でどうやってアイディアをねん出していたのかは、本書を読んでも最後までわかりません。
あれだけ忙しい中でブラックジャックは3本のアイディアを考えて、その中で一番よかったものを次の連載作品にしていたそうです。なんでそんなにアイディアが思い浮かんだのでしょうか。どうやってアイディアを思いついたのでしょうか。
忙しいから思いつかないのか、忙しいから思いつくのか?
ここが分かれ道かもしれません。
忙しいから新しいストーリーなんて思い浮かぶわけがない、と考えるか、忙しいからこそ新しいストーリーが思い浮かぶのだと信じるか。
実際に、〆切が無かったら作品なんて完成できなかったという作家はたくさんいます。手塚もそのタイプでした。
ある作品を書きながら、次の作品を思い浮かべているんでしょう。絵を描くときに使う脳ミソと、ストーリーを考えるときに使う脳ミソは使う部位が違うのだと思います。だから絵をかきながら、ストーリーを思い浮かべることができたのではないでしょうか。
漫画に登場する自画像とは違う手塚治虫本人
手塚が意外と大柄で驚いた……という関係者の証言があります。調べてみたら身長は170センチメートルで、戦前生まれとしては大柄だったのですね。
手塚の描く戦争マンガで、手塚少年が登場する作品は、必ず軍人やボスにぶっ飛ばされる小柄なダンゴっ鼻が登場します。だから先生は小さくてひ弱い印象がありました。しかし大人になってからの手塚治虫は大柄で、体力まかせに膨大な仕事をこなしていったのです。
手塚治虫早漏伝説
『ブラック・ジャック創作秘話』には「ふたりのピノコ」というタイトルでふたりの娘さんのことが描かれています。アニメのブラック・ジャックの監督をした手塚眞さんも含めて三人の子どもがいたんですね。
「先生は忙しい、忙しいと言いながら、よく三人も子どもをつくる時間がありましたね」と誰かに皮肉を言われたところ「きみ、あんなのは5分もあればできるんだよ」と答えたというのを、何かの本で読んだことがあります。
いや、そういうのを世間じゃ早漏っていうんですよ。手塚先生!!
ストーリーつくるのも、マンガ描くのも、アッチの方も早かったんですね。先生!!
この素晴らしいエピソードも、人間手塚治虫の一面として『ブラック・ジャック創作秘話』の中に入れてほしかったのですが、入っていませんでした。
実話か作り話か知りませんが、あまりにも見事な切り返しで、このエピソードは忘れられません。作り話だったら手塚治虫級の創作力ですね。
手塚治虫がいなかったら、今のアニメ大国日本はありませんでした。私が心から尊敬している人物のひとりです。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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