体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
ロードバイクのペダリングは、筋力で踏み込むのではなく、体重で踏み込みます。このとき「筋肉が働いているなあ」と感じないことが大切です。
なぜかというと、「筋肉が働いているなあ」と感じるときには、必ずしも効率的なフォームをしているとは限らないからです。
わたしたちがもっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるのは、筋肉が負荷を感じているときです。わたしたちは筋トレしているときに「筋肉が働いているなあ」と感じますが、それは筋肉に不自然な負荷をあたえているからです。ゼロ負荷で、筋肉が働いていることを意識するのはむずかしいのです。
逆にいえば、もっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるには、不自然な負荷が筋肉にかければいいのです。不自然なフォームで必要以上の負荷を筋肉にあたえたときに、私たちはもっとも「筋肉が働いているなあ」と感じるのです。「筋肉が働いているなあ」と感じないことが大切というのは、この意味です。あなたは筋肉の動きを感じたいあまりに不自然なフォームをとっていないでしょうか。
ペダルは筋力ではなく体重で踏み込みます。骨で踏み込むようにするのです。
私たちは骨がなければ立っていられません。姿勢は筋肉ではなく骨が支えています。骨が体重を支えるとき、姿勢を維持する筋肉の負荷は最小限になります。それと同様にロードバイクのペダルは骨で踏み込めば筋肉にかかる負荷は最小限になります。不自然なフォームをとったときに筋肉には過剰な負荷がかかるのです。
頑張っていることを自分で確認したいために、マゾヒスティックに筋肉に過剰な負荷を強いる人がよくいます。これを筋トレ・ペダリングと私は呼んでいます。
トレーニングならともかく、レース本番で筋トレ・ペダリングするのはおすすめできません。レース本番では、筋肉の動きを意識するより、骨格を意識しましょう。筋肉ではなく骨でペダルを踏みこむのです。それは筋力ではなく体重で踏み込むということです。
マラソンランナーにくらべるとロードバイク乗りに体重の重い人が多いのは、体重をペダルの回転(すなわち推進力)に変えることができるからです。それにたいしてランニングは宙に浮いて前に進むスポーツなので体重は軽いほど有利なのです。ランニングは地面からの反力が膝に直接かえってきて故障につながります。しかしロードバイクは重たいサドルが膝への負担を吸収してくれます。
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このブログの作者の書籍『通勤自転車から始めるロードバイク生活』のご紹介
この本は勤務先の転勤命令によってロードバイク通勤をすることになった筆者が、趣味のロードバイク乗りとなり、やがてホビーレーサーとして仲間たちとスピードをガチンコで競うようになるところまでを描いた自転車エッセイ集です。
※書籍の内容
●スピードこそロードバイクのレーゾンデートル
●軽いギアをクルクル回すという理論のウソ。体重ライディング理論。体重ペダリングのやり方
●アマチュアのロードバイク乗りの最高速度ってどれくらい?
●ロードバイクは屋外で保管できるのか?
●ロードバイクに名前をつける。
●アパートでローラー台トレーニングすることは可能か?
●ロードバイククラブの入り方。嫌われない新入部員の作法
●ロードバイク乗りが、クロストレーニングとしてマラソンを取り入れることのメリット・デメリット
●ロードバイクとマラソンの両立は可能か? サブスリーランナーはロードバイクに乗っても速いのか?
●スピードスケートの選手がロードバイクをトレーニングに取り入れる理由
初心者から上級者まで広く対象とした内容になっています。
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ライディング・ポジションを調整して、ペダルに体重をかける。
ロードバイクのライダーの体重はペダル、サドル、ハンドルの三点にかかっています。そのうち推進力に関係しているのはペダルです。サドル、ハンドルにかかる重さを減らせばペダルにかかる体重が引いた分だけ増える計算です。ロードバイクのライディング・ポジションが重要なのは、このためです。
サドルを適正な高さまで上げるのは、椅子にどっしりと腰かけた状態にならないようにするためです。スクワット状態で座ってはいけません。どっしりと座ったままペダルを回すのは、体重で回しているのではなく、筋力で回しているのです。
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引き足をつかってペダルを軽くする。
また、踏み込んだ足は仕事を終えたら力を抜く必要があります。力を抜かないかぎり、左足でブレーキを踏んだまま右足でアクセルを踏む状態になります。踏み込んだ足が下死点を過ぎたら心もち足を持ち上げましょう。これを引き足といいます。ビンディングペダルが有利だとされているのは、足を固定することでこの引き足が使えるからです。
ペダルを回転させる主力はあくまでも踏み足ですが、引き足も忘れないようにしましょう。踏み足のパワーを減殺しない程度でじゅうぶんです。
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極端な耐風姿勢は筋肉を効果的に使えない。
ロードバイクは風に抵抗するスポーツなので、ときどき極端に前傾姿勢をとるロードバイク乗りがいます。この耐風フォームは風の抵抗が小さくなるメリットがある反面、デメリットもあります。あまりにも伏せた姿勢を取ると筋肉がうまく使えません。
筋肉というのは主動筋と対抗筋が対になって働いています。主動筋(A筋)が収縮したとき対抗筋(B筋)は弛緩することで関節が曲がります。曲がった関節が元に戻るときにはB筋が収縮し、A筋が弛緩するというさっきとは逆の働きをするのです。
たとえば大腿骨を持ち上げる働きをするお腹の深部にある腸腰筋(A筋群)ですが、腰からお尻の筋肉(B筋群)と対になって働いています。
この対になって働く筋肉群ですが、あまりにも体を前に伏せると効果的に働きません。上半身が前に倒れ込むと、A筋群は過収縮して、B筋群は過伸長している状態になるからです。するとA筋群はこれ以上収縮できませんし、B筋群はこれ以上伸長できません。つまりA筋B筋群を効率的に使うことができません。
だからスポーツはリラックスが重要だといわれるのです。対抗筋がリラックスできずに弛緩しないと、主動筋の収縮に対してブレーキを踏んだままアクセルを踏む状態になってしまうからです。
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※雑誌『ランナーズ』の元ライターである本ブログの筆者の書籍『市民ランナーという走り方』(サブスリー・グランドスラム養成講座)。Amazon電子書籍版、ペーパーバック版(紙書籍)発売中。
「コーチのひとことで私のランニングは劇的に進化しました」エリートランナーがこう言っているのを聞くことがあります。市民ランナーはこのような奇跡を体験することはできないのでしょうか?
