どうもハルトです。みなさん今日も楽しい旅を続けていますか?
新婚旅行でメキシコに行った三つの理由
先日、メキシコ放浪旅から帰ってきました。実はハネムーンでもありました。相手はイロハです。新婚旅行でしたが、やっていることはいつもと同じ。いつものように放浪のバックパック旅行でした。
新婚旅行だというのに、いつもと同じ貧乏旅行を不平ひとつ言わず楽しんでいるイロハを眺めながら、こういう人だからおれは結婚したんだなあとつくづく思ったものです。
女性によっては文句たらたらで、成田離婚してもおかしくないぐらいの貧乏バックパック旅行です。イスラエルへ向かうバスの中で女性同伴の私を羨ましがっていた日本人バックパッカーのことを思い出します。彼の恋人はパリやローマに滞在するリッチな旅行以外には行きたがらないということでした。そういう女性に中近東の放浪は無理でしょう。そういう女性はたくさんいます。もしあなたが旅を人生にしたいのならばパートナーは慎重に選ぶべきでしょう。
ところで結婚した私たちですが、どこへだって行けるのに、どうして新婚旅行先がメキシコだったのでしょうか?
いくつかの理由がありますが、三つほど決定的な理由があります。
①エジプトのピラミッドがあまりにも素晴らしかったから
イロハと行ったエジプトのピラミッドは素晴らしいものでした。まさに人類の金字塔でした。
メキシコといえば、ティオテワカンやチェチェンイッツアのピラミッドが有名です。
あの感動よ、もう一度。というわけです。
②『Born to Run』のララムリ族がメキシコ人だから
メキシコといえば、走る民族タラウマラ族(ララムリ族)です。走るために生まれたような彼らのスーパー持久力の秘訣のひとつに「食事」があります。彼らと同じものを食べてみたかった。ララムリがメキシコ人だからこそ、以前からメキシコに興味があったのです。
③ 松任谷由実の名曲 Holiday in Acapulco があったから
ユーミンの名曲『ホリディはアカプルコ(Holiday in Acapulco)』を知っていますか?
アカプルコはメキシコの都市名です。この曲ほど旅情をそそる曲を私は他に知りません。
旅客機のジェット音がオープニングです。もうそれを聞いただけで旅に出たくなります。
ユーミンの完璧な歌詞を解説する
ユーミンの曲があまりにもいいので、多くの人は楽曲にうっとりしてしまい、しっかりと歌詞を聞いていないのではないかと思います。
この歌詞は完璧です。どれほど素晴らしい歌詞であるか、それをこれから解説しようと思います。
闇があるから星が輝く。文章表現も同じです。ただ楽しいことだけを綴っても、楽しさは人に伝わりません。失恋旅行という闇ゆえにアカプルコ旅行が光り輝くホリディになるのです。また逆にアカプルコ旅行が楽しければ楽しいほど、失恋の痛みは深く表現できるはずでしょう。
歌詞を光パートと闇パートに分類して解説します。
作詞はもちろん松任谷由実さんです。●青字が歌詞、※黒字が私の解説です。
Holiday in Acapulco 作詞・作曲・歌 松任谷由実
●どれぐらい眠ったかしら機内のアナウンスは陽気なスパニッシュ。100万ドルの夜景がほら海に浮かぶアカプルコへ
※片道13時間ほどの長距離フライトをたったの一行で飛んで、主人公の女性は美しいアカプルコに到着です。光のパートです。
●白いベランダ 熱い風 hum hum 石の噴水 エルパティオ hum hum マリアッチのリズムを夜通し聞かせて
※この行ではメキシコの異国情緒が表現されています。エルパティオから、メキシコを植民地にしていたスペイン風ホテルに投宿したのだとわかります。マリアッチはメキシコ風の楽団です。旅は日常と違った風景を見せてくれるから楽しいのです。光のパート。
●月明りで手紙書くの hum hum ちょっと思い出したように hum hum あなたを忘れる途中 ホリディはアカプルコ
※これは失恋旅行なのだと歌詞の一番目からはっきりとわかります。「ちょっと思い出したように」というのはもちろん強がりの嘘で、旅の初日から手紙を書くほどに、女性の頭の中は男のことでいっぱいです。闇のパートです。
