海賊もの『ワンピース』と『宝島』を比較する

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このページではアニメ『ワンピース』の元祖といっていいかもしれませんスティーヴンソン『宝島』について書いています。

『宝島』は1883年に出版されました。

海賊の物語の成立については、100年前の時代を借りて表現したようです。

騎士物語の『ドン・キホーテ』と比較すると面白いことが見えてくるかもしれません。

『宝島』も『ドン・キホーテ』も100年以上前の過去の時代背景をかりて作品世界を表現しています。

「冒険ロマンは現代ものではやりづらい」作者はそう思っていたのではないでしょうか。

「現代もの」としては冒険ロマンを表現できなかった。

ここに私は何か冒険というものの宿命を見る思いがするのです。

※筆者自身による読み聞かせはこちらでどうぞ。

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物語のあらすじを述べることについて

物語のあらすじを述べることについての私の考えはこちら。

物語のあらすじを紹介することについて
このページでは、日本脚本家連盟で作劇術を学んだこともある、物書きのはしくれが「物語のあらすじを紹介することについて」の考え方をまとめたページです。 ネタバレといって、物語のあらすじを紹介することを禁忌視する人がいますが、あらすじを紹介...

私は反あらすじ派です。

作品のあらすじ、主題はあんがい単純なものです。

要約すればたった数行で作者の言いたかった趣旨は尽きてしまいます。

たとえば「作者は、死すべき人間だったとしても、運命を受けいれて、短い命を燃焼させて、その中で人間らしく充実して生きることを訴えたかったのです」とか。

世の中にはたくさんの物語がありますが、主役のキャラクター、ストーリーは違っても、要約した趣旨は同じようなものだったりします。

だったら何のためにたくさんの物語があるのでしょうか。

あらすじや要約した主題からは何も生まれません。

観念的な言葉で語らず、血の通った物語にしたことで、作品は生命を得て、主題以上のものになるのです。

作品のあらすじを知って、それで読んだ気にならないでください。

作品の命はそこにはないのです。

しかしあらすじ(全体地図)を知った上で、自分がどのあたりにいるのか(現在位置)を確認しつつ読書することを私はオススメしています。

作品のあらすじや主題の紹介は、そのように活用してください。

この記事がみなさんの読書ライフの良質な旅の地図になることを願っています。

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海賊もの『宝島』は『ワンピース』とどこが違うのか?

スティーヴンソン『宝島』は、ごく単純にいうと海賊が宝島を探しに行く話です。これだけならアニメ『ワンピース』と同じですね。

しかし主人公は宿屋の息子、普通の少年です。悪魔の実など食べていません。その宿屋の客に海賊が現れたことからお宝をめぐる冒険に巻き込まれていくのです。

悪魔の実は実在する! 果物の王様ドリアン 
悪魔の実は実在する! 果物の王様ドリアンは本当においしいです。東南アジアに行ったらぜひ食べてみてください。もしかしたらあなたにとって世界一うまい食べ物かもしれません。 韓国トウガラシの法則とは? 年齢とともに味覚も鈍くなっていくから、若い頃は耐えられなかった強い刺激にも耐えられるようになる。更に味覚が鈍くなりすぎると、刺激が強くないと満足できなくなってしまう。どんどんより強い刺激を求めるようになる

『ワンピース』の見せ所が、お宝をめぐる冒険の途中で出会った人との心の交流、旅立ちの別れにあるとすれば、『宝島』は全く別の作品です。

どちらかというと『ワンピース』は『銀河鉄道999』とかに近い作品なのでしょう。旅をする途中で寄った惑星(島)で出会いと別れがあるという作風です。

スティーブンソン「宝島」は、航海の途中で人と出会ったり別れたりしません。そもそも他の島に立ち寄りません。

「誰が一番ケンカが強いかゴッコ」もやりません。

どちらかというと『ワンピース』は天下一武道会(「誰が一番ケンカが強いかゴッコ」)があるドラゴンボール』とかに近い作品なのでしょう。

『宝島』では、宝島へと航海する船の中で内部分裂が起こります。

「まともな社会側」と「海賊側」に分かれて、船の支配権をめぐって争いが起こります。

それが活劇です。しかしせいぜい銃で撃ったり、ナイフで刺したりする程度。

「誰が一番ケンカが強いかゴッコ」とは無縁のありふれた格闘シーンしかありません。

だったら『宝島』の何が面白いのでしょうか?