いいえ。できます。そのために書かれた本が本書『市民ランナーという走り方』。ランニングフォームをつくるための脳内イメージワードによって速く走れるようになるという新メソッドを本書では提唱しています。「言葉の力によって速くなる」という本書の新理論によって、あなたのランニングを進化させ、現状を打破し、自己ベスト更新、そして市民ランナーの三冠・グランドスラム(マラソン・サブスリー。100km・サブテン。富士登山競争のサミッター)を達成するのをサポートします。
●言葉の力で速くなる「動的バランス走法」「ヘルメスの靴」「アトムのジェット走法」「かかと落としを効果的に決める走法」
●絶対にやってはいけない「スクワット走法」とはどんなフォーム?
●ピッチ走法よりもストライド走法! ハサミは両方に開かれる走法。
●スピードで遊ぶ。スピードを楽しむ。オオカミランニングのすすめ。
●腹圧をかける走法。呼吸の限界がスピードの限界。背の低い、太った人のように走る。
●マラソンの極意「複数のフォームを使い回せ」とは?
●究極の走り方「あなたの走り方は、あなたの肉体に聞け」
本書を読めば、言葉のもつイメージ喚起力で、フォームが効率化・最適化されて、同じトレーニング量でも速く走ることができるようになります。
あなたはどうして走るのですか? あなたよりも速く走る人はいくらでもいるというのに。市民ランナーがなぜ走るのか、本書では一つの答えを提示しています。
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どんなレースに出ても自分よりも速くて強いランナーがいます。それが市民ランナーの現実です。勝てないのになお走るのはなぜでしょうか? どうせいつか死んでしまうからといって、今すぐに生きることを諦めるわけにはいきません。未完成で勝負して、未完成で引退して、未完成のまま死んでいくのが人生ではありませんか? あなたはどうして走るのですか?
星月夜を舞台に、宇宙を翔けるように、街灯に輝く夜の街を駆け抜けましょう。あなたが走れば、夜の街はイルミネーションを灯したように輝くのです。そして生きるよろこびに満ち溢れたあなたの走りを見て、自分もそんな風に生きたいと、あなたから勇気をもらって、どこかの誰かがあなたの足跡を追いかけて走り出すのです。歓喜を魔法のようにまき散らしながら、この世界を走りましょう。それが市民ランナーという走り方です。
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筋肉の伸縮反射を使うため骨はセンターのニュートラルポジションにセットする。
筋肉はゴムのようなものです。引き伸ばせば、もとのサイズに戻ろうとします。これを伸縮反射といいます。
ロードバイクのようなピストン運動の場合、骨はセンターのニュートラルの状態にあるのがいいのです。そうすれば伸びた筋肉が勝手に縮もうとする伸縮反射がつかえます。この運動は不随意運動なのでわざわざ収縮命令を出さなくてもいいのです。筋肉は対になっているのですから伸縮反射は往路でも復路でも使えます。伸縮反射をつかえば効率的にピストン運動することができるのです。
体幹を鍛えればハンドルに寄りかからずに骨盤を立ててニュートラル状態のまま体重でペダルを回すことができます。
いつも風の影響が同じとはいえないのでむずかしいのですが、ロードバイクのフォームは伏せた耐風姿勢よりも骨盤を立てて体重でペダルを踏みこむフォームを採用した方がいいのです。脚だけでなく腰(体幹)をつかってペダリングすることができます。
ずっと同じフォームを取りつづけないことも重要です。ずっと同じフォームを続けていると、同じ筋肉ばかりに負荷がかかります。つねに下ハンではなく、ブラケットを持つなど、複数のフォームを使い回すことができるようになれば、疲労を分散することができます。
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