物語のあらすじ「好きな男よりも、お金のある男を選ぶ話し」
ドストエフスキーの処女作とされる『貧しき人びと』。貧しき人びとの中のひとりであるビンボー主義者のわたくしアリクラハルトが感想を述べたいと思います。
一気に読み終わったのですが、正直いいましてどこが名作なのかさっぱりわかりませんでした。おれって読解力ないのかな……?
ドストエフスキー作品の読み方(『カラマーゾフの兄弟』の評価)
物語のあらすじは、ひとことでいえば「好きな男よりも、お金のある男を選ぶ話し」です。
好きな男よりも、お金のある男を選ぶ話しって、ありふれていますよね。王道パターン化されています。
作品として、この雛形は『貧しき人びと』は、世界で最初なのかしら? だったら評価されるのもわかりますけど……。
ざっと考えてそんなわけはないと思います。『マノン・レスコー』は、愛情のある貧乏な主人公よりも、お金持ちのパトロンを選ぶ女の話しです。1731年刊。『貧しき人びと』1846年よりもずっと古いのです。
愛より金。そのパターンの物語を私が見聞きしすぎて不感症になっているのかしら?
『貧しき人びと』はなんで評価されたの? どこらへんが名作なの?
新人作家の処女作を読んで「新しいゴーゴリが現れた」とセンセーショナルに取り上げられたらしい。それほどかな?
まあ後年のドストエフスキーの活躍を見れば、評価した方が慧眼だったということになるのですが……わたしはどこらへんが名作なのか、さっぱりわからなかったです。
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このブログの著者が執筆した純文学小説です。
「かけがえがないなんてことが、どうして言えるだろう。むしろ、こういうべきだった。その人がどんな生き方をしたかで、まわりの人間の人生が変わる、だから人は替えがきかない、と」
「私は、助言されたんだよ。その男性をあなたが絶対に逃したくなかったら、とにかくその男の言う通りにしなさいって。一切反論は許さない。とにかくあなたが「わかる」まで、その男の言う通りに動きなさいって。その男がいい男であればあるほどそうしなさいって。私は反論したんだ。『そんなことできない。そんなの女は男の奴隷じゃないか』って」
本作は小説『ツバサ』の後半部分にあたるものです。アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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モテない男の典型的な行動パターン「引っ込み思案、内気なナイーブ」
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』。ウェブスター『あしながおじさん』のように書簡体文学です。往復書簡であることが両者との違いといえば違いです。ウェルテル、あしながは一方的な書簡だから、相手の心情が見えないところがおもしろいのです。往復書簡にするとその技は使えません。
『木綿のハンカチーフ』みたいなものです。こちらの方がイマジネーションを刺激してくれる分だけ名作だという気がしますけど……。
マカール・ジェーヴシキンという筆耕を仕事にする下級役人(50歳手前)と、ワルワーラ・ドブロショーロワ(ワーレンカ)(二十歳前後)というお嬢さんの往復書簡による思いあいの物語です。
ふたりは中庭を挟んで反対側という近所に住んでいるのに、直接会わずに手紙でやり取りするという奥ゆかしさ(笑)。
女から何度も「会いに来てください」といわれているのに、滅多に会いに行かないというモテない男にありがちな行動パターンを遺憾なく発揮して案の定、最後には男はフラれます。
だ~か~ら~、そういう男はフラれるんだってば! そういう意味では人間の真実を描いた本だと言えますな。
女中のいる貧乏なんてありえない。女中と脳ミソは使いよう
主人公マカールは、台所に間仕切りをしてそこに住んでいるという超貧乏設定です。そんななかでも貧しいワーレンカにマカールはお金を送りつづけます。ワーレンカを愛し、彼女が生き甲斐でした。バブル時代はこういうタイプは「みつぐくん(貢ぐ君)」と呼ばれバカにされていました。
公務員として、ボタンの外れかけた服で職場に行くことをマカールはひたすら恥じています。貧しくて新しい服が買えないというわけですが、そのわりには下女(女中)みたいな人に雑務を依頼しています。その女中にボタンを縫い付けてもらえばいいでしょうが! バカなの? もしくは女中をクビにして新しい服を買いなさいよ。
この世界に、女中を雇っている貧乏なんていると思っているのか?
ワーレンカのほうも、ひたすら「いい子」のまま主人公のもとを去っていきます。やがて大金をむしり取るような、いっそのこと悪女に変貌してくれたほうが物語はおもしろくなったのではないでしょうか。
カラマーゾフの兄弟『大審問官』。神は存在するのか? 前提を疑え!
貧乏主義。貧しさゆえにふたりは寄り添い合っていた。お金ゆえに別れた
男女の愛かどうかは微妙ながら、ワーレンカの手紙には、マカールへの好意があふれていました。しかし貧しさから脱出するためにお金持ちのブイコフとの結婚を選びます。
そしてお互いを思いやりつつ、ふたりは永遠に別れるのでした。
お金が二人を別れさせた、とも言えます。逆に言えば貧しさゆえにふたりは寄り添い合っていたともいえるのです。
タイトルが『貧しき人びと』なので、貧しさゆえの悲劇的な結末を予想して読み進めていました。エンディングになんとなく期待していたのは、やっぱり貧しさゆえの自殺かな。
それが普通に「別れる」だけで終わってしまったのですっかり拍子抜けしました。
わたし自身は自分がビンボー主義者なので非常に面白く読めましたが、それは私の資質なのであって、客観的にどこらへんが名作なのか、さっぱりわからなかったです。他の人におすすめできるような小説ではありません。だって「いいところ」が言えないんだもの。
おれ、ドストエフスキー、向いてないのかな??
ドストエフスキー『罪と罰』の低評価。小説界のモダンアートだったのではないか?
それが確かめたかったらぜひ自分で読んでみてください。小説の面白さはあらすじをいくら聞いてもわかりません。面白さの源泉はそこにはないので。
そしてどこが名作なのかわかったら、わたしに教えてください。
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このブログの著者が執筆した「なぜ生きるのか? 何のために生きるのか?」を追求した純文学小説です。
「きみが望むならあげるよ。海の底の珊瑚の白い花束を。ぼくのからだの一部だけど、きみが欲しいならあげる。」
「金色の波をすべるあなたは、まるで海に浮かぶ星のよう。夕日を背に浴び、きれいな軌跡をえがいて還ってくるの。夢みるように何度も何度も、波を泳いでわたしのもとへ。」
※本作は小説『ツバサ』の前編部分に相当するものです。
アマゾン、楽天で無料公開しています。ぜひお読みください。
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