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欲望に忠実なお調子者が、愛嬌で世の中を渡っていく男の生きざまが面白い。

『宝島』の面白さは、船のコック=ジョン・シルヴァーのキャラクターにあります。

使用人としてヒスパニオラ号に乗り込んだジョン・シルヴァーは実は海賊でした。

こいつのキャラクターが、欲望に忠実で、有利な方につくお調子者の無節操なコウモリ男すぎて面白いのです。

愛嬌だけで世の中をわたっていくタイプのクズ野郎です。

普段は、雇い主を立てる礼儀正しい使用人なのですが、ひとたび「お宝」を目の前にすると乱暴な海賊に豹変します。

しかし「お宝」争奪戦にまけて「まともな社会側」が圧倒的に有利になると、揉み手をして勝者にすり寄っていきます。

その様子が面白いのです。ちっとも男らしくないのですが、どこか憎めないのです。

(強いものにごまをするのはあたりまえじゃないか。そんなことをわからねえのか。べらんめえ)というような人間の卑屈さ滑稽さ丸出しというキャラクターです。

海賊の一群を率いるのですが、その日暮らしで未来の見通しが立たない海賊たちを統率するのにほとほと苦労して、「まともな社会側」となんとか妥協できないか画策します。

社会生活にも未練を残した中途半端なヤンキーみたいな男です。

語り部のジム少年の命を必死に救おうとしますが、実は縛り首から逃れるための人質でした。そのことを少年にさえ見抜かれてしまいます。

ころころと欲望の側に転ぶ無節操ぶりを少年にさえ「また寝返ったんだね」と冷ややかな目でからかわれてしまいます。

笑ってしまうような滑稽なやつ。それがジョン・シルヴァーです。

そういう愚かでみじめで爆笑ものの、どこか憎めない海賊シルヴァーこそが、『宝島』の面白さの源泉です。

改めて読んで見ると、お宝をめぐる冒険物語そのものは意外と単調で、ハラハラドキドキするようなシーンもそれほど多くはありません。

日本の演出過剰なアニメに慣れた読者だと、ドタバタ活劇シーンですら、工夫の足りない単調なシーンに思えてしまうでしょう。

海賊の宝探しの冒険物語を最初にやった小説だから、それで高名なのでしょうか。

最初にやった? 果たして『宝島』がお宝さがしの最初の小説でしょうか? すくなくとも『ワンピース』より古いことは間違いありませんが。。。

私はそうではないと思います。アーサー王の聖杯伝説だってお宝探しの冒険物語です。

決して『宝島』の冒険は、宝探しの海賊物語のはじまりではありませんでした。

やはり愛嬌だけで世をわたる海賊ジョン・シルヴァーこそが、作品に不滅の命をあたえているのでしょう。

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冒険ロマンは現代ものではやりづらい。『宝島』も『ドン・キホーテ』も過去の時代背景をかりている