●渚で手を握り合うツアーの老夫婦はまるでハネムーン。あなたと旅したかった。いつかあんなふうに。でももうだめね。
※二番の冒頭でも失恋旅行が強調されています。別れた男のことを思い出しながら、手をつなぐ老夫婦をうらやましがっています。自分と男は「もうだめだ」老夫婦のようにはなれないと思っています。旅に出ていても、さびしいのです。闇のパートです。
異国情緒から、心の孤独を感じる。それが旅というものです。およそ孤独を感じない旅に価値はないのではないでしょうか。
「闇があるから星は輝く」理論からいえば、次の段落は明るく楽しい何かが表現されているに違いありません。
●青いダリアの髪飾り hum hum 言い寄ってくる男立ち hum hum どんなに褒めたってその手には乗らない
※青いダリアの花言葉は「不可能」です。男との仲がうまくいくことは「不可能」だということを意味しています。主人公の女性はモテない女では決してなく、メキシコ男たちが言い寄ってきますが、相手が誰でもいいわけではなく別れた「男」だけが彼女が欲しかった相手なのです。それでも言い寄られて悪い気はしません。hum hum~ 光のパートです。
●冷えたテキーラ一息に hum hum 夜のスコール駆け出せば hum hum プールサイドは虹色憧れのアカプルコ
※メキシコ酒のテキーラを一気に飲みますが、それでもなぜか涙があふれます。スコールの中に駆け出すと、やがて涙は雨と見分けがつかなくなります。
歌詞というのははっきりと明示する必要はありません。半分わかるぐらいぼんやりと書けばじゅうぶんです。「泣いた」と直接書いてもいいところを、「雨」を唐突に持ってくるところがテクニック、作中の雨はたいてい涙の暗喩です。「泣いた」と感じる人は半分ぐらいでいいのです。ハッピーな虹を背景に降る雨だからこそ悲しみが深いと感じる人も半分ぐらいでいいのです。失恋の闇からはじまった二番はアカプルコのハッピーな虹色で終わります。失恋旅行でも旅は楽しいのです。
光→闇→光とめまぐるしく変わるパートです。
●ドアのキーを回してパタンとしめた 散らかった荷物と一人の私
※孤独です。これが現実です。アカプルコという舞台装置で、ごまかすことはできないものです。闇パートです。
●観光馬車のお迎えに hum hum ナイトクラブの舞踏会 hum hum マリアッチのリズムで教会の鐘が鳴る
※旅の楽しさ。光のパート。教会の鐘というのは「結婚」を暗示しているかもしれません。自分と彼とではない他の誰かの結婚式を眺めている心境はどんなものでしょうか。さびしさや後悔を感じます。ちょっと闇ですね。「光の中の闇」パート。
●皮のサンダル ソンブレロ hum hum 安くされてもいらないわ hum hum お土産買う当てもない ホリディはアカプルコ
※シンデレラのガラスの靴を連想してしまう革のサンダルと、ドン・タコスのソンブレロはメキシコのお土産です。彼とはもう会わないのだからお土産を買う当てもありません。このアカプルコは、彼を忘れるための失恋旅行なのですから。光パートか、闇パートかは、この曲を聴いたあなた次第というところでしょう。
完璧な「失恋ソング」ですね。そして「旅うた」でもあります。物語があって、映画を見るようです。ユーミンが天才だから、といえば、たった一言で片付いてしまいますが、彼女の他の歌詞を聞いても『ホリディはアカプルコ』ほど感動する歌詞は他にありません。
この歌があったから、私はメキシコ旅行を選んだのです。
暗い詞を、元気な音楽に乗せて歌うというテクニックもある
歌詞とは歌がある前提で作られたものです。そこが詩とは違います。
歌詞の中には終始、徹底的に暗い詞もあります。そういう歌は本来はあまり売れないはずですが、売れた歌にも暗すぎる歌詞のものはあります。でも音楽がやたらと元気だったりします。
暗い詞を、元気な音楽に乗せて歌うというテクニックもあるのです。すると聞き手は元気な歌だと勘違いしてしまうのです。高等テクニックだといえましょう。
歌詞は文字になった歌詞だけでは本来の味は味わえません。どうぞユーミンの歌で聞いてください。
そして『ホリディはアカプルコ』を聞いて旅に行きたくなったら、スマホに入れて、一緒にさすらいの旅へと出かけましょう。