ピーター・フランクル『世界青春放浪記』ユダヤ人問題は被差別部落問題に似ている。人間の集団は差別せずにはいられないのかもしれない。

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『世界青春放浪記』大道芸人の数学者が書いた本

このコラムで書評する『世界青春放浪記』の著者はピーター・フランクルさん。大道芸人にして数学者というとてつもなく変わった人です。日本語名(漢字の当て字)もあるそうですが、もちろん日本人ではありません。「フランスから来たユダヤ人」と本人は名乗っているそうです。

出生地に関するとてつもなく複雑な事情は本書の冒頭に記されています。日本人には想像もできないようなユダヤ人特有の事情があるわけですね。

「ユダヤ人であることを恥じる必要はない。ユダヤ人だと主張してもいいのだ。」

「ユダヤ民族はなぜ消滅しなかったのだろう。最大の理由は宗教である。」

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ユダヤ人問題は被差別部落問題に似ている。

 

読んでいて、同じ人間なのに「ユダヤ人」というだけで差別される過程は、日本の被差別部落問題と似たところがあると思いました。日本の差別は、同じ人間なのに「穢れ」仕事をしている人だけが差別されたわけです。ケガレというのは日本の宗教です。

ユダヤ人が差別されるのもキリスト教という宗教のゆえです。イエスが死にいたった課程でユダという男が裏切るのですが「神の子はユダヤ人の裏切りで殺された」という理論武装で差別されてきたというのです。

ダンテ『神曲』でもユダは悪魔サタンに齧られるという最悪の罰を受けています。

谷口江里也・ギュスターヴ・ドレ。ダンテの『神曲』の素晴らしさ

しかしよく考えるとこれはおかしいのです。ピーター・フランクルも本書でそのおかしさに言及しています。

「キリストを殺したのはユダヤ人であった。当然の結果としてユダヤ人をひどく憎むようになった。しかしユダはイエスを裏切ったが、悔いて自殺している。」

ユダというのは、思ったよりも悪い奴ではありません。「最後の晩餐」の最高幹部十二人に選ばれた存在ですし、そもそも「イエスが裏切られて十字架の上で死ぬ」というのは定められた神の計画の一部です。そういう意味ではユダに自由意思はありませんでした。だって神の計画を実行した駒に過ぎないんですから。だれが神のプランに逆らえるでしょうか。むしろ選ばれた人だともいえます。

キリスト教信者でない者が聖書を精読してみた

「最後の晩餐の十二人の弟子たちは全員ユダヤ人。マリアも夫ヨゼフもユダヤ人なのだから、イエスもまたユダヤ民族の一員である。キリスト教徒は、自分のもっとも大切な人物がユダヤ人であるからこそ、ユダヤ人が許せなかったのだ。」

ピーター・フランクルがいうように、イエスというのははた目にはユダヤ人です。だって父母ともにユダヤ人なんだから。信者にとっては「神の子だから何国人でもない」って理屈なんでしょうけど。

でもサン・ピエトロ寺院のピエトロ(ペトロ)だって、サン・マルコ寺院のマルコだってユダヤ人なのに、なぜそんなにユダヤ人を差別するんだ? 理屈として成立しません。

日本の被差別部落問題もそうですが、人間の集団というものは、誰かを差別せずにはいられないのかもしれませんね。イエスの教えっていうのはそういう教えじゃないんだけどなあ。

キリスト教が世界一の信者数を誇る不滅の宗教であるのはなぜなのか?

現在、ロシアがウクライナと戦争していますが、この問題も地政学的な問題の他に、ロシア人のウクライナ人に対する差別意識が開戦の原因のひとつにあるような気がしてしかたがありません。

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十一カ国語もの他言語を喋れるようになった秘訣は何だ?

 

本書のサブタイトルは「僕が十一か国語を話す理由」。十一か国語を話す理由というのは、作者が祖国のない民=ユダヤ人だから、というのが理由です。迫害されない、住みやすい土地を探して流浪する中で、その土地土地の言葉を覚えていったから、十一カ国語を話すことになったのでした。

もちろんユダヤ人が全員お金持ちではないように、ユダヤ人だから全員十一カ国語も喋れるというわけではありません。

ピーター・フランクルは国を代表して数学オリンピックに出場するような天才です。理系の人で、文系の才能をまったくもちあわせていない人もいますが、ピーター・フランクルはそうではありませんでした。言語を学習するのが趣味みたいなところがあって、積極的に勉強していますし、ドイツ語でドイツ人と恋愛したりもしています。おそらく母国語はハンガリー語だと思います。

ブレグジットによってEUの主力言語は英語からフランス語になるだろう。

英語を一生懸命勉強している(というよりは趣味で英語で遊んでいる)私としては、作者が11か国語も操れるということで、その秘訣を知りたかったのですが、そんなものはどこにも書いてありませんでした。

日本語と韓国語。英語とフランス語。どっちが近い言語か? 似てるのはどっちか。

「そこ! 書いて! いちばん知りたいところ!」

本から読み取れたのは、ピーター・フランクルの時代は、まだオーディオの時代じゃないから、本を買って勉強したってことだけ。外国語は、昔は本から学ぶしかありませんでした。それしか勉強できる媒体が手に入らなかったからです。そして頭がいいから次から次へと目で見て単語を覚えちゃったんだな、ということだけでした。記憶力がいいんですね。数学オリンピックに出るような人ですから、地頭が違うのでしょう。

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『世界青春放浪記』の内容

※大道芸について

「高度な技を披露して感心されるよりも、笑われる方がずっと幸せだ。」

※数学について

「数学の証明には実験や観察は必要ない。頭と紙とペンがあればいい。ぼくがいちばん好きなのは寝転びながら考えることだ。」

「論文は数学の専門誌に送る。発行部数せいぜい二千部。読んでくれる人が世界中に五十人もいればもう最高にうれしい。

「数学科はまったく学校の拘束を受けなくて済む。」

「アメリカだったらその才能だけで成功していたかもしれない。しかし共産主義国家のハンガリーではそういうわけにはいかなかった。コネがないと出世できない。ショックで落ち込み、しばらくは立ち直れなかった。しだいに研究への情熱を失っていった。ハンガリーで重要なのは能力ではなく、いかによき共産主義者であるかということなのだと気づいて、やる気をなくしてしまったのだ。」

※放浪について

「旅をすることで、少しづつたくましさを身につけていった気がする。」

ユダヤ人が差別されない場所をもとめて住む場所を変え続けたピーター・フランクルは、日本にたどり着きました。日本はユダヤ人差別ってないよね。そもそもキリスト教じゃないし、ガイジンはみんな同じ顔に見えるもん(笑)。

しかし本書『世界青春放浪記』で描かれるのは日本にたどり着く前のところまでです。ピーター・フランクルが日本のことをどう思っているのかは、著者の別の本を読まなければなりません。

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