作品の冒頭に「お買いになるのをためらっている読者に」という作者の献辞が載っています。

超訳すると、こんな感じです。

「古いロマンスが古いスタイルで語られるとき、その昔私が心をひかれたように、現代の賢い少年たちも心惹かれるというのなら、たいへんけっこうなこと、さあお聞きなさい。

でも勤勉な少年たちが今やあこがれを失い、冒険の物語にもはや関心がないというなら、これまた仕方のないこと。

わたしも海賊も墓場に急ぐことにいたしましょう。これらの作者と作中人物とが眠っているあの墓場に

作者スティーブンソンも、今さら海賊物語なんて古いけれどと承知の上で書いているのです。

これはちょっと今さら騎士物語なんて古いけど……と恥じらいつつはじまる『ドン・キホーテ』に似ています。

すこし両者を比較してみましょう。

『宝島』は1883年に発表されています。

しかし作品の背景となる時代は18世紀。1760年代だとみなされているということです。

現代ものとしては書いていないのですね。100年前の過去の舞台を借りて書いています。

その理由はやはりカリブの海賊が17-18世紀に横行していたという背景を借りたかったことにあるのでしょう。

現代もので海賊を登場させるのは、すでに違和感があったのです。

それに対して『ドン・キホーテ』は1605年に出版されています。『宝島』より200年も前の作品です。

中世の騎士に憧れた主人公が「宝のような何か」を求めて冒険の旅に立つことは同じストーリーです。

しかし中世は1500年頃には終わっているのです。

現代もので騎士を登場させるのは、ちょっと違和感があったのです。

そこを『ドン・キホーテ』ではちょっと頭のおかしい人物ということにしてクリアしていますが、両者に共通していえることは、100年以上前の時代背景を借りなければ、冒険ロマンを表現できなかった、ということではないでしょうか。

「現代もの」としては冒険ロマンを表現できなかったところが両者に共通しています。

ここに私は何か冒険というものの宿命を見る思いがするのです。

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宝探しよりも面白い。蝙蝠男のジョン・シルヴァー

『宝島』の原題は『海のコック』だったそうです。

サンジのことではありません。海賊ジョン・シルヴァーのことです。

ジョン・シルヴァーは、ヒスパニオラ号に船のコックとして乗り込むからです。

作者の意図としてはじめからジョン・シルヴァーの特異なキャラクターが本作の魅力だとわかっていたのでしょう。

ジョン・シルヴァーは「まともな社会側」を裏切って海賊をすると決めた後も、無教養な水夫だけでは操船できないから、ギリギリまで操艦上手な船長に船をまかせると冷静なことをいいます。

ラム酒ばかり飲んで先を見通せない海賊どもとはどこかひとりだけ違っています。ちゃんとした教育も受けているのです。

それでもお宝を目の前にすると人が変わります。

自分の都合のいい方につくことに節操がない日和見の人物なのです。

『ワンピース』で描かれる海賊の誇りなんてものはありません。

絞首刑から自分が助かるためなら、靴でもなめるでしょう。

欲望に忠実な「人でなし」です。

そして最後は「海賊側」は「まともな社会側」に敗れます。

するとちゃっかりジョン・シルヴァーは本当は自分は「まともな社会側」なんだと、これまでの恩義をちらつかせて、勝者の側の一員として帰国するのです。

チャンスと見るや凶暴な海賊に豹変したくせに、負けるとおだやかで礼儀正しいつつましげな海のコックに戻るのです。

伊達政宗みたいなタイプでしょうか。チャンスとみれば天下を狙うが、負けたら要領よく愛想よく部下として生きていくタイプです。

愛嬌がジョン・シルヴァーを助けていたのでしょう。

あなたの身の回りにもいませんか? 愛嬌で世の中を渡っていく、要領のいい人が?

わずかな寄港のあいだにション・シルヴァーはわずかな金を盗んで消えていきました。

海賊として絞首刑されるのを恐れていたのです。

ション・シルヴァーはどうなったのでしょうか?

これからも放浪し、海賊として生きていったのかもしれません。

でも実際には、妻子のもとに帰ったのかもしれません。

そう思わせるようなところを持った男でした。

いつでも社会生活の側に戻れるタイプの海賊でした。

去り際にチンケな金を盗んでいくところが、いかにも小物なジョン・シルヴァーらしくて、笑ってしまうのです。

小物だな~~。とつくづく笑えます。

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××はレベルが上がった(まとめ)

病弱だった作者のスティーブンソンは転地療養という名の旅に生きて、44歳でサモアで死んだそうです。

短い人生を悔いなく生きようとした人だったと思います。

現在はネット社会です。

パソコンひとつ持って世界中を旅しながら仕事している人が少数ながら存在します。

スティーブンソンは「物語」という執筆業をしながら世界中を旅してまわっていました。

才能があったのでしょう。

病弱な人だったけれど、それでもどこか宝島のような楽園を探して旅を続け、旅の途中でなくなったのでしょう。

私たち放浪のバックパッカーの偉大な先輩のひとりです。

 

 

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このブログ著者の小説『結婚』
小説『結婚』
愛とは何か? 結婚とは何か? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。恋人のアスカはツバサのもとを去っていきます。 「離れたくない。離れたくない。何もかもが消えて、叫びだけが残った。  離れたくない。その叫びだけが残った。  全身が叫びそのものになる。おれは叫びだ」 劇団の主宰者であるキリヤに呼び出されて、離婚話を聞かされます。不倫の子として父を知らずに育ったツバサは、キリヤの妻マリアの不倫の話しに、自分の生い立ちを重ねます。 「どんな喜びも苦難も、どんなに緻密に予測、計算しても思いもかけない事態へと流れていく。喜びも未知、苦しみも未知、でも冒険に向かう同行者がワクワクしてくれたら、おれも楽しく足どりも軽くなるけれど、未知なる苦難、苦境のことばかり思案して不安がり警戒されてしまったら、なんだかおれまでその冒険に向かうよろこびや楽しさを見失ってしまいそうになる……冒険でなければ博打といってもいい。愛は博打だ。人生も」 ツバサの母は心を病んで自殺してしまっていました。 「私にとって愛とは、一緒に歩んでいってほしいという欲があるかないか」 ツバサはミカコから思いを寄せられます。しかし「結婚が誰を幸せにしただろうか?」とツバサは感じています。 「不倫って感情を使いまわしができるから。こっちで足りないものをあっちで、あっちで満たされないものをこっちで補うというカラクリだから、判断が狂うんだよね。それが不倫マジックのタネあかし」 「愛する人とともに歩んでいくことでひろがっていく自分の中の可能性って、決してひとりでは辿りつけない境地だと思うの。守る人がいるうれしさ、守られている安心感、自信。妥協することの意味、共同生活のぶつかり合い、でも逆にそれを楽しもうという姿勢、つかず離れずに……それを一つ屋根の下で行う楽しさ。全く違う人間同士が一緒に人生を作っていく面白味。束縛し合わないで時間を共有したい……けれどこうしたことも相手が同じように思っていないと実現できない」 尊敬する作家、ミナトセイイチロウの影響を受けてツバサは劇団で上演する脚本を書きあげましたが、芝居は失敗してしまいました。 引退するキリヤから一人の友人を紹介されます。なんとその友人はミナトでした。 そこにアスカが妊娠したという情報が伝わってきました。 それは誰の子なのでしょうか? 真実は藪の中。証言が食い違います。誰かが嘘をついているはずです。認識しているツバサ自信が狂っていなければ、の話しですが……。 「妻のことが信頼できない。そうなったら『事実』は関係ないんだ」 そう言ったキリヤの言葉を思い出し、ツバサは真実は何かではなく、自分が何を信じるのか、を選びます。 アスカのお腹の中の子は、昔の自分だと感じていました。 死に際のミナトからツバサは病院に呼び出されます。そして途中までしか書いていない最後の原稿を託されます。ミナトの最後の小説を舞台上にアレンジしたものをツバサは上演します。客席にはミナトが、アスカが、ミカコが見てくれていました。 生きることへの恋を書き上げた舞台は成功し、ツバサはミナトセイイチロウの後を継ぐことを決意します。 そこにミカコから真相を告げる手紙が届いたのでした。 「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
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このブログの著者の小説『片翼の翼』
小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
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小説『片翼の翼』
なぜ生きるのか? 何のために生きるのか? を追求した純文学小説です。 主人公ツバサは劇団の役者です。 「演技のメソッドとして、自分の過去の類似感情を呼び覚まして芝居に再現させるという方法がある。たとえば飼い犬が死んだときのことを思い出しながら、祖母が死んだときの芝居をしたりするのだ。自分が実生活で泣いたり怒ったりしたことを思いだして演技をする、そうすると迫真の演技となり観客の共感を得ることができる。ところが呼び覚ましたリアルな感情が濃密であればあるほど、心が当時の錯乱した思いに掻き乱されてしまう。その当時の感覚に今の現実がかき乱されてしまうことがあるのだ」 恋人のアスカと結婚式を挙げたのは、結婚式場のモデルのアルバイトとしてでした。しかし母の祐希とは違った結婚生活が自分には送れるのではないかという希望がツバサの胸に躍ります。 「ハッピーな人はもっと更にどんどんハッピーになっていってるというのに、どうして決断をしないんだろう。そんなにボンヤリできるほど人生は長くはないはずなのに。たくさん愛しあって、たくさん楽しんで、たくさんわかちあって、たくさん感動して、たくさん自分を謳歌して、たくさん自分を向上させなきゃならないのに。ハッピーな人達はそういうことを、同じ時間の中でどんどん積み重ねていっているのに、なんでわざわざ大切な時間を暗いもので覆うかな」 アスカに恋をしているのは確かでしたが、すべてを受け入れることができません。 かつてアスカは不倫の恋をしていて、その体験が今の自分をつくったと感じています。それに対してツバサの母は不倫の恋の果てに、みずから命を絶ってしまったのです。 「そのときは望んでいないことが起きて思うようにいかずとても悲しんでいても、大きな流れの中では、それはそうなるべきことがらであって、結果的にはよい方向への布石だったりすることがある。そのとき自分が必死にその結果に反するものを望んでも、事態に否決されて、どんどん大きな力に自分が流されているなあと感じるときがあるんだ」 ツバサは幼いころから愛読していたミナトセイイチロウの作品の影響で、独特のロマンの世界をもっていました。そのロマンのゆえに劇団の主宰者キリヤに認められ、芝居の脚本をまかされることになります。自分に人を感動させることができる何かがあるのか、ツバサは思い悩みます。 同時に友人のミカコと一緒に、インターネット・サイバーショップを立ち上げます。ブツを売るのではなくロマンを売るというコンセプトです。 「楽しい、うれしい、といった人間の明るい感情を掘り起こして、その「先」に到達させてあげるんだ。その到達を手伝う仕事なんだよ。やりがいのあることじゃないか」 惚れているけれど、受け入れられないアスカ。素直になれるけれど、惚れていないミカコ。三角関係にツバサはどう決着をつけるのでしょうか。 アスカは劇団をやめて、精神科医になろうと勉強をしていました。心療内科の手法をツバサとの関係にも持ち込んで、すべてのトラウマを話して、ちゃんと向き合ってくれと希望してきます。 自分の不倫は人生を決めた圧倒的な出来事だと認識しているのに、ツバサの母の不倫、自殺については、分類・整理して心療内科の一症例として片付けようとするアスカの態度にツバサは苛立ちます。つねに自分を無力と感じさせられるつきあいでした。 人と人との相性について、ツバサは考えつづけます。 ミナトから最後の作品の続きを書くように頼まれて、ツバサは地獄のような断崖絶壁の山に向かいます。 「舞台は変えよう。ミナトの小説からは魂だけを引き継ぎ、おれの故郷を舞台に独自の世界を描こう。自分の原風景を描いてみよう。目をそむけ続けてきた始まりの物語のことを。その原風景からしか、おれの本当の心の叫びは表現できない」 そこでミナトの作品がツバサの母と自分の故郷のことを書いていると悟り、自分のすべてを込めて作品を引きついて書き上げようとするのでした。 「おまえにその跡を引き継ぐ資格があるのか? 「ある」自分の中にその力があることをはっきりと感じていた。それはおれがあの人の息子だからだ。おれにはおれだけの何かを込めることができる。父の遺産のその上に」 ※※本作は小説『結婚』の前編、バックストーリーに相当するものです。両方お読みいただけますとさらに物語が深まる構成になっています。※※
片翼の翼: なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?
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【この記事を書いている人】

アリクラハルト。走る哲学者。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。千葉県在住。

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アリクラハルト。走る哲学者。【トウガラシ実存主義】【遊民ユーミン主義】の提唱者。市民ランナーのグランドスラムの達成者(マラソン・サブスリー。100kmサブ10。富士登山競争登頂)。山と渓谷社ピープル・オブ・ザ・イヤー選出歴あり。早稲田大学卒業。日本脚本家連盟修了生。放浪の旅人。千葉県在住。
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